- 648名前:それぞれのはじめて、大阪篇[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 00:54:03 ID:HVen7QYT
- 感想は>>637と>>647で申し上げたので、ここでは割愛させていただきます。
申し訳ありません。
あゆちよ前段階、大阪片想い投下します。
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今日な、いつも通りちよちゃんと帰ったんや。
ほんでな、私、なんとなく、なんとなーくやで、言うてみたんよ。
「みんなって、彼氏おらんのかな」
まだ子供のちよちゃんに聞いても、知らんもんは知らんやろうけど、
私っておつむがしっかりせえへんからな、聞いてしもうたんや、つい。
「みんな?」
「あの、よみちゃんとか榊ちゃんとか」
ちよちゃんはまだ汚れとらんから、迷わずにこう答えおった。
「いるかもしれませんけど、ちゃんとした人たちですから。
みんないつかは結婚して、幸せな家庭を築くんでしょうね」
せや、結婚や。
彼氏、語尾は上げても上げんでもええ、彼氏ってのは、
将来結婚するためにあるんやな。
「家庭かー、ほんなら、私もちよちゃんと一緒に……」
あれ、なんや?
今、おつむのどっから来よったか知らんことを口走った気がするわ。
「私ですか?」
あかん、ちよちゃん、あからさまにおかしな顔しとる。
「なんでもあらへん」
私が首を横に揺らしてもな、ちよちゃんのきれいな目ん玉はずっとこっちを見ておった。
- 649名前:それぞれのはじめて、大阪篇[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 00:55:24 ID:HVen7QYT
- 全くいらん話をしてもうたわ、しゃあない、話題変えよ。
こういう時こそ、もっとしっかりせえへんとあかんのになあ。
「ちよちゃんは、好きな人おるの?」
あんまし変わってへんなあ、そう気づきよっても、もう遅かったんや。
「分かりません」
せやな、子供やからな、普通は分からんよ、当たり前やがな。
「ほな、た……タイプとか、あるんか?」
ちよちゃんは人差し指をあごに当てて、ちょっと考え事をしとったわ。
ほんで、しばらくして返ってきた答えがこれや。
「うーん。 そうですね、しっかりした、大人らしい人がいいですかね」
あかん、これはあかん!
ボケた私にとっては何となく、別にちよちゃんに好きになってもろーたりとか思うてへんけど、
雷さんにへそを取られるくらい痛い気分がするわ。
「ほ、ほんならや。 しっかりした、しっかりした、大人っぽいタイプの人間ってのを挙げてみぃ」
「大阪さん、どうしたんですか? 不安な事でもあったんですか」
ああ、あかん。
しっかりしておりたいのにちよちゃんに心配されるとか、ほんまもんのアホやわ。
「ええよ、ええ、気にせんでええよ、あの、え、あのな」
表現に使える言葉が足りひん。
今、私の中にぐるぐると巡り巡っておるこの感情ってもん……なんやろう。
「大人らしい、ですか。
あ、すぐに思い浮かぶのは……」
ちよちゃんが次に出しよったのは、榊ちゃんの名前やった。
私が狙っとる人、ちゃうで、別にああいう意味で、
かおりちゃんみたいな意味で狙っとるんやない。
それやったら、私はちよちゃんを狙って、あ、間違うた。
また変な思考回路が組み込まれおったわ。
私の頭は、中身は空っぽやけど、ぐっちゃぐちゃに混乱しとった。
しっかりした人、大人らしい人、二つの言葉がずっと残っとってな、
どっちにも当てはまらん自分に、あかんって心の中で叱り付けたりしてみた。
- 650名前:それぞれのはじめて、大阪篇[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 00:56:50 ID:HVen7QYT
- ちよちゃんはついでにもう一発、追い討ちをかけてきたんや。
「榊さん、大事な時に優しく守ってくれますから」
「そ、そんな仲になっとったんか!」
「はい? そんな仲、って……それはまあ、友達ですから、ねえ」
さっきから私の考えがおかしくなっとんのは、きっと頭のネジが全部飛んでもうたからなんやね。
冷静にならんと、冷静に。
「あはは、せやな」
「大阪さんは?」
今度はちよちゃんの方から、不意打ちや。
私の好きな人、誰やろう。
そう思うたら、いつの間にかちよちゃんの方に目が行っとった。
なして? どないして?
今日の自分、夢の中におるんちゃうかな。
ちよちゃんは私とおんなじ女の子、しかもほんまなら同級生やない、小学生か中学生かそんくらいや。
これって、いわゆる……ロリコン、ってもんやないか。
よくニュースとかでおっちゃんが捕まっとる、あれや!
怖ぁ、まさか、私も犯罪者になってまうのん?
「大阪さん、おーさかさーん」
「え、な、なんや?」
動揺を止めきれん私は、何を聞かれたのかすっかり忘れておった。
「大阪さんの好きな人は誰ですか、答えてください」
ああ、なるほど、話はまだ続きやったな、でも、あかんわ。
「……教えへんで」
理由は聞かんといて、と心の中で付け加えながら、私はちよちゃんに言うたんや。
「ずるいですよ、私のだけ聞いて」
「ちよちゃんにはおらんのやろ? 私もおらんってことでええ」
この場は平和に済ませんとな。
ともちゃんみたいなんと違って、これ以上問い詰めたりはせえへんやろ。
「あの、それって。 ……いる、ってことですよね」
- 651名前:それぞれのはじめて、大阪篇[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 00:58:35 ID:HVen7QYT
「へ、なして、なんでや」
「本当にいないんだったら、すぐにいないって言いますから」
私は、まったく、自分のアホさに絶望したわ。
ほんまにその通りや、最初からおらんって言うておけばええのに。
しゃあない、もう教えたる。
「ヒントだけ、な?」
「別にそれでもいいですから、教えてください」
くだらん冗談を楽しむように笑っとったちよちゃんが、
「ちいちゃくて、かわいくてな、しっかりとした……すぐ近くにいる、女の子」
この瞬間に、真ん丸の目を見開いて、驚いた顔をしよった。
あかん。
今日、ちよちゃんが好きだと初めて気づいて。
一時間もせんうちに、正直な気持ちを伝えることになったわ。
そう思うたんやけど。
「へえ、やっぱり大阪さんはすごいですね」
……あっけなく受け流されとるね、私。
「でも、私が聞いてるのは、好きな男の人の話ですよ」
せやな、やっぱり好きな人は男の子であらんとダメなんやろうなあ。
やっぱし、女の子はあかんのかなあ。
- 652名前:それぞれのはじめて、大阪篇[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 01:00:30 ID:HVen7QYT
ようやく分かったで。
私は、改めて、しっかりせなあかん。
ちよちゃんは絶対に私のことを友達としか思うとらんけど、
しっかりとした人が好きやって言うんなら、ちよちゃんの望むようにならんと。
「大阪さん、いるんですか」
それにしても、なしてちよちゃんを好きになったんやろ。
かわええからかな、純粋やからかな、いつも一緒におるからかな、よくよく考えると分からへん。
今は、ちよちゃんやから、としか言えんわ。
「おおさかさん?」
「おらんよ」
「本当ですか?」
「今は、おらんよ」
ちよちゃんは、女の子やもん。
「なあ、ちよちゃん」
「はい」
大切な、友達やもん。
「このまま、ちよちゃんちにお邪魔してもええかな」
「いいですよ。 いつでも開いてますから」
せやから、友達から、一緒の友達から始めても、ええやろ?
「あー、ほんま、ありがとな」
「そんな、お礼を頂く必要はありませんよ」
のろまな私の歩きが、ほんのちょっとだけ速くなったみたいやった。
私はしっかりせんとあかん。
そのためにも、ちよちゃんと、しっかりと仲良しになっていかんとな。
しっかり、しっかり。
(おわり)
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