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魔王渋谷有利陛下の体調不良で、十貴族が集まる円卓会議が中断した。
そのまんま休憩を兼ねて昼食と相成った。

「ところでグウェン、さっき眞王の話したとき、なんで邪魔したんだ?」
有利の問いにフォン・ヴォルテール卿グウェンダルは静かに応えた。
「それが眞王の意思だからだ」
「眞王の・・?」
有利の表情に、驚きととともに浮かぶかすかな不安をグウェンダルは見て取った。
眞王のご意思ともなれば、さしものの有利も不安を過らせるか・・
さて、この幼い魔王をどう説明して納得させようか・・

その時、入り口のドアが開き、大賢者、村田猊下が姿を現した。
しかも、肩の上に、小さき姿の眞王陛下とともに・・

グウェンダルは人知れずほっと胸をなでおろす。
恐れ多くも、眞王御自らによって意思を語られたなら、さしものの陛下も引き下がろう・・

案の定、眞王陛下のお言葉は、双黒の魔王を納得させたようだった。

有利の先ほどまでのぎこちなかった表情が、打って変わり、魔王としての決意と矜持に彩られる・・・ことを期待したのだが・・・・
相変わらず自信のない笑顔だ・・
そんなことでは十貴族とは対等に渡り合えんぞ、有利・・

それにしても、眞王陛下、放たれた一言で、魔王の揺れ動く気持ち見事に引き締められた・・流石であられる・・

「ところでさ~~、村田たちは昼食はまだなんだろ?」
魔王ののんびりとした声に、グウェンダルは、ふと我に帰った。
「え?・う・・うん」
遠慮がちに応じられる猊下に、有利陛下はにっこりほほ笑みながら席を勧めた。
「どうせなら、ここで食ってけよ。村田に席を作って。」
「ああ、僕はあいてる隅っこでいいよ。」
ギュンターが顔色を変えた。
「いいえ、偉大なる眞王陛下と大賢者さまを粗末に扱うなどとは!
猊下に最上級の椅子を用意しなさい」
 ギュンターが侍女たちにてきぱきと座の用意を命じ始める。
 急に食卓が色めき立った。
村田猊下は気の毒げにかぶりを振る。
「大丈夫だよ、フォン・クライスト卿」
「眞王は・・えーと、席を・・って、こんなに小さいからなあ」
「ああ、気にするな。俺は大賢者の肩の上でいい。」
「それじゃあ僕が落ち着いて食事が出来ないよ、眞王」


そうして、有利陛下と向き合う形で猊下と眞王陛下のための席が用意された。
 ちょうどグウェンダルと臨席する形になる。
テーブルの上には小さいが豪奢なクッションが眞王のために用意された。
その上にちょこんと腰を下ろす眞王の姿にグウェンダルの瞳は釘づけにされた。
「ほら、眞王、お水」
猊下が眞王の前に置かれたナプキンの上の小さなミルクピッチャーに水を注ぐ。
「本当は、酒が飲みたいのだがな」
と言いつつ、眞王はピッチャーを抱える。
「今の君には無理だよ。ようやくこの間ものが食べられるようになったばかりだろ?」
「へえ、生き返るというのも大変なんだな」
感心する有利に猊下はほほ笑んだ。
「正確には、魂を実体化させるんだけど・・
お酒は当然、肉や魚、穀類やイモ類も体が受け付けないけど、茹でた野菜や果物なら大丈夫みたいでね。
ほら、眞王、リンゴ。とってやろうか」
猊下はフォークの先にリンゴを一切れ刺すと、それをさらに小さく割って、かけらを眞王に渡した。
かけらといえど、眞王陛下にはやっぱり大きいようで・・
大きなかけらの小さな端っこにパクリとかぶりついた。

刹那ーー
グウェンダルの中で、何かがぎゅーーんとはね踊った。
それは見る間に衝撃となり、グウェンダルの体を打ちすえていく。

ーーかっ・・かわいい!!ーー

リンゴの実を口にする眞王陛下の姿が・・なんとも愛らしくて・・
餌を必死についばむ愛玩用の小動物が、なんと今、ここにいるではないか!
手のひらに乗るほどの小ささ・・
手の上に包み込んで、そっと撫でたら感触のよさそうな色鮮やかな黄金色の髪・・
大賢者を見上げる、目の覚めるように青いつぶらな瞳・・

ああ。捕まえたい!!
その胸に抱き寄せたい!!頬ずりしたい!!
いっそ部屋に連れ帰りテーブルの上に飾っていたい!!!

しかし・・
一瞬流れた自分の思いに、彼はひどくおののいた。
い、いや!恐れ多くも眞王陛下になんと不敬なことを・・!!

わ、私は、なんという不埒な考えを抱いたんだ!!
今すぐ、理性を保て、グウェンダル!!
しかし、心の中で理性と衝動が、激しく葛藤を繰り広げ・・・
    • 胸が苦しい・・・・

「・・・い、お~~い、大丈夫か?グウェンダル・・」
遠くで有利陛下の呼ぶ声・・


「おーい、大丈夫か?グウェンダル」
「兄上、いったいどうなさったのです」
「大丈夫でしょうか、急に一点を凝視したまま微動だにしなくなりましたねえ・・」
「ギーゼラさん呼ぼうか・・」

村田猊下はため息をつきながら、リンゴを黙々と平らげている眞王に、
そっと耳打ちした。

「どうやら、君の毒気に当てられた人がいるようだねえ・・」
「・・・・・・・・・・」