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休憩所は死んだように眠る吏族で溢れていた。
狭い所で寝ていて、たった今目を覚ました吏族の一人が肩痛えといいながら作業に戻っていった。
それでも眠れればいい方で、いつも一杯なので台所や藩王の寝室で寝る者まで現れていた。
当の藩王も、ろくに部屋でなんて寝ていなかった。
移動の合間の短い間に仮眠を取るのが常であった。

そういえば最近ちよこの姿を見ただろうか。
思い出してみようとした刹那、次の作業が始まろうとしていた。
やる事は天を覆いつくせると思えるほどにある。


商店街の空の下。
ちよこは弾丸と敵の蹂躙によって瓦礫の山と化した家の前で座っていた。
横にはちよこの事を心配してずっと付いていた新米吏族の青年が居た。
勿論彼も吏族ではあるが、入りたてで右も左もわからない中で今回の戦闘と遭遇した。
仕事のしの字もわからない中、彼は片時も離れる事無くちよこの横に居た。
多分それが今の僕の仕事だ。と自分にいい聞かせていた。半ばクビを覚悟しながら。

ずっと座っていたちよこだったが、小さな瓦礫を少しずつどかし始めた。
個人単位で瓦礫の整理をしている人は居たから、それに合わせるように少しずつ、少しずつ。

…あ、どうして僕はぼんやり見てるんだ。馬鹿じゃないのか僕は。
そうだ、うん、これが今の僕の仕事だ。

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青年は撤去作業を手伝い始めた。
一匹と一人だけで出来る作業量は高の知れたものだが、何もしないよりはいいと信じて。


一匹と一人で瓦礫を除去し始めて3日。おおよその瓦礫が撤去出来た。
周りを見れば撤去作業を進めていた所は大分片付いていた。
勿論、まだ撤去出来ていない瓦礫の方が多いのだが。

青年は近くの適当な瓦礫に座り込んだ。
城に居た人達は今、膨大な作業に追われているのだろうか。
そう考えると自分のしている事がとてつもなく小さな事に思えた。

うつむいて下を向く青年の隣にちよこが座った。
ちよこが言葉を話せれば、貴方は出来る事をしたと言っただろう。
勿論それは話せればの事で、実際に話す事は叶わない。

青年が空を見たので、ちよこも一緒に空を見た。
何所までも続く青に雲がポツリポツリと浮かんでいた。

復興は各所で進んでいた。
大なり小なり、各人が出来る事をしながら。





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最終更新:2007年05月10日 23:44