12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03:07:51.61 ID:9yCv5QLV0
ベイダー卿はしばらく各部の点検をした後、木材から削り出された車輪止めを外し、フォースを
使って竜の羽衣を格納庫の外に引きずり出した。
薄暗い建物の中ではなく日光の下で見てみたい、とでもいうかのように。

ベイダーのそんな様子を見て、ルイズが口を尖らせる。
「呆れた。新しい玩具を与えられた子供じゃあるまいし」
その一方――

「かわいい」
ポツリと漏らしたタバサの顔を、キュルケが気味の悪いものでも見るかのような表情で覗き
込んでいだ。


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03:12:47.56 ID:9yCv5QLV0
再び竜の羽衣いじりに夢中になり始めるベイダー卿。取り残される形のルイズたちが、どうし
ようかと顔を見合わせていたところに、シエスタの父がやって来た。
彼は地面に転がるオーク鬼の死体を見てぎょっとした様子だったが、シエスタやルイズたちが
揃って無事であることを確認すると、顔をほころばせた。

「約束どおり、オーク鬼の討伐は済んだわ。そこに転がってるので全部よ」
ルイズがささやかな胸を張る。
シエスタの父は、任務の完了があまりにも早いことをいぶかしんだが、視線を向けて数え
れば、転がってる死体の数は村人の目撃情報にも一致する。

貴族というのはやはりとんでもない存在だ――そんな思いを新たにしながら、彼は口を開いた。

「正直驚きました。こんなに早くオーク鬼を掃討していただけるなんて……。ところでさきほど、
喋るフクロウが教会に現れまして、ミス・ヴァリエールにこれを、と」
シエスタの父が差し出す手紙に捺された紋章を見て、ルイズの眉が怪訝そうにひそまった。
それは、魔法学院の紋章であったからだ。


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03:15:51.19 ID:9yCv5QLV0
キュルケはルイズの手の中の封書を覗きこんだ。
「学院から?」
ルイズは頷き、封を破る。

その顔が、初めは蒼ざめ、次いで喜びと戸惑いの入り混じったような複雑な表情に変わった。

「帰るわよ。借金はちゃらになったわ」
読み終えた手紙をたたみながら、ルイズはそう宣言した。


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03:20:02.42 ID:9yCv5QLV0
手紙の主はオスマン氏であった。
無断欠席への叱責から始まり、キュルケたちには罰として学院の教室という教室の掃除が
命じられていた。

ルイズには別の任が待っていた。
二週間後に催されるアンリエッタ王女とゲルマニア皇帝の結婚式の席上では、トリステインの
王族のしきたりで、選ばれた巫女が王家の秘宝『始祖の祈祷書』を片手に祝福の詔を詠み
あげる。その巫女に、アンリエッタがルイズを直々に指名してきたらしい。
オスマン氏は、一刻も早く戻れ、と強い調子で命じていた。『始祖の祈祷書』を渡さなければ
ならないし、詔を考える時間もぎりぎりである。


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03:23:41.04 ID:9yCv5QLV0
また、急ぎの任務である上、学院としても大変名誉な話なので、ルイズとギーシュの借金は
学院が負担するとも述べられていた。
それを聞き、ギーシュの顔色が少し回復した。

手紙の末尾には、メイドのシエスタは、王女の結婚式が終わるまで実家で休みを取っていい
と付け加えられていた。


26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03:26:18.48 ID:9yCv5QLV0
「どうする?」
と、キュルケ。

「どうするも何も、すぐに戻る他ないでしょ。でも、問題は……」
ルイズはちらっとベイダーの方を見た。
相変わらず竜の羽衣に夢中のようだ。

「約束どおり、竜の羽衣は引き取っていただいて結構ですよ」
ルイズの目配せの意味を誤解したシエスタの父が微笑んだ。
ルイズは曖昧に頷き返した。


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03:29:50.48 ID:9yCv5QLV0
しかし本当に問題なのは、どうやってこの馬鹿でかい竜の羽衣を持って帰るか、である。

ベイダーの力をもってしてさえ、辛うじて引きずり出せるくらいの重量なのだ。
タルブの村から魔法学院までの距離なんて持ち帰りようがない。

「心配ない」
ルイズの困惑に応えるかのように、いつの間にかベイダーがそばまで来ていた。
「ギーシュ、出番だ」

「え?」
突然の指名に、ギーシュは自分の顔を指差した。


32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03:33:37.03 ID:9yCv5QLV0
その日、ルイズたちはシエスタの生家に泊まることになった。
村を救ってくれた貴族を迎え、人々は盛大に歓迎してくれた。
秘蔵の家畜がつぶされ、仕込みたてのワインが次々とシエスタの家に運び込まれる。

ほとんど祭りのような賑やかさだった。
あるいは、本当に来年以降もこの日が祝われることになるのかもしれない。


37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03:38:20.98 ID:9yCv5QLV0
ベイダー卿はシエスタの家族に紹介された。父母に兄弟姉妹たち。シエスタは、八人兄弟の
長女だった。

父母は怪訝な顔でベイダーを見、兄弟たちはあからさまに怯えたが、わたしが奉公先でお
世話になっている人よ、とシエスタが紹介すると、すぐに相好を崩した。

幼い兄弟たちも、ベイダーがオーク鬼たちをあっという間に屠った段をシエスタに面白おかしく
語って聞かせられると、ようやく警戒を解いたようだった。

それでももちろんなつこうとはしなかったが。


45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 03:48:48.18 ID:9yCv5QLV0
最初は遠慮がちだったルイズたちも、宴の進行とともに打ち解け、村人と一緒に騒ぎ始めた。
その頃には家族も他の村人も分け隔てなく、シエスタの家に出入りしていた。
さらには、庭で素朴ながら賑やかなダンスパーティまでもが催される。
ベイダー卿はシエスタの家をそっと出た。

向かった先は、村はずれの草原である。
村の喧騒はここまで来てもわずかに届いてくる。
彼方の山の上にかかる月が野原を明るく照らし、風に揺れる花を時おりキラリと輝かせて
いた。
そんな幻想的な景色の中で、竜の羽衣だけが異様な影をこちらに投げかけている。
オーク鬼達の死体は村人が処理したようだ。
ふと、竜の羽衣の前に人影が一つ立っているのが目に入った。
ベイダー卿が近づくと、影がゆっくり振り向いた。

「ふふふ、わたしも抜け出して来ちゃいました。ベイダーさんもここに来るだろうと思って」
人影の正体はシエスタだった。


193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 16:36:00.36 ID:9yCv5QLV0
シエスタはいつものメイド服とは違う、茶色のスカートに、木の靴、そして草色の木綿のシャツ
を身に着けていた。
そっと、竜の羽衣に歩み寄ると、ライトグレーのその機体の表面を掌で撫でる。

「ベイダーさん、この竜の羽衣は本当に飛べるんですか?」
「飛べる。これはこの星のものではない」
シエスタの背に向かい、ベイダーが答えた。
「この星のものじゃないって、どういうことですか? おじいちゃんは東の方から飛んできたって
言ってましたけど」

「文字通りの意味だ。この竜の羽衣の持ち主は、別の星、あるいは別の銀河からやって来た。
理解しがたければ、別の世界と言ってもいい」
「わたしが学のない村娘だからって、からかってらっしゃるんでしょう?」
シエスタが顔を曇らせた。


195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 16:41:42.44 ID:9yCv5QLV0
ベイダー卿は首を振った。
「違う。なぜなら僕自身も別の銀河から召喚されたからだ」
シエスタはハッとした。
「じゃあ、おじいちゃんとベイダーさんは同じ国で生まれたのですか?」

ベイダーは再び首を振る。
「残念だがそれも違う。僕の知る銀河系とはまったく異なる技術体系だ」
「そうです……よね……。そんなすごい偶然なんて、あるわけないですよね」
シエスタは少し肩を落とした。

「だが、少なくとも彼が嘘をついているわけではない。この羽衣は、少し修理を加えて燃料を
補給すれば飛べる」
その言葉に、シエスタはもう一度竜の羽衣の巨体を見上げた。
「そうですか、飛んだら、素敵だな。飛んだら、一度でいいからわたしも乗せてくださいね。
おじいちゃんがそうしたように、この竜の羽衣でタルブの村とこの草原を上から見下ろして
みたいから……」

ベイダーは少し考え込んでいたが、やがてわずかに頷くと、コクピットに飛び移り、キャノピー
を開けた。
「来い、シエスタ」
そして、シエスタに向かって片手を伸ばした。


200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 16:49:06.75 ID:9yCv5QLV0
シエスタは少し戸惑った様子だったが、おずおずとその手を掴んだ。
ベイダーの力強い腕が、その体をコクピットまで引き上げる。

「長くは続かんぞ。祖父が見た景色を見ておくんだ」
ベイダーはそうとだけ言うと、シエスタをコクピットに座らせてキャノピーを閉じ、自分は地面に
飛び降りた。

そして、両手を掲げてフォースを集中させた。


203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 16:54:30.15 ID:9yCv5QLV0
キャノピー越しにベイダー卿を見つめながら、何が始まるんだろう、と体を強張らせていた
シエスタだったが、やがてわずかな震動と共に竜の羽衣が上昇を始めたのがわかった。

きゃあきゃあわめくシエスタをよそに、羽衣は空中でいったん静止すると、物凄いスピードで
飛翔した。
それはもちろん、羽衣が本来出せるスピードには遠く及ばない速度だったが、ほとんど飛んだ
ことのないシエスタにとっては関係がない。
竜の羽衣はあっという間に村の上空に差し掛かり、旋回を繰り返した。

上を見上げれば、初夏の夜空には雲ひとつなく、満天の星々と二つの月が光のシャワーを
タルブの村へと注いでいた。
水平より下に視線を向ければ、祝賀会はまだ続いているようで、村のほとんどの家の窓には
灯りがついたままだった。


206 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 16:59:46.48 ID:9yCv5QLV0
少し慣れて落ち着いたシエスタは、キャノピー越しに見下ろす一つ一つの家屋を観察すること
ができた。

最初に目に付いたのは、尖塔も見事な教会である。
次いで、ひときわ立派な門構えの、村長の家を認めることができた。
その頃にはもう、子供の頃から知悉する村の地理にも重ね合わせて、特長のない家も一軒
一軒識別できるようになっていた。

そして、その中でも、最も人の出入りが激しい一軒の家がある。シエスタの生家だ。
それと気づいた時に、シエスタは突然強烈な思い出の波に揺さぶられた。


213 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17:04:48.87 ID:9yCv5QLV0
あの家を建てたのは祖父だ。

十歳の頃に亡くなった祖父。

変わり者と言われながらも、一生懸命に働いていた祖父。

そして、自分にはことのほか優しかった祖父……。

彼もこうして、村に建つ家々を見下ろしながら空中を漂い、二度と飛べなくなって見知らぬ
土地に着陸したのだろうか。

「おじいちゃん……」
ぽつり、とそう口に出してしまったが最後、シエスタは自分の両眼からこぼれる涙を止める
ことができなくなった。


215 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17:12:06.04 ID:9yCv5QLV0
星空の下の幻想的な飛行体験は、時間にして五分程度だった。
竜の羽衣は、軽い震動とともに草原の元の場所に降下した。

そのコクピットから、ベイダー卿の手を借りて地面に降りたシエスタは、いつかのルイズが
そうしたように、彼の背中にしがみつくと、柔らかい生地のマントに顔をうずめ泣きじゃくった。

まだ漏れ聞こえてくる村の喧騒と、風にそよぐ草の音と、背後のシエスタの嗚咽だけが、辺り
の静寂をかき乱していた。

だが、それもすぐに止み、彼女はベイダー卿の背からパッと離れた。
そしてぺこりとお辞儀をすると、微笑みながら言う。
「ありがとうございました」
少し泣き腫らした目ではあったが、いつものシエスタと同じ、ひまわりのような明るい笑顔
だった。

過度の集中でかなり疲労していたベイダー卿だったが、その笑顔を向けられると、悪い気は
しなかった。


217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17:16:40.72 ID:9yCv5QLV0
翌朝、タルブの村に二十騎ほどの竜騎士が到着した。
ベイダー卿の指示を受け、ギーシュが王軍の元帥である父のコネを使って雇った竜騎士隊
とドラゴンである。

ベイダー卿の発案で、太いロープで作った巨大な網に竜の羽衣を載せ、それで学院まで運ぶ
ことになったのである。
一行はみな「どうしてこんなものを運ぶんだ?」と疑問に思っていたが、ベイダー卿相手に
そんなことを言い出せるはずもなく、しかたなく折れた。

ちなみに、ギーシュは昨夜の宴に与ることができなかった。
最寄の軍の駐屯地まで夜通し馬を駆けさせ、使者を務めたからである。
そのギーシュは、隊長と見られる騎士が駆る竜の背で、村に到着したことにも気づかずに
眠りこけていた。

ルイズは少しだけギーシュに同情した。


226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17:21:52.41 ID:9yCv5QLV0
「途中で落としでもしたら、一人残らず叩き切る」
居並ぶ竜騎士隊を前にして、ライトセイバーを抜いてそう言い放つベイダー卿。
ドラゴンたちもその気迫に気圧されてか、ギャアギャアと鳴いた。
竜騎士たちも、その言葉があながち冗談やハッタリだとも思えなかったようで、慌てて敬礼を
した。

竜騎士を呼んだり、でかい網を作ったりしたので、運送代はバカみたいにかかった。
借金が帳消しになったばかりのルイズは、また出費か、と頭を抱えた。
しかし、学院の中庭に、でんっ! とあらわれた竜の羽衣を見て、快く運送代を立て替えて
くれた人物がいた。

ミスタ・コルベールである。


233 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17:28:01.41 ID:9yCv5QLV0
ミスタ・コルベールは、当年とって四十二歳。トリステイン魔法学院に奉職して二十年。『炎蛇』
の二つ名を持つメイジである。
彼の趣味……というよりも生きがいは、研究と発明である。

コルベールは、ドラゴンに吊られて魔法学院の広場に現れたものを、研究室の窓から見つけて
慌てて飛び出してきた。
それは、コルベールの知的好奇心を激しく刺激したのであった。
「おお、ベイダー卿! こ、これはなんですかな? よければ私に説明を!」


240 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17:33:48.16 ID:9yCv5QLV0
竜の羽衣を地面に下ろす作業を監視していたベイダー卿が、その声に振り向く。
「ちょうどいいところに来たな。相談したいことがあった」
「私に?」

コルベールはきょとんとした。いったい、この平民は何者なんだろう? あの日、彼の目の前
でミス・ヴァリエールに召喚された、伝説の使い魔『ガンダールヴ』。そして、そんな伝説など
歯牙にもかけぬ、傲岸不遜な自称『シスの暗黒卿』……。


242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17:38:08.41 ID:9yCv5QLV0
ベイダーはコルベールに事のいきさつを語って聞かせた。

「これが飛ぶのか! はぁ! 素晴らしい!」
コルベールは、竜の羽衣のあちこちを、興味深そうに見て回った。

「ほぅ! もしかしてこれが翼か! 羽ばたくようにはできておらんな! さて、この下について
いるのは何だね?」
「ミサイルだ。この星の技術を遥かに超越した兵器だ。どんなに速く飛ぶ幻獣でも、これを避け
ることはできまい」

傍らに立って二人のやりとりを聞いていたルイズは、思わず身をすくませた。
ベイダーが武器の話を楽しげに語るのを聞くのは、ルイズにとってはあまり嬉しいことでは
ない。

自分たちはとんでもないものを引き取ってしまったのではないか、そんな予感すらした。


247 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17:44:27.92 ID:9yCv5QLV0
「この、下を向いている二つの穴は?」
ルイズの戸惑いをよそに、コルベールはさらに説明を促す。

「エンジンノズルだ。ここからガスを……」
ベイダーは口頭で説明しながら、ライトセイバーを抜き、刀身を伸長させた。

ルイズが驚いて飛び退くが、好奇心を満たすことに夢中なコルベールはまったく平気なよう
だった。

「――すると、この翼の上下で圧力差が生まれ……」
ベイダーはライトセイバーの刃先で、あろうことか学院の石畳に図を描き始めた。
平らかな石の表面が高熱の刃で抉られ、赤熱した文字を浮かび上がらせる。
そこには、覚えたての文字による情報も付されていた。

タバサがどこか誇らしげな様子であることに、ルイズたちはもちろん気がつかなかった。


261 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17:55:16.95 ID:9yCv5QLV0
教師であるはずのコルベールは、その蛮行をとがめもせず、ノートに急いでメモを取っていた。

「すすす、素晴らしい! なるほど、よくできている! では、さっそく飛ばせてみせてくれんか
ね? ほれ! もう好奇心で手が震えておる!」
コルベールはいつの間にか砕けた口調になっていた。
しかし、それに対してベイダー卿は首を振る。

「残念だが今は無理だ。燃料がないし、各部の修理も必要だ」
「燃料? この間の油では無理かね?」
「おそらく無理だろう。今からタンクに残った燃料を調べよう」


265 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/12(火) 17:57:39.75 ID:9yCv5QLV0
まったく話についていけないルイズは、そこでようやく、自分たちを不安そうに見つめている
竜騎士隊の連中に気づいた。

この場の主導権を誰が握っているのか、彼らにもわかっているようである。
「お取り込み中のところ申し訳ないのですが……」
竜騎士隊の隊長が、おずおずとベイダー卿に歩み寄ってきた。

「取り込んでいるのがわかっているのなら、後にしろ」
ベイダー卿はそう言い捨て、器具を調達するためコルベールと連れ立って研究室の方に歩い
ていってしまった。

結局竜騎士隊に運送代が支払われたのは、日暮れ近くになってからのことであった。


ベイダー卿とコルベールの、奇妙な協力関係がこうして始まった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2007年06月12日 18:19