【2012年企画】ゆっくり霊夢の日帰りタイ旅行♪

※ ゆっくりを用いる必然性低し。
※ 実話を元にしたフィクションです。






「れいむっ! れいむっ! オニギリ作ってね! おべんと作ってね!」
「ん~……ちょっと早すぎじゃないのよ…………」

早朝の博麗神社での出来事でした。
布団の中でゆったりと睡眠を楽しんでいた博麗霊夢の上では、わくわくそわそわとした表情のゆっくり霊夢がぽすっぽすっと跳ねています。
霊夢は自らに飛び乗ってくるゆっくり霊夢をむんずと掴んで壁に向かってぶち当てると、
緩慢な動作で体を起こして台所に向かいます。
彼女は眠そうにふぁぁとあくびをひとつあげながら、炊飯ジャーからほかほかのご飯を取り出しました。
この作者の幻想郷では文明レベルが現代日本並みなのです。

「具は何がいいの?」
「ツナマヨ!」
「はいはい、ちょっと待ってなさいね」

霊夢は慣れた手つきで綺麗な三角形をしたオニギリを作り、それを二つタッパーの中に入れて、更にそれを風呂敷で包みます。

「はい、出来たわよ」
「ありがたうっ!」

ゆっくり霊夢は抱擁の代わりなのかそのぷにっとしたほっぺたを霊夢の足にすりつけて感謝の意をあらわします。
それから霊夢はゆっくり霊夢に風呂敷をかぶせました。
首がない一頭身のゆっくり霊夢に風呂敷を被せると、まるで泥棒のほっかむりのように見えました。

「それにしても旅行ねぇ……。まぁ、気をつけて行ってきなさいよ」
「いってくるね! ゆっくりしていってね!」

そうなのです。
ゆっくり霊夢は先日思い立ったものがあって、今日日帰りの旅行に行くことにしたのです。
おみやげを持って帰ってくることを条件にしなければ、物ぐさな霊夢はわざわざオニギリなんて作ってくれないでしょう。

「そう言えば肝心なこと聞いてなかったんだけど、どこに行くの? 何でも外の世界のどこかって言ってたじゃない」

そう、ゆっくり霊夢が今日向かうのは外の世界です。
わりとあっさり幻想郷と外の世界は行き来できるのです。
ただしそれはあくまでも自己責任。
見目麗しい少女の姿をした妖怪が無用心にも外の世界に遊びに行って、幽白の垂金権造さんみたいな人に捕まってskmdyな目に会ってもそれは自己責任です。
だけどそんな薄い本世の中にはあまり無いのが不思議ですね。


さぁ、今日の旅行先は外の世界。
ゆっくり霊夢がどこへ向かうのか。
それは――。





「タイさ!」



~ゆっくり霊夢の日帰りタイ旅行♪~





最近ゆっくり霊夢はとある映画DVDを見ました。
その映画のタイトルは「トム・ヤム・クン!」。
古式ムエタイを体得した青年(演じたのはトニー・ジャー。台詞がほぼ‘象を返せ!’のみ)が、友達である象を誘拐した密輸組織とドンパチやらかすアクション映画です。
「これ死んでるんじゃね?」「絶対病院送りになったスタントマンいるよねコレ」といった凄まじいまでの過激なアクション、4分以上のワンカットでの殴りこみシーン(段々主役が疲れて動きが鈍くなっていくのがリアル!)、連続関節技49人怒涛抜き、カポエラ→刀剣使い→レスラーの3連続バトルや絶望的なラストバトルからの覚醒など、やたら熱い要素が盛り込まれたB級アクション映画の傑作です。
その映画を見たゆっくり霊夢は思いました。
「タイいきてー! ムエタイ見てぇぇ!」と。

「楽しみだね!」

そういうわけで早速転載アフィリエイトサイトで稼いだ貯金を下ろして行くことにしました。
一緒に旅行に行く程親しい友達は人間にも妖怪にもゆっくりにもいないのでぼっち旅です。
「別にいいさ、そっちの方がマイペースでゆっくり楽しめるしね!」とゆっくり霊夢は悲しみを含んだ笑顔で言いました。
いつもの一頭身だと流石に‘幻想郷→外の世界’間の検閲に引っかかってしまうので、借り物のボディにパイルダーオンしたゆっくり霊夢。
降り立ったのはタイ内某地方のとある町。
まず第一に思ったことはコレでした。

「あっちぃね…………」

そうです。
暑いのです。
タイは高温多湿な気候にあり、11月~2月の乾期でも平均気温は26~27℃。
ましてや今は6月。
平均気温29度・湿度87%。
暑さのピークの日本の都市部程ではないにしろ、とにかく蒸し暑くて蒸し暑くてたまらないのです。
そんなゆっくり霊夢の目の前に現代日本の人々なら見慣れた店舗、セ○ンイレブンが見えました。
そうなのです、タイにもコンビニはあるのです。
本のコーナーには仏教徒をターゲットにした雑誌があるなどの違いはあるものの、品揃えの良さは日本のコンビニと遜色がないと言えるでしょう。
さて、ここで一つ問題があります。
タイ語を喋れる人は日本には殆どいないでしょう。
そんな言葉の通じない国ではどうすればいいのか。
コレについては実のところあまり問題がありません。
タイ語が喋れるように事前に勉強するにこしたことはありませんが、喋れなくてもようは意思疎通さえ出来ればいいのです。

① 日本⇔タイ用の辞書及び翻訳本を持っていき、指で指したり筆談しながら意思疎通する。

これが一番確実です。
特にイラスト付きの翻訳本を用いると良いでしょう。


② 英語を使う。

日本人が授業で英語を学ぶようなことをタイでも行っているため、お互いたどたどしい英語でも結果それなりの意思疎通は出来ます。
中学卒業レベルの英語さえ身につけていれば、取りあえず買い物ぐらいは何とかなります。

以上の方法はある程度治安の良い国なら他の国に旅行に行った際もある程度応用できます。
もっともタイはおおらかな国なので、『サワディーカップ(こんにちは)』『コップンカップ(ありがとうございます)』『マイペンライ(大丈夫です)』『ペッ(辛ッ!?)』さえ覚えておけばある程度大丈夫です(女性の場合はカップではなくカーと伸ばす)。

「こっぷんかー(ありがとうございました)」

レジのおばちゃんにお礼を言ってコンビニを後にするゆっくり霊夢。
取り合えずペットボトルのお茶を購入しました。
暑くて暑くて、甘ったるいジュースなんて飲む気にはなれないからです。
ゆっくり霊夢はお茶を手に取り、爽やかな苦味とその中にあるほんのりとした甘さを期待して口にしました。

「ゆべしっ!!?」

ですがその期待は無残にも打ち砕かれました。

「なんじゃこりゃああああああああああっ!!?」

そう、タイのお茶は甘いのです。
お茶の中に砂糖だか蜂蜜だか知りませんが何かが入っていて、とにかく甘いです。
日本みたいな苦いお茶を期待するとまずびっくらこきます。
そもそもタイ人は甘いものが大好き。
慣れない人なら翌日のお通じの時に激痛が走るほど辛いタイ料理を食べ、それを即虫歯になりそうなほど甘いジュースで中和するという食生活を多くのタイ人が送っています。
高血圧の人と糖尿病の人――というか年寄り全般の体に優しくない国です。

「わけがわからないよ……」

さすが外国。
日本とは味覚も常識も異なります。
ゆっくり霊夢は甘いものもそれは一応好きですが、甘いものが飲みたければジュースを飲むのでお茶に甘さなんて求めていません。
醤油味の煎餅と共にするのが蜂蜜でも混ぜたようなやたら甘いお茶だったらまず耐えられないでしょう。
もし霊夢だったら発狂してちゃぶ台をひっくり返すに決まっています。
まさにカルチャーショック。
異国の常識とのご対面。
更に道端に視線を向けると、喉が渇かないのかクッキーを飲み物を飲まずにむしゃむしゃ食べているおっちゃんがいます。

「……妖怪だよアレ」

この日帰り旅行、目的は勿論ムエタイ観戦なのですが、興行は夜なのでそれまで時間を潰す必要があります。
言い換えれば昼は観光に当てられるということなのですが、生憎昼は前述したように猛暑。
ゆっくり霊夢は正直言って動きたくありません。
ゆっくりしたいです。
ですからある公園にある椅子とテーブルが置かれた広場の中の、木陰の席でゆっくりすることにしました。

「ゆ~…………」


流石に暑い日中ゆえかみな気だるげです。
さて、そこでゆっくり霊夢は考えます。
そろそろお昼を食べなくてはと。
霊夢から作ってもらったオニギリはあるのですが、まだこれを食べる気にはなれません。
よって何か買って食べる必要があるのですが、先ほどのコンビニではお茶のショックにより食べ物を買うことを忘れてしまいました。
そこでゆっくり霊夢は暑さにうだりながら辺りを見回しますと、屋台があります。
タイは田舎でも50m歩けば二軒は屋台が見つかるほど、屋台が多いです。
人の多い区画だと屋台だらけの屋台フェスティバルと表現できるほどあります。
ゆっくり霊夢は色めき立ちました。
せっかくだから現地の食べ物を食べよう。
美味しくって評判と話題のタイの屋台料理に舌鼓をうとうとします。
ゆっくり霊夢はずるずるとボディを引きずりながら、屋台まで歩み寄りました。

「何食べよー……」

ガパオ・ガイ(鶏肉のバジル炒め。やたら旨い)にしようかな、それともカオトムマッ(焼いたバナナのちまき。甘くて美味い)にしようかな、グリーンカレーなんかもいいかもね(ココナッツミルクを調味料に使った緑色のカレー。辛くて美味い)。
さぁゆっくり霊夢は期待に目を輝かせながら屋台で売っている品物を覗き込みました。




寿司でした。


「…………」

寿司です。
ジャパニーズSUSHIです。
ナマモノです。
ここは炎天下です。
直射日光ビンビンです。
どっからどう見てもO-157だらけです。

「………………」

どうやらコイツ等は寿司という食べ物についてあまり理解が深くないようです。

隣の屋台を見ました。

生肉です。
な・ま・に・く・です。
ここは炎天下です。
直射日光ビンビンです。
O-157大繁殖です。

「…………まじか」

更に隣を見ました。
生レバーです。
な・ま・れ・ばーです。
ここは炎天下です。
直射日光ビンビンです。
O-157の満員電車です。

「………………ありえねー」

どう考えて傷んでいます。
ですがタイ人は直射日光に置いた生肉であろうと「焼けば食える」と皆笑顔で言います。
「だったら寿司はどうなんだよ。生のまま食べるじゃねーかアレ」と、疼いたジャパニーズスピリットによる突っ込みは「マイペンライ(大丈夫だ。問題ない)」とあっさりスルーしてくるから始末に終えません。
食中毒を起こせば日本だったら責任問題で店は廃業ですが、タイではお腹を壊す客のほうが悪いのです。

「…………」

ゆっくり霊夢はずるずると体を引きずって元の席に戻りました。
隣の席ではパパイヤサラダをおかずにしながらタイ米を食べているおっちゃんがいます。
サラダをおかずにして米を食べる。
日本人からすればありえないことですが、タイ人からすれば普通の光景です。
このパパイヤサラダはソムタムと呼ばれ、細く切った青いパパイヤ、インゲンを専用の鉢に入れた後、.唐辛子、ニンニク、ライム、ナンプラー、砂糖、を適量加え棒で叩いて作ります。
ピーナッツや干しえび、生の蟹をまぶす、‘ご飯にあう’サラダです。
ただし生の蟹には寄生虫がいる時もあるので、やっぱりお腹を壊さないように気をつけましょう。

「……もうやだおうちかえる」

たった一日の日帰りの旅行とはいえ、ゆっくり霊夢は霊夢のことが恋しくなりました。
ゆっくり霊夢はここでの食料調達を諦めます。
タイ料理は美味と評判とはいえ、人それぞれ合う合わないはあるのです。
ましてや辛い料理と甘い料理が多くて極端な上、香辛料をふんだんに使うタイ料理は好き嫌いがコレでもかというほど分かれます。
しょうがないと思ったゆっくり霊夢はいそいそと霊夢に作ってもらったオニギリを取り出しました。
大事に大事にとっておいた霊夢の作ったオニギリを、ゆっくり霊夢はここで食べるように決めました。
登山するわけでもないのにわざわざお弁当を作ってもらった理由。
わざわざ外国に行くのに、一食を現地の食べ物以外で行う理由。
それには一つワケがあります。
それは子供の頃のお弁当を作ってもらう機会のもつわくわく
何が入っているのかな、何を作ってもらえるのかな。
その高揚感というものは、多くの人々が経験してきたものだと言えるでしょう。
インドア派ゆえにお弁当を作ってもらえるような機会のないゆっくり霊夢。
ですのでゆっくり霊夢は楽しみでした。
誰かの、霊夢の作ったお弁当を食べるということが。

「しあわせ~!」










しかし残念ここは高温多湿の国タイでした!
オニギリは腐ったオニギリになっていたようだ!
ゆっくり霊夢は毒状態になったとさ!








さて、ゆっくり霊夢は数時間もがき苦しみましたが何とかムエタイの興行が始まる時間には間に合ったようです。
時間に余裕の無い日帰り旅行なのに、更に毒状態で時間を無駄にしてしまいました。
観光なんて殆ど出来ない残念旅行です。
せめて肝心のムエタイは見逃さないようにしようと思ってスタジアムに行って入場料を払うと、取りあえず空いている席に腰を下ろします。
スタジアムの中は年季の入ったリングを中心にしてその周囲に興奮した観客が入ってこないように金網が張られ、更にその周りには木で出来たベンチが段になっています。
ゆっくり霊夢は取りあえず高みの見物を決め込もうと、上のほうの席に座りました。
ですが更に上のほうにVIP席があるようです。
何か黒幕っぽいおっちゃんが数人います。
タイマフィアです。
マフィアである彼らに対してあまり良い印象を持たない人が多いのは当然のことでしょう。
一応彼らの弁護をするのなら、彼らは興行主でありスポンサーであるので、彼ら無くして興行が成り立ちません。
それすなわち経済が動かなくなり、却って治安が悪化するのです。
取りあえず仕事する地元ヤクザみたいなものだと考えてください。
間違えてもアクション映画の真似して喧嘩売らないでください、撃たれます。

「ゆっくり楽しむね!」

さて、ここで一つ説明をいたしましょう。
ムエタイ。
基本のパンチと蹴り、そして殺傷力の高い肘と膝を用いた、最強の立ち技格闘技と呼ばれています。
特に本場タイにおけるレベルの高さは半端なものではありません。
外国人でムエタイでタイのランカーに通用するような選手は稀です。
それが例えその選手が祖国では強豪や国内チャンピオンと呼ばれるレベルの選手であろうと、です。
実際ムエタイ及びキックボクシングの世界では、どこぞの団体が勝手に作った世界チャンピオンのベルトよりもタイのラジャダムナンとルンピニーの二大スタジアム(オタ業界における、とらのあなとメロンブックスみたいなもの)のチャンピオンベルトの方が価値があると言われています。
そしてそのムエタイ史上最強の選手と呼ばれている、膝蹴りと首相撲(相手の首や体を掴んでコントロールしながら膝・肘に繋げる技術)の名手ディーゼルノーイ・チョータナスカン。
彼の強さを格ゲーで例えるとこんな感じになります。

  • 硬直しないオートガード&スーパーアーマー常備。
  • 画面半分以上が射程の打撃投げ(威力極大。更にボタン連打で追撃して威力アップ)。
  • 更にシステム上飛び道具無し&自キャラが大ジャンプが出来ない。ジャンプ出来たとしても着地時にディーゼルノーイに確実に掴まれる。
  • 打撃投げ→打撃投げ→打撃投げ→相手ダウン→起き上がりに合わせた打撃投げの無限ループハメ。

はい、チートです。
対戦で使ったら確実に友達を無くします。
事実こいつは強すぎてほぼ勝ってしまうため、ムエタイに必須のギャンブルが成り立たなくなって引退に追い込まれました。






話が脱線しましたが、その間にお客さんがずいぶんと集まってきました。
いよいよ試合開始です。
これから先どのような血沸き肉踊る戦いが繰り広げらるのか、ゆっくり霊夢はドキドキしながら固唾を呑みました。



ミドルキック(オーイ!)

ミドルキック(オーイ!)

ミドルキック(オーイ!)

ミドルキック(オーイ!)

ミドルキック(オーイ!)

ミドルキック(オーイ!)




「じみ~……」

そう、本場のムエタイの試合は基本的に地味です。
一応肘や膝などの強力な技も打ちますが、それ以上に一撃KOしにくいミドルキックとボディへの膝の割合が多すぎます。
そもそもムエタイは判定勝利を美徳としている上、更に1~2Rはお互いに様子見するのが暗黙の了解です。
理由はムエタイはギャンブルと切っても切り離せない競技なので、その1~2Rの間の動きで掛け率を変動させるためです。
更になんと言っても試合を最後で見ても殆どKOがありません。
理由としてムエタイ選手達は幼少の頃より実践をこなしてきた事による卓越されたディフェンス能力が挙げられます。
彼らは対戦相手の動きにおける筋肉の収縮を見て、それだけで次にどの攻撃がどの部位に来るのか予測してしまうのです。
そしてそれ以上に、ムエタイは5R終了後の判定によって勝敗を決めることが美徳とされているためです。
賭けは5R終了後の判定を前提に進行していくので、KOして早々と試合を終えてしまうとギャンブルが成り立ちにくくなってしまうため、観客から苦い顔をされてしまいます。
よってKOばかりしてしまう選手は賭けが成り立たなくなるため、最悪干されて引退です。

「かえろっかな……ゆっくりしててもつまんないよね……」

ですが彼らを侮ってはいけません。
ムエタイ選手達はけして攻撃力不足で倒せないのではありません、単に観客の空気を読んで倒す気がないだけなのです。
それはゆっくり霊夢がその場を後にしようとしたその時でした。

肘によって切り裂かれた瞼の上からの出血。
膝蹴りによって打ち抜かれた腹部の鈍い音。
そして無残に崩れ落ちる青コーナーの選手。

なんと肘・膝からのコンビネーションによる、血まみれの凄惨なKO勝利が起こりました。
どうやら片方の選手がもう片方の選手の顔面に誤って前蹴りを当ててしまい、当てられた選手が腹を立ててMAXパワーで突っ込んだようです。
実はタイ人は足の裏を非常に不浄のものとします。
そして頭には神様が宿っているというように教えられています(よってタイの子供の頭をなでると嫌がられる。神棚に触られているようなものだから)。
そんな足の裏で顔面に打たれるということは、顔面と神棚と先祖代々のお墓に唾を吐きつけられるようなものです。
そうなればもはや空気を読んで判定に持ち込むような真似をするようなことはしません。
ですのでタイ人の顔面には決して前蹴りを打たないようにしましょう。
冗談抜きで病院送りにされます。







ゆっくりしていってね!!!
ゆっくり達がよく用いる言葉です。
意味は勿論歓迎ですが、実はそれ以外の意味もあるのです。
それはその場を荒らす不届き物に対して「とっとと出てけや」という煽りの意。
ゆっくり達は北斗の拳で笑顔で無抵抗をしていたらあっさり殺されたおっちゃんのような行為はしないのです。
敵に対して無抵抗を貫いてやり過ごそうというのはもっとも愚かな選択だからです。
ですので煽ります。
煽っておちょくって悪口言いまくってやりたい放題かまします。
それで帰って自分や周囲に迷惑が掛かっても知ったこっちゃありません。
何故なら無抵抗によって蹂躙されることで生じる被害のほうが、遥かに甚大だからです。



タイ人。
彼らは金と顔面前蹴りさえ絡まなければ、実はとても穏やかな気性の民族です。
『マイペンライ(大丈夫だ、問題ない)』という言葉を口癖にして、のんびりゆっくりゆったりとした生活を好みます。
直射日光の下においた生肉でも取りあえず焼けば食えると主張するように、細かいことも細かくないことも気にしないのです。
ですが彼らは自分とその友人を脅かす敵とは徹底的に戦うのです。
そんなタイ国だからこそ列強の脅威に晒されるアジア圏にありながら、植民地とされることが無かったのかもしれません。

「受け売りだけどね!」

試合を見終わったゆっくり霊夢はスタジアムからの帰り道でそのようなことを考えていたのでした。
ゆっくり霊夢がトム・ヤム・クン!を見ていて一番興味があったことは実はムエタイの技術ではありませんでした。
もっとも興味があったこと、それはゆっくりを好む気性でありながら、敵とは徹底的に争うというエピローグにおける主張。
そんなタイスピリッツ。
彼らの穏やかさの中にあった激情。
それを勝手に感じて一方的に持ち帰ることが出来て、この日帰りのタイ旅行に満足して幻想郷に帰るゆっくり霊夢でした。






そんなとってつけたようなゆっくり要素を加え、この話はおしまい。おしまい。







おまけ




「ただいま! ゆっくり出迎えてね!」
「あ、ゆっくりお帰り。どうだった? 旅行は楽しかった?」
「それなりさ! ごはん食べながら話すね! おみやげあるよ! お酒あるよ! フルーツもあるよ!」
「あら、気が利くじゃない。おぉよしよし~」
「ゆ~♪」




「そういえばね、ゆっくり。さっき人里のスーパーに行って夕飯を買ってきたのよ」
「ゆ~♪」
「それがなんとタイ直輸入の料理がお惣菜だったの。何かやたら安かったから買ってきたわ。だから今日もタイに行ってきたゆっくりはひょっとしたら食べちゃっていたかもしれないけど我慢してね」
「ゆ~……」
「本当に不思議よね~。海の無い幻想郷だと外の世界の新鮮な海産物は高いのに、何であんなに安かったのかしら?」
「れ、れいむ……。何買ってきたの?」


そして霊夢は、この上ないほど嬉しそうな笑顔で悪夢のような現実を口にするのでした。


「寿司よ!」


  • なあにおもいっきり酢締めしてあればマイペンライ -- 名無しさん (2012-06-09 20:36:52)
  • 確かにゆっくりあんまり関係ないかもしれませんが、それだけにツッコミが中々シュールで面白いです。
    ゲーム実況動画のSS版といったところでしょうか。ゲームじゃなくて現実なのが恐ろしいところだZE!
    小ネタ満載で面白かったです -- 名無しさん (2012-06-10 01:32:46)
  • とりあえず幻想郷には身体をレンタルしてくれる所があるという事実に吹いた。 -- 名無しさん (2012-06-16 00:04:39)
  • マイペンライの和訳…イーn(ry -- 名無しさん (2014-03-22 20:35:07)
名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2014年03月22日 20:35