蘇るになし藩国

「イタ+玲音の場合 」


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瑠璃や九重がいる区画とは反対側、発掘兵器の置かれている区画で蠢く影が二つ。
人型形体を取っている発掘兵器の肩に乗り、首周りの装甲をいじっているイタと玲音だ。
「ここがこうなって……そうするとこっちが動くようになって……こうか。あれ?」
「そっちじゃなくて、そこの窪みに上の板がずらせる気が。……まるでパズルですわね」
「おお、確かに。これで装甲板が外れました。一枚だけですけど」
余りにも暇なので内部構造の調査と、出来る事なら調整をしよう、という事になったのだった。
なにせこの発掘兵器、未知の──否、遺失技術の塊である。
まだ知られていないのではなく、かつてあって、もう失われた技術。
装甲一つとってもどこがどうなっているのかよく解らない複合装甲で、
何かで打ち付けてあるとか溶接してあるとかではなく、一枚外すだけで何時間もかかっている。
(……おりがみとかが概念的には近いか。正しい手順で開かないと破れる。それをもっと大規模に、硬い素材でやってるわけだ)
おりがみってよりは知恵の輪かな。と玲音は自分の中で近そうなものに当てはめて考える。
結局は正しい手順を踏みさえすれば外れる、ということで──
「ふう、一ヶ所外れればあとは結構簡単ですわね」
玲音が考え込んでいた間にイタががんがん装甲を外していた。
むきだしになった骨格部分がようやく見え始めるが、やっぱり何がどういう構造なのかはさっぱり解らない。
「これがどうやって変形するんでしょうね……」
私服の猫耳メイド服のエプロンで手を拭いながらひとりごちる玲音。
「さぁ。とりあえず動かす分には念じればいいだけですから構造を理解する必要はありませんけれども」
「念じるだけで動くというのはつまり思念を読み取って何らかの形で機動データに変換しているんですよね」
「そうとも限らないのでは?」
例えば──例えば。と二度も念入りに前置きしてイタが続ける。
「この子には意思があって。ついでにテレパシー的な超能力があって。
 それで私達が思ったように動いてくれているんだと──
 そういう考え方も出来なくはないですわ」
「……まぁ否定はできませんね。なにしろ勝手に増えるようなシロモノですし。
 そう考えるとこいつもうちの国民なわけですか」
玲音、肩に座りながらその肩をぽんぽん叩く。
「そうだとしたら迂闊に廃棄できませんね」
その仕草は既に同胞に対するそれであった。

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発掘兵器の調査は進んでいく。
イタと玲音だけでなく、時折瑠璃や月空が混ざる事もあった。
調査が進むとそれなりに手を加える事が出来そうな箇所も見つかり、
いくつか性能的に足を引っ張っていると思われる問題を解消できたりもした。

全ては来るべき時のために。
青森で成し得なかったぽちのための戦い、その時に向かって発掘兵器の調整は進められていた。


テキスト執筆 九重 千景@になし藩国

(イラスト イタ@になし藩国)

最終更新:2008年08月15日 22:07