蘇るになし藩国

になし+Arebの場合


「唐突だが余は忙しい」
「あたしも割といそがしいんだけど」
約半年ぶりに顔を合わせたになしとArebの会話である。
しかし会話の内容に反して刺々しいところは二人とも微塵もなく、ただの近況報告のようでもあった。
久しぶりだな、の一言もなく、離れていた時間を感じさせないようなやりとり。
「忙しいんだが、ここで降りたくはない。余の国だ、と胸を張って言えるほど何かを出来たとは思わないが国に愛着もある」
否定すべきか肯定すべきか悩んで、Arebは結局 うん、と頷くだけに留めた。
「だが、今の状況で続けるとなれば前以上に国民に迷惑をかける事になるだろう・・・」
この王の優先順位は1にぽち、次に国と国民で自分の事は4か5かあるいはもっと下である。
自分の意思を通すために国民に無理をさせるのをなにより嫌う王であった。
それが存分に解っていたので摂政は、半ば呆れながら、それでも表情には全く出さずにこう言った。
「じゃあみんなに聞いてみればいいと思うよ」
「そう言うと思って瑠璃に頼んでおいた。皆の意思を確かめてくれ、と」
「・・・皆って割にはあたしなんにも聞いてないけど」
「今聞いてるではないか。それで結果がここにまとめてある」

瑠璃:になし藩で継続希望 まだ色々心残りもありますし。
玲音:なにかと思い入れの深いになし藩国で頑張りたいです。
イタ:になし藩国が在るのなら参加したいと思います。
九重:になし藩で続けたいですが藩王とか摂政が忙しいなら無理にとは。
若月:そんなに参加できないと思いますが幽霊国民でいいなら続けさせてください。
アイビス:になし藩国が続投するなら、になし藩国民で最後まで物語を見届けたいです。
月空:この国が好きなので続けたいです。

「だそうだ。其方はどうする」
「なんか外堀埋められたような・・・まぁ元々やる気だったけどね」
これだけみんなが続けたい、と言ってくれているのに摂政が降りるわけにもいくまい。
そもそも話が来た時点で十分予想できる結果ではあった。
その程度には国も藩王も好かれているはずだし、何より王女をなんとか幸せにしてあげたい、という目標で繋がっているのだから。
「で、藩王さまこそ覚悟は決まった?」
その問いかけに対して、になしは不敵に微笑むだけだった。
それを見て似たような笑みを浮かべたAreb。しかしその顔が即曇る。
「こう、話が早いのはいいけどまだ問題があると思うんだ」
「うむ。指揮官がいない」
「いないねぇ」
以心伝心、というわけではなくものすごい切実な課題なだけである。
になしが最後に指揮を執ったルージュの戦い以降、全てのイベントで
部隊を出しただけとか強制リクエスト受けただけとか非常に芳しくない結果に終わっている。
指揮官が居ても大して変わらなかった可能性もあるのだが、
国の指揮を執る人物がいないせいでスタート地点にすら立っていないという感覚は強く、その辺りの対策は必須と言えた。
「悪いけどあたしはもう懲りたわ・・・暗殺防げなかったのが悔しくてどうにも」
かつてぽち暗殺作戦で総指揮を執ったArebではあったが・・・本人はその事を今でも悔やんでいた。
そもそも人の上に立つ、人に指示を出す事を自分には向かないと思っている少女であり、
かつ自分以外の生き死にがかかる戦争で指揮を執るという事を恐れている節がある。
人の上に立つのが苦手な人間が摂政をやっているのはどうかという意見もあるだろうがそこはそれ、
彼女の人徳の賜物とも言える。普段は暴力振るうイメージばかりだが国民からの信頼は篤いのだった。
「九重さんも前指揮の話振ったとき『自分ボンクラですから・・・』って言っていきなり壁に向かって体育座りしだしたし」
「秘書官偵察作戦とマジックアイテム探しで首吊りたくなったらしいな」
ちなみに九重の実績。
秘書官偵察作戦→僚友二人見捨てて1人だけ脱出。
マジックアイテム探し→無理なリクエスト狙ってあやうく全滅という所でダイスに救われて中間判定。
以上。確かにボンクラを自認してもおかしくはない戦績。
はぁ。と同時に溜息を吐く二人。
「まぁ、いざとなれば余が出る」
「え、ほんと?」
「たぶん出れると思う・・・出れるんじゃないかな。ま、ちょっと覚悟はしておけ」
「藩王宣言きた」
余が出る、と聞いて反射的に笑顔になった直後、急に半眼になって疑わしげな視線を向けるArebであった。



(テキスト執筆 九重 千景@になし藩国)

最終更新:2008年08月15日 18:00