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snow drop 2

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hakureikehihi

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「snow drop」





冬休みに入ってクリスマスも超えてお正月も近付いて来た頃、
朝目覚めると外にはちらほらと雪が舞い降りていた。
朝といっても時計を見る限りは昼に近いのだけれども。
昨日も夜遅くまで毎年の恒例である積みゲ崩し冬の陣に励んでいたので
このくらいの時刻に起きる事は予想済である。
というかまだ眠いぐらいだ。
歯を磨き顔を洗いリビングへ向かうと、
ゆーちゃんがこたつに入ってテレビを見ながら蜜柑の白い線と格闘していた。
こういう何気ない誰も見ていない所でも可愛いんだから従姉妹ながら少し羨ましい。
「ゆーちゃんおはよ~、朝からまた萌えるねぇ」
と朝っぱらからニヤニヤしながらゆーちゃんに挨拶すると
「あ、お姉ちゃんおはよう!えっと…萌えるってどういうこと?」
と期待通り少し赤面しつつ返してくれた。
「いやいや、ゆーちゃんが蜜柑の白い線を一本一本取ってたのが面白かったんだよ!」
「あ、ああ!!?暇だから全部とっちゃおっかなって思っただけだよ!」
ホントだよ~!?と手をぶんぶん振ってるゆーちゃんを見て
また萌えを感じてしまう自分はつくづく姉失格だなぁ~と思いつつトーストを一枚焼いた。
温かいミルクたっぷりのコーヒーを飲みつつトーストにかじりついていると、
お父さんの姿が見えない事に気付いた。
「ゆーちゃん、お父さんまだ寝てるの?」
「ううん、お姉ちゃんより先に起きてたけど、
なんだか『締切りがヤバい』とか言って朝ご飯食べてすぐにおじさんの部屋に行っちゃったみたい」
そういえば昨日徹夜するとか言ってたけどこたつで寝てたなぁ。

我が家のライフラインを担っているんだから
うたた寝して食い淵を潰すなどという事は止めて貰いたい。
コーヒーをすすりながら新聞のテレビ欄を見ても
こんな微妙な時間に面白そうな番組はなく、
お昼頃までまた積みゲに勤しもうと朝食を片付けて二階に上がろうとすると
「えっと、お姉ちゃん今から用事とかある?」
とゆーちゃんに声をかけられた。
今日はかがみ達と遊ぶ約束もしてないし、
天と地がひっくり返ろうとも宿題などやる気はないので、
用事といえばネトゲか積み木崩しぐらいしかないのだがそれは置いておく。
愛する従姉妹と天秤にかけられる程の価値は持っていない。
「別にわたしは暇だけど何カナ~?」
宿題関連の用事ならば積み木の重さは2割増し程度にはなるだろう。
「じゃあ今日ね、なんだか宿題する気が起きないの。だから一緒に遊んで欲しいなって思って」
普段勤勉なゆーちゃんが宿題する気が起きないというのはそれはそれで驚きだが、
何故にこんなに改まっているのだろう?
「いいヨ~。何して遊ぶ?」
まぁやる事といえば大方ゲームぐらいしかないのだが。
「えっとね、今雪降ってるでしょ」
なるほど元来思考が外に向くタイプではないので
雪なんか一自然現象程度にしか感じられなかったが、
ゆーちゃんにとっては初雪は嬉しい物なのだろう。
「だから雪だるま作ろうよ!」
「おーけーおーけー。そういうと思ったヨ。でもゆーちゃんは」
そう言い含めると彼女はナニ~?と頭を傾げた。
「まだまだ子供っぽくて可愛いなって思ってね!」
「子供じゃないもん!」
そう言ってまたゆーちゃんは頬を膨らませぶんぶんと手を上下させた。
こういう事にも一々反応してくれるからゆーちゃんは面白い。

かがみだったら
『はいはい』の一言で済みそうなのに。
いや、逆にかがみはそういうのに反応してくれるかな。
と思考の罠にはまっているといつの間にかゆーちゃんが
わたしの分も一緒にマフラーと手袋と帽子をリビングから取ってきてくれていた。
「お!ゆーちゃんありがとう。そんなにはしゃいじゃってやっぱり雪が楽しみなのカナ~?」
「もうお姉ちゃんのいじわる~!!」
からかいがいがあるのは人間として愛される人種の人なんだろうな。
そんな事を思いつつ、すっかり防寒着に身を包んだわたしとゆーちゃんは真冬の雪空の中に飛び出した。



  • snow drop 2
  • こなた&ゆたか
  • 30-178氏(新規作成)

 外は一面銀世界、というわけではないが、雪だるま程度なら作れそうな程は積もっていた。

 「お姉ちゃん見て!やっぱり積もってるよ!」

 それでも無邪気に喜んでくれる辺りゆーちゃんらしい。
ここでゆーちゃんでなければ雪玉のひとつでも作って宣戦布告するところなのだが、
そんな事をすると彼女の体は持たない事は分かっているので止めておく。

 「これなら雪だるまぐらいなら作れそうだね~。それよりゆーちゃん寒くない?」

 今日は比較的暖かい方だけど風邪を引いてもらっては大変だ。

 「うん!大丈夫だよ!それより早く作ろう!」
「そだね、よいしょっと」

 家の外壁に積もっている大粒の雪をかき集めるとすぐに種が出来上がった。

 「よし!ゆーちゃん、どっちが大きいの作れるか競争だ!」
「ちょっと待ってよー!お姉ちゃんフライングだよ~!」
「勝負の世界は厳しいんだよ!ゆーちゃん!」

 我ながら姉として情けないが勝負の世界は無情なのだ!



二人で黙々と雪玉を転がしていると段々とその差は歴然となっていった。
まぁその要因はフライングがどうこうではなくてゆーちゃんの

 「ああ!壊れちゃった!」
という再三にわたる悲鳴の方だろう。
 しかしこっちの方はそろそろ雪玉が下半身程度の大きさになってきたので、
これ以上大きくすると文字通りただの玉になってしまう恐れがある。
 程なく頭部の製作に取り掛かろうとすると、
ゆーちゃんがわたしのそれより4回り程小さい玉を携えて涙目でその様子を見ているのに気付いた。
ここは姉として空気を読むべきだろう。



 「ごめんごめん、つい本気になっちゃったよ!」
「お姉ちゃん、凄いね…わたしなんか…」
 とゆーちゃんは自嘲気味に呟いていた。

 「えっと、じゃあこれ合体させようよ!
二人の合作って事でさ!この勝負は引き分けで手を打とう!」
 そう言うとゆーちゃんの顔は途端に明るくなった。

 「いいの!?ありがとうお姉ちゃん!」

 無邪気に喜ぶゆーちゃんを見て姉としてその扱いに少しの自尊心を持ったのは秘密だ。


 二つの雪玉をくっつけると顔と体の比率は合わなかったが、りっぱな雪だるまになった。

 「大きいの出来たね!ありがとう!お姉ちゃん!」
ゆーちゃんはまた満足そうな笑顔を見せてくれた。

 そこまで素直に喜ばれるとこっちまで嬉しくなる。
こういう所がこの娘の凄い所なのだろう。
思わずゆーちゃんをぎゅっと抱きしめた。

 「ちょと!?お、おおおお姉ちゃん!?」
ゆーちゃんは予想以上に顔を真っ赤にして慌てた。 「いや~、ゆーちゃん寒そうだったから。こうしたらあったかいでしょ?」
そう言ってまたぎゅっとゆーちゃんを抱きよせた。

 ゆーちゃんがごにょごにょ言ってた気がするけどよく聞こえなかった。

 そうやって従姉妹愛を体感していると空気を読んでいるのかいないのか、ちらほらと雪が降り始めた。

 「さて、そろそろ寒くなってきたし、中入ろうか」
「うん…」

 体を離す時、ゆーちゃんからかすかに残念そうな吐息が聞こえた。

 「どしたの?ゆーちゃん?まだぎゅっとして欲しかった?」

「え!?あ…えと…」
「もうゆーちゃんは甘えん坊さんだなぁ!」
そう言ってゆーちゃんの頭を撫でてあげるとまた顔を真っ赤にして反論してきた。

 「また子供扱いして~!」

 ここでじゃれあっていてもしょうがないので、ゆーちゃんを宥めて家に入った。
でもさっきからゆーちゃんの顔が赤いみたいだけど…

 「ゆーちゃん、熱あるんじゃない!?ちょっとおでこ貸してごらん!」

風邪をひかせてしまったとあらば大変だ。

 でもゆーちゃんは
「い、いや!??熱何て無いよ!?ほらほら元気だよ!」

 そう言ってわたしの手を逃れてそのまま居間のこたつに滑り込んでいった。

 いや確かに元気そうだけど…
まぁ考えてもしょうがない。それよりもお昼を作らないといけない。

 お父さんの食べた形跡が無い所を見ると彼はよほど忙しいのだろう。
 簡単な冷凍食品を暖めてご飯を装ってゆーちゃんに出してあげた。
お父さんの部屋に持っていくと

「ドアの外に置いといてくれ」
という返事が帰ってきた。
よほど切羽詰まった状況らしい。

 居間に戻るとゆーちゃんはまだ食べ始めていなかった。
わたしが来るまで待っていてくれたんだろう。
二人で合掌したあと簡素な昼食を味わった。
ゆーちゃんは、
「これおいしいねー!」と昨日のあまりもののひじきをパクついていた。

 こんな手抜きな料理でもにこにこしながら食べてくれると作り甲斐もあるというものだ。
食べた後に食器を片付けてお父さんの部屋の前へ行くと、空の食器が鎮座してあった。

 居間に戻って3人分の食器を洗おうとするとゆーちゃんが
「お姉ちゃんは休んでていいよ。わたしがやっとくから」
と申し出てくれた。

大した労働でもない旨を告げて軽く断るとゆーちゃんは不満そうにそのままこたつに戻っていった。

 食器を洗い終え、部屋に戻ろうとすると、
「お姉ちゃんちょっと待って!ここに寝転がって!」
と、またゆーちゃんの声がかかった。

「どしたのゆーちゃん」
言いながらぽんぽんとゆーちゃんが叩く所に寝転がると、
「お姉ちゃん今日遊んでくれたからマッサージしてあげるよ!」
そう言ってわたしの背中をぐいぐいと押し始めた。
「ちょ、別にそんなのいいってば」
「遠慮しないでいいよ~。わたしゆいお姉ちゃんのマッサージしてあげてたから慣れてるんだ」

 なるほど、うまくツボを刺激してかなり気持ちいい。
「お姉ちゃんどう?気持ちいいでしょ?」
「極楽だよぉゆーちゃん、ん。ありがとぉ…」

 背中から伝わる快楽によって段々と睡魔が押し寄せて来るのが分かる。
意識が落ちる前にゆーちゃんが、
「ん、お姉ちゃん、いいにおい…」
とか言ってたような言ってなかったような…





 目覚めた時には何故かゆーちゃんを抱きしめていた。













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