1.
 さて、涼宮の行動が逆に答えになってしまったロボット問題
クラス的には解決したかのように見えたが、俺的にはこれからが問題だった

峰岸あやの
むしろ今回の場合は悪化したともいえる
当人以外のルートで真実が明るみに出た場合はいまさら「実は…」なんていってもお寒いだけだし
どうにも対応に困る形になった

クラスに露見する前ならば、どうにか別の誤解を恐れない形で個人的に呼び出せばよかったものの

「ごめん」

一度買った不信感はちょいと面倒なファクターを俺にかけてくれることになった

 俺はかばんを持ってそそくさと教室をでていくあやのに盛大にため息をついて
あの場での涼宮の行動が本当に最善だったのかと頭を抱えてみる
転校初日から相当に奇異な行動をとって
これからの学園生活に方にも支障を来たすこと請け合いだ

「よっ、キョン」

「……えっと?」

 八重歯の女の子がなんのようか声をかけて来た
えっと、名前なんだっけか

「日下部みさおだっつっただろ?」
「あぁ、日下部な思い出したよ。そんな怒るな、こっちは三十人の名前を覚えるんだぞ? 一人覚えりゃいいそっちとは違うんだ」

 しかし日下部か、あやのの親しい友人と思わしき人物だが

「怒ってないのか?」
「なにを?」
「お前の友達を怒らせたし」
「私には関係ないだろ?」

 意外ににドライだった
この手の口調やら性格は俺も好ましく思う性質のもので
友情とか人情とかに厚い感じだと思ってたが…

「ん、少し冷却期間が必要なんだよあやのはさ」
「冷却期間?」

 つまり、今は加熱してると…
人間が感情面で熱くなると表現されるパターンはいくつかあるが
まぁこの場合は考えるまでも無いだろう、軽くて怒り強くて憎悪

「べつにさ、お前がロボットのパイロットだって事にいまさらびっくりしないさ」

 元々あのまま涼宮が居なくても絶対隠しきれてねーし
白い健康的な歯を見せて笑う日下部は、やはり少し路線が違う
俺の初めて会うタイプの人間かもしれない
…いやそもそも一見あった程度でその人間をどうこう言おうなんてのは厚顔無恥通り越して
ひたすらに愚かだ

「あやのだって私だって、メールで聞いたりする以前にすでに、こう、インスピ的なもんでさ。確信しちゃってんだよ
 ただ、わかってても、それが目の前に居ると対応ができないっつうの?
 見ると聞くとは大違いって奴かな、少しあやのも混乱してんだよ」

 大丈夫、あやのはわたしと違って頭いーから、お前の事情もわかってくれるって。
日下部は多分その台詞が言いたかったのだろう。満面の笑みで俺にそう言い放った


 でも、『わかる』と『理解する』は違う
ましてや立場の違う人間の、伝聞での情報なんて一見どころか一聞にすらならない

「もしなんかあったらわたしが仲立ちしてやるしさ」

「…なんで」

 いきなりそんな話を持ちかけてくれるのだろう
自分の友達が嫌う人間に自分から話しかけて、あまつさえ仲立ちしてくれると
そんな下手を打てば友達が自分すら嫌ってしまうようなことを
なんで初対面の俺にしようとする?


「だって、お前いい奴じゃん」


 なにを言ってるんだこいつは
俺がたったいま、初対面の人間のことを主観で決めないように自分に言い聞かせたと知っての行動か

「キョンさ、あの時自分から言おうとしたろ? まぁ涼宮にとめられたけどさ
 でも、涼宮が気付いたこと、間近で顔を見てたわたしが気付かないと思ったか?」

 …どうだろう、突然言われたら思ったかもしれないが
いまなら特に疑うような気分にはならんな


「あやのだって、気付いてるはずなんだよ
 だってのにさっきは話を最後まで聞かないで逃げちゃったからな

 わたしはあやのの友達だから、間違ったときは助けない
 間違ったことも教えてやんない」

 それに教えなくてもすぐ気付くしな
そう、へへっと照れくさそうに笑い、頬をかく日下部
なんだろう、その笑みを見てるとなんか変な気分だ
わりかし珍しいコンディションだなこれは

俺はこいつと友達になりたいと心から思った

 思ったことを素直に口にだしてみた
すると日下部はきょとんとして

「なに言ってんだ? わたしとキョンはもう友達だ」

 漫画とかでよくある状況、こんなことがあるものかと思ったこともあったが
しかし、嬉しいものだった

「んで、わたしとキョンが友達なんだ、友達の友達は友達! キョンとあやのも友達!
 だから、そうだな仲立ちってのは取り消し」

 二人の仲直りを手伝うだけだ
日下部はピースを作り宣誓する様に手をかざして俺に言った

「じゃ、明日は仲直りしろよー、バイビー」

 すたこらさっさと教室を駆け足で去っていった
…しかしバイビーは無いな


   2.

 ピピピピピッ

携帯の着信用の電子音がなる
自分が普段使ってる携帯じゃない

「……っ!」

バックの内ポケットから携帯をとりだし画面を見る
番号は表示されず、でるのは着信中の文字のみ
当たり前だった、この携帯にかけてくるのはSOSの関係者のみ
一々番号を通知するまでも無い
だが、この携帯がなるのは非常時のみじゃないのか!?
警報はなってない、あたりにも異常はないと思うのだが

「もしもし!」
「あ、キョン君、ちゃんと携帯持ち歩いてるね~」

 慌ててでて、聞こえてきたのは暢気なこなたの声だった
非常事態とは対極にある人間が出すような声色だ 

「…なんのようだ? 緊急事態ってわけじゃなさそうだが、いまじゃなくちゃいかんのか?」

 なんとなくフェイントというか罠にかけられた気分で
少し口調にそれがでてしまったのだが、しかし当のこなたはまったく気にした様子も無く

「ん~、というかあれだね、むしろいままでやってこなかったのが遅かったくらいだよ」
「は?」
「まぁとにかく家に帰らないで、今からこっちに来てくれる? まだ学校にいるはずだよね?」
「あ、あぁそうだが。なんだ、携帯に発信機でもついてるのか?」
「まぁまぁ、半分あたりだね。 とにかく急いでね~、帰るの遅くなるからさ」

 了解、と言って通話終了
緊急事態ではないが、でもそれなりにSOSに関係する重要な用事があるらしいことはわかった
ま、神人が来ていないのならいいさ
肩にカバンを背負う。……端末は置いていこう、みんな持ってるものだから盗む奴なんか居ないし
宿題もでてないからな、問題ない。意外と重いんだよコレ

 二階にある二年の教室をでて廊下を左に、階段を下りて下駄箱へ
そういえば三階建ての建物のため下から1.2.3.なのか上から1.2.3.なのかどっちなかわからないな
…どっちだろう

カタッ

「ん、あぁ長門さんか」
「……」

 そういえば同じクラスだったか、速攻で起きた騒動とハルヒの存在でかき消されてた

「そういや、長門さんは呼び出し食らったのか?」
「……長門」
「ん?」
「長門でいい」
「え? あ、あぁわかった」

 なんだろう、この街ではさん付けなどを嫌う傾向があるのか?
それとも単にフレンドリーなのか? いや、でも長門にそんな感じはないから、やはりさん付けがやなのだろう

「で、長門は呼び出しあったか? 俺はさっきこなたから連絡があったんだが」
「…泉三佐から? 私には無いわ」
「そっか、ふぅん なんなんだろうな。まぁいいやサンキュ」
「サンキュ…」
「ありがとうって事だよ」

 俺はスニーカーを取り出して変わりに上履きをしまい
地面をつま先で小突きながら下駄箱を出た

「……エヴァは大量の電力を消費するから基本で62秒
 内部電源をフルに活用しても最大で5分までしか動けない、と?」

 ジオフロント内部、ピラミッドさながらの本部の会議室で俺とこなた
さらに喜緑さんを交えてちょっとしたお勉強タイム

「そういうことになるね」

「5分て…見たことも無い化け物との戦闘をそんな短時間で終了させられるわけ無いだろ」

「そうね、だからアンビリカルケーブルというのを使うの」

「アンビリカル…へその緒か」

「YES、中途半端な知識の具合がグーだねキョン君」

「お前は黙ってろ」

 中途半端って言うんじゃねぇ
確かに浅く広い知識は逆に躓きやすくはあるが、キチンと気をつけられれば十分役に立つぞ

「このアンビリカルケーブルは、基本的にエヴァの腰部に装着する
 いわゆるコンセントのようなもの、特殊な状況でなければエヴァはこれをつけて出撃するのが常だから
 まぁその状態なら残り時間を気にする必要はないわ」

 喜緑さんは長い白衣を着て、だてかどうかよくわからんが
フレームの細い眼鏡もかけてホワイトボードの前で伸縮する銀の棒を持って話す

「戦闘中が敵の攻撃でケーブルが切断されないように注意するように
 神人はほぼ半永久的な行動が可能だから、ケーブルが外れて内臓電池が切れればエヴァは無力よ」

 神人を前にしてこちらが行動不能になる、それはつまりイコールで地球の終わりを意味する
…らしい

「第三新東京、またジオフロント内には
 だからそういった場合に備えて、いくつかぱっと見はただの建物の兵装ビルと呼ばれる物が
 各所に設置されてます」

 喜緑さんは俺に一枚の地図を渡す、俺はそれを受け取り目を通す
それは第三新東京の地図で、所々に赤くマジックで印がつけてあった

「一応エヴァの中のモニターでも確認できるけど
 確認しながらよりは覚えたほうが戦闘は円滑に進められるから覚えといてね」


   3.

 ……つまりはそういうことだった
こなたが俺をわざわざ緊急用の携帯で呼び出した理由

  ”勉強会”

確かに初搭乗からすでに学校の一日目が始まるまでの間に
一週間が経過、次の敵がいつ来るかわからない状態でこれは流石に十分に遅いといえた

「…ん? この青い印はなんなんですか?」

 誰に対しての発言かは口にしては居ないが
反応したのは喜緑さんだけでこなたは別の書類に今は目を通してる
―敬語の時は喜緑さん、タメの時はこなたとなんかわかれてる感じだ

「あぁ、それは簡単に言えば武器庫みたいなものよ
 基本的にエヴァ初号機に装備されてる武器は肩のウェポンラックのプログレッシブナイフだけ
 それ以外の武器は各自敵に合わせて自分の判断で取ることになるわ
 出撃の際にも持ってけないこともないけど、銃は弾切れとかあるからね
 代えはいくらでも必要なのよ」

 なるほど、つまり前回の戦闘でもし俺がそれを把握できてればもっと有利に戦闘が進められたということか
こりゃ、とっとと頭に叩き込まないとな。自分の命をかけてまで怠けるほど俺も怠惰な人間じゃない
「……しかしライフルやナイフはある程度そのままでわかるけど
 わけのわからない名称の武器も多いな…その辺の説明もいいですか?」

 続けて喜緑さんに質問をする
こなたでもいいが、聞いたところによるとこなたは作戦部長で喜緑さんは技術部長
武器等は喜緑さんの設計がほとんどらしいから、ここでは彼女に聞くのがベストだろう
その辺はこなたもわきまえてるらしく、横から口を挟むことも少ない

「そうね、まず近接用の武器。つまりはプログナイフやカウンターソードとかね
 あとは中、長距離、パレットライフルやハンドガンといった銃火器ね
 まぁ、一応いまある武器全ての説明はするけど」

「習うより慣れろっていうじゃん? あとでシミュレーションとかするから」

 シミュレーション、ってことはエヴァに乗ってなんかやるのだろうか

「そうだよ、まぁ仮想空間でのデモンストレーション見たいな感じ」

 こなたはそれだけ言ってまた書類に目を戻す
いまは本当にとりあえず場に居るだけらしい

「―――まぁこんなものかしらね」

 軽く説明、のわりには既に時計の短針が一週してしまった
しかし剣に斧に薙刀にナイフに槍に近接の武器は一通り揃ってるらしい
また銃火器も、いわゆる拳銃、バズーカ、ライフル、更にはガトリングまで
なるほどうまく使えればかなり戦局に影響を及ぼしそうな面子である

「でも、あくまでも敵は神人よ
 対人戦とは違うから、武器があるといって油断しないようにね」
「了解」

 喜緑さんとの会話はそれで一旦終了、彼女はホワイトボードに書かれた
マーカーを消す作業に移ってしまった
…しかし喜緑さん、意外と絵心がある
設計図を描いてるだけはあって、武器の形状の詳細まで記憶してるのだろう
消えていくボードの上に描かれた武器の絵は非常にわかりやすかった

「さて、じゃあ話も終わったみたいだし
 ここからは私の出番だね」

 一時間書類を読み続けるという、意外にも集中力があるというところを見せられた後
こなたはその書類を乱雑に重ねてまとめあげ、ついてくるように、と言って部屋を出て
俺もそれに続く

「シミュレーションってなにをするんだ?」

「ん~、前回の戦闘での経験を活かす為に
 まずはキョン君にはエヴァに乗ってもらい、シンクロをしてもらう
 あとは第三新東京の街並みを再現した仮想空間で仮想の敵と戦ってもらう
 その仮想空間には当然、さっき喜緑さんから教えてもらった兵装ビルとかもあるから
 色んな武器を使って効率よく敵を叩く練習、その他武器の場所ケーブルの交換等
 とにかく本来なら実践の前にやるべき訓練をやるんだよ。
 これからは毎日とは言わないけど出来るだけ多く来て訓練に参加してちょ」

「了解」

 シンクロってのはどうやらエヴァと搭乗者の同期のようなものらしい
シンクロ率ってのがありそれがエヴァと搭乗者の一体化のレベルを表す
俺のが現在45%

100%を完全にタイムラグなしで自分の体と同じように感じて動かせるとしての45%
こなたの説明は単純だったが故に喜緑さんとは別のベクトルでわかりやすかった

「単純に考えてシンクロ率は高いほうがいいの
 それだけ動きがスムーズになるわけだからね
 いまのキョン君じゃ攻撃を目視してから避けようとしたのじゃ遅すぎる
 45%は半分程度の反応速度になるわけだからね
 反応速度が高くなれば物が避けやすいのは至極当然の事
 またATフィールド、この間のバリアの事ね。
 あれもシンクロ率に比例してずっと強度があがる」

 そこでこなたは一区切りおいてから
ただし、と長い髪をかきながら続ける

「キョン君も知ってのとおりエヴァに乗って戦ってる際に受けたダメージは搭乗者にフィードバックされます」

「あぁ」

 腕を折られたあの感覚は流石にもうしばらくは夢に出そうだった

「エヴァとのシンクロ率の向上は、だから一体感の向上と同一
 つまりシンクロ率があがれば上がるほど、帰ってくるダメージもでかくなるの」

「…ちょ、ちょっと待ってくれ。じゃあ俺があの時折られた腕の痛みは」

「あの時点でのシンクロ率は40%
 痛みも、四割と見るのが妥当だろうね
 まぁ私が体感したわけじゃないから、どうにも断言できないけど」

 意図的に腕を折られるのがそこまでのダメージになるってのか?
おいおい、嘘だろ。あれで四割って、十割のバックになったら―本当に俺の腕が折れるのか?

「その可能性は十分にあるわ」

 喜緑さんの再登場だった
白衣と眼鏡を外して服装はスーツに変わっていた
どうやら形から入るタイプらしい

「実例があるわけじゃないけど、でも100%以上のシンクロをしてる状態の搭乗者は
 エヴァの肉体の一部というレベルまで昇華されるの、その状態でエヴァの本体に損傷があれば
 搭乗者の体に実傷があってもおかしくないわ」

「つくづく、こえぇな」

 軽口のつもりで言ってみたが、どうにも力ない
とんだもんに関わった

「でもま、シンクロ率がそこまで上がれば
 そのバックを考慮してありあまる能力の向上が見越せるわ
 攻撃をそもそも受け付けないほどに強靭ならば、ダメージなんて気にする必要なんてないもの」

「ま、そゆこと。とりあえず話はズレちゃったけどそろそろインダクションモードに入るよ」

 言われる、と同時にエヴァの操縦席(エントリープラグと言うらしいがちょいとまだ名前に慣れない)の壁面が
狭い灰色の実験室の映像から変わって、暗い夜の第三新東京市に変わる
月も無く星もない、コンピュータに作られた仮想空間
ピッとスピーカから音がして横を見ると、カウンターが現れて5:00と表示される

「では作戦内容を説明します
 EVA初号機はC-3ブロックまで移動、のちにケーブルの手動接続
 さらにD-3ブロックの兵装ビルからパレットライフルを装備し
 現れる目標に対し三点バーストで攻撃、撃破」

「了解」

 ガシャン、と最終安全装置が外されて
固定されて伸ばされた背中が開放され、同時にカウンターが動き始める
頭の中の先ほどまでの会話で芽生えた恐怖心やその他の邪魔な感情
それらが全て消え去り思考が一気に冴え渡る
現在位置はE-4、C-3は東に2ブロック南に1ブロック行った先
直線距離にすれば約370m
人間の最高の反射速度は0.1sec
曰く一般の人間の平均はそれを大幅に下回る0.5sec程度
さらにエヴァのタイムラグで二倍プラスα
つまりは約1秒

 振り向き、目的の電源ビルを正面に構え一直線に飛ぶ
ビルの上に着地、少し間をおいて前転しビルとビルの間に下りる

「…だめだな、一秒ビルの上で突っ立てたらいい的だ」

 次、ビルとビルの合間を縫うようにして曲がり、進み、曲がり、進み

「…これもダメだ、走り続ければ早いが、小刻みに方向転換すと時間がかかりすぎる」

 すでに三十秒

 しかしLの字で直線直線と移動すればやはりそれはそれで危険だ
背中を狙われたら反応できないし
それに前回の戦闘で俺は走った後とまれずに敵のフィールドに体当たりをかました
前回の経験を活かすならもっと効率的なやりかたを模索しなくちゃいかんな

「……」

 膝を曲げて、腰を落とし、上体をかがめ、跳ぶ
風を切り、立ち幅跳びの要領で、しかし距離はそんな物の比ではない

 だがさっきと同じ事を今度もやったわけじゃない

今度はビルの上に着地するのではなく”ビルとビルの間に着地する”
その反動でかがんだ体制のまま、また跳ぶ
着地、跳ぶ、着地、先ほどまでとは比べ物にならない速度で進む

少し離れた場所にある、窓も何もないビル
俺はそれに手を掛けてシャッターを開け、中にあるケーブルを背中に繋いだ

88:88.88

カウンターは止まる

「よし、次! D-3に行ってライフルの装備!」

「了解」

ケーブルをビルからあるだけ引っ張り出し、隣のブロックに移動
今度は飛ばず走らず、ゆっくり慎重に進む
ビルの横から顔を出して前方確認、後にすばやく次のビルへ
大体一分半、武器の入ってると思わしきビルに到着
同じようにシャッターを開いて中からパレットライフルを手に取る

プラグ内に武器の名称と残弾数が書かれたウインドウが出てくる

「うん、ずいぶんスムーズにできるじゃん
 じゃあ模擬戦闘に入るよ」

言うが早いか近くにあったビルが一つ
十字架の炎を浴びて灰になった

「…おいおい、こんな攻撃食らってないぞ?」

 ビルの隙間から確認したのはこの間の緑の巨人だったが
しかし俺はあいつがこんな破壊力のあるビームをだしてるところなんて見て無いぞ

「うん、この間のキョン君との戦闘じゃ使われなかったけど
 街を歩いてるときになんどか使ってたんだよ、あとでVTR見る?」

「いや、いい。……やっぱり見る」
「おっけ、じゃあ適当にやっつけちゃってよ、攻撃してくるけどあくまでも練習
 二,三回攻撃があたれば倒せる設定になってるから」

「了解」

 左手をライフルの銃身下にあるマガジンにかけ、右手を引き金に
顔をビルから二度だしてタイミングを計りジャンプをしながら
確認した敵の座標に弾を撃ち込む、三発打ち込んだら一拍次にまた三発
劣化ウラン弾特有の砕けた粉塵を撒き散らしながら、着弾

 緑の巨人はあっけなく爆発、消滅した

「次!」

 またも自分の近くのビルが爆散
振り向いて、間に障害物がない直線に敵を確認
三発打ち込んで横のビルに隠れる

『Boo』

 小ばかにしたアルファベットが三つ
どうやらヒットしなかったらしい

「もう一度、目標をセンターに入れて」

 ビルから飛び出して、正面から銃を向ける

「スイッチ!」

 火薬の音、手にかかる反動の負荷
弾は複数飛び出し、偽の神人に吸い込まれて敵を消し去る

 その後、さらに3体の敵を始末したところで
パレットライフルの弾もタイミングよく終了

「あがっていいよ」

 とのこなたの言葉に従って本日の訓練を終えた
プラグからでて肺から液体を吐き出す、嘔吐とは違う気持ちの悪さ
喉の痛みに鼻の奥や気管やらあちこちが痛く、強く咳き込む

「いや、いやいや、凄いじゃんキョン君。パーペキだよ
 命中率も八割そこそこだし、子供の時から訓練を続けてるようなテスト結果だよ!」

 プラグから階段を降りるといきなりこなたがやってきてまるで自分のことのように笑っていた

「いやー、気体の大型ルーキーだね」
「そうか、その言葉をそのまま受け取ると俺はどうやら人間じゃないようだな」

 期待な

「あ、そうそう、キョン君に合わせたスーツができたから」

 これ、とビニールでパックされた紫色のなにかを渡された

「…こんな派手な色のスーツで成人式行ったら、モラルのない若者と思われるぞ」

「そのスーツじゃないって」

 どうやらこのスーツとやらは、LCL内でのシンクロを円滑に行うための物で
次の実験からはこのスーツを着て行うように、だってさ

「それっていまできたのか?」
「いや、ちょい前」

 だったら、今回の実験の前に渡せ
おかげでまた学生服をクリーニングしなくてはならない
Yシャツはなんか赤っぽい色が若干ついちゃってるし

「まぁまぁ、とりあえずシャワー室行ってくれば?」

 私もいまの実験のデータを文章にして喜緑さんに渡して終了
片手を軽く振ってまた去ってしまうこなた、どうにも忙しい奴である

「ふぅ、ま、言われたとおりにシャワー浴びてくるか」

 口の中に血の味が薄く残ってるのも
体から血の匂いがするのも、俺はごめんこうむる


「…今日の晩飯どうするかな」

いまいちシリアスになりきれない俺だった

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最終更新:2008年07月02日 21:43