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ヤンデレナワタシ

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――大丈夫?
彼女はそうやって、私に優しく声を掛けてくれた。
彼女はポケットからハンカチを出し、ケガしたところをそっと抑えてくれた。
暖かいな。とっても安心できるな。
私はずっとそうやっていたかった。
――うん。もう大丈夫だね。
そして彼女は、ニッコリと笑った。
彼女のこの笑顔は、私にしか見せない、私だけのもの――

  ヤンデレナワタシ

私はあの一件以来、仲良しになった。
最初は怖い人かな、大丈夫かな。
そんな不安で、一杯だった。
でも、彼女と接してみて、分かった。
彼女はただ、感情表現が苦手なだけで、他人から見ると冷たい女の子のように見られるのだ。
でも、本当はすっごく優しい人。これは私だけが知っている秘密。
思えば、彼女と出合い、毎日が楽しくなった。
私の無茶にも付き合ってくれるし、私だけの曲をピアノで弾いてくれる
――岩崎みなみちゃん。
私の頭の中は、彼女で一杯になった。
ずっと彼女のことを見ていきたい。
彼女もきっとおんなじことを考えていると思う。
私はずっとあなたを見ている。
だから、あなたもずっと私のことを見つめていて。


……でも、そんな日々も長くは続かなかった。


それは私とみなみちゃんと歩いている時だった。
「きゃっ……!」
「うわぁ!」
突然、黒い髪の女の子が走ってきて、みなみちゃんにぶつかった。
「あわわわ~、メガネ、メガネはどこっすか~」
黒い髪の女の子は、あたふたしながら床に転がったメガネを探している。
みなみちゃん、もういいから行こ。
私がみなみちゃんを引っ張ろうとしたら
「あの、ちょっと待ってください……。むやみに動いたら、メガネを誤って踏んでしまうかも
 しれません。探してあげますから、そこを動かないでください」
みなみちゃんは、黒い髪の女の子のメガネを探し出し、見つけたメガネを女の子に手渡した。
「はい」
「あ、どうもありがとうございます」
黒い髪の女の子は、手を振りながら、去っていった。
「さ、行こう」
……なんなんだろう。この胸のモヤモヤは。
別にみなみちゃんがいなくなるわけじゃない。けど、胸のドキドキが抑えられなかった。
思えばこの時が、私が変になった瞬間かもしれない。

それから数日がたった。
私はいつものように、みなみちゃんと遊んでいた。
その時、玄関のチャイムが鳴り、みなみちゃんが返事をしながら玄関に向かった。
誰かお客さんが来たのかな?

私はソファーに座ると、みなみちゃんはお客さんを連れてきた。
「おじゃましまーっす」
「Oh!これは立派ナ家デスネ!」
――ドクン
私の心臓が大きくなった。
金髪に青い瞳の少女は知らないけど、黒い髪の少女は知っている。
あの時、みなみちゃんがメガネを拾ってあげた人だ。
どうしてそんな人をこの家に入れてるの?
「ほら、田村さんにパトリシアさんだよ」
みなみちゃんが私にそう紹介した。
だけど、私は気に入らなかったから、二人のことは無視して、部屋を抜け出した。
「……あれ?」
「どうしたんすか?……あぁ、やっぱり嫌われちゃったっすねぇ」
「ぬぅ……これはクーデレとイウモノですカネ……」

それから私は、しばらく一人でのんびりした。
でも、一人じゃつまらない。そこで、みなみちゃんを誘って一緒に歩こう。
もうこの時間帯だったら、二人も帰っているだろう。
そう思いながら、三人のいるところに行くと、
みなみちゃんが。
二人と。
私だけにしか見せない笑顔を。
見せていた。
――その時、私の中で何かが壊れた。
まるで小さな水晶玉が割れたように。

――許せない

私はそっぽむいて、お向かいの高良さんのところに向かった。
高良さんはシャワーを浴びていた最中らしく、私が来ると全裸の状態で私と遊んだ。



それからまた数日が経った。
またいつものようにみなみちゃんと遊んでいると、またあの二人が遊びにきた。
「こんにちはっス」
「今日ハ良イ天気デスネ!」
また……
私はこの二人が凄い邪魔のように思えた。
早く帰れ。早く帰れ。早く帰れ。早く帰れ。
心の中で何度も唱えた。
二人は少し大きなバッグを持っている。一体なにをやろうとしているんだろう?
「今日はお世話になります」
「イヤ~こんな広イお家でお泊り会トハイイモノデスネ!」
――ドクン
お泊り会?
なに?どういうこと?
私はそんな話聞いてないよ?
なに?なんなの?みなみちゃん。
みなみちゃんは、二人を家に上がらせた。
――ねぇ、みなみちゃん?どうしてそんな二人なんかと?
――あぁ、そっか。
――操られてるんだ。
――あいつらに。

――私しか助けられない。助ける。絶対に。だってみなみちゃんは私だけのものダカラ……

リビングで三人は楽しそうに話をしていた。
パトリシアさんがピアノを聴きたいと言い出し、みなみちゃんがピアノが置いてある部屋に招いて、
ピアノを弾いた。
……あれ?この曲は?
何度もこの曲を聴いているから分かる。
これは私に何度も聴かせてあげたあの曲。
「すごいうまいっス!」
「Very Good!最高です!」
「……いえ、それほどでも」
「これって、曲名なんなんすか?」
「これは、ビル・エヴァンスのアルバム『Alone』に収録してる『Here's That Rainy Day』という曲名」
「これって、クラシックっすか?」
「ううん。ウエストコーストジャズ」
「JAZZトハ、渋イですね」
なんであなたたちが聴いてるの?
これは私専用の曲なんだから……
………
……

――許せない。
許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない
みなみちゃんは、私だけの、もの。
――殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
――コロス

リビングで、みなみちゃんは、紅茶を用意して、ビル・エヴァンスのソノシートを用意して、再生した。
「ソノシートとハ、今の若イ人ニハ分カリマせーん……」
「っていうか、今時レコードで音楽を聴く女子高生もそうそういないと思うっすけど……」
みなみちゃんが、クスっと笑う。
みなみちゃん。あんまりニヤニヤしないで
アナタハワタシダケノモノダカラ
「あ、そうだ」
みなみちゃんが、何かを思い出したように、席を立った。
「なんすか?」
「ちょっと用事が……」
「用事デスカ、行ってラッシャイませ、ご主人サマ~♪」
みなみちゃんはリビングの扉を開き、リビングを後にした。
サテミナミチャンモイナクナッタコトダシ
ソロソロヤルトスルカ
私は、二人にゆっくり近づいた。
「ん?どうしたんすか?」
私は、一気に田村さんに体当たりをする。
「ぐふぉ!」
「ヒヨリン!」
あはは、痛がってるよ。でもまだ、これからだよ。
「ナ、なにヲするんですカ!?」
パトリシアさんが怯えきっている。
まだ終わらないよ。私は、パトリシアさんにジリジリよって、一気に飛びついた。

「ウヒャァ!?」
パトリシアさんが急に立ち、テーブルにあった紅茶のカップは、落下して音と共に割れた。
でも私はそんなことは気にしない。
問題はこいつだ。
田村ひより。
こいつが全ての元凶だ。
わたしのみなみちゃんを奪ったやつ。
「……ひぃっ!」
あはは、怯えてる怯えてる。
さて、ここからが本番だよ。
私は、一気に田村さんを叩く。
「うわっ!痛い、痛いッスよぉ!」
ドカッ!ドカッ!ドカッ!
まだ、まだだよ!
ドカッ!ドカッ!ドカッ!
「グホッ!グホッ!グホッ!」
この、この、この、この、この、この、……この、このこのこのこのぉぉぉぉぉ!!
私は、田村さんをボコボコに叩く。
田村さんは「ギブ、ギブ!」と言っているが、私は攻撃をやめない。
まだだよ、田村さん。あともうちょっとで、私の苦しみが――
「なにやってるの、チェリー!!」
「どうしたの、みなみちゃん?」
隣にいるあの小さいのは、
あぁ、たしか小早川さん。
もしかして小早川さんも、お泊り?
「……チェリー」
あの声は、みなみちゃんが怒る時の声。
こっちきなさいと言われたが、行きたくない。
しばらくそこに佇んでいると、みなみちゃんが自分から近づいていった。
ち、違うんだよみなみちゃん、これは……あのう、二人を……その……
怖くなった私は、みなみちゃんにお腹を見せた。
しかし、
「こんなことしちゃダメじゃない!なにやってるの!」
パシッと叩かれる。……痛い。
「み、みなみちゃん、もういいんじゃない?」
「……田村さん、大丈夫?」
「ヒヨリン、大丈夫デスカ?」
「あ、あはは、なんとか……」
田村さんがメガネを直しながら、立ち上がる。
「やっぱり私、嫌われてるっすねぇ~」
「……ごめんなさい」
「いいよ、岩崎さん。気にしてないから」
私は、その光景をただしょぼんとしながら眺めていた。
「Oh……紅茶が……」
「うわぁ、大変なことになってる。早く拭かなきゃ」
小早川さんが、台所からふきんを持ってきて、紅茶を拭いた。
「……チェリー、お前は少し、廊下にいなさい」
みなみちゃんがそういうと、私の首輪を持ち、廊下に放り出された。
それから程なくして、リビングから四人の楽しそうな会話が聞こえてきた。
あーあ、もしかしてこれって失恋っていうのかなぁ。
ふんだ。みなみちゃんなんか嫌いだもんね!
もう今夜は廊下で寝てやるもん。
フン。


















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  • その後、どうなったの? -- チェリー×岩崎みなみ (2012-06-21 19:48:41)
  • ハッハッハ・・・騙された!しっかしうめぇな作者・・・楽しませてもらったよ・・・ -- AH-56 (2011-01-10 00:35:40)
  • なんだ、ただの神か…
    -- 名無しさん (2010-12-04 10:56:32)
  • ほほぅ、作者様の作戦にまんまとハマっちまいました~。GJ!!
    -- kk (2010-12-01 23:37:06)
  • ゆーちゃんかと思っていたのに!www


    すごいです! -- 名無し (2010-11-28 11:09:54)
  • あれ?チェリーだった -- 名無しさん (2010-11-27 18:12:23)
  • これは一本取られた!GJ! -- 名無しさん (2009-10-12 23:03:15)
  • 上手ッ!GJ!
    騙されたなぁw -- 鏡ちゃん (2009-10-11 17:55:10)
  • あまりの上手さに最初読んだとき意味が分からなかった……
    って、チェリーやないかーい -- 名無しさん (2009-08-19 22:55:53)
  • 犬だったあああああああ!!!!!!! -- 名無しさん (2009-08-19 16:15:01)
  • 半年ぶりに心の底から騙されたwww -- 名無しさん (2009-08-18 23:27:40)
  • 思いっきりだまされたーー! -- 名無しさん (2009-06-09 22:19:03)
  • みゆきさんのとこで少し違和感があったと思っていたら・・・ なるほど これはいいSSだ ひよりんと会った時は散歩だったのかwww -- オビ下チェックは基本 (2009-06-09 21:26:06)
  • 騙しの巧さに脱帽ですwww -- 名無しさん (2008-11-27 00:57:27)
  • なんだそりゃああああああああああああ!!!!! -- 名無しさん (2008-11-24 21:05:47)
  • これはうめえええ -- クドリャフカ07th (2008-11-19 21:28:52)
  • やらwwwれwたwwww -- 名無しさん (2008-11-17 00:01:58)
  • GJ!
    うまいっすね! -- 名無しさん (2008-11-15 12:36:58)
  • ちょっ…… ゆたかじゃなかったんかい……www -- 名無しさん (2008-11-15 08:57:31)
  • ふざけんなwww -- 名無しさん (2008-11-14 23:06:56)
  • これはほんわかして癒される -- 名無しさん (2008-11-14 07:43:52)
  • ゆたかかと思ったwwいやマジで くっ、だまされたww -- 名無しさん (2008-11-13 13:14:50)
  • GJ
    てっきりゆたかかと… -- 名無しさん (2008-11-13 01:36:30)

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