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614名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 02:12:05 ID:FasAn/dS

やっぱりさかぐら至上な自分にはたまりませんなあ。
「榊せんぱーい!」とか、本当に神楽がやりそうですからね。
GJです。

カップリングを問わず書ける能力、私も身につけたいです。
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私は神楽と一緒に走っている。
ただひたすら一言もしゃべらずに、音もなくひっそりとした夜道を走り続ける。
忙しい勉強で動かせなくなっている体を慣らすのには最適だ。
体育会系が嫌いでも、運動することは悪くない。
健康のためには、どんな時でも怠けず、適度に汗をかく必要がある。

それに、神楽の一生懸命な姿をずっと見ていられるんだから、とても幸せなものだ。
鍛えられた体を磨き上げ、自分を先へと突き進める努力に共感するとともに、
変な話だけれど、彼女のかわいさと美しさに惹かれてしまう。
全身から発散される熱が、言い表せないほどに不思議な感情を呼び起こす。

ジョギングが普段の生活で一番集中していられる時だと、神楽はいつも言う。
目標が見えるからこそ、長い道を単調に走っていられるんだそうだ。
何十、何百メートル先を真っ直ぐ見つめて走る彼女を見ていると、本当によく分かる。

神楽は今、何も考えずに、自分自身を突破するために足を先に向かわせている。
こんな時に、彼女の口から漏れる吐息に魅力を感じてはいけない。
そう知っていても、速い間隔で繰り返される呼吸に、私の胸は高鳴らずにはいられない。
長く走るのには当然大量の酸素が必要だ、それだけなんだ。
彼女の喘ぎが、あの時の、体を重ね合わせる時のものに似ていると感じても。
私は雑念を捨てなければならない。
自分自身の奥底からあふれ出る感情、ひとことで言えば「かわいい」という思いが頭をよぎっても。
私はただ、この時ばかりはあの子の側にいる以上のことをしてはならない。


615名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 02:14:16 ID:FasAn/dS

あの子は時々、私に対して、宝の持ち腐れだとつぶやく。
互いに感情を分かち合うまで、何が宝なのだろうかと疑問に思っていた。
他人から羨まれていたとしても、自分が望まなければただの飾りに過ぎないだろう、と。
今は違う。
私のこの体が、この思いが、この存在が、すべてが彼女に望まれている。
理解されずに生きてきた十数年が、幸せに満たされるようになった。
あの子が宝だと思っているなら、私の体を欲しいと言うなら、いつでも分けてあげたい。
代わりに、彼女のすべてを、私が受け取りたい。
―― 神楽が愛してくれるなら、この大きいだけの体でも構わない。

何キロかを走り終えて、二十センチくらい下にあるあの子の顔に目を向ける。
一面に薄い汗が流れ、喘ぎはさっきよりも一段と激しくなっていた。
神楽が私を見上げても、大体同じように感じるのだろう。
でも、自分のように、かわいさやあの類の欲求を覚えてしまうほど汚れてはいないはず。
「ふぅ、終わったぜ」
「……うん」
達成感にあふれた表情を眺めていると、私も喜びを共有したくなる。
長距離はそこまで慣れていないから、同じペースを保つことに苦労する時もあるけれど、
この瞬間があるからこそ、ずっと走っていられる。
何ヶ月か続けてきて、だんだんと安定した速さを得られるようになってきた。
「あの。 帰ったら、何しようか」
「私はなんでもいいぜ」
「何でも……」
「ああ」
「本当、に?」
「いいけど」
私が次の言葉を口にした時、神楽はどう反応するだろうか。
今までは、二人で家にたどり着いた後になんとなく誘っていたから、まあ驚くとは思う。


616名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 02:32:38 ID:FasAn/dS

「ええ、と。 体も、熱いし」
「ん、まあ」
「思い切って、その。 ……して、みないか?」
「して、って……ま、まさか、帰ってすぐにやろうってのか!」
「うん」
「へ、変態だな! 榊は」
言い方はきつくても、態度ですぐに答えが分かる。
暗くても見えるほどに顔が赤くなっているのは、運動の直後だから、ということだけではないはず。

「そんなに、言われたらよ、私も……なんだか、熱くなってきちまった」
「良かった」
「おい、笑うなよな。 まったく」
「……笑ってる?」
「笑ってるぜ。 ずっと付き合ってんだからよ、バカでガサツな私でも気づくぜ?」

ようやく、人に対しても笑えるようになったんだな。
もしかしたら、神楽にしか見せることのできない笑顔かもしれないけれど。
別に構わない、だって、神楽さえいれば十分なんだから。

「ありがとう」
「何だ、いきなりだな」
「……ありがとう」
「まだ笑ってんのか? 榊がそういう顔してくれるのはすごくうれしいけど」
―― ありがとう、私と一緒にいてくれて。
今直接言うのは恥ずかしいから、帰った後……体を交わす時に、私の気持ちを伝えるよ。

ありがとう、毎日、君と過ごせることに。

(おわり)

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