※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

667名前:I loved you[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:18:44 ID:WFw6evpf
最近、暑い日が続いている。
新しい生活にも慣れ、自分以外の忙しさにも気が回るようになった初夏のある日。

私、水原暦の初恋は、失恋という形で終わりを告げようとしていた。



最初は友情の延長だった。
周りにいる友人の中で、とりわけ自分をわかってくれる人。
一緒にいれば楽しいし、いなければ寂しい。
冗談の限度も知っていて、喧嘩も時間が解決してくれる。
彼女の笑顔は私を癒してくれたし、私も彼女に向けて最高の笑顔を振り撒いた。
そんな関係。

いつだったか…ずっと小さい頃に、
「よみは私のこと好き?」
そんな風なことを聞かれたことがある。
「好きだよ!」
当たり前のように答えた。

幼馴染みという、半ば強制的に離れることができない環境で生まれた、当然の感情のはずだった。

668名前:I loved you[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:19:34 ID:WFw6evpf
ある日、それは突然起きた。
いつもの教室…多分冬のことだった。
他愛もない、くだらない話が繰り広げられている。
「ばっかでー。何でそうなるんだよ」
「えー、わからへん」
普段と変わらない会話。
私はその片隅に…、
ふと違和感を感じた。
「よみも何か言ってやれよー」
「…」
「あれ?よみ?…どうしたの?」
「…っえ?あぁ」
彼女が私以外の人間に、あんなに楽しそうに笑いかけている…。
今まで当たり前だったことに、何故か胸が痛くなった。
「何ぼーっとしてんだよ」
向けられた笑顔に、私はその痛みの正体をとらえる。
「変なのー」

嫉妬だった。

あの笑顔は、私だけに向けられたものではなかった。
彼女を癒せるのは私だけではなかった。
何がきっかけになったのかはわからない。
ただ、自分の笑顔がひきつっていることに気付いて…
その胸の痛みが恋愛感情であると知るのに、そう時間はかからなかった。

669名前:I loved you[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:20:55 ID:WFw6evpf
だいたい、恋はハードルが多いほど燃えるというが…。
なってみて初めて気付く。
そんな格言が全くアテにならないということに。

前に並べられたハードルはあまりに高く、多すぎた。
私はそれに挑む前に見上げ、ため息をつき、諦めた。
自分のエゴで彼女に迷惑はかけられないと言い聞かせ…諦めた。
いつかは忘れると信じて…諦めた。
諦めた…はずだった。
はずだったのに…、気付くと私はまたスタートラインに立っていた。
高くそびえるハードルを見つめ、ため息をつき、諦めた…ふりをしていた。
そうしているうちに手遅れになる日がくると…。
その時が本当に諦めるときだと決めていた。

670名前:I loved you[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:21:34 ID:WFw6evpf
そして、私は彼女への想いを秘めたまま、違う道へ進むことを決めた。
彼女を追うことは一般的に考えても普通ではなかったし、何より自分自身がそれを許さなかった。

…それからの日々は信じられないほど忙しく、余裕が持てる頃には既に卒業式が近付いていた。

式はとても感動的なものだった。
いつも通りの日常が、今ここで終わるんだ、と…。
彼女との別れを度外視しても、忘れられない青春の一ページとして私の心に刻まれた。

…いい三年間だった。
欠けがえのない友人と、先生と。
進路も問題なく決まった。
…恋もした。
置いていくにはもったいない思い出に感謝して、私は母校に別れを告げた。


新しい生活は、忙しいなりにうまくいった。
独り暮らしに不自由することはなかったし、友達もできた。
置いてきたはずの恋は…、
時々くる彼女からのメールに後ろ髪引かれたが、なんとか踏ん切りはつきそうだった。

落ち着いた日常。
そんな中、それは突然訪れた。

671名前:I loved you[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:23:30 ID:WFw6evpf


From:とも
Sub:(non title)
本文:
久しぶり!
いきなりですが重大発表があります


彼氏ができました!
どうだ!参ったか!



672名前:I loved you[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:24:52 ID:WFw6evpf
いつも通りの蒸し暑い夜だった。
見たい番組もなく、借りてきたCDを聴いてまどろんでいたとき…。
そのメールはきた。

疑うことのできない現実。
私は、彼女への想いをふっ切れてなどいなかったことを思い知らされた。
震える手の中でぼんやりと光る画面が、だんだんとかすれていく。
私が越えられなったハードルが、今、スタートラインごと消えていっている。
後悔した。
悔しかった。
悲しかった。
そしてなにより、羨ましかった。
彼女に愛してもらえる知らない男が。

心臓が握り潰されるように痛み、息ができない。
倒れこんだベッドのシーツを両手で突かむと、おしゃれのために伸ばしはじめたツメが、痛かった。

673名前:I loved you[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:26:36 ID:WFw6evpf
私、お前のことずっと好きだったんだ。

普通にしてたからわかんなかっただろ?

手ぇ繋いだり、隣り合って歩いてたとき、ドキドキしてた。

どうやって想いを伝えようかとかさ…悩んで。

そんなとこでまごまごしてたんだ。

バカみたいだろ?

でもさ、お前は彼氏とこれから…私が夢見て、想像してたこと、簡単にしちゃうんだろうな。

キスも、デートも、エッチなことも…。

674名前:I loved you[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:27:23 ID:WFw6evpf
もう遅い。
この言葉を、これほど強く思ったことはない。
私の前からは、越えるべきハードルも、踏み出すべき一歩も、
心を痛める笑顔も、甘酸っぱい悩みも、全て消えていったのだから。

私にチャンスはないんだ。

胸の痛みは収まらなかった。
涙も止まらなかった。
この涙と一緒に彼女への想いが溢れ出ていけばいいのに。

私の嗚咽をかき消すように、CDから声が聞こえている。
美しく響く、女性のボーカルだった。

675名前:I loved you (おわり)[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:28:16 ID:WFw6evpf


From:よみ
Sub:Re:
本文:
お前に先を越されると思わなかったよ
大事にしろよ


おめでとう