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Imitation-Love 第四話

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――かがみ……ごめん……ね――
「―――っ!!」
がばっ!!
思わず私はベッドから飛び起きた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
荒い息、べっとりとした嫌な汗、額に貼りつく前髪……
たまらなく不快だが、その感覚こそが今いる世界が夢ではなく現実である事を伝えていた。
「はぁ……はぁ………はぁ~」
ようやく息が整ってきたところで私は、私が今までいた世界が夢であったことを悟り、強烈な安堵感におそわれた。
夢で良かった……
現実でなくて良かった……
そんなホッとしたような、不思議な安堵感……
本当に酷い夢だった。
「……こなた」
夢にまで出てきた愛しき人の名前を思わず呟いた。
夢の中で、私とこなたは手をつないで、どことも言えない不思議な場所にいた。
一言も言葉を交わさなかったけど、私達は想いが通じ合った恋人同士のような雰囲気だった。
ところが、どこからともなく突然真っ黒な“ナニカ”が湧き出てきて私からこなたを奪ってしまうのだ。
私はこなたを助けようと必死で追いすがるが、どうやっても追いつく事はできなかった。
やがて私は疲れ果てて倒れてしまい、身動きすらできなくなり……
そんな私の目の前で、その真っ黒な“ナニカ”は触手のような不気味な物体に変わり、こなたを強姦してしまった。
『いや!やめて!助けて!』
『こなた……こなた……』
助けを求めて泣き叫ぶこなたを目の前にして、私はなにもできなかった……
やがてこなたは強制的に絶頂へと昇らされてしまい、最後に残った理性を振り絞って私にこう言うのだ。
『かがみ……ごめん……ね』
そしてこなたは、まるでガラスの彫像を床に叩きつけたように粉々になって……
「っ!!」
私は思いっきり首を振って悪夢の陰を振り払った。
あれはただの夢!現実になんて起こりえない!
私は自分に必死にそう言い聞かせたが再び眠りに身を任せる事はどうしてもできず、まだ外は真っ暗で、人によっては早朝ではなく深夜と言っても差し支えないような時間に起き出す羽目になってしまった。



ジリリリリリリリン

朝食の最中、我が家の名物となった黒電話が鳴り響いた。
「はい、柊です。あっ、ゆたかちゃん?おはよう。どうしたの?」
『かがみ先輩?おはようございます。こなたお姉ちゃんなんですけど、昨日の夜、急に体調を崩してしまって……』
「えっ……そうなの……風邪?」
『ええ、そうです。今日は学校をお休みしますので……』
「そっか……わかった。つかさとみゆきにも言っとくね。
ゲームとかしないでちゃんと養生しなさいよ。って、言っといてくれる?」
『はい、お姉ちゃんに伝えます』
「よろしくね」
『はい。失礼します』
朝早くにかかってきた電話はゆたかちゃんからのものだった。
こなたは昨夜急に体調を崩してしまい、学校を休むとのことだった。
「お姉ちゃん、電話…誰からだった?」
つかさが眠そうな顔で食パンを頬張りながら訊いてきた。
「食べるかしゃべるかどっちかにしなさいよ……ゆたかちゃんからよ。こなた、体調不良で今日学校休むって」
「え?そうなんだ。風邪でもひいたのかな」
「どうだかね~案外徹夜でゲームして起きられないとかだったりして」
無邪気にこなたを心配するつかさをみて冗談を言ってみるが、なんとなく私の心はモヤモヤしたままだった。

二日ほど前……お母さんがこなたの家に泊まるようになってから、私はこなたに会っていない。
あのとき、ちょっとこなたと気まずい雰囲気になってしまい、なんとなく休みの間は顔をあわせなかった。
どうせ学校に行けば嫌でも顔を見ることになるんだし、時間をおいたほうが変に意識しなくて済むかもしれないと思い、メールも電話もしなかったのだが、今朝の夢のこともあり私は少しでも早くこなたの笑顔を見て安心したかった。
(学校が終わったら、つかさやみゆきと一緒にお見舞いに行こうかしら……でも、なんとなく気まずいし、症状が重かったら治ってからのほうが……)
そんなことを考えながら、なんとなく落ち着かない気分で朝の時間は過ぎていった。

こなたのいない学校はとても味気なかった。
いつもはつかさとみゆきを交えた四人で他愛もない会話に花を咲かせるのに、こなた一人いないだけでどんな会話も酷く空虚なものになってしまった。
つかさもみゆきもなんとなく物足りなさを感じているようではあったが、私の感じているそれは辛さをはらむほどで、結局この日つかさのクラスには朝一度行っただけで、あとは自分のクラスで過ごしてしまった。
「柊~ちびっこ休みなんだってな」
「……そうね」
日下部や峰岸とのやり取りも煩わしく、放課後と同時に私は教室を出た。

「はぁ……」
何をやっているのだろう。私は……
私のくだらない意地でこなたとの関係をギクシャクさせて、気になるのならお見舞いに行けばいいのにそれすらやろうとしない。
わかっている。
こうして意地を張り続けてもいいことは何もないのに。
少し前に読んだ本にこんな事が書いてあった。

『大切だと思っている人に甘えていませんか?
自分の気持ちに素直にならずに、不満ばかりぶつけてはいませんか?
そばにいてくれることが当たり前だと思ってはいませんか?
その人が突然いなくなったとき、あなたは何倍も辛い思いをするのですよ。
あのとき素直になっておけばよかったと後悔しても遅いのです』

こなたは私のことを事あるごとにツンデレって言うけど、素直になれない部分に関しては当たっていると思う。
私だって、素直になりたい。
こなたにストレートに想いを伝いたいって、思ってるよ。
でもそれができない。
いつもちっぽけなプライドが邪魔をする。
たった一言、『大好き』と言ってしまえば、結果の良し悪しに関わらず楽になれるのに……
勇気が欲しい。
好きな人に好きだと言える、その程度の勇気が欲しい。
このまま大学に行って、こなたと離れ離れになってしまえば、本の言葉通り、私は寂しい思いをするだろうし後悔もするだろう。
なのに、たった一言を言う勇気がどうしても持てない。
「かがみ先輩」
「え……?ゆたかちゃん?」
そんな考え事をしながら歩いている私に声をかけたのは私服姿のゆたかちゃんだった。



「うそ…………」
「本当の話です」
「エイプリルフールは…まだ先よ」
「私が嘘を言ってるように見えますか?」
ゆたかちゃんの表情は真剣そのもので、嘘や冗談を言ってるようには見えない。
「そんな……お母さんが、こなたを……」
“お話したい事があります”
そう言って、私を体育館裏へ誘ったゆたかちゃんからもたらされた事実は、私を驚愕させた。

“お母さんがこなたを強姦した”

そのせいでこなたは自我を失い、廃人同然になって寝込んでいるというのだ。
「……ゆたかちゃん、もう一度だけ訊いておくわね」
「どうぞ」
「これは、冗談かなにかなんでしょう?」
「残念ですが、真実です」
「……………」
(あの夢が、正夢だったなんて……)
今朝みた夢を思い出し、私は絶望に身体を震わせた。
「かがみ先輩、こなたお姉ちゃんを助けてください!」
「ゆたかちゃん?」
「私達がいくら話しかけても、こなたお姉ちゃんは反応すらしてくれません。ご飯も食べてくれません。
このままだとこなたお姉ちゃん……本当に死んでしまいます!」
ゆたかちゃんは何を言っているのだろう……
他にも頼める人間は大勢いるのに、どうして私にだけわざわざこんなふうに話すのだろう……
「……私に、何ができるの?」
「先輩?」
「つかさやみゆきには話したの?」
「い、いえ……」
「だったら!どうして私だけに話すの?!私になにを期待してるの!」
「こなたお姉ちゃんが、かがみ先輩のことを好きだからです!」
「え?」
「私は、一番こなたお姉ちゃんのそばにいたからよく知っています。
かがみ先輩とお話するときのこなたお姉ちゃんは、他の誰といるときより優しい目をしています。
私と学校の事を話すときも、お姉ちゃんはかがみ先輩の事を一番嬉しそうに話しています」
一気にまくし立てるゆたかちゃんの言葉に、私は戸惑いながらも嬉しさを感じていた。
「こなたが……私を……?」
「そうです!こなたお姉ちゃんはかがみ先輩のことが好きなんです!
先輩はどうですか?先輩にとって、こなたお姉ちゃんはただの友達ですか?!
それとも、大切な人ですか?!」
「こなた……私は……」
“好き”
その一言が出てこない……
こなた本人が聴いてるわけじゃないのに、この期に及んで私はまだ素直になれないでいた。
「先輩!!」
「っ!」
「先輩がツンデレって言われるくらい、心をさらけ出すのが苦手な人だってことはよく知っています。
でも、先輩が素直になってくれないから……こなたお姉ちゃんは…………
みきさんは、かがみ先輩のふりをしてこなたお姉ちゃんの心を篭絡したんです!」
「な……」
「先輩……お願いですから素直になってください……
こなたお姉ちゃんはずっと、先輩だけを見ていました。
先輩の気持ちが知りたいって、ずっと悩んでいました!
そんなこなたお姉ちゃんをずっと見てきて……私は……」
「ゆたかちゃん、ごめんね……」
「先輩……」
「私は、こなたが好き。大好きよ」
「…もっと、言ってください」
「こなたが好き…大好き。愛してる!」
「その言葉を!どうか本人のまえで言ってあげてください!」
「こなたは、聴いてくれるかしら……」
「はい、必ず。そしてきっと、同じ事を言ってくれます」
(こなた……ごめんね。私が素直になれないばかりにこんなことになって……)
「かがみ先輩……一つだけ、お願いがあります。……みきさんのこと、あまり恨まないであげてください」
「?!どうして?」
「みきさんはお姉ちゃんを襲ったとき、キスしなかったんです。
昔、春を鬻ぐ女性は、身体は許してもキスはしなかったといいます。
それは身体は売っても心は売りたくないという心情のあらわれだったと解釈できます。
みきさんも、分かっていたんだと思います。こなたお姉ちゃんの、心までは自分のものにはできないってことを……」
今お母さんは、こなたの心を壊した憎むべき相手。許す事などできない。
しかし、お母さんも叶うことのない恋に悩んでの行いだとしたら、それはとても悲しい事だと思う……
「………考えて、おくわ」
「先輩……ありが」
ピリリリリリリリリリリリリリリリ
そのとき、携帯電話の着信音が鳴り響いた。
「すみません…」
ゆたかちゃんは謝りながらポケットから携帯を取り出した。
「はい……おじさん?」
電話の相手はそうじろうおじさんのようだった。
「はい………え?」
ゆたかちゃんの様子が急に何かを恐れるような不安なものに変わった。
「そんな………」
「ゆたかちゃん?どうしたの?!」
「先輩……お姉ちゃんが………」
「ちょっと貸して!もしもし?おじさん?こなたの友達の柊かがみです!」
『かがみちゃん?!』
「こなたのことはゆたかちゃんから聞きました。なにかあったんですか?」
『……こなたの様態が悪化した』
「!!!」
『目を覚まさなくなったと思ったら、急に呼吸が止まって……今、病院にいるんだが……夜を越せるか分からないと……』
「どこの病院ですか?!」
『陵桜大学付属病院だ』
私は病院名を聞いてゆたかちゃんに携帯を返した。
「先輩……こなたお姉ちゃんを、お願いします」
「ええ任せておいて。絶対にこなたを助けてみせる!」
私はその場を走り出した。
病院はここからそれほど離れていない。
タクシーを捕まえるより走ったほうが速い。
必ずこなたを助け出す。
私を置いていくなんて、絶対に許さないんだから!
待ってて、こなた!!



かがみ先輩が走り去るのを、私は見届けることしかできなかった。
こんな事になるなんて、想像できなかった。
命に関わるような状態になるにしてもそれはずっと先のことで、今かがみ先輩を動かせば十分間に合うと思っていた。

だから見逃した。

これでもしこなたお姉ちゃんが命を落とすようなことがあったら……私は……
「先輩……こなたお姉ちゃんを助けてください……
こなたお姉ちゃんを救えるのは…先輩だけなんです……」
「ふぅん……偽善者ってのはこういう人のことを言うのかな」
「っ!」
背後からかけられた声に、私は驚いて後ろを振り返った。
そこにいたのはつかさ先輩だった。
だが、どことなく雰囲気が違う。
うまくは言えないけど、なんというか、別人が乗り移ってるような、そんな感じだった。
「……つかさ、先輩。いつからそこにいらしていたんですか?」
「さぁて、いつからだったかな。
電話がかかってきたときかな?それとも素直になれないお姉ちゃんに文句言ってたとき?もしくはお姉ちゃんを呼び止めたときかな?」
「………つまり最初からずっと聞き耳をたてていたというわけですか」
「親友のこなちゃんが大変な事になってるのに、私だけ仲間はずれってのは、酷いんじゃないかな?」
そう言ってはいるが、つかさ先輩の口調にはこなたお姉ちゃんを心配する様子も、事実を知らされなかった怒りも感じない。
だがそれよりも私が気になったのは、先ほどの先輩が言った“偽善者”という言葉だ。
「先輩、偽善者って、どういうことですか?」
「ん?偽善者っていうのは、上辺だけいい人ぶってる人のことだよ。そんなことも知らないの?」
「そんな解説、求めてません!どうして私がその偽善者だっていうんですか?!」
「自分の胸に訊いてみればいいじゃない」

ざわっ

私は心臓を鷲づかみにされたような嫌な気分になる。
だって、知ってるはずがない。
その場にいたわけでもないつかさ先輩が、知っているはずがない。
知られてるはずが……
「自分の胸って……なんのことですか……」
「やだな~誰にもばれてないとか、思ってたの?」
くすくすと、最上級にいやらしい笑みをうかべながらつかさ先輩は言った。

「ネェ、ドウシテオカアサントコナチャンガキスシテナイッテ、シッテルノ?」

「っ!!!!」
胸をナイフで抉られたような痛みが私の身体を苛んだ。
「そんなこと、その場に居合わせた人でもなければわからないよね」
「……っ……ぁ……」
目から熱い液体がこぼれ、視界を歪ませていく。
「ねぇゆたかちゃん。本当はお母さんがこなちゃんを強姦するとこ、見てたんじゃないの?」
「っ!!!」
私はがっくりと膝をつき、両手で自分を抱きしめながら、心の痛みを必死に押さえ込んだ。
「ゆたかちゃんはお母さんがこなちゃんを強姦した場面に立ち会っている。
だけどそれを止めなかった。
ただ黙って事の成り行きを見ているだけだった!
こなちゃんが今死にそうになっているのも、見方を変えればゆたかちゃんのせいといっても過言じゃないよね!
なのにお姉ちゃんには『こなたお姉ちゃんを助けて』なんてきれいな言葉をいけしゃあしゃあと……」
「やめてください!!」
私はたまらなくなって大声をあげた。
「それ以上……言わないで……」
「…………」
「そうです……こなたお姉ちゃんが壊されていくところを、私はずっと見てました……
薬がはいった料理を、私は食べませんでした……だからみきさんがしたことを、私は最初から最後まで全部見ていました……」
「しかも止めなかった。どうして?怖かったから?違うよね」
「……ぅ………ぁ………」
「お母さんとこなちゃんがくっつけば、かがみお姉ちゃんに振り向いてもらえると思ったから」
「く……っ!」
「馬鹿だよね~仮にこなちゃんがいなくなったって、お姉ちゃんがゆたかちゃんになびくわけなんてないのに」
「どうして……私の気持ちを……」
「お姉ちゃんとお話するときのゆたかちゃんの態度を見てればわかるよ。
そうやって自分の為にこなちゃんを見殺しにして、行き過ぎたからお姉ちゃんに助けを求めて悲劇のヒロインぶるなんて、これを偽善者と言わずしてなんていうんだろうね!」
「いやあっ!言わないで!!お願いですからっ!!」
「それとも、お姉ちゃんの姿をしたお母さんに抱いてもらって満足しちゃったのかな?」
「っ!!どうして……そんなことまで……」
つかさ先輩はくすっと嗤って、文字通りに嬉しそうに私を見下したあと、上機嫌で言った。
「いいじゃない、そんなことどうでも。
それよりこなちゃんだけどね、多分助からないよ。
もうこなちゃんは自分が誰かもよくわかっていない。
こっちの世界の住人になりかかってる。
お姉ちゃんでも助けるのは無理だと思うな」
「そ…そんな……」
「まぁ仮に助かったとしても……」
つかさ先輩は楽しいことでも思い出したかのようにくすくすと笑うと、既に私など眼中にないかのようにその場を立ち去った。
あとに残された私はただただ絶望に打ちのめされて、傷ついた心の痛みに耐えながら涙を流すことしかできなかった。










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続きは執筆中です













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  • 終わりかー!! -- 名無しさん (2024-03-26 21:58:17)
  • 終わりですか?つかさが
    ラスボス? -- チャムチロ (2012-11-19 10:34:33)
  • ずっと待ってますよ -- 名無しさん (2011-01-20 19:52:18)
  • うわーーーー -- 名無しさん (2010-06-13 12:39:56)
  • 続きが気になります -- 七誌さん (2010-06-10 22:52:49)
  • 続きマダー? -- コメント職人U (2010-04-01 00:13:34)
  • つかさ・・・真っ黒だ!! -- kk (2010-02-02 20:28:36)
  • つ、つかさが……(汗) -- 名無しさん (2009-11-20 22:17:27)
  • 件の描写が抜けていました。
    ご指摘ありがとうございます。 -- 作者 (2009-11-07 00:06:36)
  • ゆーちゃんは、みきさんがこなたを襲った時、薬で眠らされていなかった?
    -- 名無しさん (2009-11-04 23:34:23)
  • 待ってました!
    GJっす!!
    黒つかさってどうして
    しっくりくるんでしょうねぇ・・・
    -- 名無しさん (2009-11-04 20:10:55)

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