GM向け資料:敵設計指針 初級編

最終更新:

twnd

- view
管理者のみ編集可
アルトネリコTRPG ver.8.1準拠

アルトネリコTRPGには少々の敵データが付属していますが、そもそも最初はどれを選んでいいか分からないと思います。
また、自分で敵を作るにしても、それぞれの能力値や攻撃の威力をどのくらいに設定していいか、
そしてそれを何体出すか、迷うところでしょう。
そういうときのある程度の指針となる情報をまとめておきます。

なお、以下の話題は基本的に
  • PCのキャラクターレベルが3以下
  • サプリメント不使用(特にバトル+)
  • PCの人数が2人または4人(3人の場合は外れることに注意)
  • 標準的編成(PC人数の半数が標準的レーヴァテイル、半数が前衛)
を想定しています。
敵設計に関するさらに踏み込んだ話題は中級編・上級編をご覧ください。(準備中)






まずはPCデータを見てから

敵を設計するとき、その戦闘に参加するPCのデータを見てから設計するか、それとも見ないで設計するか?
少なくとも最初のうちはちゃんと見てからのほうがいいでしょう。
見ないで組むにはアルトネリコTRPGの戦闘の一般論を十分身につける必要がある上に、
事故回避のためにかなり弱めに組む必要があります。

PCデータのここをチェック:初級編

前衛と後衛が同数か?
ここで「後衛」とは詩魔法詠唱を軸とするキャラクターを差し、
それ以外のキャラクターは、攻撃手段が近接か遠隔かどうかに関わらず全員「前衛」です。
詩魔法詠唱を軸とするキャラクターは、その性質上、[かばう]を使うタイミングが非常に限られます。
なのでここで「[かばう]役」としての前衛と「[かばう]が使えない」後衛を分類するわけです。

同数でない場合は標準的な編成から外れるので初級編では扱いません。

チャージ型赤魔法を持っているか?
後衛でもときどきチャージ型赤魔法を持っていないタイプがいます。
チャージ型赤魔法を持っている人数が1人なのか2人なのかはチェックしておきましょう。
(0人の場合はここでは扱いません)

[エネミースキャン]はあるか?
[Sリング:エネミースキャン]で使用できる場合も含みます。
敵情報を得ることができる人が一人もいないような場合は初級編の対象外です。

HP回復の青魔法はあるか?
なくてもなんとかなりますが、あったほうが敵を組みやすいです。

状態異常回復手段はあるか?
ない場合は状態異常は控えめにする必要が出てきます。

前衛全員の【耐久】を書き出そう
前衛でも【耐久】が低いことはよくあります。
あとで敵の攻撃の威力を決めていくときに参考にする数値なのでちゃんと把握しておきましょう。
[絆の盾]があるかどうかもチェック。

[吸収風船]はあるか?
低レベルから大きな影響力がある詩魔法の1つです。
これも敵の攻撃の威力を決めるときに要素になります。




チャージで決める設計ターン

「設計ターン」とは、この戦闘が終了するまでに何ターンかかるかの設計、ないしは想定です。

チャージ型赤魔法はアルトネリコTRPGの戦闘の中核になります。
範囲も広いので、事実上、チャージ1発分のHPしか持たないようなザコ敵は何体存在しようが
赤魔法が溜まる3ターンの終わりまでには全て倒されるわけです。

逆に言えば、敵の中で最もHPが高いものに応じて、
それを倒すために必要なチャージ型赤魔法の発動数、ひいては戦闘のターン数が決まります。

チャージ型赤魔法のダメージ量

チャージ型赤魔法の威力は、主に使用者のキャラクターレベルに応じて決まります。
大雑把には以下のような数値になることが多いでしょう。
キャラクターレベル 耐久減算前ダメージ 仮耐久減算後ダメージ(次項参照)
CL1 50~70 40~60
CL2 80~100 70~90
CL3 90~130 80~120
もちろん、実際にPCデータを見て計算してみればより正確な値を得られます。

仮耐久

敵が決まっていない段階なので、その敵の【耐久】がいくつになるかも決まっていません。
なので、とりあえず10を仮の【耐久】として差し引くことにしておきましょう。

設計ターンを考える

前衛の攻撃の影響はひとまず考えないことにすれば、ここまでで設計ターンを決めることができます。

例えば、PCの中にチャージ型赤魔法持ちが2人いて、両方ともCL2だったとしましょう。
この時、仮耐久減算後のチャージのダメージは80程度。これが3ターンめに2発飛びます。
よって、敵のHPが160を切るならば、その敵は3ターンで倒れることになります。
もし全ての敵のHPが160以下ならば、戦闘自体が3ターンで終了することを意味します。
逆に、HP160を超えてくる敵がいるならば、より長いターン数がかかります。

感覚としては、3ターンでチャージを放っただけで終わるのはちょっと味気ないかもしれません。
そう考えれば、敵の中で最も多いHPを持つ者は、上記のHPよりも多く設定する必要が出てくることが分かります。
前衛の攻撃力にもよりますが、チャージ持ちのRTが2発ずつチャージを撃ってようやく倒れる程度のHPにすれば、
4~5ターンで終わることになるでしょう。
(前段の例でいうとHP240~320あたりになる)




ボスと強ザコと弱ザコ

敵の役割分担

ボス
前節の議論から分かる通り、最大のHPを持つ敵は戦闘の長さを決めます。
言い換えれば、この敵が最後まで残ることになります。つまり、これがボスになります。

一般的には、その戦闘のコンセプトを体現する存在になります(オブジェクトギミックなどは初級では扱わない)。
もちろん、攻撃の強さも最も強くなければなりません(そうでないと攻撃がより強いザコを先に倒して楽されるため)。
後述する「エネミースキルの3要素」の2つを同時に備える攻撃などを持つことが多いでしょう。

強ザコ
強ザコは、ボス以外で、3ターンめの最初のチャージの発射を生き残る敵です。
戦闘後半まで残り、ボスの補助として各種の行動をするのが役目です。攻撃力もボスに次いで強いです。

「ボスは戦闘のコンセプトを体現する存在」と言った通り、ボスはギミック付きの行動をするようにすることも多いです。
そうなったとき、PC側に与えるダメージが不足することもしばしばあります。そこを補助するのが強ザコです。
典型的なパターンとして、貫通ダメージ攻撃、もしくは高威力の攻撃を持つことが多いです。

弱ザコ
弱ザコは、HPが低くて倒そうと思えば割とすぐ倒せる、放っておいても3ターンめのチャージで倒せる敵です。
「放っておいても倒せるけどできれば早めに倒したい」パターンが代表的です。

典型的なパターンとして、状態異常を撒くものが多いです。
かなり低威力だけど貫通ダメージの攻撃を持つのもいいでしょう。

何体の敵を出すか?

基本は、ボスは1体だけにしましょう。複数体のボス級は慣れが要ります。

ザコを何体にするかはPCの人数が関連してきます。

PC2名の場合
前衛と後衛が1人ずつです。必然的に、1人の前衛が全ての攻撃を受けることになります。
敵の手数が多すぎると潰されるので、数は少なめに。

したがって、ザコ敵には強弱1体ずつ、あるいは強弱あわせて1体でもいいでしょう。
ただし、ザコ敵なしは初級編では推奨しません。そのぶんボスを強くする必要が出るので。

PC4名の場合
この場合、前衛同士でダメージを分担できるので、PC2名の場合の倍よりもさらに多くの攻撃を耐えられます。

ザコ敵の数は、強弱1体ずつが最低ラインになります。強弱のどちらか、もしくは両方を1体増やすのがいいでしょう。
ただし、[エネミースキャン]を持っている人が1人だけな場合は、
[エネミースキャン]の使用機会の数も加味すると、4種以上の敵を出すことは推奨されません。
なので、増やす場合は、基本的に同種の敵を追加することになります。

まとめ

敵の種類 HP
ボス チャージ1波では倒せず、チャージ2波(+α)で倒せる
強ザコ チャージ1波だけでは倒せず、チャージ1波+αで倒せる
弱ザコ チャージ1波で倒せる
※チャージ型赤魔法を持つPCが1名の場合は「1波=1発」 2名の場合は「1波=2発」

PCの人数 ボス 強ザコ 弱ザコ
2名 1種1体 0体 ~ 1種1体 0体 ~ 1種1体
4名 1種1体 1種1体 ~ 1種2体 1種1体 ~ 1種2体




敵のラフスケッチ

前節を踏まえて、ボス・強ザコ・弱ザコのそれぞれをどのような敵にするかを考えていきます。

データよりもまずイメージを

敵を設計するにあたって決めなければならないデータは多岐にわたります。
イメージが固まらない状態でデータを決めていこうとすると必ず壁にぶつかります。
「この敵は耐久高い?低い?」「属性は?」「特徴的な行動パターンとかある?」のように。
また、あとあと衝突が発生することもありえます。

なので、それぞれの敵について、先にある程度のイメージを掴んでおきましょう。

では、どのくらいの「イメージ」が必要か?
そこまで詳細である必要はありません。「その敵の特徴を言葉で1~2文で簡単に説明できる程度」で大丈夫です。

例えば、
「ネコ科っぽい猛獣。牙と爪がやばい」とか
「ドローン型の警備用機械。武装は少ないけど壊れると爆発する」とか
「ぱっと見では大きなカエルっぽさがある正体不明生物。目の前に現れたものをとりあえず舌で舐める習性がある」とか
このくらいで十分です。

元ネタのある敵

慣れないうちは、原作、あるいは別のゲームに登場した敵をイメージしてみるといいかもしれません。
それらの敵がどのくらいの強さでどのような攻撃をするか? 後述の3要素に当てはまりそうな攻撃は?
ある程度イメージがついたら、次節以降で具体的なデータに落とし込んでいきましょう。

決め技からイメージする

元ネタが特にない場合に有用なのがこの方法です。
まず、その敵の「決め技」を考えます。詩魔法を紡ぐがごとく妄想してみましょう。
鋭い牙でかみつく、全方位に電撃を与える、高速の体当たりをかます、攻撃しつつ自分を回復……
決め技が単純な攻撃でない場合も含め、ありとあらゆるパターンが考えられます。

決め技を1つ決めたら、先述の通り、そのような行動をしそうなものは何なのか考えてみましょう。
たとえばスライムであったりアンデッドであったり巨大メカであったり……そしてその特徴は……
そうすると、「イメージ」ができてくると思います。




スキル「以外」を先に決める

まず前提として、敵データを作る時に決める必要がある事項の詳細については、こちらのエネミーデータの項をご覧ください。
ここでもそちらの分類に沿って説明します。

なぜスキル以外を先に決めるか

単純に、こちらのほうが決めやすく、後から修正するのも簡単だからです。

行動種と行動パターン

スタンバイ行動は「移動のみ」、つまりメイン行動の攻撃前に1回移動できる、という程度にしておきましょう。
行動できるタイミングやパターンが増えると処理が煩雑になるので最初のうちは推奨しません。

同様の理由で、メイン行動も「1行動権」を基本に。
ボスについては2行動権にする可能性もありえますが、その場合はダメージが増えすぎないよう注意しましょう
(たとえば2行動のうち片方は必ずバフ/デバフのみの行動になるとか)。

行動パターンについては、特にボスについては、ランダムだと実は設計が難しくなります。
完全にパターン化してしまってもいいでしょう。この場合は[エネミースキャン]の際にパターンもPLに開示するのを忘れずに。

属性と耐性

属性については、率直に言ってしまえば、どのように設定しようがさほど問題は発生しません。
その敵のイメージに合わせて設定しましょう。

状態異常耐性についても、その敵のイメージに合わせて適当に。
しいて言うなら、ボス敵には[気絶]耐性を持たせておくといいでしょう。

ただし、PCのやりたいことを積極的に潰しにいくような設定は避けたほうが無難です
(例えば、赤魔法として火属性しか持っていないPCがいるなら、大きな火属性軽減を持たせるのは避ける)。
また、そもそも論として、属性の影響は処理の負担を増大させるので、
慣れないうちは、特に属性軽減については、設定しないほうがいいかもしれません。

属性軽減の効果量と影響の関係については中級編で解説します。

能力値

HPについては先述の通りなので既に設定ができているはずです。
HP以外の能力値については、極端でない限りは、どのように設定してもそこまで問題は発生しません。
その敵のイメージに合わせて適当に設定しましょう。実際、適当で大丈夫です。

能力値を固定値にするのもよいでしょう。
特に【素早さ】と【耐久】については固定値にしたときのGMの処理の軽減効果が大きいです。

HP以外の能力値の指標
能力値 設定例 (期待値) 説明
【素早さ】 5 (5) ほとんどの場合にPCが先手を取れる設定
固定値にすることでより確実にそうなるようにしている
3+2D (10) PCと競合するあたり ターンによって先手後手が変わってくる
7+2D (14) 多くの場合にPCよりも先に行動する
ただし、奇跡使用によりPCが先手を取れる程度でもある
【筋力】 3+2D (10) 通常攻撃ではまずダメージを与えられない
[かばう]によるHG稼ぎをさせることができる
5+3D (15.5) 通常攻撃ではほぼダメージを与えられないが、2倍スキル(※)や貫通が怖くなってくる
8+4D (22) ダメージの高さにより警戒される対象になる 2倍スキルや貫通・範囲攻撃は脅威
【耐久】 0 (0) 受ける全攻撃が貫通になるのと同じ 後衛レーヴァテイルによる殴りも選択肢になる
2+2D (9) 前衛のスキルは普通に通る程度の耐久
5+3D (15.5) 前衛でも通常攻撃は通りづらい このくらいから「固い敵」のイメージになってくる
【移動力】 - 3 (3) 移動力は3を基本に 敵イメージに合わせて±1くらいの範囲で増減すればよい
【幸運】 8 (8) 固定値設定によりPC側が目標とすべき数値を明確にしている
2+2D (9) 期待値は大差ないがランダムネスの導入によりPC側からは目標が大きく上がったように感じる
7+2D (14) 【幸運】判定を積極的に利用するため上げているタイプのPCにとってはこれでも楽勝
(※ダメージが「【筋力】×2」である攻撃スキルのこと 「3倍スキル」なども同様)




スキル編成:構想編

最後に、敵が使うスキルを作成していきます。
まずは敵パーティ全体を見通した設計から。

エネミースキルの3要素

「範囲」「状態異常付与」「貫通ダメージ」のことです。
これらに該当するスキルを持たない敵は単体相手のただの攻撃だけになるため、パワーファイター的な敵になります。
この3種の要素がそれぞれ、登場するいずれかの敵のいずれかのスキルに入っているようにしましょう。

範囲
ある範囲の中の全PCを対象とするスキルです。
必ずしも攻撃スキル(ダメージを与えるスキル)とは限りません。

PC4人の場合、範囲攻撃がないと、耐久に優れた1人が全てをかばえば済む話になりがちです。
そこに範囲攻撃を織り込むことで、2人めの前衛を働かせることができます
(この性質上、PC2人のときは範囲攻撃を入れてもあまり変化がありません)。

状態異常付与
字のごとく、状態異常を付与するスキルです。
状態異常だけを与えるスキルもあれば、ダメージに加えて状態異常を追加するスキルもあります。
それぞれの状態異常の詳しい効果については基本ルールを参照してください。

状態異常 解説
火炎 深度2までならほとんど効果がないものの、高深度になると途端に脅威になる状態異常。
状態異常対策がないパーティの場合は火炎は入れないほうが安全。
マヒ 比較的効果がおとなしい状態異常。行動順を気にしだすような難易度を別とすれば、影響は限定的。
なので初心者でも気軽に扱えます。イニシアチブフェイズに処理が増えることだけ注意。
ペイン 低深度からうっとうしい状態異常。かばう役にとっての警戒対象です。
低深度ならば使いやすい状態異常。ただしとにかく処理を忘れやすいのでそこは要注意。
シック HP回復量を減らす状態異常。現状ではHP回復は全体的に強くないこともあり、入れないほうが得策です。
ジャミング HGを減らす状態異常。PCの被ダメージに直結しないわりには嫌がられる状態異常です。
もっとも手軽に使える状態異常と言えるでしょう。
気絶 一時的に一切の行動をできなくする状態異常。詠唱中の場合はそれも解除されます。
これもかばう役の脅威となる状態異常。裁定とバランス調整がやや難しいので初心者には推奨しません。

貫通ダメージ
受けた者の【耐久】減算を効かなくする攻撃スキル。
かばう役にとっての脅威であり、これだけで戦闘の中核をなしうるタイプのスキルです。

【耐久】減算だけでなく、【耐久】を振ることに付随する効果の発動
(例:【耐久】への奇跡使用・[ウェポンガード]など)も不可能にする点で、PLからは恐れられています。
戦闘の花形で不可欠なものですがバランス調整は慎重に。

2倍スキル

前節の注釈にもあった通りですが、ダメージ量が「【筋力】×2」と表される攻撃スキルのことです。
一般に敵のスキルのダメージ量は「【筋力】+○○」の形になるので微調整が効くのですが、
2倍スキルのような掛け算で表されたダメージは、強力な攻撃であることがPL側に分かりやすく伝わります。

特に、「2倍貫通」は低レベル帯からでもありうる代表的な凶悪スキルとなります。
威力が高すぎてボスには若干持たせづらいですが、強ザコにはうってつけです。

最初はこれだけで十分

敵の行動は他にも様々なものがありえます。回復・バフ・移動効果、あるいはギミック的なスキル……
ただ、いちばん最初は、3要素と2倍スキルだけで十分です。
回復にしろバフにしろ、戦闘が長引く・処理が煩雑・処理を忘れやすい・裁定が面倒、などなど様々な欠点もあり、
慣れないうちに採用するには難しい面もあります。

「ギミックがないと楽しめないんじゃないか」という不安もあるかもしれませんが、その点は心配する必要はありません。
PLはわりとどのような戦闘でも楽しむものです。
コピペみたいな敵を全く同じ流れで何度も倒す繰り返しとかだと別かもしれませんが、単発の戦闘ならば結局関係ない話です。

要素を配分する

3要素と2倍スキルをボス・強ザコ・弱ザコに配分しましょう。
ある要素が複数の敵で重複したり、ある敵が複数の要素を持ったりしても構いませんが、
ある要素がどの敵のどのスキルにも全く登場しないというのは避けたほうがいいです。

どうやって配分するかは敵イメージに合わせて適当に。
指針としても、貫通は持ちすぎないようにするよう気を付ける程度で大丈夫です。




スキル編成:実装編

敵ごとのスキルの設計、そして具体的なスキル効果の実装です。

「平凡」なスキルの重要性

前節で説明したようなスキルは、その敵の特徴となるスキルです。
PLがエネミーデータを見たときにここに注目するだろうというスキル群になります。

ただ、このようなスキルだけを連発するのはあまり好ましくありません。
例えば貫通を連発するとPC側は対応が追い付かなくなるし、
状態異常を連発すると状態異常回復役が身動きが取れなくなります。

そのような状況を緩和するために、「平凡」なスキル、
つまり通常攻撃に毛の生えた程度のスキルを持つことはとても重要です。

確率を考えたスキル構成

ここでは行動パターンがランダムである敵に主眼を置きます。

例えば次のようなスキル構成の敵がいたとしましょう:
<元のスキル構成>
(メイン行動権1)
通常攻撃
貫通ダメージスキル
この場合、(行動が等確率で選ばれるとするならば)貫通が1/2の確率で飛んでくることになります。
これではPC側にとってはかなりの負荷になるため、もう少し確率を減らしたいところです。

<改善案1>
(メイン行動権1)
通常攻撃
平凡スキル1
平凡スキル2
貫通ダメージスキル
こうすれば、貫通は1/4の確率になります。

<改善案2>
(メイン行動権1)
通常攻撃:選択率3/4
貫通ダメージスキル:選択率1/4
もちろん確率自体を操作することもできます。
たとえばこの例なら、行動選択のchoiceを、choice[通常,貫通]ではなくchoice[通常,通常,通常,貫通]を振るようにすれば実現できます。
ただしこの方法で対策をするなら、その確率をPLから見えるように明示することが必要になります
(そうでないと改善前と同じにしか見えないので)。

ダメージ量を考える

スキルのダメージ量を設定するときに、最初にPCデータを見たときに前衛の【耐久】を見ておいたことが役立ちます。
以下の表に「【耐久】減算後」のダメージの影響をまとめますので、
この表から決めたダメージ量に【耐久】期待値を加算すれば威力が求まります。

【耐久】減算後ダメージ 影響
0~5 ほとんど影響がない むしろ[かばう]による[絆の盾]とHG稼ぎのプラスの影響が大きいかも
ただし[ペイン]がある場合は事情が違ってくる
5~10 このあたりが「普通」「平凡」という感じ よっぽどのことでない限りは対応は容易
10~20 やや強い攻撃 一人に集中すると辛くなるのでダメージ分散を考えるようになる
20~30 強い攻撃 このクラス以上を持っていると当然警戒対象になる
従って、この辺りからは敵に持たせすぎないようにすること
30~50 必殺級 さすがにこのダメージ量は連発されることがないように組むこと
50~ 初心者向けではないので割愛

貫通ダメージ攻撃の場合は、この数値をそのまま(【耐久】期待値を加算せずに)使います。
PC4名(前衛2名)で範囲攻撃の場合は、【耐久】は2名のうち低いほうを採用します。

また、状態異常などの付加効果がある場合は、ダメージはそのぶん多少低めに設定しましょう。
逆に、[吸収風船]などで障壁の量が多めになりそうな場合は、ダメージも高め(+5~+10くらい)に設定することになります
(敵の数が多い場合は高くしなくてもいいかも)。

あとの要素は適当に

こちらの「スキルの書き方」の項にある通り、スキルで設定すべき項目はまだあります。
ただ、これらの項目は、適当に設定してしまって構いません。

例えば範囲攻撃の場合、「範囲攻撃である」ことが重要であって、
その範囲が小なのか大なのか全体なのかではそこまで大きな変動は出ません。

あるいは、攻撃属性に至っては、PCが特定の属性軽減を持っていること自体が稀であるため、
設定しなくても乗り切れることすら珍しくありません。

なので適当に、イメージとフィーリングで設定しましょう。

名は体を表せ

最後に、スキル名の話題です。
スキル名はその行動を想起できるものにしましょう。

その行動が敵が具体的にどういう動きをするものなのかについては、ロールプレイを入れて説明することもできますが、
現実問題として毎回いちいちロールプレイを挟むのは手間がかかりますし、ロールプレイを好まないPLにとっては負担にもなります。
かといって、[攻撃1]のように何の情報もないと、今度はロールプレイをしたい側の人にとって障害になります。

中間くらいを狙うためには、スキル名を分かりやすいものにすることは必須です。
分かりやすければ特に何の追加説明もなくてもどのような攻撃なのか想像できますし、
最初の1回だけロールプレイを入れて説明して次回以降省略というパターンを採用するにしても
1回目の説明を思い出すための手掛かりがスキル名になりますので。




テストプレイで慣れておく

前項までで敵設計の手順は完了となりますが、それでも各種の心配は残っていると思います。
そもそも、GMに慣れていない人は、バランス以前に処理がうまくできるかどうかという不安もあるでしょう。
そこで、テストプレイを行います。

テストプレイの目的

ルールに慣れる
実際に動かしてみると、ルールを読むだけでは見過ごされていた不明点が次々に浮かび上がってきます。
そのような点を把握して、ルールを参照し、一つ一つ地道に潰していきます。

もちろん、ルールを隅々まで把握するような必要はありません。
実プレイで直面しそうな事項だけ前もって知っておこうという感覚で十分です。

スキルに慣れる
アルトネリコTRPGのスキルには様々なものがあり、その効果も千差万別です。
初級編ではバトル+のようなサプリメントは考えないことを前提としていますが、
それでもときどきややこしい効果のスキルは存在します。
もちろんPCがそのようなスキルを取得しているとは限りません。取得しているぶんだけ分かれば十分です。

また、忘れやすいバフや処理というものもあります。
どのようなものを忘れやすいか事前に確認しておけば本番でも役立つかもしれません。

バランス調整
動かしてみることで敵の設計の問題を洗い出し、調整します。
また、設計したスキルなどの不備やチャットパレットの抜けもこの過程で修正していきます。

テストプレイの方法

基本的には本番と同じ環境(画像などの素材はなくてもいい)で、GM1人で敵もPCも全て動かして行います。
机上や脳内でのテストもできなくはありませんが、本番環境を使う場合に比べると到底初心者に奨められるものではありません。

また、Tekeyを使う場合は、セーブデータを取ることで本番の準備にもなります。

回数

テストプレイを何回行うかについては特に決めごとはありません。
最初の1回でばっちり決まったとという感触があるならその1回で終わりでしょうし、
なかなかうまくいかず何度もやって試行錯誤することもあるでしょう。

また、1回のテストプレイを最後まで(=戦闘終了まで)通して行う必要もありません。
特に、データ面などで粗が目立つと思うなら、さっさと打ち切って再調整してしまいましょう。




良い戦闘を作るために:初級編

迷った時はPL有利に

これは敵設計に限った話ではありませんが、調整に迷ったなら、とりあえずPL側の有利になるようにしておきましょう。
慣れるまでは(あるいは、慣れていても)ギリギリを狙うことは難しいです。余裕を持って。

良い戦闘とは

TRPGはGMとPLの競争や騙し合いではありません。それは戦闘でも同じです。
良い戦闘は、それぞれのPCが持ち味を発揮できる戦闘です。
ギリギリで勝つとかというのは(勝てたという実感はあるかもしれませんが)直接は関係ありません。

テストをした時に、いま一度見直してみましょう。
そのキャラの持ち味を完全に封印されてしまった人は出ていないか? 全員がそれなりに活躍できているか?

もしこの辺りに不満がありそうなら、調整してみましょう。
調整した結果として敵が弱くなったとしてもそれは問題ありません。
活躍できたことによる満足度の上昇のほうがずっと大きいものなので。









記事メニュー
目安箱バナー