「近衛さんはすばらしい人員でした、よく働くし成績も優秀、おまけに人付きあいにも如際がなく、まったく」
 秘密戦艦のよけ藩にあてがわれた一室で、しめやかな葬儀が行われている。

 杉で作られた棺桶に近衛と書いた人の重さ人形、BGMは某アニメシリーズのテーマソング。遺影にはあくびをした写真を使用し、添えられた花は子供が運動会の時に作るボンボンで飾り、添えられた花まで丁寧な造花をメンバー総出で作っている。

 未婚号降下作戦を祝しての近衛生前葬、アレな人のささやかな復讐であった。

「結局のところ未婚号では通常の降下作戦はほぼ無理です」
 整備士達は徹夜で作った降下計画書を片手にパイロットに説明を続けている。

 未婚用のパラシュートや降下装備をぎりぎりまで制作したが、信頼性にはほとんど自信がない、それだけに作戦と、元々内蔵された装備をつかっての限りなく限定的おそらく次は内だろうという案が出ている。

「どうやっても間接が砕けて粉々になるか衝撃でパイロットが死ぬのは避けれません、といわけで、結界を使用してこのように角度をつけて降下、姿勢制御などはオートで、近衛さんはほぼ、結界の維持に集中してください」

 モニターに映る映像では囲むように鋭角状に作られた結界の中でウルトラポーズで手を突き出した未婚号

「この巨大結界を近衛さんが形成し、角度や、速度をこの簡易結界で調整します」
 地球の外郭に添うように表示されていた映像を拡大
「さらにこの簡易結界の中に空気をバラストで調整して、噴射しながら軌道をかえます。理論上は平気ですので、ご安心を真空実験でも八回は成功しました」

 近衛の両手を整備士達が押さえる、説明をしていた整備士が顔を覆う
「最悪の場合はオートパイロットで、敵陣にそのまま突っ込んでください、かなりの運動エネルギーが出るはずですから、案外致命的な一撃になるかも」

 猿轡をかまされてそのままパイロットルームに連行されていく

 いけ、近衛、がんばれ近衛、世界は君を待っている!!
(嘉納)


(降下中の未婚号/総名代佐佑介)

(降下中の未婚号/総名代佐佑介)


その一歩を踏み出せば、後は流れに任せるしかない。
未知の先行きに不安だったのはほんの少し前。
しかし、今は、未婚号のコクピット内から見る清廉な青色を目にするパイロットの意識は不思議なほど静かだった。
「絶対に成功する」
「無事に降下できるよ」
「皆の思いが届いて、安全に着地しますように」
「未婚号、頑張れ!」
「近衛さん、頑張って!」
出発する前、国の仲間達一人一人が未婚号に触れていた。
パイロットと未婚号の安全を願って、「思いは届く」その言葉を信じて、懸命に応援の思いと祈りを込めていた。
「整備はばっちりしてるからな。かわいいコイツを頼むぜ」
未婚号の入念なチェックと整備を済ませた整備士達。
彼らもパイロットと未婚号の無事を願っていた。
たった一人の空間のはずなのに、次々に思い出される人々の顔が一人ではないことを教えていた。
「行こうか、未婚号」
相棒に声をかける。
返事があるわけがないのに、なぜか柔らかい空気を感じた。
コクピット内に魔力が流れたような感覚。
温かなそれは未婚号の返事のようで。
国の仲間の一人だと思ってくれてるのだろうか。
パイロットは小さく笑った。
「さあ、行こう」
その言葉を合図に未婚号は迷いなく足を踏み出した。
目指すは地上。
必ず行ける。
冷静に状況を判断し、未婚号を信じる。
風を味方に、未婚号は今地上に舞い降りようとしていた。
(ツグ)


(未婚号着地成功/総名代佐佑介)

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最終更新:2007年08月04日 21:09