天夜奇想譚

幻惑影絵士 前編

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ryuuri

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作者:雨後

タイトル:幻惑影絵士 前編



買い物に出かけた三人は街のショッピングモールイデアに到着していた。1999年に作られたショッピングモールだが今でも来場者の数は多く店舗も充実している。

「さて、今晩は何にしましょう?」

光は買い物かごを持ちながら商品を物色している。

「やはり寒い日は温かいものに限ります」

嵐は鮮魚売り場で足を止める。

「そうだねぇスープとか汁物がいいねぇ」

命は嵐についていく。この場合光や命は献立を決めるのに時間がかかるため、嵐がそのときの旬や一週間前の献立から考察しメニューを導き出す。あーだこーだ相談しているうちに、かごは一杯になりレジを済ませていた。
早々と買い物を済ませた三人は、荷物を車に乗せると何故かまた店内に戻っていった。

「やっぱりイデアに来たからには、服も見ておかないとね」
「さすがお母さん、姉さんの服も見ておきたいしね」
「私も色々みてみたいよぉ」

イデアは多くの専門店が並び生活品からファンション、家具まで揃っている。一日遊べるところなのだ。
三人はまず、洋服店から入っていった。命のための洋服や、靴を見て回るといくつかを買い更に着物をみてまわっていった。光は着物店を見に行ったが、嵐と命は別の店にむかった。

「嵐はこんな服もいいよぅ」

と命が薦めたのは、世に言うゴスロリというやつだった。

「姉さん、私はこうゆうのはちょっと・・・」
「そうかなぁ かわいいよー」

命に無理やりであったが試着させられた。

「わーやっぱりかわいいよーお持ち帰り~ん」
「やっぱりだめです・・・私にはこういうかわいいのは似合いません」

嵐は基本母と同じで着物であったり、制服か私服でもあまり派手なものは好まない。ましてフリルがついた服など全く着ないのだ。

「嵐も女の子なんだから・・・武闘派なのは知ってるけど」
「フリフリのスカートじゃいざという時戦い難いです」
「でもお洒落も大事だよ・・・そうだ銀にも見てもらえばいいよ」
「なぜそこで銀さんなのですか、私はべつに・・・」

そこに一人紅い靴を持った店員がやってきた。

「その服に合わせるならこの靴がいいですよ」

店員は靴を床に置くと、嵐の靴と変え紅い靴を履かせた。

「いえ、私は買うつもりは」
「いいから履いてみなよ、綺麗な靴だねぇ」
「はい、私が薦める最高の一品でございます」

紅い靴は綺麗に磨かれ、少女の足元に映える。決して戦うためだけの存在ではない事を教えるようであった。

「うん、よく似合ってるよぉ」
「あ・・ありがとうございます・・・」

靴を履き終えたとき何故かそこに店員が居なかった。






反物を眺めていた光は僅かながらも眉を顰めた。

「んー異形だろけどなーんか弱々しいっていうか、よく分からないのが居るわね」

周囲を見渡すも特に変化も無く店主もほかの客に付いていた。

「んーこんな人が多くて真昼間に出てくるようなモノでもないし」

まして此処はショッピングモール異形の発生には余りに向いていないと考えられる。

「昔の人は言いました、備えあれば百戦危うからずと」

光は駐車場に向かった。車の中には嵐用の武器と回転弾倉式杖(ほぼ銃)がトランクの中に入っている。光は温厚そうに見えるが、武器が大好きなのである。








両足から体へそして頭に、魔力に近い何かが嵐の中に入り込む。その眼には黒い服に黒の帽子をかぶり、モノクルを付けた老人が立っていた。老人は手を差し伸べ嵐もその手をとり歩いていった。

「さぁ一緒においで」

嵐は店を出てゆっくりと歩いてしまった。

「嵐っ、まさか異形」

命の目にも嵐の前に黒い何者かが居るのは理解できる。しかし店員も近くで服を見ている客も誰もこの老人に気づいていない。嵐が服を着たまま出て行ったのに。

「催眠、幻惑に近い何か又は霊体の異形って事ですねぇ」

焦っても事態が変わらないことを理解した命は、異形を分析する。異形であるなら弱点が存在し又霊体であるなら物理的干渉は全く意味を成さない。

「ならば、人気の無い所まで付いていって戦いやすくする」

この事態を母光が感知しないはずが無い、何か武器を持って来てくれると信じ今は待つしかない。

「さぁぁ こっちへ 」

「・・・」

歩く速度は変わらず、駐車場に向かいそして。

「そんな・・・空が暗い」

イデアの屋上は既に夜となり、満車であった駐車場も今では空っぽになっていた。

「結界、自分の世界が作れる程の力」

さらに歩みを進める、一歩また一歩と屋上の端まで来てしまった。

「さぁ 異国へ、此処とは違う遠くへ行こう」
「・・・は・・・い」

黒い影から僅かに蒼い瞳が映ると、影は既に屋上の端から外れ宙に浮いている。

「まって嵐、行っては駄目ぇぇ!!」

刹那




「殻の内に響け   蒼雷」




青き閃光が影を打ち抜く。

「ハーッハハハハハ、惜しい実に惜しい」

そこに立っていたのは母光、右手には回転式銃を模した紅い杖。既に銃口から白煙が立ち込めている。

「おまたせ、って嵐がやられちゃったの?」
「お母さん!」

銃以外にもアタッシュケースが二つ

「はい、これ使ってね」

と渡されたケースの中には同じように銃型の杖が一丁、白銀の銃身に美しい翼の装飾が施されていた。

「使い方はさっきみたいに唱えてから使うのよ」
「あの~呪文が分かりません」
「そういうのは気分とノリでカバーしつつ考えなさい」
「わ~投げ槍ですねぇ」

銃を手に取り構えてみる、魔術なのだから射撃の腕は問われない。必要なのは魔力と戦術。

「でもやって見せます!」

命が銃口を向けた。








西園寺家の屋根の上で銀は天夜市を見ていた。

「この感覚は・・・命の身に何か」

言うが早いが既に屋根から消えていた。

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