M-Tea*5_26-風立ちぬ(三)堀 辰雄
2013.1.19 第五巻 第二六号
風立ちぬ(三)
堀 辰雄
冬 / 死のかげの谷
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定価:200円 p.141 / *99 出版
付録:別冊ミルクティー*Wikipedia(9項目)p.52
※ DRM などというやぼったいものは使っておりません。
※ 現代表記版に加えてオリジナル版を同時収録。
※ JIS X 0213・ttz 形式。
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おしえてだんみつ先生~! 週刊サントラくん*
十一月二十日(略)
「なにを考えているの?」とうとう彼女が口を切った。
わたしは、それにはすぐ返事をしないでいた。それから急に彼女のほうへふり向いて、不確かなように笑いながら、
「おまえにはわかっているだろう?」と問い返した。
彼女はなにか罠(わな)でも恐(おそ)れるかのように、注意深くわたしを見た。それを見て、わたしは、
「オレの仕事のことを考えているのじゃないか」と、ゆっくり言い出した。「オレにはどうしてもいい結末が思い浮かばないのだ。オレはオレたちが無駄(むだ)に生きていたようには、それを終わらせたくはないのだ。どうだ、ひとつおまえもそれをオレといっしょに考えてくれないか?」
彼女はわたしに微笑(ほほえ)んで見せた。しかし、その微笑みはどこかまだ不安そうであった。
「だって、どんなことをお書きになったんだかも知らないじゃないの」彼女はやっと小声で言った。
「そうだっけなあ……」とわたしはもう一度、不確かなように笑いながら言った。「それじゃあ、そのうちにひとつ、おまえにも読んで聞かせるかな。しかしまだ、最初のほうだって人に読んで聞かせるほどまとまっちゃいないんだからね」
わたしたちは部屋の中へもどった。わたしがふたたび明かりのそばに腰をおろして、そこにほうりだしてあるノートをもう一度手に取り上げて見ていると、彼女はそんなわたしの背後に立ったまま、わたしの肩にそっと手をかけながら、それを肩ごしにのぞきこむようにしていた。(略)
十一月二十六日(略)
節子はもう目を覚ましていた。しかし、立ち戻ったわたしを認めても、わたしのほうへは物憂(ものう)げにチラッと目をあげたきりだった。そして、さっき寝ていたときよりもいっそう蒼(あお)いような顔色をしていた。わたしが枕もとに近づいて、髪をいじりながら額に接吻(せっぷん)しようとすると、彼女は弱々しく首をふった。わたしはなんにも訊(き)かずに、悲しそうに彼女を見ていた。が、彼女はそんなわたしをというよりも、むしろ、そんなわたしの悲しみを見まいとするかのように、ぼんやりした目つきで空(くう)を見入っていた。
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堀 辰雄 ほり たつお
1904-1953(明治37.12.28-昭和28.5.28)
小説家。東京生れ。東大卒。芥川竜之介・室生犀星に師事、日本的風土に近代フランスの知性を定着させ、独自の作風を造型した。作「聖家族」「風立ちぬ」「幼年時代」「菜穂子」など。
◇参照:Wikipedia
堀辰雄、『広辞苑 第六版』(岩波書店、2008)。
難字、絶望せよ
見こう見し
むしとりホイホイ
目附 → 日附 【日】
以上1件。底本確認済み。
スリーパーズ日記*
ポメラ DM100 ファームウェアのアップデート続報。3週間目。
「乾電池アイコンの減少タイミングが改悪された」と思ったのは勘違いと判明。アップデートのさいに「パワーマネジメント」が初期設定にもどっており、「電池設定」が「eneloop」になってなかった。
14日(月)電池交換、18日に電池アイコンが1レベル減少、輝度を1つおとす、19日に電池交換指示。20日、再度、電池交換指示。ほぼ、1日2時間程度の使用でちょうど1週間だから、どうやらアップデートによる変更はない模様。
しずけさや、雪にしみいるまりのおと。
大寒。
2013.1.20:公開 玲瓏迷人。
目くそ鼻くそ、しだひろし/PoorBook G3'99
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最終更新:2013年01月31日 16:35