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576名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 00:06:07 ID:UhUo10g7
「ピカニャー可愛かったなぁ」
・・・もうすっかり暗くなってしまった。
さすがに、この時間になると寒い。
榊はまだ残るって言ってたけど、泊まるんだろうか。
「でもさ、西表島って沖縄だろ?寒いの大丈夫なのかな?」
「それはあれや。こたつがあるし」
久しぶりのちよちゃんちはすごく楽しかった。
智がひっかかれたから帰ったものの、あのままみんなで泊まっても良かったかもしれない。

「じゃあなー!また明日」
「ほなー」
「またな」

577名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 00:07:11 ID:UhUo10g7
大阪、神楽と別れたとたん、智は再び痛みを訴え始めた。
「あうー・・・痛いよぉ・・・」
「大丈夫か?血ぃ、止まりそう?」
彼女の手には、痛々しく包帯が巻かれている。
「わかんない。・・・でも痛い」
今にも泣きそうな目で苦痛を訴えてくる。
どうやら本気で痛いようだ。
「家帰ったら消毒しろよ。バイ菌がいるかもしれないから」
手をさすってやるが、それすらも痛そうだ。
「えぇ・・・今日家誰もいない・・・。今からよみんち寄るから消毒だけでもしてよ」
智は、痛がりながらも私の手を握り返してくる。
その言葉に冗談っぽさはなく、恥ずかしそうな笑顔が私を見上げていた。
いつもなら甘えんなと言ってやるところなんだけど・・・
「・・・特別だぞ」
手を離して頭をなでてやると、智は嬉しそうに体を摺り寄せてきた。

578名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 00:09:02 ID:3auVBvpX
「それ、しみる?」
私が傷口に消毒液を塗ろうとする直前になって、智が聞いてきた。
「んー、どうだろう・・・。もう結構時間がたってるから大丈夫じゃ・・・」
「痛い痛い!」
しゃべり終わる前に塗ってやると、彼女は身を反らせて痛がった。
こういうのはわかんないうちにやっちゃった方がいいと思うんだけどな・・・。
「もー、塗るときは言ってよね!」
訴えかける彼女の目には、涙が浮かんでいる。
相当痛かったのだろうか。
「悪い悪い・・・ほら、手ぇ出せよ。包帯巻くぞ」
そんなに深い傷ではないと思うが、かなり広い範囲に傷口が広がっているため、一応包帯を巻いておくことにした。
血の付いたガーゼを新しいものに変えている間に、智は座ったまますり寄ってきた。
私の横にやってきて、べったりと体重を預けてくる。
「よみ」
「ん?痛かったら言えよ」
「こういうときって傷口舐めてくれたりするんじゃないの?」
彼女は私の肩に頭を置いたまま、見上げるように話している。
「消毒してからじゃ遅いだろ。私にマキロン舐めろっていうのか?」
「・・・。じゃあ消毒前だったら舐めてくれたんだ」
普段は見せない色っぽい笑顔で私をからかう智は、ひどく大人っぽかった。
この笑顔を見るたびに・・・私は、
「バカ。・・・ほら、できたぞ」
なんでこいつと一緒にいるか、わかる気がするんだ。

579名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 00:10:13 ID:3auVBvpX
消毒が終わっても、智は右手を眺めていた。
握ったり開いたりして、痛みを確かめている。
「そんなに痛いか?」
「・・・少し」
彼女は小さくつぶやいて、傷ついた手を私の太ももの上に置いた。
「もう遅いぞ。帰ったほうがいいんじゃないのか?」
その手を持ち上げて、両手でさすってやる。
「泊まる。・・・こんな手じゃ、お風呂で体も洗えない」
・・・やっぱり。
ぶっきらぼうな、しかし甘えた様子で言い放った彼女の言葉は、私の予想通りだった。
多分、もう手は痛くないんだろう。
それに、もし本当でも、手が痛いから泊まるなんて高校生の言い分じゃない。
「よみ、いいでしょ?」
ただ・・・、そんなくだらない言い訳に頼ってまで、私と一緒にいたいという智の気持ちを嬉しいと思わないはずもなく、
「仕方ない。今日だけだぞ」
最高の笑顔で答えてしまう私は、幸せ者なんだろうか。

580名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 00:11:12 ID:3auVBvpX
「智、さっきはごめんね」
後ろから抱きしめてやると、彼女のシャンプーのいい香りがする。
「何が?」
「痛い目にあってよかったなんて言って」
「ああ、そんなことか」
彼女は呆れたように笑って、顔を振り向けた。
「よみ、私がマヤーにひっかかれたとき、一番びっくりしてたでしょ」
「・・・そうだったかな?」
「すぐ飛んできてくれて、心配してくれて・・・。だから、その後のことはどうでもいいんだ」
笑ってはいるが、まじめな口調だ。
「あんなによみに心配してもらえるんなら、もう一回ぐらいひっかかれてもいいかな」
彼女は体を完全にこちらに向けて、手を差して笑った。

「まぁ、もしその時は・・・舐めてやるよ」
頬に手を添えると、彼女はゆっくり瞳を閉じた。
怪我をしているはずの右手は、私の二の腕をぐっと掴んでいる。

・・・私もマヤーにひっかかれて、智に心配してもらおうかな。

《おわり》