kairakunoza @ ウィキ

柊かがみの恋人

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
 ある土曜日。
 かがみは、男と並んで歩いていた。
 同年齢の男女一組。世間一般的にいえば、デートといっていいだろう。
 40歳すぎた独身女が何をやってるんだかと自分でも思うが、この男との関係はもう10年以上にもなるんだし、いまさら言ってみたところで虚しいだけだ。

 見てくれはよくて、女の扱いも上手。弁護士という世間的にはステータスのある職業で実績があり、収入もたっぷりある。
 世の女性からみれば、結婚相手としても望むべくもないほどの男だろう。
 でも、かがみは、この男と結婚するつもりはなかった。

 まず、仕事にかかわる信条の面では不一致が多かった。
 この男、得意分野は金の儲かる仕事ばかりで、かなりあこぎな稼ぎ方をする弁護士だった。巨額損害賠償事件を引き受けて、相場より高めの成功報酬をとる──そんなタイプである。大手企業の顧問弁護士もしていて、顧問料も高い。
 彼にはそれだけの成功報酬と顧問料をとれるだけの腕前があることは確かなのだが。
 対して、同じ弁護士でも、かがみの得意とするのは、著作権と表現の自由をめぐる分野だ。特に二次創作をめぐる紛争事件では、一流の弁護士として認められているが、あこぎに稼げるような仕事ではない。
 顧問弁護士をつとめるのも、同人関連企業や中小のアニメ制作会社や動画共有サイト運営会社などで、仕事をせずに報酬をとるのをきらうかがみは、顧問料もとらない(仕事をするたびに、つどきっちり報酬をいただく主義だ)。
 そして、生活信条というか人生に関する考え方というか、そういう面でも合わないところが多かった。そのため、自分の部屋に入れたことも、相手の部屋に行ったこともない。
 そんなこともあって、一度はかがみの方からふって別れたはずだった。

 かがみは、プライドが高い半面で寂しがり屋、でも相手に求めるのは対等の立場で一方的に尽くしたり尽くされたりといった関係は望まない。そういうかがみは、世の男性から見れば面倒くさい女だろう。
 そもそも、かがみと対等、つまりはつりあう男なんてそうそういるものではない。
 それゆえ、その後のかがみの男関係はことごとくうまくいかなかった。
 そんな中でも、一度別れた彼とは、何かと縁があった。得意分野が違うため互いに仕事を融通しあったり、ごくたまにではあるが一緒に仕事をしたり、あるいは法廷で対決することすらあった。
 そんな流れで、なし崩し的に元の木阿弥。

 それでも、彼と結婚するつもりはないということは変わらない。
 結婚したって、三日ももたずに離婚だ。それは確信できる。
 でも、彼の方は、結婚を前提としない交際でいいという。
「互いに自分の腕で生きてけるんだから、結婚なんかにこだわる必要はあるまい」というのが、彼の弁。
 若い娘にだってもてるのだから、尽くしてくれる娘と結婚すれば楽なんじゃないかと思うのだが、

「一方的に尽くす女なんて、すぐに飽きる」とばっさり。
 彼は、かがみのような張り合いのある女の方が好みなのだという。
 彼も、相手に求めるものは、対等であることなのだ。
「それに、若さゆえの魅力なんてすぐに衰えるもんだ。君のように、年を取っても内面外面ともに魅力的な女性なんてめったにいるもんじゃない」
 そういってもらえるのは、素直に嬉しいわけではあるが……。

 お互い独身とはいえ、結婚を前提としない交際なんて、不純異性交遊もいいところだ。
 いまさら言ってみたところで虚しいだけとはいえ、本当にこれでいいのかと悩むことも多い。
 彼の方はそれを全く気にする様子すらないのだから、かがみはますます頭を抱えそうになる。

「理性的な悩みは、情動に身をゆだねれば忘れられるよ」
 あっさり、そんなことをのたまう彼。
「あんたって、ほんといやらしいわね」
「君ほどの女性に対して情欲がわかない方が、男としてはどうかと思うけどね。君だって、嫌なわけでもあるまい」
 かがみは、溜息をついた。
 どう言い訳したところで、この男に惚れてることは間違いないのだ。確かに、嫌なわけではない。
「今日はどこ?」
「○○ホテルの最上階。今日の天気なら、綺麗な夜景が見られるはずだ」
「悪くはないわね。ああ、そうだ。先にいっておくけど、来週は会えないから」
 デートは毎週土曜日。特に何もなければ、来週の土曜日も会えるはずなのだが。
「なぜ?」
「友達と旅行にいくことになったから」
「泉さんとかな?」
「こなただけじゃないけどね」
「僕とのデートよりもそっちの方が大事なわけだ」
「こなたに『かがみんは、友情よりも男をとるのか』って散々ごねられてさ」
「で、君の方から折れたわけだ。まったく、泉さんには嫉妬せざるをえないね」
「なんで、男のあんたが女のこなたに嫉妬なんかするのよ?」
「君の扱い方という点に関しては、彼女が一番上手だからさ。恋人である僕をさしおいてね」
「馬鹿じゃないの」
「そうだね。僕は、君という存在に心を奪われた馬鹿な男だ」
 そんなセリフも、彼がいうと妙なまでに決まっている。
「馬鹿」
「照れた顔も魅力的だ。今日は来週の分もかわいがってあげるよ」
「ふん。再来週まで使い物にならないぐらい足腰立たなくしてやるわよ」

 こうして、二人は夜のホテルへと消えていった。



 翌日。
 かがみは、満ち足りた顔でホテルをあとにした。
 あの男を文字通り足腰立たなくしてやったのだ。
「今回は私の勝ちね」
 勝ちだからといって、別にどうというわけではないが、気分はいい。
 性欲も充分すぎるほど満たされたし、いうことなしだ。
 理性的な悩みは、情動に身をゆだねれば忘れられる。それは確かに事実だった。
 だからこそ、彼との関係をやめられないのだが。


 法律事務所兼自宅に帰り、居住スペースでのんびりしていると、来客があった。
「やふー、かがみん」
 相変わらずのこなたは、これまたいつもどおりにたくさんの紙袋を両手に持っていた。秋葉原の御用達の店で買い込んできたブツに違いなかった。
 こなたは、アキバでその物欲を満たしたあと、必ずかがみのところに寄っていく。柊かがみ法律事務所は、アキバのど真ん中に居を構えており、こなたが買い物帰りに寄っていくにはあまりにも都合がいい場所でありすぎた。
「またか。あんたも毎週毎週よくもまあそんだけ買うもんがあるな」
「ハッハッハッ、オタクの道に終わりはないのだよ」
 そっちの世界にどっぷりつかりきっているこなたには、当然、夫も恋人もいない。異性同性を問わずリアルでの恋愛に興味がない真のディープオタクだった。
「はいはい」
「かがみだって、毎週毎週彼氏にかわいがっ……」
「黙れ」
 こなたの口にこぶしを突っ込む
「あがあが……」
 こぶしを引き抜く。
「ひどいな。ひとがせっかくごはんを作ってあげようと材料まで買ってきたというのに」
「あんたは、メシをエサにして、うちでだらけたいだけだろが」
「まあね。この前のゲームの負け越しをそのままにしておくわけにもいかないしね」
 こなたは、毎週日曜日に来襲しては、かがみとだべったりゲームしたりして、昼食と夕食を作って一緒に食べて帰っていくのが、常だった。
 それが、かがみの親友であるこなたの特権であった。
 かがみの彼氏が嫉妬するのも無理はあるまい。恋人には立ち入り禁止にしているプライベートエリアに遠慮なく立ち入って、あまつさえ台所を自由に使って料理を作って一緒に食って、お互いになんの遠慮もなくボケとツッコミの応酬を繰り広げているのだから。

 というわけで、かがみとこなたは、いつもどおりに、その一日を過ごした。

終わり


















コメントフォーム

名前:
コメント:
  • こんならきすた嫌すぎる -- 名無しさん (2010-11-13 23:53:25)
  • これSSスレにも投稿あったな、かがみはお上公認のインテリヤクザのカキタレでこなたはオタクの道一筋か。。。
    現実的過ぎて萎える。ついでに初めてオリキャラに殺意が芽生えた -- 七市 (2010-10-29 13:56:01)
  • なんとまあ夢の無い現実味を帯びたSSだろ…なーんかオリキャラの男もいけ好かないし、萎えるなぁ。 -- 名無し (2010-06-12 02:14:41)
  • これは…なんかリアル過ぎだよ。こなたとかがみは結婚してなさそうなんて原作者がインタビューで発言してたから余計そう感じる。こんな未来が本当に来ませんように -- 名無し (2010-06-10 04:06:08)
  • これって@WIKIかどっかに投稿されてた柊かがみ法律事務所の一つですね…、このシリーズって妙に現実的で何だかなぁ。 -- 名無し (2010-06-10 00:35:17)
  • え~つまり、かがみは好意を持って接してくる男と結婚するつもりは無いが、S○Xフレンド的な付き合いはしてると。。。
    こなたはオタク道まっしぐらですか・・・なんだかなぁ。
    リアル過ぎて萎えた。 -- kk (2010-06-04 12:54:16)
  • 微妙…こんなドロドロした大人の世界は見たくない -- 名無し (2010-06-03 13:22:43)
  • リアルなストーリーだし、文章も上手いけどこんならき☆すたは嫌だ…。 -- 名無し (2010-06-01 08:57:47)
  • なーんか妙に現実的な内容ですね…本当にこんな未来が来ない事を -- 名無し (2010-06-01 01:24:43)
  • すんばらしい -- 名無しさん (2010-04-02 00:03:40)
  • 何度読んでも飽きないですね。
    GJです! -- コメント職人U (2010-04-01 00:12:54)
  • 偏差値67大学文系の俺が保証する。
    激しくgj!!!!! -- 名無しさん (2009-12-08 20:17:52)
  • ……低いか?
    少なくとも標準以上だと思うが……
    あとは好みの問題。
    -- 名無しさん (2009-12-08 11:34:52)
  • 質が低い作品は叩かれるべき。なんでもGJ言えばいいってもんじゃないよ -- 名無しさん (2009-12-08 01:41:34)
  • すごく好き。
    この現実的な感じが個人的にツボです。
    ぐっじょお!! -- 名無しさん (2009-12-07 21:34:39)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー