天夜奇想譚

《天夜奇想譚 -狼-シリーズ》

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kohaku

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天夜奇想譚 -狼- Prologue

ネオンに彩られる遊楽街。
深夜を回る時間にあって、その人通りは途絶える事がない。
行き交う人間は愉のしみを求めて彷徨よい、誰もが街のあちこちに潜む危険に気づかない。
休憩や待ち合わせに使われる噴水の側。其処に一人の少年が立っていた。





天夜奇想譚 -狼- Chapter1

――3 days ago
私はよく、両親に連れられて道を行く、同じくらいの歳の子供を目で追っていた。両手を父親と母親に繋がれ、嬉しそうに道を行く相手を、私は羨ましいと思ったからだ。





天夜奇想譚 -狼- Chapter1-retake-

私はよく、両親に連れられて道を行く、同じくらいの歳の子供を目で追っていた。両手を父親と母親に繋がれ、嬉しそうに道を行く相手を、私は羨ましいと思ったからだ。
いつも私の手を引いてくれたのは、大好きなお父さんの大きな手だけだった。





天夜奇想譚 -狼- Chapter2

冷たい夜気の中、鋼の咆哮が木霊した。
「―――!」
木陰から飛び出した影が、無様な悲鳴を上げると無数の風穴を空けてアスファルトの上に崩れ落ちる。
その様子を見た銃器を担ぐ男が、苦しげに息を吐きながら一瞥をくれて次の獲物を狙う。





天夜奇想譚 -狼- Chapter3

抱えて最初に思った事は、軽い――だった。
突然叫びを上げて道路の中央へと飛び出した少女は、変わろうとしている信号を無視して、急に曲がってきたトラックに、まったく気づいていなかった。





天夜奇想譚 -狼- Chapter4

―――数時間前。
他の乗客と共に、出入り口に寄せられた移動式の階段に降り立つ。
耳を刺激するジェット音と、空高くに照りつける太陽の日差しを浴びて2日ぶりに地上に降りたことに、彼女はやっと到着した、という事実を実感する。





天夜奇想譚 -狼- Chapter5

遠く、低く鳴り響く汽笛の音が鳴っている。
薄暗い空間は、海の向こう側から聞こえる音に、小さく壁と屋根を揺らし、上から微かに埃を撒き散らしている。





天夜奇想譚 -狼- Chapter6

夜気が冷え込む中。
周囲を封鎖された公園から離れた場所に、一台の護送車が止まっている。
犯罪者を収容する車にしては、その形も強度も並大抵のものではない。
完全に周囲を鋼鉄で囲った後ろは、完全な棺桶と化しており、空気穴として空いている複数の穴からは、差し込む日差しがあれば、中にわずかばかりの光を灯していただろう。






天夜奇想譚 -狼- Chapter7

 いつもの場所に。 
 そう言われて、優希の頭はひとつの場所を思い浮かべていた。
 そうなれば、走り出した足は止まらない。
 まずは謝ろう、と優希は考えていた。
 当人には困惑する話だろうが、まずはそれからだ。
 そして、話をしよう。
 これまでの空いた時間を取り戻すために。
 何か大事があるのなら、一緒に考えよう。
 自分よりも彼女の方が頭が良いけれど、一緒に考えれば彼女だけでは思いつかなかった答えが見つけられるかもしれない。






天夜奇想譚 -狼- Chapter8





















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