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<p><dt><a href="menu:169" target="_top" name="169"><font color="#0000ff">169</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 21:27:43 <a href="id:169" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>kaCwZXG6 </dt><dd>「あゆは今日休みなんだ?いいな~!」 <br /> 髪をとかしながら智ちゃんが聞いてくる。 <br /> 私のことを大阪て呼ばんくなってからもうどれくらい経つやろ。 <br /> 今が七月やから・・・まだ二ヶ月か、三ヶ月やなぁ。 <br /> 「えへへ~、ええやろ?そのかわり今日はおいしい夕飯作っといたるから。」 <br /> 布団の中から答えた。 <br /> 最初はかわりばんこて言うた給食当番も、今はほとんど私専門や。 <br /> 最近はなかなか上手になってきたと思うねんけど・・・。 <br /> 「ほんと?じゃあお好み焼きにして!あれおいしんだよ~」 <br /> やっぱり。 <br /> 初めは焦がしたりしとったけど、今では得意料理の一つやねん。 <br /> 智ちゃんがおいしいて言うてくれたで頑張ったんやで。 <br /> 「ええで~。冷蔵庫にキャベツも残っとったし、卵も賞味期限切れそうやったでちょうどええわ。」 <br /> 肝心なお好み焼きの素は買い溜めてあるし、お肉は・・・ベーコンでええか。 <br /> 今日は買い物に行かんで済みそうや。 <br /> こういう日は一日中パジャマでおってもええなぁ。 <br /> あれ?今日は何曜日やったっけ。 <br /> 「じゃあ、期待してるからね!」 <br /> 鏡台からすくっと立ち上がって智ちゃんが振り向いた。 <br /> 薄めやけど流行りの感じのお化粧。 <br /> ピンクのキャミソールに膝下までのタイトなデニム。 <br /> 髪はショートカットのままやけど、高校のときよりも大人な智ちゃんは寝起きの私には少しまぶしかった。 <br /> 私が体を起こしてベッドに座ると、智ちゃんは私にキスしてくれた。 <br /> 小鳥がついばむような短いキスやったけど、 <br /> 「えへへ~」 <br /> 自然と笑ってしまう。 <br /> 今の顔はええ顔やろなと自分で思ってしまうのは変やろか。 <br /> そんな私の頭を智ちゃんはよしよしとなでてくれた。 <br /> やっぱりええ顔やったみたいや。 <br /> 「いってきます」 <br /> 「いってらっしゃい」 <br /> 智ちゃんはもう一回キスしてくれた。 <br /> <br /> </dd><dt><a href="menu:170" target="_top" name="170"><font color="#0000ff">170</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 21:29:47 <a href="id:170" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>kaCwZXG6 </dt><dd>「いや~、おいしかったよ。ごちそうさま!」 <br /> 「ごちそうさま。今日は皿洗いは智ちゃんの番やで。」 <br /> 「わかってるって。でもさ~、ベーコンはどうなのよ?豚肉とか無かったの?」 <br /> 「え~、おいしかったって言うたやん。それにちょっと多めに入れたんやで。」 <br /> 「いやいや、おいしかったんだけどさ、なんか珍しいかなと思って。普通に入れるもんなの?」 <br /> 「普通も何も、好きなもんを入れるからお好み焼き言うんやで。」 <br /> 智ちゃんも皿洗いくらいはしてくれる。 <br /> 台所から <br /> 「じゃあ次はカレー入れよう。カレー」 <br /> なんて言いながらもきちっと皿を洗う智ちゃんをみとると、なんやお互いが少し大人になった気分や。 <br /> 「智ちゃんてやー・・・ちょっと大人になったよなあ」 <br /> 手を止めずに智ちゃんは言う。 <br /> 「当たり前だろ~。あんたも結構しっかりしてきたと思うよ」 <br /> そやろか。 <br /> 高校のときは全然しっかりできんかったんやけどなぁ。 <br /> 自分ではようわからん。 <br /> でも、私のことを一番わかってる智ちゃんが言うんやから間違いないやろ。 <br /> 私はちょっと嬉しなった。 <br /> 「そういえばさ、明日って暇?よみが遊びに来たいって言うんだけど」 <br /> 明日?あ、今日は金曜日や。 <br /> 「ええよ~。よみちゃん久しぶりやなぁ。」 <br /> 「よし!じゃあシュークリームでも買ってきてやるか!」 <br /> 皿を洗い終わった智ちゃんはリビングに戻ってきながら笑顔で言った。 <br /> その嬉しそうな顔を見た瞬間、私の胸がちょっとだけチクっとなった気がした。 <br /> <br /> </dd><dt><a href="menu:171" target="_top" name="171"><font color="#0000ff">171</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 21:31:02 <a href="id:171" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>kaCwZXG6 </dt><dd>お昼過ぎによみちゃんが来た。 <br /> よみちゃんが私たちの部屋に来るのは始めてや。 <br /> ルームシェアし始めたて伝えてから、来たい来たいとは言うてたみたいやけど。 <br /> 「お~、結構広いじゃん。私のとこなんかこの半分くらいだよ」 <br /> よみちゃんは高校のときとあまり変わってなかった。 <br /> まぁ二、三ヶ月しか経ってないんやし、私も変わってへんか。 <br /> それによみちゃんは前から大人っぽい格好しとったからなぁ。 <br /> 「田舎だからね~。そんなに家賃も高くないんだよ」 <br /> 「楽園やで~。私たちの城」 <br /> 部屋を一通り見たら智ちゃんが早速シュークリームを出してきた。 <br /> 「よみは抹茶と普通のやつどっちがいい?」 <br /> お茶は私が淹れる。 <br /> 紅茶なんてあらへんからシュークリームに緑茶なんやけど、ないよりましやろ。 <br /> 「でもまさかこの組み合わせでルームシェアとはな。ちゃんと自炊してんのか?」 <br /> あ、智ちゃん言うてあげて。 <br /> 私が料理結構上手になりました~。 <br /> 「うん。ほとんど大阪がしてくれるんだけどね」 <br /> <br /> </dd><dt><a href="menu:172" target="_top" name="172"><font color="#0000ff">172</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 21:32:26 <a href="id:172" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>kaCwZXG6 </dt><dd>え? <br /> 今なんて言うたん。 <br /> 私、台所におって聞こえにくかったんかな。 <br /> 「お茶淹れたで~」 <br /> ともちゃんはもうシュークリームを食べ始めてた。 <br /> 「本当かよ。想像つかないな~。まぁ智よりは出来そうな気がするけど」 <br /> 「なんだったら食べてけよ。お好み焼きうまいんだぜ!」 <br /> 「え~、昨日もお好み焼きやったやんか~」 <br /> あ、抹茶が残ったんか。 <br /> 抹茶シュークリームに緑茶て・・・洋食やろか和食やろか。 <br /> 「いや、今日はやめとくよ。明日用事もあるし」 <br /> 「お、日曜日に用事とは。デートですかにゃ~」 <br /> 「違うよバカ。実習だ実習」 <br /> 日曜日に授業があるんか。 <br /> やっぱり大学生は大変やなぁ。 <br /> 「休みの日に実習かよ。大学生は大変ですな~」 <br /> ・・・ん、おんなじこと考えとった。 <br /> 「お前も大学生だろうが」 <br /> 「ふん!我々はお前と違ってキャンパスライフを満喫しているのだ~!な、大阪」 <br /> <br /> </dd><dt><a href="menu:173" target="_top" name="173"><font color="#0000ff">173</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 21:34:12 <a href="id:173" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>kaCwZXG6 </dt><dd>あ・・・やっぱり大阪て言うてる。 <br /> いや、ちゃうねん。わかってるねん。 <br /> 智ちゃんは、よみちゃんには私らのことはまだ秘密にしとくつもりなんやろ。 <br /> それやったら大阪て呼ぶのも当たり前やんか。 <br /> わかってるねん。 <br /> 私は子どもやない。それぐらいわかってるねんで。 <br /> 「そやで~。せっかくの大学生活を楽しまなあかん」 <br /> ・・・うん。大丈夫や。 <br /> 久しぶりによみちゃんに会えたのに私は何を考えとるんや。 <br /> もう大丈夫。大丈夫や。 <br /> 「はぁ~。そう言うと思ったよ。だいたい智は昔から――」 <br /> 楽しそうに昔話をする智ちゃんとよみちゃんは、まるでその当時に戻っとるようやった。 <br /> 私は久しぶりの昔話を楽しむ智ちゃんを、見ることしかできひんかった。 <br /> 嬉しそうな智ちゃんを見とると私も嬉しなってくる。 <br /> ただ・・・心臓らへんがきゅってなる気がしたけど、考えんことにした。 <br /> 昨日よみちゃんが来るって聞いたときより何倍も痛かったけど。 <br /> <br /> </dd><dt><a href="menu:174" target="_top" name="174"><font color="#0000ff">174</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 22:19:22 <a href="id:174" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>kaCwZXG6 </dt><dd>夕方、よみちゃんは <br /> 「また来るよ」 <br /> とだけ言ってあっさり帰っていった。 <br /> こんな時間なんやから、本当にご飯食べていったらよかったのに。 <br /> あれは彼氏ができたっていうのは図星かもしれへんなぁ。 <br /> 「さて、夕飯何にしよっか。買い物行く?」 <br /> そやな・・・まだ冷蔵庫の中身は減ってないような気がするんやけど。 <br /> カレーぐらいやったら出来るんちゃうかな。 <br /> ・・・あ、そうなるとお肉はまたベーコンか。 <br /> 「え?あゆ、どうしたんだよ!?」 <br /> あ、智ちゃんもう私のこと名前で呼んでくれるねんな。 <br /> 嬉しいわ~。 <br /> ん?どうしたってどういうことや? <br /> 私なんかしたんか? <br /> 「どうしたの?何泣いてんだよ~」 <br /> <br /> </dd><dt><a href="menu:175" target="_top" name="175"><font color="#0000ff">175</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 22:22:22 <a href="id:175" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>kaCwZXG6 </dt><dd>・・・泣いとんの?え?私が・・・?なんで・・・。 <br /> あ・・・泣いとるわ。 <br /> あかん。大丈夫なはずやのに。 <br /> 胸がぎゅってするだけやねん。大丈夫やねん。 <br /> 「・・・あ、私が大阪って言ったから・・・?あゆ・・・」 <br /> ちゃうねん。あかんねん。 <br /> 泣くとこやないねん。わかってるねんで・・・。 <br /> 「ちゃうねん。わかってるねん。よみちゃんにはまだ秘密やから大阪て言うのは当たり前やねん。わかってるねん」 <br /> 「ごめん!ごめんな。」 <br /> 「智ちゃんが悪いんやないねん。私が・・・勝手に・・・。泣くつもりやなかったのに・・・」 <br /> あかん。止まらへん。 <br /> しゃべればしゃべっただけ涙も出てくる。 <br /> 私あんま泣かへんのに。 <br /> あかん。・・・もう大丈夫やないかも。 <br /> 痛い痛い。胸がきゅってなるねん。わかってるねんけどなぁ・・・。 <br /> 智ちゃん、ぎゅってして。 <br /> 涙が止まれへんねん。悲しいわけやないのに。 <br /> なんや、いろんな物があふれてまう。ぎゅってして。 <br /> 「ともぢゃん・・・ぎゅっでじて・・・」 <br /> 智ちゃん・・・。 <br /> 智ちゃんも泣いとんの?涙でよう見えへん・・・。 <br /> やわらかい。あったかいなぁ。 <br /> ・・・あ、ちょっと大丈夫になったかもわからん。 <br /> 智ちゃんの背中を腕でぎゅってしたら、胸が締め付けられてたんがとけてくみたいや・・・。 <br /> ごめんな。勝手に泣いてわがまま言うて。 <br /> せっかくしっかりしてきたのにな。 <br /> ああ、今私涙ですごい変な顔かも。 <br /> でもええねん。しばらくぎゅってしてもらっとこ・・・。 <br /> <br /> </dd><dt><a href="menu:176" target="_top" name="176"><font color="#0000ff">176</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 23:01:11 <a href="id:176" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>kaCwZXG6 </dt><dd>「あんな、わかってるねんで。ごめんな。智ちゃん」 <br /> どれぐらい経ったやろか。一時間ぐらいにも感じるし、十分ぐらいなんかもしれん。 <br /> 私は落ち着いたけど、智ちゃんはぎゅってしてくれたままや。 <br /> 「ごめんね。もう大阪って言わないよ・・・」 <br /> 私の頭をよしよししてくれる。 <br /> 「ちゃうねん。多分、もう大丈夫やから・・・。あんな・・・」 <br /> 「・・・」 <br /> 「よみちゃんが羨ましなってしもてん。智ちゃんと過去がきょう・・・共有できるやん。私、そういう人おらへんから・・・。 <br /> そんな無茶言うたらあかんのはわかってるねんけどやぁ・・・」 <br /> 「そうか・・・」 <br /> あ、智ちゃんどこいくの。 <br /> 携帯・・・。 <br /> 「―――あ、よみ?」 <br /> え?よみちゃんに・・・。 <br /> あかんで!私とよみちゃんとどっちとるとか聞いてるわけやないねん。 <br /> あかん、やめ・・・ <br /> <br /> </dd><dt><a href="menu:177" target="_top" name="177"><font color="#0000ff">177</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 23:02:42 <a href="id:177" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>kaCwZXG6 </dt><dd>「私と大阪・・・いや、歩さぁ、今付き合ってんの」 <br /> ・・・あ、ちごた。 <br /> 「うん。え?詳しいことはまた次に話すよ。楽しみにしてて!じゃあ!」 <br /> 智ちゃんは携帯にむかっていつもの明るい口調で話した。 <br /> 「・・・ふぅ」 <br /> 携帯を置いた智ちゃんは私のとこへ来てまたぎゅってしてくれた。 <br /> 「私のファーストキス、あゆだよね。」 <br /> うん。私も初めてや。 <br /> 「初めてエッチなことしたとき、あゆは痛い痛いって言ってたよね」 <br /> 智ちゃんもちょっと痛そうやった。 <br /> 「今度の誕生日は、何がほしい?」 <br /> え?まだまだ先やで。 <br /> 「そういう“これから”をさ、私はあゆと共有していこうと思ってるわけよ」 <br /> あ・・・。 <br /> 「ずっとず~っと先まで共有していくつもり」 <br /> 智ちゃん・・・。 <br /> 「それに、あゆも・・・私と同じくらいよみと親友じゃん」 <br /> 当たり前やと思ってたことやのに・・・やっぱりまだしっかりはできてないなぁ。 <br /> 「智ちゃん・・・。」 <br /> 「あ、また泣いてんな~」 <br /> ちゃうねん。わかってるねん。 <br /> これは嬉しいときの涙やねん。 <br /> <br /> ちゃんとわかってるねんで。 <br /> <br /> 〈終〉 <br /> </dd></p>
<dl><dt><a target="_top" href="menu:169" name="169"><font color="#0000ff">169</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 21:27:43<a target="_top" href="id:169"><font color="#0000ff">ID:</font></a>kaCwZXG6</dt><dd>「あゆは今日休みなんだ?いいな~!」<br /> 髪をとかしながら智ちゃんが聞いてくる。<br /> 私のことを大阪て呼ばんくなってからもうどれくらい経つやろ。<br /> 今が七月やから・・・まだ二ヶ月か、三ヶ月やなぁ。<br /> 「えへへ~、ええやろ?そのかわり今日はおいしい夕飯作っといたるから。」<br /> 布団の中から答えた。<br /> 最初はかわりばんこて言うた給食当番も、今はほとんど私専門や。<br /> 最近はなかなか上手になってきたと思うねんけど・・・。<br /> 「ほんと?じゃあお好み焼きにして!あれおいしんだよ~」<br /> やっぱり。<br /> 初めは焦がしたりしとったけど、今では得意料理の一つやねん。<br /> 智ちゃんがおいしいて言うてくれたで頑張ったんやで。<br /> 「ええで~。冷蔵庫にキャベツも残っとったし、卵も賞味期限切れそうやったでちょうどええわ。」<br /> 肝心なお好み焼きの素は買い溜めてあるし、お肉は・・・ベーコンでええか。<br /> 今日は買い物に行かんで済みそうや。<br /> こういう日は一日中パジャマでおってもええなぁ。<br /> あれ?今日は何曜日やったっけ。<br /> 「じゃあ、期待してるからね!」<br /> 鏡台からすくっと立ち上がって智ちゃんが振り向いた。<br /> 薄めやけど流行りの感じのお化粧。<br /> ピンクのキャミソールに膝下までのタイトなデニム。<br /> 髪はショートカットのままやけど、高校のときよりも大人な智ちゃんは寝起きの私には少しまぶしかった。<br /> 私が体を起こしてベッドに座ると、智ちゃんは私にキスしてくれた。<br /> 小鳥がついばむような短いキスやったけど、<br /> 「えへへ~」<br /> 自然と笑ってしまう。<br /> 今の顔はええ顔やろなと自分で思ってしまうのは変やろか。<br /> そんな私の頭を智ちゃんはよしよしとなでてくれた。<br /> やっぱりええ顔やったみたいや。<br /> 「いってきます」<br /> 「いってらっしゃい」<br /> 智ちゃんはもう一回キスしてくれた。<br /> <br /> </dd><dt><a target="_top" href="menu:170" name="170"><font color="#0000ff">170</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 21:29:47<a target="_top" href="id:170"><font color="#0000ff">ID:</font></a>kaCwZXG6</dt><dd>「いや~、おいしかったよ。ごちそうさま!」<br /> 「ごちそうさま。今日は皿洗いは智ちゃんの番やで。」<br /> 「わかってるって。でもさ~、ベーコンはどうなのよ?豚肉とか無かったの?」<br /> 「え~、おいしかったって言うたやん。それにちょっと多めに入れたんやで。」<br /> 「いやいや、おいしかったんだけどさ、なんか珍しいかなと思って。普通に入れるもんなの?」<br /> 「普通も何も、好きなもんを入れるからお好み焼き言うんやで。」<br /> 智ちゃんも皿洗いくらいはしてくれる。<br /> 台所から<br /> 「じゃあ次はカレー入れよう。カレー」<br /> なんて言いながらもきちっと皿を洗う智ちゃんをみとると、なんやお互いが少し大人になった気分や。<br /> 「智ちゃんてやー・・・ちょっと大人になったよなあ」<br /> 手を止めずに智ちゃんは言う。<br /> 「当たり前だろ~。あんたも結構しっかりしてきたと思うよ」<br /> そやろか。<br /> 高校のときは全然しっかりできんかったんやけどなぁ。<br /> 自分ではようわからん。<br /> でも、私のことを一番わかってる智ちゃんが言うんやから間違いないやろ。<br /> 私はちょっと嬉しなった。<br /> 「そういえばさ、明日って暇?よみが遊びに来たいって言うんだけど」<br /> 明日?あ、今日は金曜日や。<br /> 「ええよ~。よみちゃん久しぶりやなぁ。」<br /> 「よし!じゃあシュークリームでも買ってきてやるか!」<br /> 皿を洗い終わった智ちゃんはリビングに戻ってきながら笑顔で言った。<br /> その嬉しそうな顔を見た瞬間、私の胸がちょっとだけチクっとなった気がした。<br /> <br /> </dd><dt><a target="_top" href="menu:171" name="171"><font color="#0000ff">171</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 21:31:02<a target="_top" href="id:171"><font color="#0000ff">ID:</font></a>kaCwZXG6</dt><dd>お昼過ぎによみちゃんが来た。<br /> よみちゃんが私たちの部屋に来るのは始めてや。<br /> ルームシェアし始めたて伝えてから、来たい来たいとは言うてたみたいやけど。<br /> 「お~、結構広いじゃん。私のとこなんかこの半分くらいだよ」<br /> よみちゃんは高校のときとあまり変わってなかった。<br /> まぁ二、三ヶ月しか経ってないんやし、私も変わってへんか。<br /> それによみちゃんは前から大人っぽい格好しとったからなぁ。<br /> 「田舎だからね~。そんなに家賃も高くないんだよ」<br /> 「楽園やで~。私たちの城」<br /> 部屋を一通り見たら智ちゃんが早速シュークリームを出してきた。<br /> 「よみは抹茶と普通のやつどっちがいい?」<br /> お茶は私が淹れる。<br /> 紅茶なんてあらへんからシュークリームに緑茶なんやけど、ないよりましやろ。<br /> 「でもまさかこの組み合わせでルームシェアとはな。ちゃんと自炊してんのか?」<br /> あ、智ちゃん言うてあげて。<br /> 私が料理結構上手になりました~。<br /> 「うん。ほとんど大阪がしてくれるんだけどね」<br /> <br /> </dd><dt><a target="_top" href="menu:172" name="172"><font color="#0000ff">172</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 21:32:26<a target="_top" href="id:172"><font color="#0000ff">ID:</font></a>kaCwZXG6</dt><dd>え?<br /> 今なんて言うたん。<br /> 私、台所におって聞こえにくかったんかな。<br /> 「お茶淹れたで~」<br /> ともちゃんはもうシュークリームを食べ始めてた。<br /> 「本当かよ。想像つかないな~。まぁ智よりは出来そうな気がするけど」<br /> 「なんだったら食べてけよ。お好み焼きうまいんだぜ!」<br /> 「え~、昨日もお好み焼きやったやんか~」<br /> あ、抹茶が残ったんか。<br /> 抹茶シュークリームに緑茶て・・・洋食やろか和食やろか。<br /> 「いや、今日はやめとくよ。明日用事もあるし」<br /> 「お、日曜日に用事とは。デートですかにゃ~」<br /> 「違うよバカ。実習だ実習」<br /> 日曜日に授業があるんか。<br /> やっぱり大学生は大変やなぁ。<br /> 「休みの日に実習かよ。大学生は大変ですな~」<br /> ・・・ん、おんなじこと考えとった。<br /> 「お前も大学生だろうが」<br /> 「ふん!我々はお前と違ってキャンパスライフを満喫しているのだ~!な、大阪」<br /> <br /> </dd><dt><a target="_top" href="menu:173" name="173"><font color="#0000ff">173</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 21:34:12<a target="_top" href="id:173"><font color="#0000ff">ID:</font></a>kaCwZXG6</dt><dd>あ・・・やっぱり大阪て言うてる。<br /> いや、ちゃうねん。わかってるねん。<br /> 智ちゃんは、よみちゃんには私らのことはまだ秘密にしとくつもりなんやろ。<br /> それやったら大阪て呼ぶのも当たり前やんか。<br /> わかってるねん。<br /> 私は子どもやない。それぐらいわかってるねんで。<br /> 「そやで~。せっかくの大学生活を楽しまなあかん」<br /> ・・・うん。大丈夫や。<br /> 久しぶりによみちゃんに会えたのに私は何を考えとるんや。<br /> もう大丈夫。大丈夫や。<br /> 「はぁ~。そう言うと思ったよ。だいたい智は昔から――」<br /> 楽しそうに昔話をする智ちゃんとよみちゃんは、まるでその当時に戻っとるようやった。<br /> 私は久しぶりの昔話を楽しむ智ちゃんを、見ることしかできひんかった。<br /> 嬉しそうな智ちゃんを見とると私も嬉しなってくる。<br /> ただ・・・心臓らへんがきゅってなる気がしたけど、考えんことにした。<br /> 昨日よみちゃんが来るって聞いたときより何倍も痛かったけど。<br /> <br /> </dd><dt><a target="_top" href="menu:174" name="174"><font color="#0000ff">174</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 22:19:22<a target="_top" href="id:174"><font color="#0000ff">ID:</font></a>kaCwZXG6</dt><dd>夕方、よみちゃんは<br /> 「また来るよ」<br /> とだけ言ってあっさり帰っていった。<br /> こんな時間なんやから、本当にご飯食べていったらよかったのに。<br /> あれは彼氏ができたっていうのは図星かもしれへんなぁ。<br /> 「さて、夕飯何にしよっか。買い物行く?」<br /> そやな・・・まだ冷蔵庫の中身は減ってないような気がするんやけど。<br /> カレーぐらいやったら出来るんちゃうかな。<br /> ・・・あ、そうなるとお肉はまたベーコンか。<br /> 「え?あゆ、どうしたんだよ!?」<br /> あ、智ちゃんもう私のこと名前で呼んでくれるねんな。<br /> 嬉しいわ~。<br /> ん?どうしたってどういうことや?<br /> 私なんかしたんか?<br /> 「どうしたの?何泣いてんだよ~」<br /> <br /> </dd><dt><a target="_top" href="menu:175" name="175"><font color="#0000ff">175</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 22:22:22<a target="_top" href="id:175"><font color="#0000ff">ID:</font></a>kaCwZXG6</dt><dd>・・・泣いとんの?え?私が・・・?なんで・・・。<br /> あ・・・泣いとるわ。<br /> あかん。大丈夫なはずやのに。<br /> 胸がぎゅってするだけやねん。大丈夫やねん。<br /> 「・・・あ、私が大阪って言ったから・・・?あゆ・・・」<br /> ちゃうねん。あかんねん。<br /> 泣くとこやないねん。わかってるねんで・・・。<br /> 「ちゃうねん。わかってるねん。よみちゃんにはまだ秘密やから大阪て言うのは当たり前やねん。わかってるねん」<br /> 「ごめん!ごめんな。」<br /> 「智ちゃんが悪いんやないねん。私が・・・勝手に・・・。泣くつもりやなかったのに・・・」<br /> あかん。止まらへん。<br /> しゃべればしゃべっただけ涙も出てくる。<br /> 私あんま泣かへんのに。<br /> あかん。・・・もう大丈夫やないかも。<br /> 痛い痛い。胸がきゅってなるねん。わかってるねんけどなぁ・・・。<br /> 智ちゃん、ぎゅってして。<br /> 涙が止まれへんねん。悲しいわけやないのに。<br /> なんや、いろんな物があふれてまう。ぎゅってして。<br /> 「ともぢゃん・・・ぎゅっでじて・・・」<br /> 智ちゃん・・・。<br /> 智ちゃんも泣いとんの?涙でよう見えへん・・・。<br /> やわらかい。あったかいなぁ。<br /> ・・・あ、ちょっと大丈夫になったかもわからん。<br /> 智ちゃんの背中を腕でぎゅってしたら、胸が締め付けられてたんがとけてくみたいや・・・。<br /> ごめんな。勝手に泣いてわがまま言うて。<br /> せっかくしっかりしてきたのにな。<br /> ああ、今私涙ですごい変な顔かも。<br /> でもええねん。しばらくぎゅってしてもらっとこ・・・。<br /> <br /> </dd><dt><a target="_top" href="menu:176" name="176"><font color="#0000ff">176</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 23:01:11<a target="_top" href="id:176"><font color="#0000ff">ID:</font></a>kaCwZXG6</dt><dd>「あんな、わかってるねんで。ごめんな。智ちゃん」<br /> どれぐらい経ったやろか。一時間ぐらいにも感じるし、十分ぐらいなんかもしれん。<br /> 私は落ち着いたけど、智ちゃんはぎゅってしてくれたままや。<br /> 「ごめんね。もう大阪って言わないよ・・・」<br /> 私の頭をよしよししてくれる。<br /> 「ちゃうねん。多分、もう大丈夫やから・・・。あんな・・・」<br /> 「・・・」<br /> 「よみちゃんが羨ましなってしもてん。智ちゃんと過去がきょう・・・共有できるやん。私、そういう人おらへんから・・・。<br /> そんな無茶言うたらあかんのはわかってるねんけどやぁ・・・」<br /> 「そうか・・・」<br /> あ、智ちゃんどこいくの。<br /> 携帯・・・。<br /> 「―――あ、よみ?」<br /> え?よみちゃんに・・・。<br /> あかんで!私とよみちゃんとどっちとるとか聞いてるわけやないねん。<br /> あかん、やめ・・・<br /> <br /> </dd><dt><a target="_top" href="menu:177" name="177"><font color="#0000ff">177</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 23:02:42<a target="_top" href="id:177"><font color="#0000ff">ID:</font></a>kaCwZXG6</dt><dd>「私と大阪・・・いや、歩さぁ、今付き合ってんの」<br /> ・・・あ、ちごた。<br /> 「うん。え?詳しいことはまた次に話すよ。楽しみにしてて!じゃあ!」<br /> 智ちゃんは携帯にむかっていつもの明るい口調で話した。<br /> 「・・・ふぅ」<br /> 携帯を置いた智ちゃんは私のとこへ来てまたぎゅってしてくれた。<br /> 「私のファーストキス、あゆだよね。」<br /> うん。私も初めてや。<br /> 「初めてエッチなことしたとき、あゆは痛い痛いって言ってたよね」<br /> 智ちゃんもちょっと痛そうやった。<br /> 「今度の誕生日は、何がほしい?」<br /> え?まだまだ先やで。<br /> 「そういう“これから”をさ、私はあゆと共有していこうと思ってるわけよ」<br /> あ・・・。<br /> 「ずっとず~っと先まで共有していくつもり」<br /> 智ちゃん・・・。<br /> 「それに、あゆも・・・私と同じくらいよみと親友じゃん」<br /> 当たり前やと思ってたことやのに・・・やっぱりまだしっかりはできてないなぁ。<br /> 「智ちゃん・・・。」<br /> 「あ、また泣いてんな~」<br /> ちゃうねん。わかってるねん。<br /> これは嬉しいときの涙やねん。<br /> <br /> ちゃんとわかってるねんで。<br /> <br /> 〈終〉<br /> </dd></dl>

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