kairakunoza @ ウィキ

ネコミミシンユウ

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
ぴんぽーん。
気の抜けたチャイム音が鳴る。なんだか、こちらまで脱力してしまいそうな間抜けな音だ。
もうちょっとこう、気が引き締まる音が鳴らないものか。気が引き締まるチャイムってのがどんなのかはともかくとして。
かがみは、チャイムが鳴るたびに思ういつもの感想を抱いて、面倒そうに椅子から立ち上がって
来客を迎えに行く。誰なのよこんな時間にまったく、と意味もなくぼやいてみるが、
当然誰からも返事は無い。お風呂からあがった後なのでパジャマだが、その辺は仕方がないだろう。渋々ドアを開ける。

「はい、どちらさ……ま?」

……そして、かがみの時は凍りつく。

「にゃ~。にゃ~。いや、ちょっと違うかな?もうちょっとこう、可愛く……。みゃ~。みゃ~♪」


……猫?


いや猫ではない。猫にアホ毛はない。泣きぼくろもない。
そして、猫は「私を拾ってください!Pick Up Me!」と書いたダンボールを首から下げて
たりもしない。Pick Up Meが英語として正しいのかはこの際置いておく。
しかし、ネコミミはある。きちんと、可愛らしく頭頂部を二つの三角形が彩っている。
そして、口元は猫そっくりにニヨニヨしている。
全体的に、猫的な雰囲気は確かにある。雰囲気だけだが。
つまり、そこには。
捨て猫になりきったかがみの親友――こなたの姿があったワケで。


「ちょっ……こなたあぁあ!?あ、アンタ何してんのよそんなカッコでそんなトコロで!!」
「にゃ~。みゃ~。そこの可愛いお嬢さん、可哀想な私を拾ってだにゃ♪」

……やばい、可愛い。
って、今はそんな場合じゃなくっ!!

「だから何してんだっつーの!いいから入りなさい!」
「それは拾って貰えるという事かにゃ?」
「さっさと入れえぇぇぇぇぇっ!!!」
「ふみゃ~~~!?」


――そうして、私の部屋には現在。
捨て猫な親友が幸せそうな顔でチョココロネをはむはむしている訳です。

「……で、そろそろ説明しなさいよね。」
「……ふにゃ?」
「あんたがそんなモン(注:ネコミミ。着脱可能なものだけを指す)着けてウチに来た理由。」
「ふみゃ~。」
「返答次第では、ただじゃおかな……」
「いや~、しかしこのチョココロネは美味しいにゃあ。これはいつか私が家に遊びに来る
ときの為に買っておいてくれたのかにゃあ?普段はツンツンしておきながらもこういう所
でさりげない優しさを見せるかがみん萌え♪」
「は、話を逸らすんじゃないわよっ!!」

そしてその通りだなんて言えない!
賞味期限が切れるたびに買いなおしてたなんて口が裂けても言えない!!
かがみ、心の叫びである。

「そ、それに何で捨て猫設定なのよ。普通に来なさいっつーの。」
「ふみゅ~……。結構気に入ってたんだけどなコレ。似合ってないかな?」
そう言って、少し残念そうに首をかしげるこなた。

似合うも似合わないも、似合いすぎてるから問題なんでしょうがぁ!!
あんた、自分の異常なまでの可愛さ自覚してんのっ!!?
あぁもう可愛すぎんのよネコミミこなたあぁぁっ!!
かがみ、心の叫びリターンズである。
こなたはチョココロネを食べ終わったようで、満足気な顔で幸せそうにふぅ、と溜め息を
ついた。そんな小さな仕草一つでも、ネコミミパワーで破壊力は通常の五倍である。

「い、いや似合ってるけどさ……。むしろ似合いすぎなくらいに。」
「そう?なら良かったにゃ!」
今度は、嬉しそうに大輪の花がぱぁっと咲いたような笑顔を見せる。
くそ、可愛い。可愛すぎる。

「いやね?ちょっとおとーさんと喧嘩しちゃってさ。そんで居場所が無くなっちゃって……。」
「で、ウチに転がり込んで来たって訳?」
「そーゆーコト。今流行りのプチ家出ってやつ?」
……そうじろうおじさん、今頃本気でヘコんでるだろうなぁ。可哀想に。
「なるほどね。喧嘩は良くないけど、まぁそういう事なら放り出す訳にも行かないわね。」
「ありがとかがみ~!恩に着るよ~!」
「まぁそれは良いとして。で、そのネコミミとダンボールは何なのよ?」
「捨て猫セット!」

……それが何かを聞いているのですが。

「いや~、急いでたから尻尾までは調達出来なくて。不覚だヨ!」
「問題は間違いなくそこじゃない。」
もっとも、尻尾まで完全装備していたら私は完全KOだろうけど。心中でつぶやく。
家出するならコレっきゃないでしょ!などと言いながらネコミミの着いた頭を可愛らしく
ふりふりしているこなたの心理はイマイチ理解出来ないが、とりあえずかがみとしても
イイモノが見られたので文句はない。
それにしてもこのこなた、ノリノリである。親と喧嘩して飛び出してきた小娘とはとても思えない。
……というか、その捨て猫セットは喧嘩してから調達したのか……?


「ていうかアンタ、そのカッコでウチまで……?」
「ん?そだけど?」
私の親友はここまで常識のない奴だったか……?唖然とするかがみ。
ていうかよくそのカッコで襲われなかったな。最近の変質者は良心的なのかもしれない。
私の家に着いてからも、最初に出るのは私とは限らないのに。お父さんが出なくて本当に
良かったと天に感謝するしかない。

「それより良かったよ~。もしかしたら追い返されるかも、とかも思ってたからさ。」
「私が?あんたを?……何でよ。」
「だってさ、かがみってそういうトコ厳しいじゃん?だから、『甘えた事言ってないで
さっさとおじさんと仲直りして来なさい!!』とか言われるかと……。」



……確かに、普段通りのかがみならそうしたかもしれない。
しかし、ネコミミコナタの登場により混乱したかがみにそんな冷静な判断が出来るハズも
無い。よって、ある意味これはこなたの作戦勝ちと言えるかもしれない。
……なんか悔しい。しかしそのお陰でネコミミこなたがここにいてくれている訳で。
微妙に複雑な気分になるかがみである。

「……ま、誰だって喧嘩くらいするしね。それで家を飛び出すのはどうかと思うけど。」
「いや~、ホント助かるよ。ありがとにゃん♪いやぁ、宿を確保出来たから安心したよー!」
「……え?宿?」
「うん、当然じゃん!私はかがみに拾われたんだよ?だから、私はしばらくここにお世話
になるからヨロシク!」
「はぁ!?お世話になるって……え?つまり、私の部屋に泊まるの!?」
「もちだよかがみ。他に何処で泊まれと?まさか、こんなか弱い乙女を夜の街に放り出すの……?」
「いや、んな事しないけど……私の部屋狭いし、二人も寝るスペースは」
「あぁ、それは大丈夫だよ!私ちっちゃいから一緒のベッドで寝れるって!」
「…………あの、えっと」
「私結構寝相は良いし、かがみのベッドってそれなりの広さあるから楽勝だよ、うん。
いや、もちろん拾われた身だし床で寝ろって言われりゃ従うけど、猫は勝手にベッドに
潜り込んで来たりするから要注意だよかがみ♪」

……えっと、つまり。
私は、このまま行くと。


こ な た と 同 じ ベ ッ ド で 寝 ら れ る と 言 う 事 で し ょ う か ?


あぁ……神様。あなたは何てグッジョブなのでしょう。明日から一日三回神棚にお礼の祈りを捧げよう。
一緒のベッドに居るわけだから当然狭くて密着状態だし、抱きついたりしても不可抗力だ
よね。こなたが悪いんだもんね。あぁ、こなた柔らかいんだろうなぁ……。ほっぺとかふ
にふにしてるんだろうなぁ……。こなた抱き枕。なんて素晴らしいんだろう。
あぁでも自分を抑えられるか心配だなぁいや抑えなくてもいいのかだってこなたは私の飼
い猫だもんね私が拾ってあげたんだもんね大体こなたと二人きりで一つのベッドってそれ
抑えろってほうが無理なわけでああこなたの唇柔らかそう奪っちゃおうかなそうしようか
な別にいいよねうんいやいや唇だけで満足してちゃ駄目よねせっかくの機会なんだから舌
とかも入れてみたりとかいやもっと行く?行っちゃう?だったら最後までいただいちゃっ
て全然OKかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかなかな


「か、かがみ?どうしたのかがみーーー!!?」


そうして、柊かがみは意識を失いましたとさ。めでたしめでたし。


「……あれ?私、いつの間に寝たっけ?」
かがみは、自室のベッドで目を覚ました。感覚としては、結構時間が経っている気がする。
が、寝起きの感覚は当てにならないので実際は五分程度しか寝ていないのかもしれない。
「しっかし、うん、色々とアレな夢だったなぁ。こなたが私の飼い猫だなんて」
「お、かがみやっと起きた?急に倒れちゃうからビックリしたよ、もー。」
「ふぉおおああああぁああっ!!?」
面白いように飛び上がり、壁に張り付くかがみ。こなたでなくとも「そこまで驚かなくても」と
思うほどの驚きようだったが、寝起きに不意打ちをかけられては無理も無いだろう。
もちろん、こなたに不意打ちをかけたつもりなどないのだが。
「……こ、こなた……?」
「そだよ。目ぇ覚めた?」

大きく深呼吸。すぅ。はぁ。
一呼吸置いて少しは落ち着きを取り戻したかがみは、改めてこなたの姿を見直した。
さっきまでこなたが着ていた私服はいつの間にか妹のつかさのパジャマになっており、体中から
まだ少し湯気が立ち上っている。気付けば、部屋の中はお風呂上りの良い匂いで
いっぱいになっていた。髪はまだ完全には乾いていないようで、しっとりと水分を含んでいる。
そしてその頭は、意識を失う前にも着けていたネコミミが燦然と輝いていた。

「……あれ?お風呂入ったの?」
「うん。かがみが気を失ってる間にちょっとご家族のみなさんに挨拶してきてね。そした
ら何かえらく歓迎されてお湯を頂く事になったんだよ。つかさからはパジャマまで借りち
ゃった。う~ん、人情だねぇ。」

ウチの家族はちょっと寛容すぎじゃないだろうか……。いろいろ。うわ、パジャマぶかぶ
かじゃない。つかさのなのに。こなたの小ささを再確認し、同時に家族に何となく腑に
落ちないものを感じるかがみだった。

「てかあんた、ネコミミ着けっぱなしなの?お風呂入ったのに。」
「うん。流石に着けたままお風呂は入れなかったけど、基本的にお世話になってる間は
外さないよ?だって、これは私がかがみの飼い猫っていう証だからね!にゃん♪」



ぐふぅ!
かがみ の 精神 に 9999 の ダメージ!
こ、こいつは……狙ってるのか……?私を悶え殺そうという策略なのか……?
可愛い、可愛すぎる……。

悶えるかがみ。だがそれに気付いていないこなたは、ふぁ、と小さなあくびを漏らす。
ちなみに、今のかがみにはそんな小さな仕草でさえとんでもない萌えとなっている事は言うまでもない。
「うぅ~、いい加減眠くなってきたかも。最近はネトゲ自重して生活習慣改善してたからなぁ。
前はこんな時間でも楽勝だったんだけど……」
その言葉を聞いて、ようやくかがみは時計をチェックする。とっくに日付は変わった後だった。
――わりと長い間気絶していたらしい。寝起きの感覚は、今回は正常に働いていたようだ。


「そろそろ寝ない?あんまし夜更かしするとお肌に良くないよ~?」


お前が言うな。いつものかがみなら、こうツッコむ所だろう。
だが、今のこなたのセリフは、普段とは全く違う意味を持つ。
即ち、「一緒に寝よう、かぁがみん(はぁと」と言う夜の誘いの台詞となるのだ!
……かがみにとっては、だが。

「いいいいいわよ?じゃじゃじゃあ寝ようか。」
「かがみ、なんかエラくどもってるよ?……まぁいいか。じゃ、早く寝て?」
「……へ?」
「いやいや、かがみが先に布団に入らないと私入れないじゃん。猫は、飼い主の布団に
潜り込むんだよ?猫が先に布団で寝てちゃ駄目でしょ~。」

妙な所にこだわるなぁ、とかがみは思った。
しかしそれ以上に。
「何ソレ!私が寝てるところにこなたがもそもそと潜り込んでくるの!?それ良すぎ!最高!
あぁ私は今こそ理解した、これこそ『萌え』かっ!!」と、激しく思った。

もう何も言わない。かがみは頬を赤く染めて、布団に潜り込む。
やがて、少しの間をおいて柔らかい体がするりと布団に入ってきた。
凄く、いいにおいがする。
思わず、抱き締めた。

「ちょっ……かがみ?」
「……駄目?こなたは私の飼い猫なんでしょ?」
「……いや、駄目じゃ、ないよ。……気持ちいい。」
「そっか。嬉しい。……ネコミミ、外さないの?」
「ん、外した方がいいかな?」
「そうね。寝る時には、外そうか。」
「うん……。寝る時には、ね。」

「あの……さ。」
「ん?どうしたの、かがみ?」
「キス……しても、いいかな?」
「好きにしていいよ。――ご主人様。」


電気が、消えた。
そしてこれから、夜が始まる。



これは後日知った事だが、こなたは、おじさんと喧嘩なんてしてなかったらしい。
私の所に転がり込む口実が欲しかったから、一芝居打ったんだとか。道理で喧嘩したはずなのに
怒ったり落ち込んだりしてなかった訳だ。そんな事しなくたって、普通に泊まりにくれば良かったのに。
普通なら怒っていい所なんだろうけど、そこまでして私の所で泊まりたかったんだと考えると、
腹は全く立たなかった。そりゃ、少しは呆れたけどね。

あの日、朝になってこなたはすぐに帰って行った。
「やっぱ喧嘩したままじゃ寝覚め悪いし、仲直りしてくるヨ」とか適当な事を言って。
だけど、夜になるとまた帰ってきた。「だって、こっちの方が寝心地いいし」との事。
だから私は、親切にベッドを半分提供してあげた。可愛い飼い猫に。

猫は自由気ままだから、ある日突然ふらりと泊まりにやって来る。
私は、その時に備えてチョココロネをいつも常備しておかないといけない。
それと、あの時のネコミミは私の部屋に置いてある。そして、泊まりに来たこなたはまず、
それを頭に着けてこちらを向いて、照れながらこう言うのだ。
「ただいま、ご主人様」と。

ああ、お帰り。私の可愛い飼い猫。
ネコミミの、親友。

















コメントフォーム

名前:
コメント:
  • (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-11-13 02:22:48)
  • ↓一芝居打ったと文中にあるよ -- 名無しさん (2009-02-06 22:54:19)
  • うわなにこれすっげ。
    ・・・ところで喧嘩の原因はわからないのか? -- 名無しさん (2009-02-06 22:30:06)
  • もはや、親友じゃなくて、恋人だろこれはwwwひたすら甘くて楽しいSSを書いた作者様に盛大にグッジョブw -- 名無しさん (2008-08-22 15:15:16)
  • 萌えた。かがみんが暴走してる話好きだー -- 名無しさん (2008-01-14 03:55:26)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー