亀 回 路
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亀 回 路
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*はじめに
2ch オカルト板"ウミガメのスープ"スレの一住民ぺんねが問題作成について思うところをまとめています。当初は初心者の方の参考に、またベテランの方の議論の一助になるものをと考えていましたが、結果的にはある出題者がどのように考えて問題を作っているかを説明しているだけの内容となっています。それでも何らかの参考になることがあれば幸いと言う事で公開しています。
ウミガメ問題についての考え方は多くの人がさまざまな意見を表明されており、私もそれらに意識するしないにかかわらず影響を受けています。その意味で以下の考察や分析は私の考えだけでなく過去の多くの人々の蓄積を私なりに再構築をしたものも多く含まれます。幾多の出題者・解答者の方々への感謝と敬意をここに表する次第です。
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06.04.08 [[開設>http://ganmo.xxxxxxxx.jp/index.htm]]
06.05.03 「ひとりでウミガメ」追加
06.06.03 「蛇足」に「問題文と解説文の整合性」を追加
06.11.22 Appendix a を追加
07.04.30 @wikiに移設
07.06.22 @wiki版公開
08.09.20 リンク切れを補修
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@wikiで作っていますが、作者のみの編集権限となっております、よろしくご了解ください。
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蛇足
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ここまではなるべく小なりとも人の参考になると思われることを意識して書いてきましたがここからは完全に私だけの好み、趣味でやっていることや雑談を順不同で取り留めなく書いてみます。
*・解説をシンプルにできるか
必要な要素が出てもそれがお話 として繋がって認識されているか分からないのでまとめをお願いするという展開がよくありますが、私はなるべくまとめを必要でないようにしたいなあと思って います。そのため、ある特定のポイントが重要でそこが分かればあとはお話は繋がるという問題にしようと言う方向で設問をするように心がけています。
それが難しい場合もありますがその場合も基本的に重要な要素を書けばせいぜい2行で収まるように内容を整理しています。&html(<A href="12.html#235_355">(Sの神様とチューブの少女))の話も解説文は非常に長いようで、要点だけ書けば
少女のボトルシップを作ろうとした男がSの神様のせい(問題文中の行為)で瓶に閉じ込められて死んだ。
と、これだけです。当ててもらうべき要素を整理するのはグダグダ回避に役立ちます。整理できているか自分で確認する手として解説を1,2行で書けるか試してみるというのが私のやり方です。
*・どんなネタなら問題になる?
この稿ではどんなネタならいい問題になるのかついては全く述べませんでした。どういうものが望ましいのか自分の中には確かにあって、それに基づいて取捨 選択もしますし、元ネタを改変したりひとひねり加えたり、オリジナルを作ったりすることもあるのですが、それをどういう基準でやっているかは問題の構成以 上に言葉で説明しにくいように思われます。
おそらく自分の中での基準としてはお話の中に何らかの驚きの要素があり、それにちゃんと説明が付くというのが肝心なのだろうと思いますが、過去の自分の出題を見るとそれが金科玉条という訳でもないようです。
本質的にはお話の中に何らかの面白い点があって、それが問題を作ろうという気持ちを動かすのでしょう。だた、何を面白いと感じるかこそ出題者の個性を発露するべき箇所なので、自分のやり方を説明したところでそれが人の参考になるか疑わしい感じはあります。将来上手い説明の仕方を思いついたらまたこの稿を拡充するかもしれませんが、自己満足以上の意義はなさそうです。
*・リリースの場所とタイミング
自分の作った問題が他所の板で他の人に出題されているのを見たことがありますが、出題者の受け答えも解答者の反応ももどかしい感じを受けました。一文、 一語考えて作った側からみると出題者の問題に対する理解が足らないという感じは否めず、やっぱり問題は作った本人がスレに放してやるのが一番いいんじゃな いかなと思わずにはいられませんでした。
また、オカ板のウミガメスレに集まる人を想定して作ってある問題は、他所に行くとその効果を減じるなあという感じも受けました。それは、それまで意識し ていなかった事なのですが、自分がオカ板のウミガメスレ住民の好みや質問の傾向を念頭において問題を作っているのだということを初めて自覚させられた経験 でもありました。
*・蛇足の蛇足:亀回路って?
これはある方と話をしているときに、ウミガメ問題を考えるとき特有の思考方法を、頭の中のウミガメ用の回路が働く、という喩えをしたところから持って来ています。その回路のことを亀回路と呼び、その解析の個人的試みが本稿であるというわけです。
*・問題文と解説文の整合性
2006年GWの 大宮オフ会で留年さんの問題文にコメントをさせていただく機会がありました。人の問題の意図を伺ったり意見を言ったりというというのは私の場合めったにな いことなのですが、やってみると自分が作問において何を考えているのか、自分で意識していなかったことを改めて気づかされて貴重な経験でした。
私が拝見した時点での問題文と解説文は次のようなものでした。
【問題】
彼女の部屋で編みかけの手袋を見つけた。
少し変には思ったけど、俺のために編んでくれているのだと信じていた
手の甲の部分の飾り編みを見るまでは。
【解説】
両方の手ぶくろの甲に飾りがついている為、
手ぶくろは右手と左手に分かれている事に気がついた。
しかし、俺には片腕が無いのだ。
どうやら彼女には俺ではない思い人がいるようです。内容はコンパクトながら私好みの意外性のある、そしてどこか背筋の冷える、よい意味でいやなお話だと感じました。ただ、問題に関してはいくつか疑問に思われる点がありました。
ひとつめの疑問は「俺」は両手分の手袋があることをまず違和感として感じなくてはならないのではないのか、ということでした。この点について伺ってみると留年さんの答えは彼もおかしい と思ったがもう一方をスペアと思い直した。ただしそう思いなおすまでの違和感を「少し変に思ったが」という文章に潜ませている、というものでした。なるほ ど十分に考えられている問題文だと感じ入りました。
次の疑問は手の甲の飾り編みを見るまでもなく、親指のつける場所で左右は分かるのではないかということでしたが、それに対する留年さんの答えは彼女が編み物の初心者で、軍手のような左 右に構造的な差のない手袋を編んでいるのだというものでした。しかしそれはまったく問題文からうかがい知ることはできません。そこで私がした提案は、彼女 が初心者であることをさりげなく匂わせようというものでした。具体的には「信じていた」を「感激した」と変えることでした。「感激した」という表現は彼女 が普段やりなれないことをしてくれていることを示し、それが彼女が普段編み物をしないということ、だから複雑な形状の手袋を編むことができないのだという ことを示唆してくれます。この他は飾り編みという文言を省きましたが、その程度で、実質私の助言の余地はもとよりほとんどない、完成された問題でした。結果、出題時の問題はこうなっていました。
【問題】
彼女の部屋で編みかけの手袋を見つけた。
少し変には思ったけど、俺のために編んでくれているのだと感激した
手の甲の部分を見るまでは。
留年さんは私が呈した疑問に関して解説できちんと説明したほうがよいかということを気にされていたようですが、 私はこれでよいと思うと申し上げました。本スレ での出題なら無意味な誤解を避けるために十全の説明をするというのはひとつの選択肢ですが、参加者の顔を見ながらできる生出題でならその必要はないだろう (むしろ最後の一文のインパクトのほうが重要)という判断でした。
ここで私が気になったことというのは結局のところ、問題文と解説文の整合性ということになるようです。「信じていた」から「感激した」へ変えたところで情報量 はほとんど変化がありませんので、俺が片腕であるという肝心の情報にいたる探索の過程にはほとんど影響ないでしょう。しかし整合性への配慮は、質疑で明ら かになる事項が解説の物語へと収斂したときに感じる解答者の満足感、パズルのピースがぴたりとはまるのに通じる快感に貢献すると考えられ、楽しめる問題を作るという視点からは十分意義があると思われます。
整合性への配慮は、作問の際に言葉や表現を選ぶ指針となってくれるという効用も期待 できます。同じ事項を伝えるのにも表現はいくらでも選択肢がありますが、整合性の確保を意識すれば選択の労力は大分減じられるでしょう。そしてそのような 配慮を怠らない事は、この人の問題文は精読する価値のあるものだと解答者に目されるようになる助けともなるのではないでしょうか。
(この節を書くにあたって、問題文や相談の内容を亀回路に書く事に許可をくださった留年さんに感謝します。)
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2008-09-20T16:08:13+09:00
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1. 問題を分析する
https://w.atwiki.jp/kaerujicho/pages/19.html
#contents
どんな問題がよい問題か、またどうすればよい問題を作れるかは出題者にとって興味の尽きないテーマです。しかしそれは同時に結論を出すのが困難なテーマでもあります。人によって好みの違いもあり、万人に受け入れられるよい問題とは何かを一義的に定義する事はほとんど不可能ではないかと思います。
万人から認められる問題は難しいとしても、自分にとっての理想の問題というのは出題者それぞれにあるのではないでしょうか。しかし自分の理想の問題も自分では分かっているはずが作ろうと思うと苦労します。出し終わってからああすればよかったこうすればよかったと後悔すると言うのもよくある話です。なぜそうなるのでしょうか。
それはウミガメが一人でやるゲームではないからです。出題から解説までの過程を出題者である自分が楽しむためには、もう一方の重要な主役である解答者にも楽しんでもらわなくてはなりません。
そのためには解答者から見て自分の問題がどのように見えるかを把握する必要があります。つまり自分の問題を客観視して把握しなくてはいけません。それができれば自分の問題を解答者から見て魅力的にするにはどうすればよいか考えることができるでしょう。しかし自分が作り手である以上、様々な思い入れが邪魔をして冷静に客観視するのはなかなか困難です。
では自分の問題を客観視するにはどうしたらいいのでしょうか。ひとつのアプローチが問題の分析です。問題を要素ごとに切り分けて、それぞれの機能を把握するのです。それは自分の問題を知るのに非常に役立ちます。またそれだけでなく他の出題者の問題をより深く知るためにも役に立つでしょう。
この章では問題を分析する際に有用と思われる幾つかの基本概念を提示します。その後に過去の出題を例にこの基本概念を用いて問題の構成を分析します。
*1.1 基本概念
1.1.1. 問題文に魅力を与える:チャーム
問題分析の説き始めは、問題文に魅力を与える要素からいきましょう。ウミガメのスープというゲームは多彩な魅力を持ちますが、ここでは非常に狭い意味合いで「その問題に解答者の興味を引き起こさせる要素」をチャームと呼ぶことにします。
では具体的にはどのようなチャームが考えられるでしょうか。
a. 謎
謎はチャームの王様といっていいでしょう。物理的にありえない事件、不可解な言動、不自然な状況。突きつけられた謎に人は興味を持たずにはいられません。また後述のように謎は解答者の質疑の大きな流れを作り、ゲームの進行を方向付ける要素としても重要な役割を果たします。
(謎をチャームとする問題の例&html(<A href="#027_555">[1]) &html(<A href="#094_614">[2]))
b. 死、人体損壊
人の死はそれだけで重大な事件であり、そこに至るまでのドラマが期待されます。生死が分からなくとも人体の一部のみが登場する場合も同様になにかただならぬ事が起きていることを想像させます。先述の謎と組み合わせての不可解な死は元祖「ウミガメのスープ」でも現れるシチュエーションで、いわばチャームの最強コンボといえるかもしれません。
(死をチャームとする問題の例&html(<A href="#244_402">[1]) )
c. 恐怖・驚愕
登場人物が恐怖しているとき、そこにはそうさせている何か大変な事があるわけです。参加者はそれに対してごく自然に興味を持つでしょう。
(恐怖をチャームとする問題の例&html(<A href="#137_728">[1]) )
チャームのメリット・デメリット
解答として用意された話がいかに魅力的でも、問題文において何を当てさせようとしているのか分からない問題は解答者を困惑させます。解答者におや、と思わせ、この問題に取り組もうと思わせる要素を意識して組み込むことで、解答者をより強力に問題の世界に引き込ませることができます。それがチャームのメリットです。
チャームは大抵の場合あった方が望ましいと考えられます。しかし問題文の与える印象とは全く異なる結末を突きつけて解答者の度肝を抜くような問題を作りたい場合に、チャーム自体が意外な結末の一部を担っているため無理に入れると問題が成立しなくなる場合がありえます。&html(<A href="#090_051">(実例))
チャームを省く事は意外な結末を演出させる際には有効ですが、チャームのメリットを失うことと引き換え(トレードオフ)です。問題作成の勘所は多くの場合このようなトレードオフの間での舵取りに集約されます。
1.1.2 どこまで説明するか?:ベールとクルー
問題をいかに作るべきかという視点から問題の構成を考えてみましょう。もしあなたが非常に魅力的な解説文を用意できているなら、解説文から単語を引いてゆけば一応問題は出来上がりです。それはすなわち何をどれだけ引くかが問題構成の鍵となることを意味します。
a. ベール
問題文から単語を引いてゆく行為をここではベールをかぶせると呼ぶことにします。物にベールをかぶせると元の形がわかりにくくなるように、文章から単語を引くことで元のストーリーの内容はぼやけます。ベールを厚くかぶせるほど物の形がはっきりしなくなるように、単語をたくさん引くほど元のストーリーはわかりにくくなります。ベールの厚い問題はそれだけ探索の手間が大きい問題だといえます。以降このような問題を探索型と呼ぶことにします。
b. クルー
クルー(clue)とは手がかり、糸口の意です。ヒントと言ってもいいかもしれませんが、ウミガメのスープにおいては質問の積み重ねがゲームの前提となります。単なるヒントのように解に直接繋がるものに限らず、その方向への質問を思いつく糸口となるもの、つまり質問の助けとなる要素を含めてここではクルーと呼ぶことにします。既述のように、問題文を作るとき一番簡単な方法は解説文からどんどん単語を削ることです。(最後は「男が死んだ。なぜ」になるわけです)その際、解答者を答に導く要素を意識的に設けることは、質問があらぬ方向に迷走することを未然に防ぐ効果が期待できますし、最終的に解説に至ったときに解答者になるほどと思わせる効果もあります。
クルーの存在はチャームが死や驚愕である場合特に意味を持ちます。謎がチャームである場合それに合理的説明をつけるためにおのずと解答者の思考と質問の方向性は規定されてゆきます。つまり謎そのものが質問の糸口、クルーとして機能するので、クルーは必ずしも必要ではありません。しかし死や感情の動きを示して、そこに至る物語を導き出さねばならない問題ではそのための適切なガイド役としてクルーは重要になってきます。
クルーとして何を使うかはベールの厚み同様非常に重要な問題です。これについては次章でもう少し論じることにします。
1.1.3 思考の罠:トリック
ウミガメのスープはいわゆるLateral Thinking Puzzleということになっています。Lateral Thinkingの定義はいろいろあるようですが、おおよそは通常の思考の枠組みから離れ、自由に様々な角度から考えをめぐらすことを指しているようです。
トリックは問題を解く過程での論理の流れの上に仕組まれた結び目であり、Lateral Thinkingを要求する要素です。その結び目が解けない間はいくら周辺状況が分かっていても答えにたどりつけません。大抵の結び目は一見解くのが難しいようでも、ある特定の部分を引っ張れば簡単にほどけるものです。それと同じようにある特定の発想方法に行きつきさえすれば簡単に解ける、そのような仕掛けをトリックと呼ぶことにします。
トリックの中でも問題文が与える印象を完全に裏切る解答で解答者を驚かせるタイプの問題をトラップ型とよぶことにします。先述のチャームを欠く問題の例がそれにあたります。
1.1.4 問題分析にあたって
ここで述べた問題分析の為の基本概念は分析の全てをまかなってくれるものではありません。あくまで大まかな把握のためのものです。
さらに詳細な分析についてここで書くのは困難です。なぜなら、それは出題者本人がどのような問題を作りたいかに密接にかかわるからです。しかし基本的には、問題文の一言一句に対してなぜこの文言を問題文中に入れたか、あるいは入れなかったかを、自分の問題の目標に沿って説明できるかを考えればよいと思います。上手く説明できるなら、その問題はきれいに分析されているといえるでしょう。
*1.2 問題分析
問題構成を分析する上で有効と考えられるいくつかの概念について説明してきました。ここからは具体的に問題の例を見ながら、問題を分析してみましょう。
A.ベールの厚い、探索型の問題
&html(<A name="244_402">)【問題】244杯目402
二人の女がひとりの赤ん坊を「この子は私の子よ」「いいえ私のよ」と争っている。一人の男が仲裁役を買って出ている。結果、男以外は死ぬ。
何が起きたのだろう?
#openclose(show=解説はこちら){
【解説】
大型客船が沈没の危機に瀕している。
デッキへ向かう途中で男は二人の女が赤ん坊を奪い合っているのを見かける。
男は状況を察し、二人に話しかける。
「私は医者です。私がどちらのお子さんか判断しましょう。」
赤ん坊を受け取った男はすばやく二人の女を蹴り倒し、甲板に駆け上がる。
甲板は人と怒号に埋め尽くされている。
男は赤ん坊を高く掲げ、叫ぶ。「子供が、赤ん坊がいるんだ!」
たくましく、職業意識の高い甲板員たちが赤ん坊に目を留め、
周りの群衆を押しのけて男を優先して救命ボートへ乗せる。
間一髪。船は転覆する。
ボートの数が十分にあっても全員乗るまでに転覆してしまえばなすすべがない。
搭乗が間に合わなかった多くの人々が冷たい海の中で死んでいった。
男はもちろん医者でもなんでもない。争っていた女の一方、
あるいは両方と同じく、赤ん坊をだしに早くボートに乗ろうとしたのだ。
命綱の赤ん坊も無事に救助されて陸に上がれば用がない。
男は赤ん坊を目立たないところに置いて立ち去った。
冬の夜、人気のない港の隅に・・・。
}
問題文に示されるチャームは死です。状況を徐々に絞り込んでゆく探索型の問題で、トリックというべきものはありません。問題文の状況は一見大岡裁きのようですが、それを問う質問は(出題者の期待通り)出題早々のタイミングで出され、否定されます。大岡裁きが違うとなると、女達が赤ん坊をめぐって争うその目的は何なのでしょうか。ここに謎という新たなチャームが立ち上がり、またクルーの機能をも担って解答者の質問の方向性を定めてゆきます。
この問題はベールが厚めの問題であるため人が多いときを狙って出題しています。場所がどこでどのような状況であるのか、二人の女はなぜ赤ん坊を争っているのか、男は何を意図して女達の間に割って入っているのか。多くの人たちの質問によって少しずつ明らかになっていく展開となりました。
&html(<A name="094_614">)【問題】94杯目614
ニューヨーク。男がリボンのついた箱を抱えて必死で走っている。
箱の中身は猫の死体である。
何が起きたのか説明して欲しい。
#openclose(show=解説はこちら){
【解説】
ある女性が飼っていた猫が死んでしまう。適当なところに埋めるわけにも行かず、
死体の処理に困った女性は市の保健局に相談に行けばいいという友人の勧めに従い、猫を空き箱にいれせめてもの弔いにその箱にリボンをつけ、歩いて出かける。
男が見かけたのは真剣な顔でリボンのついた箱を運ぶ女性である。あの箱の中は結構な値打ち物に違いないと考えた男は、女性から箱を奪い取って逃走してしまう。
}
チャームは謎。不自然な状況です。ベールは厚め。解答にたどり着くためには、彼が犯罪者であること、箱がたった今奪ってきたものであること、箱の中の猫は持ち主の飼い猫で、死んだのでこれから処分しようとしているところであること、手向けにつけたリボンが男に箱の中身が大事なものであると誤解させたこと、といった要素を当てていってもらわなくてはなりません。
このうちリボンを手向けとすることは一般的な行動とはいいにくく、当てにくい要素であると考え、実際の出題においては誘導の中でこちらから明かしています。
またベールの厚さを考慮し、補助的なクルーとして文頭にニューヨークという舞台設定を記しています。最近は大分汚名返上していますがかつては治安の悪さで有名でしたし、公園を除いてほとんど土の露出がありませんから飼い猫が死んだときにそのあたりに埋めるというわけには行きません。ニューヨークという説明はなくても成立する問題文なのにそれをわざわざ書いている意味は?それに解答者が気がつくかどうか?このあたりの加減の調整は設問の醍醐味でもあります。
これも徐々に状況が明かされてゆけばおのずと解答にたどり着く問題で、特にトリックといえる部分はありません。
以下に紹介する2つは以上の2つに比べるとあまりベールの厚くない問題となります。
&html(<A name="104_742">)【問題】104杯目742
田舎の教会に集まった人々に遠くの町からやってきた説教師が言った。
「皆さん、私どもの教会再建のための喜捨(募金)に協力してください・・・」
今後一度も行くこともないであろう教会のために、人々は競って募金箱に押しかけた。
なぜ人々がこのような行動をとったか当ててほしい。
#openclose(show=解説はこちら){
【解説】
説教師は最後にこう付け加えたのである。
「ただし、このお金は浄財でなくてはならないのです。これまで姦淫や盗み
を働いた事がある人は、喜捨をしないでください。そのような人はそのまま
座っていてください」
村の人々はお互いの様子を盗み見ながら競って募金をしようとした。
}
チャームは謎。本来積極的に募金に応じる動機はないはずなのになぜ村人はそんなに積極的なのでしょう?それは説教師が問題文のセリフの後に付け加えた一言のせいです。問題文を見てください。説教師のセリフの最後が「。」でも「・・・。」でもなく「・・・」となっています。これは説教師がさらに何かを言った事を示唆するためのものです。
何を言ったのか、分かってみれば単純で、田舎の教会という舞台装置もクルーとして村人の行動の謎を解き明かす質問を導くために用意されたものである事がおわかりになると思います。多少の試行錯誤は必要ですがわかったときのカタルシスはそれに報いるだけのものがあります。
&html(<A name="137_728">)【問題】137杯目728
女に敷物を渡されて恐怖と後悔の念で泣き出す男。
状況を説明して。
#openclose(show=解説はこちら){
【解説】
姥捨て山に母親を捨てに来た男。ござを敷いてそこに母親を座らせて立ち去
ろうとしたところ、母親に「このござはお前が(捨てられるときに)使いな
さい」と言われござを渡されます。男は改めて自分もいずれこうして捨てら
れるのだということを強く意識し、恐怖と後悔の念に駆られます。
男が自分の仕打ちの残酷さに気がつき母親を連れ帰ったか、子供たちの食い
扶持を確保するためにやはり母親を捨て帰ったか・・・このお話の結末は明らか
ではありません。
}
ここでのチャームは男の恐怖。泣いてしまう位ですから相当なものでしょう。問題文は短いのですが姥捨て山というキーワードさえ出ればそもそも当てるべき要素はそれほど沢山ではないので、ベールもとよりさして厚くはなりません。当然敷物というクルーに解答者の注意が集まるのでそれが何かを解き明かすところから質疑が始まり、徐々に男の置かれた悲しい状況が明かされてゆく展開となります。
B.ベールの薄い、トリックタイプの問題
&html(<A name="197_577">)【問題】197杯目577
さっきから嵐が激しく、僕の部屋はぎしぎしと揺れ続けている。
しかし長年海のそばに住んでいると荒れ狂う波も風もそれほど怖いとは感じない。
何せ海に臨む崖の上に建てられた我が家は風が吹けば家ごと崖下に投げ込まれるんじゃないかというくらい揺れるのだ。
唯一気になるのはさっきから続く雨漏りだ。忌々しい気持ちで見ていたら、轟音とともに突然窓やドアから大量の水が流れ込んできて、なすすべもなく僕は死んだ。
僕の遺体は翌日の朝、実に800キロも我が家から離れたところで見つかったんだが・・・・
僕がどんな風に死んだか、あててくれないか?
#openclose(show=解説はこちら){
【解説】
僕は船旅に出ていた。その日は嵐で僕は自分の船室
でおとなしくしながら我が家のことを考えていたのだが、
ぼろの木造船は嵐に耐えられなかったらしく、沈没した。
僕の遺体は沈没地点にほどちかい海岸に流れ着いた。
}
チャームは謎と死、ベールは薄く、ほとんど探索の余地はありません。このことから特にどこがクルーであると意識して設定はしていません。肝心のトリックは「僕」がどこにいるのか、ということになります。実際の出題においては自分のうちについての説明がミスディレクションとしてうまく機能し、トリックの存在そのものに気づかれなかったため思ったより長持ちした問題でした。
クルーは解答に向けてのガイド役であり、あるときはこれ見よがしに、またあるときはさりげなく解答者の探索を誘導するように設定されるのに対し、ミスディレクションはこの例のように探索の要素のないトリック型の問題において、解答者の目を解から逸らさせるために設定されます。
&html(<A name="090_051">)【問題】90杯目51
私はちょっとした偶然から未来のコンピュータおよびそれと一体化した一連のデバイス群というべきものに触れたことがある。それは日常生活を便利にしたり娯楽となったりするさまざまな機能を提供するものであった。ほとんどのコマンドを音声認識で受け付けるという点も驚くべき、すばらしい技術であったが、思い返してみるに、あのシステムの真に画期的な点は処理事項の優先度を柔軟に変えられるということではなかったかと思う。私は自分のコマンドがはねつけられたり後回しにされることを経験するうちに、自分のコマンドを最優先事項にさせるあるキーワードに気がついたのである。
そのキーワードとは?
#openclose(show=解説はこちら){
【解説】
「私」はのびた。キーワードは「どらえも~ん!!(泣」です。この「(泣」が
優先度を上げてくれる。
}
これはトラップ型の問題です。問題文が与える印象と全く異なる答えを提供しています。ベールと呼ぶべきものはほとんどなく、問題全体がトリックであるといえます。見てのとおり、この問題にはチャームがありません。その結果として解答者は自分が何を答えさせられようとしているのか分からず、戸惑いながら(あるいは少々いらだちながら)参加することになります。これがチャームを欠く問題が抱えるひとつの欠点です。その戸惑いに納得のゆく着地点を用意できるかどうかで、チャームを欠く問題の成否は決まります。
もう一つトラップ型を紹介しましょう。ただしこちらはチャームを含むことに成功した例です。
&html(<A name="027_555">)【問題】27杯目555
となりの山田さんちがやられてしまって、とうとう俺がこの日本で、
いやおそらく世界でただ一人の人間になってしまった。あとは全員吸血鬼だ。
夜が来るたび今夜こそ誰かが俺を襲いに来るとおびえているんだが、
いつまでたっても誰も襲いに来ない…なぜだ?
#openclose(show=解説はこちら){
【解説】
大皿に盛られた料理をみんなで食べていて、最後のひとつになった時、みんなの目の前で箸を伸ばすのを躊躇したことはありませんか?この男は周りの吸血鬼からみてちょうどそういう状態、つまり「ご馳走
の最後の一切れ」になってしまったのです。
みんな食べたくてしょうがないのですが、周りの目が気になって手を出せない…
}
私にとっても懐かしい問題です。チャームは謎。トリックタイプではありますが、解にたどり着くには吸血鬼たちのパーソナリティーについて最低限明らかにする必要があります。そこでクルーとして「山田さん」「この日本では」というフレーズがあります。一見必要のなさそうな情報をわざわざ書き込む意味は…?そこに解答者の意識が向くとき、水平思考の手がかりはすぐそこにあります。
*1.3 失敗例からの考察
前節では比較的評判がよかったり無難に終わった問題を使って説明をしてきました。しかし私の出題は大量の失敗出題のコレクションでもあります。この節では失敗例を使ってどこに問題があったかを考えてみます。
A. 問題の負荷量に合ったタイミングで出題しなかった例
&html(<A name="300_910">)【問題】300杯目910
18歳の僕たちは白い息を吐きながら神社への長い階段を一気に駆け上がる。
切りつけるように冷たい風も今はほほに心地よい。
受験ももう近い。こんなときに何をやっているのかと人は言うかもしれない。
でもこんなときだからこそやらなきゃいけないことがある。
交し合う目と目。深い連帯感。
さあ、やるぞ。
何を?
#openclose(show=解説はこちら){
【解説】
僕たちは受験生。勉強もおのずと深夜に及ぶ。
むしろ深夜こそもっともはかどるときなのだ。
しかし・・・
カーン、カーン、カーン
まただ。山手の神社は丑の刻参りのメッカらしい。
夜の静寂を破って五寸釘を打ち込む音が寝静まった町に響く。
とたんに僕の頭は沸騰する。
深夜がもたらす静寂。この時間に覚えた単語や公式はあらゆるノイズから免れて、記憶の野に美しく着地するのだ。
その、大事な時間帯を・・・!
僕はバットを手に神社に走る。仲間はすでに階段の下に集まっている。
ここからはスピードが命だ。
白装束の男や女をよってたかって殴り潰したのはこれで6人目ということになるだろうか。
2人目の女のとき、ぼこにした翌日も来て驚いた。
やり遂げないと自分に降りかかるとかいう考えがあるらしい。
それ以来少なくとも腕を折るのが基本だ。
警察が動いたと言う話は聞かない。さすがに丑の刻参りの途中に襲われたとは言えないのだろう。
僕はすがすがしい気持ちでうちに戻る。
もうすぐ受験が終わり、僕は東京で大学生になる。こんな辺鄙な町からも、呪われた神社からも、
そして常識をわきまえないくそったれのサイコどもに心の平和をかき乱される生活からもおさらばだ。
でもすこし寂しい気がするのはなぜだろう?
}
トラップを含みつつ、少々の探索も必要な問題でした。しかしチャームはなし、クルーも不十分であったため、思ったよりも時間がかかり、スレまたぎの可能性が出てきたため、彼らの動機などに踏み込む前に終了に持ち込んでしまった問題です。チャームやクルーがないと、思ったよりも長引く可能性があることは常に心に留める必要があります。作者の贔屓目で言えば、問題自体はそれほど悪くなかったのではないかと思いますが、出すタイミングを誤ったのが悔やまれます。
B. 雑学問題で雑学そのものを答えとした例
&html(<A name="127_026">)【問題】127杯目26
作家内田百聞は尊敬する夏目漱石からもらった草稿から何かを作り、
しばしば人にそれを見せては自慢していたという。それとは?
#openclose(show=解説はこちら){
【解説】
夏目漱石は執筆中鼻毛を抜いては原稿に植えつけるという癖がありました。
内田百聞はそれを集めて夏目漱石鼻毛コレクションを作り、機会があれば
人にそれを見せて自慢していたそうです。
変な趣味ですが、あの時代の作家は奇癖が勲章のようなところがあったようです。
}
チャームもクルーもなく、雑学であるためストーリーから攻めることもできず、結果的にはあてものになったしまった問題です。雑学を要求する問題で、雑学の知識そのものを解説とするのはこのようなあてもの的展開になりがちであることを意識するべきでしょう。結果的には面白いお話でも、最終的に解説にたどり着いたとき、解答者が感じるのが新しい雑学を知ったという喜びの方で、思考と探索のプロセスを楽しんだという感覚でなかったら、それはウミガメであるといえるかも疑問です。この問題もそんな感じだったように思われます。雑学を面白い問題に仕立てるにはそれなりの技量が必要なようで、個人的にはこのジャンルには慎重になっています。
特定の映画や漫画、歌や小説を知っていないといけないというネタも注意が必要な分野だと思います。自分にとっては常識的な知識でも案外他の人にはそうでないものです。ウミガメ住民は基本的に博覧強記ですが、それでも自分が知っていることはみんなが当然知っていると思い込むのはとても危険です。
C. 論理的帰結から答にたどり着けない例
&html(<A name="110_812">)【問題】110杯目812
少年が原稿の入った封筒を拾う。中を見てみて、
「これは小説家の○○先生の原稿だ!やべえ!」と叫ぶ。
数日後小説家はびっくりすることになるのだが、
何が起きたか当ててほしい。
#openclose(show=解説はこちら){
【解説】
小説家が書きあがった原稿を家の近くで落としてしまう。
それを拾ったのはいつもその小説家のところに来ている印刷業者の
集配の少年。自分が受け取っておきながら落としてしまった原稿だと
思い込み、あわてて印刷所に持ってゆく。
小説家の方は落とした原稿を探すが見つからない。
しかししばらくすると原稿が校正刷りになって戻ってきたので
不思議でしょうがなかった。
イギリスかどこかの実話だそうです。
}
チャームの弱さもさることながら、問題文から解説に示される状況に至る必然性が乏しいという意味で大いに反省すべき問題です。偶然が意外な結果をもたらした話の面白さはあるかもしれませんが、論理的帰結によって話が繋がってゆかないので、「考えて分かる」問題ではなくなっているのです。それを補うために実際の出題時にはやたらと誘導をしてしまっています。
もし大きな偶然が奇跡を生んだのなら、それが起きる前と起きた後の結果を示した上で、どのような偶然が起きたかを問うべきだったのかもしれません。この問題のように、大きな偶然があったことも、その結果どうなったのかも分からない問題文では過度の誘導をしない限り、解答者は途方にくれてしまいます。
[[2. 問題を構成する]]
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2008-09-20T16:05:13+09:00
1221894313
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2. 問題を構成する
https://w.atwiki.jp/kaerujicho/pages/13.html
#contents
*2.1 望ましい問題とは
1 章では問題の分析に注力し、良し悪しについてはゲームが滞りなく進行するかどうかという客観的にも判断のつきやすい基準から避けるべきことに言及するにとどめました。良し悪しは人の好みもあり、あまり私の好みや主観を導入しては他の方の参考になりにくいという考えからです。
この章では問題の構成を考えることにしますが、価値基準、判断基準無しには問題設計の方針は立てられません。そこで先の章で触れた基準をもう少し明確な形で価値観として導入し、それを踏まえての問題設計について論じることにします。
この章で導入する価値観は「解答者が楽しくストレス無く参加できるよう、ゲームの進行をよく考えてある問題が望ましい」というものです。初出厨さんの「★★ウミガメのスープコテハン図鑑★★」内の「ウミガメ出題者に100の質問」で私は次のように書いています。
>Q.59 あなたにとって良問の条件とは?
>スタートから解説まで出題者がどう回答者を惹きつけ、どこを難所として使い、それをど
>う突破させるかというように質疑の進行の展開をきちんとあらかじめ考えてある問題。
>出題者がゲームマスターとしてゲームの展開に責任を持ち、回答者に無意味な負担を強いることのない問題。
>それさえちゃんとしているなら特殊な知識を要求する問題だろうと問題文が抽象的過ぎてどんな回答も思いつけてしまう問題だろうとべつにいいんじゃないかと思ってます。
現実には特殊な知識が必要だったりあまりに抽象的過ぎる問題で円滑なゲーム進行はなかなか困難でしょう。これはゲーム進行や展開を考えて問題を作ることを第一義とすればおのずとそのような問題には慎重にならざるを得ないであろうことを念頭においての発言です。
私としては「ゲームの進行をよく考えて問題を設計することはよいことである」というのは多くの人にとって同意できるか少なくとも大きな異論を引き起こすものではない条件であろうと考えています。以降この点を留意しながら設問について考えてみたいと思います。
*2.2 探索型とトリック型
問題を大きく探索型とトリック 型に分けるとすると、トリック型はほとんど進行については考える必要がありません。ある考え方、ひらめき、それが解答者に舞い降りるまで静かに待つ。それ がトリック型における出題者の役割です。様々な質問がなされるでしょうが、本質的には必要な情報がほとんど問題文に織り込まれていてこそ成立するトリック 型の問題では提供するべき新しい情報はもとよりないか、あっても問題文から当然発生する質問、つまり後から提供するものと出題者が分かっているものに限られることが普通でしょう。これに対し探索型では出題者の役割はとても重要ですし、問題設計の妙が進行に大きく影響します。以降の節では探索型を念頭に置 き、進行と問題設計について考えてゆくことにします。
*2.3 探索型の問題構成
探索型の問題においてまず重要になるのがベールの厚さ、そしてクルーの配置です。まずベールとクルーの意義を出題の進行の視点から再論しましょう。
2.3.1 ベールの厚さの設定
ベールの厚い探索型問題はたくさんの参加者がいるときに適しています。多くの人が相補的に質問をすることで真実に少しずつ近づく楽しみを味わうことができるからです。逆に参加者が少ない時にはそのような問題は参加者に非常に多くの労力を要求します。時として時間がかかりすぎて、参加者を疲れさせてしまうことになります。自分が出そうと する問題のベールの厚みを把握していて、状況を読んで適切なベールの厚さの問題を提供することは、(そして出題してからベールが厚過ぎたと判断した時には 臨機応変に誘導することは)出題者に期待される資質の一つではないかと思われます。
2.3.2 クルーの設定
探索型の問題文を作る際、肝心なのが何をクルーとして設定するかということになります。基本的には進行上の道標になったり、第一歩を踏み出す方向付けとなったり、他の方向へ行かせない為の質問を誘発するものが望ましいと思われます。
適切なクルーの設定は2つの意味で先述の問題構成の方針に貢献します。
第一に、適切なクルーの設定は解答者の単純作業を減じ、知的な喜びを増す効果が期待できます。出題の最初の方では外堀埋めの質問が定番ですが、同じ外堀 埋めでも手がかりをもとに自分なりの解答の目算をもってする質問は知的な喜びを伴います。これに対し全く手がかりのない状態で、他に手がなくてやむを得え ずする質問はどちらかといえば単純作業に近いもので、喜びの乏しいものではないかと思われます。
第二に出題がうまくいかずに解答者の喜びを減じる危険を遠ざけます。クルーのない問題構成は進行が迷走する可能性が高くなります。その結果どうしようも なくなって最後には過度の誘導をしてしまい、ほとんど自分で答を言ってしまうような展開になってしまうかもしれません。それでは解答者が問題を解いたとい う満足感を得るのは難しいのではないでしょうか。そうならない為の一策が適切なクルーの設定です。
2.3.3 問題の規模の設定
解説で用意されるストーリーに 通常期待される質問によって明かされることだけでは話が繋がらない箇所があることがあります。登場人物の人格の異常性、普通考えられないような誤解や偶 然、あるいはオカルト的な超常現象などが結末を通常の予想の埒外に運ぶような話はその例にあたるでしょう。そこが話のキモであり面白いところでもあったり するわけですが、逆に発想の飛躍が必要で解にたどり着くための難所となりえます。
私は自分の問題においては難所はせいぜいひとつになるように心がけています。これは複数の難所を設定することによる危険を嫌ってのことです。例えば最初 の難所が越えられないと後の難所はどうしようもない問題なのに後の難所に質問が集中してしまうと誘導で苦労するはめになります。最悪の事態をいつもいつも考える必要はありませんが備えの気持ちは余裕をもたらしてくれます。
問題の進行をよく考えておくと いう事は自分で取り回しきれる大きさなのかを考えておくと言う事でもあります。私はあまりに難所が多いネタの場合整理しますし、特殊な知識が必要な問題は その知識を問題文に盛り込んでしまいます。結果的には私の問題はすぐ終わる問題ばかりです。これは私の問題を取り回す能力の限界を考えてのことです。
*2.4 実例をもとに
ここからは実際の例を取り上げて説明します。まずベールとクルーの設定について論じ、次に進行を考えた上での設問の微調整について論じます。
2.4.1 クルーとベール再論
ベールの厚みの調整とクルーの置き方の関係を例を元に考えて見ます。まず解説を示し、その後に問題文としてどのようなものが考えられるか考察します。
【解説】
彼は奴隷売買でヨーロッパに運ばれる途中の黒人。仲間とともに船上で反乱を起こすことに成功し、白人をすべて殺した。しかし殺してしまってから、帆船の操縦の仕方が分からないことに気が付いた。ボートで帰ろうとした仲間達は波に飲まれて死に、船に残った仲間も水と食料が尽きると死んでいった。
彼ももうすぐ死を迎えることになるだろう・・・。
問題は第1回のウミガメマラソン2914からです。実際に出題に使われた問題文は次のようなものでした。
【問題】
彼は憎むべき敵を仲間とともに打ち倒した。
しかしその結果としてたった一人、飢えて死のうとしている。
彼がこのような状況に至った理由を考えて欲しい。
問題文は実質2 行で、与えられる情報は「敵の存在」「敵を倒した」「仲間の存在」「現在は一人」「飢え死に」という5つです。ここでの出題は24時間マラソンの最後と言 う事もあり、わずか15分ほどで解説まで持ち込みたいという欲が働いています。そこで言葉をギリギリまで絞り込まず、すこし残す形で出題しています。そこ でまずもっと言葉を削ってベールを厚くするとどうなるか考えて見ます。
本人の死はチャームとして残し たいですね。たった一人という要素は省いても問題ないででしょう。飢えたという要素はどうでしょうか。これは彼の死が敵に殺されたものではないということ だけでなく、彼のおかれている状況を間接的に説明する効果が期待されます。クルーとして残したいですね。
敵の存在はどうでしょうか。これを除くと問題文は「男は飢え死にした、なぜ?」になってしまい、あまりに漫然としてしまいます。
仲間の存在はどうでしょうか。これも省いてもよい要素と思われます。なぜなら敵という言葉から、どのような戦いにおける敵であるのか(戦争?競技?ゲーム?)に関する一連の質問は当然発生すると期待され、それらに答えてゆくことで仲間の要素はあぶりだされるからです。
以上を踏まえもし可能なところまでベールを厚くするなら次のようになったと考えられます。
【問題】
彼は憎むべき敵を打ち倒したが、その結果として飢えて死のうとしている。
彼がこのような状況に至った理由を考えて欲しい。
この問題でも敵を倒すだけの力がある主体が飢えねばらないという状況から、彼がおかれている状況、彼のいる場所がどこであるかが重要であるということは見 えてくるはずです。船上であることが分かれば、敵対するもの同士が同じ船に乗り合わせている状況とは?という疑問に進み、この時点でまだ出てなかったとし ても時代背景を問う質問が出るでしょう。ベールが厚くなっている分、元のものよりすこし時間はかかるかもしれませんが、ゲームの展開はほとんど影響を受け ないでしょう。
もしもっとあっさり終わらせたければここからすこしベールを薄くしてやればよいでしょう。彼が黒人であることを暗示する言葉を入れてもいいでしょうし、死にかけている彼の耳に波の音を届かせて海の存在を示唆してもいいでしょう。
いかがでしょうか。ここで注目していただきたいのは、クルーによって定まる 質疑の方向性を乱すことなく、ベールの厚みを調整できるのだということです。クルーとして使われる文言とベールとして使われる文言は同じ文言でも問題文中 での役割は異なります。クルーは探索の方向付けをもたらすためのものであるのに対し、ベールは探索の対象なのです。
2.4.2 例をもとに考える2:ゲームの進行を考えての問題設計
もうひとつ割と最近の出題から挙げてみましょう。今度は2006年の闇鍋からです。
【解説】
彼は釧路湿原国立公園に勤め、大水などで放棄されたタンチョウ鶴の巣から卵を回収し、人工孵化を手がけている。生まれたら親代わりに餌を与え、世話をする。鶴のような大型の鳥は教えてやらないとしっかり飛ぶようにならない。ある時期になると彼は事務所の裏の野原で鶴と一緒に手を広げ、ばたばたさせながら走り、鶴に飛ぶことを教えるのだ。
飛ぶことを覚える頃、鶴は野生の環境に帰される。
実際の出題においては次のような問題文を使いました。
【問題】
男が自分のオフィスの裏地で息を切らしながら両手を広げて走り回っている。
周囲に人はいない。彼だけだ。
息が上がってつらい。しかし見てる人もいないのに彼は手を抜かない。
これも公務員である彼が誇りをもってやっている仕事の一部なのだ。
彼は何をしているのだろう?
これは例えば「両手を広げて走り回っている男。なぜ?」という形でも一応問題としての形を成すでしょう。直前の出題の参加者数からあまり参加者が集まらなさそうと判断できる状況だったかことから、ベールをやたら厚くする事はやっていませんが、もし厚くしたければオフィス、公務員を含め仕事がらみだということを示す要素は省いても問題な いと思われます。なぜならこの問題のチャームは男の不可解な行動という謎であり、1章で述べたように謎はそのままクルーとしての機能が期待できるからです。
2 行目3行目は何のためにあるかお分かりでしょうか。これは両手を広げての奇妙な走りという不思議な状況のチャームに、周囲が無人であるという状況を付加してチャームを強調する機能があるわけですが、それだけではありません。これは当然聞かれると考えられる、しかしあまりしてほしくない質問を一旦遠ざけるための仕掛けでもあります。
手を広げて走っている男。それだけを説明した問題文ではこのような質問が予想されます。
「誰かに見せていますか?」
そう聞かれれば人でなくても誰かに見せていることに変わりはありませんからYes と答えざるを得ません。その瞬間から男は何をしているかという問題文中の問いは一旦遠のき、誰に見せているのかを絞るプロセスが始まってしまいます。私が 望んだのは男が何をやっているのかをまず絞りこみ、その意外な対象が最後に明らかになる、という展開でした。そのためには最初のほうで「誰かに見せていま すか」という質問が出る事は避けたかったのです。
実際の出題ではほぼ期待したと おりの展開で進行しました。私としては「鳥に教えている」というのはハードルとしては高すぎるかもしれないので「動物を対象としている」ということが出た 時点で正解にしようと考えていました。しかし結果的には最後にそのものずばりが出て、解答者の素晴らしい冴えに舌を巻かされる(ウミガメスレで出題者を やっていれば少なからずする経験ですね!)ことになりました。
考えられる質問を想定し、自分が望む方向へ質問を誘導するように問題文を構成するやりかたの一例を見ていただきましたが、いかがでしょうか。ゲームの展開をよく考えて問題設計を行うためにはどんな質問が来るかの目算が必要です。 ベールをはがしてゆくための基本的な質問(男は人間か?職業重要?時代背景重要?等々)は来るものと期待してよいでしょうが、話の肝にかかわる質問は望む とおりにいくとは限りません。そこでどのような調整を施すかが作問の肝となります。問題を分析し、把握し、自分が解答者ならどんな質問をするかを考えながら問題文に調整を施す。この調整作業が私の作問における大きな楽しみであったりします。
進行を考えた設問の例については&html(<A href="pages/20.html#App_A">(Appendix A))も参照してください。
*2.5 出題者にとっての効用
「解答者が楽しくストレス無く参加できるよう、ゲームの進行をよく考えてある問題が望ましい」という基準は、なんだか解答者にへりくだりすぎた態度に思われるかもしれません。しかしそうではなく、むしろ多くの利益を出題者にもたらす考え方だと思っています。
進行を考えて問題を構成すると 言う事は、そのプロセスの中で自分の問題の特徴を十分に把握すると言う事でもあります。自分の問題がどのような特徴を持っており、どれだけの負荷を解答者 に求めるものであり、どこが困難なポイントとなるかを把握していることは出題者に大きな利益をもたらします。
自分の問題を理解してその進行 に目算がついていれば、何かミスが起こしたとしてもリカバリーが容易になりますし、誘導の労力の低減も期待できます。グダグダの回避にも役立つでしょう。 それらは出題者に出題を楽しむ余裕を与えます。同時に解答者に気持ちよく乙と言ってもらえるという、出題者にとっての最大の報いをより沢山もたらしてくれ る助けともなります。
そして自分の出題がうまく行か なかったと感じたとき、どこに問題があったのか、それを的確に分析するのも自分の問題を正しく把握していて初めてできることです。失敗からのフィードバッ クはきわめて重要です。その第一歩が自分の問題を自分でよくわかっている、ということなのです。
[[3. 出題の前に]]
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2007-11-23T02:09:05+09:00
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リンク
https://w.atwiki.jp/kaerujicho/pages/27.html
ひとつのスレの関連ページとしては膨大な数といってもいいウミガメ関連のwebページ。初めての人は何がなんだか分からないのではないでしょうか。そこで簡単な紹介とそれに関連する個人的雑感などを少し書いてみます。
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**出題論関連
このサイトの趣旨から、まず出題者にとって参考になる出題論やそれを含むページをまとめて紹介します。出題者にとって参考になる出題論や、それを含むページはいくつかありますがそれぞれに特徴があります。私は問題はかくあるべしという論調をあえて避けてこの亀回路を構成していますが、だからといって比較的大多数に受け入れられる出題のコツというべきものはあるという考え方に異論をさしはさむものではありません。受ける問題、良い問題を考える際にどのページもとてもよい参考になるのではないでしょうか。
[[HOW TO ウミガメ>http://oni.gozaru.jp/frame.htm]]
鬼殺しさんによるウミガメ参加者向けガイドの嚆矢とも言うべきページです。このページのすばらしいところの第一はなんと言っても楽しく分かりやすく読めるように工夫して仕上げられているところです。初心者向けを謳っていますが、初心者・ベテラン関係なく心得るべきところを押さえた内容となっています。私個人としては参加者心得として空気を読むべしと呼びかけているところに大いに賛同したいと思います。テンプレなどで推奨されているマナーはしばしば議論の元になりますがほとんどの場合空気を読むことを皆が心がけてさえいれば無用なのではないかと思うのです。
[[亀丼>http://yasie.yakigote.com/]]
人気出題者の一人、夜鬼養英さんのページです。作問のノウハウや留意点がまとめられていて大変参考になるページです。興味深いのは技術的な面ではいずれも私にとっても頷けることばかりなのに、例として挙げられているネタが私なら問題として使わないであろうものが少なくないことです。ウミガメにおいて何をよしとするか、人によって違うということを改めて感じさせられます。
[[カッパの川流れ>http://www33.atwiki.jp/kappappa/pages/1.html]]
ウミガメ界随一の熱き漢、カッパさんが京都オフ会のしおりに寄稿したものをベースにweb化したものです。カッパさんのすごいところは出題者として一流であるというだけでなくウミガメスレへの無限の愛をお持ちであるということではないかと思います。その愛ゆえに本気で人の問題をよく見て人の発言をよく読んでおられます。その上で構成された丁寧な考察は必読と言えるでしょう。私が勝手に「カッパ・テーゼ」と呼んでいる良問の条件は過去何度も雑談板などで表明されていて、ウミガメ界に与えた影響も大きいのではないかと思われます。
私が作成にいっちょかみしたのでリンクをつけていますが、ご本人の意向は基本ノーリンクフリーだそうです。
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**ウミガメのインフラ関連:第一世代
2chにウミガメのスープスレが立ったのが2002年の7月、以下の3つのページはそれからまもなく立ち上がり、ウミガメスレ住民不可欠のインフラとなりました。管理人の方々は住民の感謝と尊敬を集める存在でしたがいつの間にか一線を退かれてしまいました。しかしウミガメスレ発展のひとつの原動力として、この方々の功績と栄誉はウミガメスレが続く限り不滅といっていいのではないでしょうか。
[[ウミガメのスープ雑談掲示板>http://jbbs.livedoor.jp/movie/1446/]]
ウミガメ関連ページの始祖とも言えるページです。2002年の開設以来管理人である海亀三さんが居心地のいい店のマスターのような役割を果たされ、活発な参加者の交流とさまざまな企画が実現する場となりました。海亀三さんは2004年末頃から体調不良とご多忙を理由に管理を離れられ、お手伝いこと私が代行に立っていますが、私の基本スタンスはあくまでお留守番です。私としては亀三さんの1日も早い復帰を望んでやみません。
[[★★ ウミガメのスープ ★★ログ倉庫>http://umigame.s17.xrea.com/]]
ウミガメのスープはそのスレの性質上消費が早く、油断しているとすぐに見ていないスレが1000に達して消えてしまいます。住民にとってすぐに重要課題となった過去ログ倉庫の必要性を汲んでページを作ってくださったのがログ取り亀さんでした。
ある程度以上の古株の住民の方々なら管理人のログ取り亀さんが
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|Д`)
|⊂ノ
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↑のAAとともに現れ、更新や管理の連絡、雑談ををされていたのを懐かしく思い出されるのではないでしょうか。労力の大きいログ収録を熱心にやってくださったおかげで、私個人も知らない間に流れたスレを見たりできてとても助かりました。
[[ウミガメのカップスープ>http://umigamesoup.at.infoseek.co.jp/]]
カプスプの愛称で親しまれた過去問まとめ・検索板です。管理人のumigamesoupさんによる、技術的にも労力的にも困難な検索サイトの構築は当時も驚きと敬意をもって受け止められました。長らく私もずいぶんお世話になりましたが残念ながらある時期から更新が止まってしまっています。
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**ウミガメのインフラ:第二世代
上記の3サイトはいずれも管理人の方々が徐々に姿を見せなくなってしまいました。ウミガメは発展と維持は3サイトによるところが大きかったわけですが、皮肉にもそれゆえに管理人の方々が思っていた以上に長く続いてしまったのかもしれません。雑談は管理代行が立ち、倉庫とカップスープはそれぞれにその機能を引き継ぐサイトを作ってくださる方が現れました。また、個別の特色と広がりを持った関連サイトも生まれました。
[[ウミガメスープのレシピ>http://f49.aaa.livedoor.jp/~umigame/]]
一応出典検索サイトということになっていますが、管理人である料理人さんの方の高い技術力を反映してそれだけに留まらない非常に多彩で優れた検索機能を持っています。またデータの更新もまめな点も驚異です。(インデックス付けなどで相当な自動化を実現されているのではないでしょうか?)カップスープの更新が止まってしまってからは住民にとってはカップスープの代わりとしての役割も果たしてきました。しかしこの点において料理人さんは代替機能については限定的であり、むしろ相補関係と位置付けられています。(http://jbbs.livedoor.jp/movie/1446/storage/1087061055.htmlの826-827参照)
[[「ウミガメのスープ」スレ臨時倉庫>http://t_supple.sapphire.rm.st/]]
こちらも管理人である臨時倉庫管理人さんのまめな更新と美しいサイトの構成がすばらしい、過去ログ倉庫の後継サイトです。後継と書きましたが作成者さんはログ取り亀さんのページのバックアップ的な位置づけを標榜されています。(http://jbbs.livedoor.jp/movie/1446/storage/1087061055.htmlの>>336)その後のログ取り亀さんと作成者さんのやりとり(>>474、>>485)もからもこのページの立ち位置が伺えます。
[[★★ウミガメのスープ コテハン図鑑★★>http://umigame-kotezukan.hp.infoseek.co.jp/]]
雑談掲示板のコテハン図鑑スレのまとめがまず中心的な内容だったことからこのようなサイトのタイトルですが、管理人である初出厨さんの熱心な更新と拡充がつづき、雑談板における特定のテーマに関する議論やオフ会のレポート、年表や各出題者の初出題の記録、テンプレの変遷なども整備され、総合ウミガメまとめサイトというべきところになっています。まとめだけでなく出題者に100の質問、アンケートといった強力なコンテンツもお持ちで、ウミガメ好きの人間なら一度はここに入り浸ってしまうのではないでしょうか。
[[ウミガメのインスタントスープ>http://instant.s191.xrea.com/]]
ウミガメのカップスープ補完サイトを銘打って作られているサイトです。管理人さんがこの板を立ち上げる際の経緯は雑談掲示板http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/1446/1094821408/>>37あたりから、位置づけについては>>45、>>54、>>60あたりに示されています。こちらも元祖に負けず大変すばらしくかつ住民にとって有用なあり難いサイトなのですが残念ながらある時期から更新が止まっているようです。(07年6月現在)お忙しいのかもしれませんができれば管理人さんの復帰が望まれるところです。
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2007-06-22T22:29:18+09:00
1182518958
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メニュー
https://w.atwiki.jp/kaerujicho/pages/2.html
メニュー
-[[トップページ]]
-[[1. 問題を分析する]]
-[[2. 問題を構成する]]
-[[3. 出題の前に]]
-[[4. 補論]]
-[[5. 最後に]]
-[[Appendix]]
-[[問題]]
-[[蛇足]]
-[[ひとりでウミガメ]]
-[[リンク]]
----
-[[@ウィキ ガイド>http://atwiki.jp/guide/]]
-[[@wiki 便利ツール >http://atwiki.jp/tools/]]
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// ">" の左側に文字、右側にURLを記述するとリンクになります
**更新履歴
#recent(5)
2007-06-22T22:17:31+09:00
1182518251
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問題
https://w.atwiki.jp/kaerujicho/pages/12.html
亀回路で例として挙げた問題をここにまとめています。(推敲の過程で例から外れたものも混じっています)
基本的には下にゆくほどトリック色が薄れ、ベールの厚い探索型になるように並べています。ただし、2重線から下は失敗例なのでこのルールに従いません。
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&html(<A name="090_051">)【問題】90杯目51
私はちょっとした偶然から未来のコンピュータおよびそれと一体化した一連のデバイス群というべきものに触れたことがある。それは日常生活を便利にしたり娯楽となったりするさまざまな機能を提供するものであった。ほとんどのコマンドを音声認識で受け付けるという点も驚くべき、すばらしい技術であったが、思い返してみるに、あのシステムの真に画期的な点は処理事項の優先度を柔軟に変えられるということではなかったかと思う。私は自分のコマンドがはねつけられたり後回しにされることを経験するうちに、自分のコマンドを最優先事項にさせるあるキーワードに気がついたのである。
そのキーワードとは?
【解説】
「私」はのびた。キーワードは「どらえも~ん!!(泣」です。この「(泣」が
優先度を上げてくれる。
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&html(<A name="197_577">)【問題】197杯目577
さっきから嵐が激しく、僕の部屋はぎしぎしと揺れ続けている。
しかし長年海のそばに住んでいると荒れ狂う波も風もそれほど怖いとは感じない。
何せ海に臨む崖の上に建てられた我が家は風が吹けば家ごと崖下に投げ込まれるんじゃないかというくらい揺れるのだ。
唯一気になるのはさっきから続く雨漏りだ。忌々しい気持ちで見ていたら、轟音とともに突然窓やドアから大量の水が流れ込んできて、なすすべもなく僕は死んだ。
僕の遺体は翌日の朝、実に800キロも我が家から離れたところで見つかったんだが・・・・
僕がどんな風に死んだか、あててくれないか?
【解説】
僕は船旅に出ていた。その日は嵐で僕は自分の船室
でおとなしくしながら我が家のことを考えていたのだが、
ぼろの木造船は嵐に耐えられなかったらしく、沈没した。
僕の遺体は沈没地点にほどちかい海岸に流れ着いた。
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&html(<A name="124_436">)【問題】124杯目436
私は骨董屋で偶然有名な画家の絵がほこりをかぶっているのを見つけた。
物によってはその画家の絵は数千万で売買されることもある。
しかし値札を見ると1万円あまり。私は喜んで買った。
なぜ1万円なんだと思う?もちろん、偽物なんかじゃない。
【解説】
その絵は、有名な贋作家滝川太郎のオリジナルの作品だった。
大家の贋作では時として数千万になるその腕も、オリジナルを
描けば値段はその程度なのだ。
私はこれは珍しいものを手に入れられる、と喜んで買ったのである。
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&html(<A name="096_314">)【問題】96杯目314
すばらしい絵が並ぶ展覧会場。しかし絵画を尻目に黒山の人だかりを築いているのは、小さなケースに収められた干からびた小さな牛肉の塊だ。人々はわれ先にそれを見たがり、そして感心して見入っている。
何が起きているのか、考えて欲しい。
【解説】
ヨーロッパで名を成したゴッホの初の展覧会がニューヨークで行われようとしていた。ヒュー・トロイという人物はこれを快く思っていなかった。「ゴッホの絵に興味を持っている奴などいない。単に自分の耳を切り落としたというショッキングなエピソードが注目を集めているだけさ」彼はそれを証明しようと、牛肉で人の耳のような形を作り、ケースに収め、「ゴッホの耳」とプレートをつけてこっそり会場に持ち込んだ。果たして、展覧会の客は絵を尻目に耳の展示に群がったのである。
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&html(<A name="027_555">)【問題】27杯目555
となりの山田さんちがやられてしまって、とうとう俺がこの日本で、
いやおそらく世界でただ一人の人間になってしまった。あとは全員吸血鬼だ。
夜が来るたび今夜こそ誰かが俺を襲いに来るとおびえているんだが、
いつまでたっても誰も襲いに来ない…なぜだ?
【解説】
大皿に盛られた料理をみんなで食べていて、最後のひとつになった時、みんなの目の前で箸を伸ばすのを躊躇したことはありませんか?この男は周りの吸血鬼からみてちょうどそういう状態、つまり「ご馳走
の最後の一切れ」になってしまったのです。
みんな食べたくてしょうがないのですが、周りの目が気になって手を出せない…
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&html(<A name="104_742">)【問題】104杯目742
田舎の教会に集まった人々に遠くの町からやってきた説教師が言った。
「皆さん、私どもの教会再建のための喜捨(募金)に協力してください・・・」
今後一度も行くこともないであろう教会のために、人々は競って募金箱に押しかけた。
なぜ人々がこのような行動をとったか当ててほしい。
【解説】
説教師は最後にこう付け加えたのである。
「ただし、このお金は浄財でなくてはならないのです。これまで姦淫や盗み
を働いた事がある人は、喜捨をしないでください。そのような人はそのまま
座っていてください」
村の人々はお互いの様子を盗み見ながら競って募金をしようとした。
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&html(<A name="137_328">)【問題】137杯目328
女に敷物を渡されて恐怖と後悔の念で泣き出す男。
状況を説明して。
【解説】
姥捨て山に母親を捨てに来た男。ござを敷いてそこに母親を座らせて立ち去
ろうとしたところ、母親に「このござはお前が(捨てられるときに)使いな
さい」と言われござを渡されます。男は改めて自分もいずれこうして捨てら
れるのだということを強く意識し、恐怖と後悔の念に駆られます。
男が自分の仕打ちの残酷さに気がつき母親を連れ帰ったか、子供たちの食い
扶持を確保するためにやはり母親を捨て帰ったか・・・このお話の結末は明らか
ではありません。
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&html(<A name="094_614">)【問題】94杯目614
ニューヨーク。男がリボンのついた箱を抱えて必死で走っている。
箱の中身は猫の死体である。
何が起きたのか説明して欲しい。
【解説】
ある女性が飼っていた猫が死んでしまう。適当なところに埋めるわけにも行かず、
死体の処理に困った女性は市の保健局に相談に行けばいいという友人の勧めに従い、猫を空き箱にいれせめてもの弔いにその箱にリボンをつけ、歩いて出かける。
男が見かけたのは真剣な顔でリボンのついた箱を運ぶ女性である。あの箱の中は結構な値打ち物に違いないと考えた男は、女性から箱を奪い取って逃走してしまう。
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&html(<A name="244_402">)【問題】244杯目402
二人の女がひとりの赤ん坊を「この子は私の子よ」「いいえ私のよ」と争っている。一人の男が仲裁役を買って出ている。結果、男以外は死ぬ。
何が起きたのだろう?
【解説】
大型客船が沈没の危機に瀕している。
デッキへ向かう途中で男は二人の女が赤ん坊を奪い合っているのを見かける。
男は状況を察し、二人に話しかける。
「私は医者です。私がどちらのお子さんか判断しましょう。」
赤ん坊を受け取った男はすばやく二人の女を蹴り倒し、甲板に駆け上がる。
甲板は人と怒号に埋め尽くされている。
男は赤ん坊を高く掲げ、叫ぶ。「子供が、赤ん坊がいるんだ!」
たくましく、職業意識の高い甲板員たちが赤ん坊に目を留め、
周りの群衆を押しのけて男を優先して救命ボートへ乗せる。
間一髪。船は転覆する。
ボートの数が十分にあっても全員乗るまでに転覆してしまえばなすすべがない。
搭乗が間に合わなかった多くの人々が冷たい海の中で死んでいった。
男はもちろん医者でもなんでもない。争っていた女の一方、
あるいは両方と同じく、赤ん坊をだしに早くボートに乗ろうとしたのだ。
命綱の赤ん坊も無事に救助されて陸に上がれば用がない。
男は赤ん坊を目立たないところに置いて立ち去った。
冬の夜、人気のない港の隅に・・・。
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&html(<A name="235_355">)【問題】235杯目355
「はい、あのね」
「おじさん誰?」
「えとね、神様なのね。ま、神様といってもSのつくほうなんだけどね」
「そうか、そうなんだね。私やっぱり死んじゃうんだ。」
「えーとね、申し訳ないんだけどね、そういうことになってるのね。」
「しょうがないよね。赤ん坊のときから私、ずっとこのガラスのチューブから出たこと無いんだよ。パパが言ってた。恐ろしい病気なんだって。だから外の空気に触れちゃだめだって。」
「まあ、どういう事情で死ぬかに関しては実は私には関係が無いのね。あなたの運命の持ち時間の問題なのね。」
「おじさん私を連れに来たの?」
「うんとね、ま、それもあるんだけどね、私はもうすぐ死ぬ人に一つだけ願いをかなえるの。死に方を選べるわけ。」
「そうなんだ。じゃあ、お願い。死ぬ瞬間はパパに一緒にいてほしい。手を握ってて欲しい。海運業の仕事が忙しいとかでほとんど会えないし、病気のせいでほら、そこのマジックハンドあるでしょ。赤ん坊のころからあれで世話をされてきたの。直に抱っこしてもらったことも無いんだよ。」
「それがあなたの願いなら、喜んでかなえるのね。それと、申し訳ないんだけど、あなたが死ぬ瞬間というのは、今なのね。で、この横じまのハンカチをこうするとね、横じまのままなんだけどね、はい連れてきました。あなたのパパ。さ、手を握って握って」
少女が死んでチューブの中の機材が片付けられた後も、パパさんはずっと少女のそばにいたのね。
そしてこの少女の願いは、図らずもパパさんの友達たちにものすごい感銘を与えてしまったのね。
死んでしまったパパさんも、きっとそのことにはとっても満足していると思うのね。
何がおきたのか、当ててほしいのね。
【解説】1/2
海運王の男は若いころからの趣味、ボトルシップをゆがんだ方向に嵩じさせ、美少女の瓶詰めを作る事を思い立つ。かろうじて赤ん坊が入る程度の口の大きさの大きな瓶を作り、ベッドやトイレ、換気、水の配管は分解して中で精巧なマジックハンドで組み立て、裏社会を通じて手にいれた赤ん坊をいれ、ビンの口からマジックハンドで世話をさせた。赤ん坊が成長すると瓶の口からの出入りは不可能になり、不思議な人間ボトルシップになるというわけだ。これらは莫大な金額を投じ、秘密裏に男が持つグループ企業の小会社の一つの裏業務として行われた。赤ん坊が長じて物心がつくと、男はその子の前では父親として振る舞い、病気だから出てはいけないのだと言い聞かせた。男は時々下世話な趣味の世界の親友に瓶をこっそり見せては悦に入り、そしてこうもらしていた。「15歳になったら、完成させて私のコレクションに加えるよ。」
その日が来た。あらかじめセットされた時間に少女のビン内に致死性のガスが流し込まれる。その瞬間、Sの神様の計らいによって男もビン内に現れ、そしてわけも分からないまま瞬間的に死ぬ。
【解説】2/2
業務を行っていた従業員たちは驚き動揺するが、どうしようもない。このプロジェクトは男によって直接指揮されており、瓶の破壊は男自身によって絶対に禁止されていた。間違ってでも割ってしまったら、成功報酬として親会社からもらえるはずの莫大な支払いは消えてしまう。鳩首会議をしているところに様子を見に現れたのが悪趣味仲間の親友。彼は自分が責任を持つから、と予定通りに事を進めることを指示する。従業員たちは親会社との契約書どおり、瓶内のものはすべて分解して片付け、薬品を注入してボトルシップを完成させ、輸送の手配を整えた。そして猟奇趣味の金持ちたちの待つ秘密のお披露目会場に運び込まれた瓶は、梱包を解かれると同時に激しい絶賛を受けた。
「ばかな。どうやって作ったんだ?」
「本人が一緒に入っているなんて!ありえない!」
「うわさは聞いていたが、本人入りなどというサプライズは思いもよらなかった!」
「すごいな。命を張ったコレクションとは!」
「彼に乾杯だ!」
どこにも継ぎ目が無いことを誇らしげに示すように金属製のラックに高く掲げられた瓶。その薬液の中には少女と男が寄り添うように浮かんでいる…。それを取り囲む友人達の宴は遅くまで続いた。
これが今日のお話なのね。
自分の期待を何倍も何倍も上回る賞賛を受けた彼もきっと満足したと思うのね。うん。
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&html(<A name="300_910">)【問題】300杯目910
18歳の僕たちは白い息を吐きながら神社への長い階段を一気に駆け上がる。
切りつけるように冷たい風も今はほほに心地よい。
受験ももう近い。こんなときに何をやっているのかと人は言うかもしれない。
でもこんなときだからこそやらなきゃいけないことがある。
交し合う目と目。深い連帯感。
さあ、やるぞ。
何を?
【解説】
僕たちは受験生。勉強もおのずと深夜に及ぶ。
むしろ深夜こそもっともはかどるときなのだ。
しかし・・・
カーン、カーン、カーン
まただ。山手の神社は丑の刻参りのメッカらしい。
夜の静寂を破って五寸釘を打ち込む音が寝静まった町に響く。
とたんに僕の頭は沸騰する。
深夜がもたらす静寂。この時間に覚えた単語や公式はあらゆるノイズから免れて、記憶の野に美しく着地するのだ。
その、大事な時間帯を・・・!
僕はバットを手に神社に走る。仲間はすでに階段の下に集まっている。
ここからはスピードが命だ。
白装束の男や女をよってたかって殴り潰したのはこれで6人目ということになるだろうか。
2人目の女のとき、ぼこにした翌日も来て驚いた。
やり遂げないと自分に降りかかるとかいう考えがあるらしい。
それ以来少なくとも腕を折るのが基本だ。
警察が動いたと言う話は聞かない。さすがに丑の刻参りの途中に襲われたとは言えないのだろう。
僕はすがすがしい気持ちでうちに戻る。
もうすぐ受験が終わり、僕は東京で大学生になる。こんな辺鄙な町からも、呪われた神社からも、
そして常識をわきまえないくそったれのサイコどもに心の平和をかき乱される生活からもおさらばだ。
でもすこし寂しい気がするのはなぜだろう?
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&html(<A name="110_812">)【問題】110杯目812
少年が原稿の入った封筒を拾う。中を見てみて、
「これは小説家の○○先生の原稿だ!やべえ!」と叫ぶ。
数日後小説家はびっくりすることになるのだが、
何が起きたか当ててほしい。
【解説】
小説家が書きあがった原稿を家の近くで落としてしまう。
それを拾ったのはいつもその小説家のところに来ている印刷業者の
集配の少年。自分が受け取っておきながら落としてしまった原稿だと
思い込み、あわてて印刷所に持ってゆく。
小説家の方は落とした原稿を探すが見つからない。
しかししばらくすると原稿が校正刷りになって戻ってきたので
不思議でしょうがなかった。
イギリスかどこかの実話だそうです。
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&html(<A name="127_026">)【問題】127杯目26
作家内田百聞は尊敬する夏目漱石からもらった草稿から何かを作り、
しばしば人にそれを見せては自慢していたという。それとは?
【解説】
夏目漱石は執筆中鼻毛を抜いては原稿に植えつけるという癖がありました。
内田百聞はそれを集めて夏目漱石鼻毛コレクションを作り、機会があれば
人にそれを見せて自慢していたそうです。
変な趣味ですが、あの時代の作家は奇癖が勲章のようなところがあったようです。
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2007-05-03T12:26:44+09:00
1178162804
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Appendix
https://w.atwiki.jp/kaerujicho/pages/20.html
*a. 進行と構成:ある出題メモから
ここでは進行や構成ついての参考としてひとつの資料を見ていただこうと思います。見ていただくの はブラックウィドウ氏の問題とそれに関連するメモです。このウェブページは基本的に私の出題からしか例をとっていません。断りもなく適当なことを言って他 の出題者さんに失礼があるといけないし、でも許可を取るのは面倒と言う実に消極的な理由からですが、何人かお互い勝手にいろいろ言っても大丈夫という人も いまして、ブラックウィドウ氏はその中の一人です。この資料は私も以前見ているはずなのですがすっかり忘れていまして、久しぶりに目にしてこれは面白いネ タかも知れないと言う事で皆さんに見ていただくことにしました。
ブラックウィドウ氏は出題が終わった問題と解説、関連するメモをネタ帳からはずし、個別のファイルとして保存しています。以下にファイルの内容をそのまま転載しますが、人に見せることを前提としていないため流れは追いにくいかもしれません。後で解説を加えますが[ I ]、[ II ]などの数字はここで紹介するために書き加えたものであることだけ付記しておきます。
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[ I ]
【問題】
舞台はアメリカとしよう。時代は近代に入っているならいつでもいいだろう。
収入に余裕ができたあなたは田舎に別荘を持とうと田舎町に出かける。そこであなたは一軒の家を見掛け、その家の作りが気に入ってしまう。町の不動産屋に相 談するとあの家は売りに出されていますよと教えられる。喜ぶあなたに不動産屋はにやにやしながらまあ多分取引はうまく行きませんよなどという。
その家に戻ったあなたがドアをノックすると老婆がショットガンを携えて出てくる。家の持ち主だ。
あなたが来訪の意図を伝えると、老婆の一人暮らしは用心が大事でね、といいながらあなたには玄関前の通りに面したテラスで待つように指示する。
大分前にここの息子が帰郷中に強盗に殺される事件があったことを不動産屋がもらしていたのをあなたは思い出す。
しばらく待たされた後、出てきた老婆にこの家を買いたい旨を伝えると、老婆は条件があると言い出す。
ひとつは内覧はお断りであるということ。もうひとつは金額が相場の数倍であること。
なるほど不動産屋が取引は不首尾になるだろうというのも分かる、とあなたは思う。
しかしあなたはお金に余裕があり、そしてこの家が気に入ってしまっている。
あなたがそれでかまわないというと、老婆は一度家に引っ込み冷たいレモネードを出してくる。
こうしてあなたは死んだ。
なぜこんなことに?
【補足】
「あなた」が死出の旅路で出会った謎の女性「黒寡婦」が質問に答えます。問題文中の「あなた」なったつもりで質問してください。(問題文中の「あなた」のことは「私」と呼称してください。)なお、亀夫君問題ではありません。
[ II ]
●老婆はなぜあなたを殺そうとしたか
○あなたの死は死んだ息子に関係がある
○老婆はあなたが息子を殺した犯人だと思っている
○老婆があなたを犯人だと思ったのはあなたが家を欲しがったから。
○息子を殺した犯人はこの家を欲しがっている。
●犯人がなぜその家を欲しがるのか
○この家に大金が隠されていることを知っている
●なぜ犯人はそのことを知っているのか
○息子は過去に犯罪で大金を手に入れた
○息子は金をこの家に隠した
○犯人は息子と共犯(だから金があることを知っているのはこの共犯の男だけ)
●犯人が息子を殺した理由は
○息子は犯人と金の配分をめぐって仲間割れをした
[ III ]
引っかかりポイント
-家を手に入れようとして息子を殺したのではない。
-息子を殺したのは偶発的事故
ここをむりなく流せるか?息子が殺された理由に入り込まれたら迷走する
[ IV ]
もうひとり関係する人間がいる
それが息子と共犯 仲間割れ、裏切り
息子は金を家に隠した
共犯の男は息子の金を奪おうと過去にやってきたことがある
過去の襲撃は失敗した。 *ここで老婆が撃退した事にしてもいいだろう。
このうちに何か貴重なものがある
その存在を知っているものが一人だけいる。<この状況を無理なく作るには犯罪は不可欠
過去にそれを奪おうとしたものが誤って息子を殺した。
老婆はその存在を知っているものを洗い出す必要がある。
犯罪に関係しているものは誰?
[ V ]
【解説】
老婆には息子がいた。年頃になると一旗あげることを夢見て都会に出てゆき、やがて音信も途絶えた。
2人組の銀行強盗が逃亡中というニュースが世間を騒がしていたある日、息子がトランクを抱えて帰ってきた。老婆は息子がなにをしてきたか察するが何も言わず迎え入れた。トランクは息子がどこかに隠したらしく翌日には姿を消した。
数日後の夜、息子の部屋から銃声が響き、誰かが逃げ出してゆくのが目撃された。息子は死んだ。
老婆は察する。相棒が取り分を求めてやってきて喧嘩になったのだろう。
目撃証言から逃げた男がトランクを持ち出したわけでもないようだ。まだこのうちのどこかに隠されているのだろう。
幸い息子は被害者として扱われ、銀行強盗の嫌疑はかからなかった。老婆は待つことにした。再び襲撃を受けないよう家のよろい戸はいつもしっかりと閉め、自 身はショットガンをかたときも離さず。そしてむちゃくちゃな条件で家を売る。それでも欲しいという人間が現れたら・・・この家に隠されたトランクの大金を 狙っている男。息子を殺した憎い男以外ありえないではないか。
あなたはレモネードを飲み干す。日の当たるテラスで待たされて喉がからからだ。しかしすぐに強い吐き気を覚える。
「すみません。トイレを貸して欲しいんですが」
老婆は何も言わず頷く。その表情がどこか満足げなことにあなたは気づかない。
みなさん、おつかれさま。さあ、死出の旅路をお続けください。でも皆さんは私に出会ってしまったので、天国にも地獄にも行けないんです。ごめんなさいね。
皆さんが行くのはウミガメラーのワルハラとも言うべきところ。ウミガメ問題の中で死した人たちが集い、日夜問題を出し合うのです。皆さんが素敵な死後を送れるようここから祈ってますわ。
ごきげんよう、ごきげんよう・・・
[ VI ]
正解要件
家にはお金(財宝でも可)が隠されている。(それを知っているのはごく一部のものだけ。)
息子はそれを狙った男に殺された。
老婆は復讐の為この家を買い取ろうとしているものを殺すつもりでいる
老婆があなたを殺す動機として、「お金への異常な執着」「息子の復讐」どちらでもありえる。
お金を
[ VII ]
都会に出てマフィアの一員になり、組織から金を盗んで逃げ帰ってきた。帰ってきてまもなく、息子は自分の部屋で組織から送られてきた男に殺された。銃を手に逃げ去る男の姿が周辺住民に目撃された。
老婆は考えた。金はこのうちのどこかに息子が隠したのだろう。そしてそれを取り返しに来るはずだ。
売家の札をかけ、相場を大幅に上回る買値で買おうとする者が現れるのを待つ。
そんな金を払ってでも買いたい者の真の目的は決まっている・・・このうちのどこかに隠された大金だ。
それを知っている組織の人間。それが老婆の復讐の対象なのだ。
#組織で押し入ってばあさん縛り上げて奪ってしまえばいいんじゃない?
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メモを見ると、ブラックウィドウ氏がどのように問題の進行を考え、またそれを整理していったかの痕跡が見えてなかなか興味深いものがあります。順に見ていってみましょう。
[ I ]はそのまま問題文で、特に付記すべき点はありません。
[ II ]は このメモにおいて注目すべきポイントの一つです。問題で当ててもらわねばならないポイントを列記してあります。特におばあさんの動機や息子を殺した犯人側 の事情と言う最も複雑なポイントについては丁寧に要素を分解して整理してあります。このリストがあれば進行の過程でなにが明らかになり、なにがまだだと言 うことを出題者は常に容易に把握できるでしょうし、そしてまだなところに解答者の注意を向けさせるように誘導するのも楽になるでしょう。
[ III ]も 注目すべき箇所です。これは進行が上手くいかず迷走しそうな点を挙げて、実際そうなったときに早めに手を打てるように備えているわけです。ここでは氏は1 度目と2度目の襲撃者の家を訪れる動機が異なる、つまり1回目は息子との交渉、2回目はトランクの回収を目指した家の獲得というストーリーを当ててもらう のに苦労しそうだと心配しているようです。家にやってくるという行為そのものは同じでもその意図が違うわけですので、解答者が混乱するかもしれないぞと注 意を自らに呼びかけているわけです。
[ IV ]は[ II ]や[ III ]をまとめるためのメモ書きの残渣といったところでしょうか。どうやら初期のうちに書かれたものであるようで、解説とは異なるストーリーの可能性をメモしています。
[ V ]は投下された解説文そのままです
[ VI ]と[ VII ]に ついては進行とはまた別に、問題構成の点で興味深い要素があるので、そのことについて述べたいと思います。[ VI ]と[ VII ] は共にこのメモの中で最も古いもの、つまり一番初期の時点で書かれたものと思われます。そして[ VII ]を見るとこれは元ネタほぼそのままの形です。そして[ VII ]の最終行で*をつけてメモを残していますように、元ネタそのままの話には、マフィアの組織が持ち逃げされた金を奪い返すのに、一度失敗したからと言って 善人を装って家を買うなどというまだるっこしい方法をとるだろうか、ましてや今は老婆一人だけなのに、という疑問が残ります。
その迷いを残したままとりあえず問題文を作るために要点を書き出し、再構成しようとしたのが[ VI ]の正解要件ということのようです。このため息子が殺された理由については漠然としたものになっていますし、老婆の動機についても複数の可能性を指摘して います。これと実際に出された問題文・解説文を見ると、不自然な点にはなるべく整合性がつくように加工して問題文・解説文へと仕上げていっていることがわ かります。マフィアの組織をやめて本人と相棒だけの銀行強盗へ、老婆の過剰な戸締りとショットガン、敵かもしれない相手と家で2人だけになるのを避けて交 渉は外のテラスで、そしてわざと暑い中長時間待たせ、レモネードを躊躇なく飲ませるように・・・。いずれも元ネタにない要素です。
これらは出題時の進行においては決定的ではないでしょうが、終わったあとの納得感で違いを生む要素と思われます。
問題の構成や進行のための準備など、いろいろな点で興味深いメモだ と思いますが、いかがでしょうか。私自身はめったにここまで周到な準備はやりませんしやったとしてもこのように書き残す事はありません。ブラックウィドウ 氏も多分そうだとおもうのですが、このメモを見るとこの問題に関してはそれなりに期するところがあったのでしょう。
周到な準備が功を奏したのかこの問題は実際の出題でもつつがなく進 行しましたし、良問推薦も受けたという意味では成功作といっていいと思います。私の個人的経験からすると良問推薦は運の部分も相当大きいし、良問が常に周 到な準備に支えられているとはいえませんが、それでも十全の準備は良問として評価される可能性を引き上げる力となるとは思います。この問題とメモはそのよい例ではないでしょうか。
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2007-05-03T08:19:37+09:00
1178147977
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4. 補論
https://w.atwiki.jp/kaerujicho/pages/15.html
#contents
*4.1 目標とは別に
ここまで説明してきた事を大雑把に振り返ると、
-1章では「自分の問題を客観的視点から把握する」ということを目的に、把握するための基本概念について論じました。
-2章では「出題時のゲームの進行をよく考えて問題を構成する」ということを目的に、問題構成の例を見ていただきました。
-3章では「出題のタイミングと誘導に配慮する」ことで解答者に過度の負担や物足りなさを感じさせる危険を減じるができる、ということを論じました。
どれも言うのは簡単ですが実際やるとなると大変です。私にとってもこれらは努力目標のようなもので、完全に実行してきたとは言えないし、今後も出来ないで しょう。せいぜい可能な限り心がけるというのが関の山で、胸を張って人にかくあるべしといえる種類のものではありません。もとより本稿は基本的に人に何か を勧めることを目的とするものではありませんが、一点だけこれらの目標とは別に、私が実行してきていると言えて、かつ古株の一人として出題に悩む方にお勧 めしたい事があります。それがこの章のテーマです。
*4.2 失敗してもいい
お勧めしたい事、それは失敗を 恐れず出題しよう、ということです。よく考えて作った問題がうまく行かなかったとしても、それはよくある事です。元々相手が見えない環境で相手に配慮する には限界があります。十分な配慮をしてもなお意図したように行かないというのは避けられません。我々にできるのは基本的に失敗の確率を下げる努力を怠らな いということであって、常に成功させることは本質的に不可能です。
また、好みの違いというのもあります。自分がこれはと思う問題が受けず、全然たいしたことないと思う問題が受ける経験はどなたにもあるでしょう。これはつまらなそうだと思ってもそれを出題しない理由にする事はありません。
よく配慮して作った問題が空振りしても、それは失恋のようなもので、自分が悪いわけでも相手が悪いわけでもなかったりします。ですから悲しい事ではありますが、恥ずかしい事ではありません。
とはいえ自分に落ち度が無かったかについては、自分の問題を世界一よく分かっている自分の責任において、よく再検証しておく必要はあります。この問題は 解答者から見てやりにくいものでなかったか、進行で無理のない誘導ができたか、適切なタイミングで投下されたのか・・・?などなど。それなくして失敗は何 ももたらしてくれません。そして自分の問題の落ち度を見いだしたらなら、改善し次の出題に生かすことが失敗作につきあってくれた解答者の方々への恩返しと なるのではないでしょうか。
*4.3 型に嵌る必要はない
話が少し横道にそれますがこの 稿を通じて私がやっているのは問題を作るとき、出すときに私が気をつけている事の一部を説明する事だけです。どんな問題を作るべきか、もう少し厳密に言う ならどんな構成にするべきかとかどんな要素を入れるべきかなどといったことには言及していませんし、する意図もありません。
どんな問題をつくるべきかは、その問題の構成や要素がどんな効果をもたらすか把握したうえで(ここで解答者から見てどう見えるかという、自分の問題に対する認識と把握が必要で、それがこの稿の主眼です。)出題者の責任で決めるべき事と私は考えています。
理想の問題と言うのは人によって違うし、またそうあるべきなのに、それを型に嵌めてしまっては出題者の持ち味がなくなってしまうからというのがその理由 のひとつですが、それだけでなく型に嵌ってしまっては新しい発展が望めないからというのも大きいです。私はスタンダードなウミガメから外れた変な事をよく 試しては失敗したりしてきていますが、その中から亀夫君問題のようなものが生まれる事もあるので、新しい試みも危険は伴いますが決して悪いことばかりとは 言えないと思います。大事なのはその新しい試みがどんなメリットをもたすのか、そのメリットはデメリットを上回るものなのかなど、効果の目算をつけておくこと、そして読みが当たっていても外れていても結果を受け止めて次の作問にフィードバックすることです。
*4.4 この点だけもう一度
もう一度この章の最後に私が自分もやってきました、そしてみなさんにもお勧めですよと胸を張って言える唯一の事を記して締めくくりとします。
「失敗を恐れず、失敗しても凹まずGO! でも失敗したときはなぜそうなったか考えよう」
[[5. 最後に]]
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2007-05-03T08:17:14+09:00
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3. 出題の前に
https://w.atwiki.jp/kaerujicho/pages/14.html
#contents
*3.1 出題の方針
こ こまで問題をどう把握するか、どう構成するかについて考えてきました。これらをクリアして思い通りの問題ができそうだと言う事になったら次の課題はいつど のように出題するか、です。ここでも出題者としてウミガメを楽しむためには解答者に楽しんでもらわなくてはいけないという、問題構成と全く同様の配慮が意 味を持ちます。
*3.2 解答者の集まりに目算を
素晴らしい傑作となりうる問題も、解答者がそう思ってくれなければただの自己満足です。そして出題が上手く行くかどうかは問題の内容のみならず出題者がどのタイミングで出題するかにも依存します。
例えば謎をつぎつぎと解き明かし、最後にどんでん返しでクライマックス、というようなボリュームたっぷりの問題を作ったとしましょう。そしてその問題は ちゃんとどんな風に進めるかの目算も立っています。(まず参加者はここに注目して質問を重ねてくるだろう、そして周辺状況が明らかになるとこの謎が立ち上がって見えるはずだ。そこでもういちど周辺状況を埋める質問が一通り出る。すると重要なキーワードが浮かび上がる。そうすればどんでん返しまであと一 息・・・などなど。)では出題?いやいやちょっと待ってください。
その問題は確かに傑作かもしれません。しかし問題の出来がよければいつもおいしく感じてもらえるわけではありません。例えば明け方や日中のほとんど人が いないときにボリュームたっぷりの問題を出しても期待したほど解答者が集まらないかもしれません。そうなると解答者は膨大なベールをはがすための作業を僅かな人数でせっせと行わなくてはなりません。これは解答者にとって負担です。くたくたになりながらようやくキーワードにたどり着き、あと少し、一番美味しいところという段になって、用事で離席しなくてはならなくなったりしたら・・・私ならorzです。
出題のときに過度の負担を解答者に要求しない様にボリュームに見合った人数が集まるタイミングを見計らう。これが案外重要な配慮ではないかと私は考えて います。無論ネットの向こうに何人いるか判らないゲームにおいて、出題のタイミングを見計らうのはなかなか難しいことです。(そういう意味でも私は出題が 高評価を受けるか否かは運の部分が大きいと考えています。)しかし常識的に集まりやすい時間帯の見当は付くでしょうし、スレにしばらくいれば季節変動も含めてさらに高い精度で推測がつくでしょう。何より全く考えないよりはるかにましです。そうしたちょっとした用心深さが大事に作った問題を空振り三振の危機 から遠ざけるのです。
出題宣言後のノシからも集まり具合は分かるでしょうが、思ったより人が多いから、あるいは少ないから出題をやめるというわけにはいきません。問題のス トックが十分にあるならノシの多寡に応じて問題を選ぶのも一手です。あるいはノシの量を見てからベールの厚みに軽く調整を入れるという形での対処も可能で しょう。(出題直前に一言二言足したり引いたりは私は実際よくやります。)どちらも難しいようなら目算は宣言前につける必要があります。
*3.3 出題が始まってからの調整
出題してから人数が少ない、タ イミングを外したなと思っても焦る必要はありません。適切に誘導すればよいのです。重要な概念、キーワードに近づくのに有意な言葉、そちらに解答者の意識 を向けるように受け答えを工夫することで、スープをボリュームの割に飲みやすいものに出来るでしょう。そのとき助けとなるのが、問題構成のときにどれだけ 進行について考えてあったかです。
*3.4 名料理人にして名給仕?
僅かな人数のお客さんにバケツ一杯のスープを出すのはよくない でしょうし、沢山のお客さんにオチョコ一杯のスープでは物足りないでしょう。(出題待ちの人がいるとか、他の問題を持っていて前菜として使うなら問題ない かもしれませんが。)料理をいつどのように出すか、それはいわば給仕の問題です。料理の腕だけでなく給仕の腕も少なからずスープの評判に影響するのではないでしょうか。
[[4. 補論]]
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