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446名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 11:43:44ID:ZVWP2ZK7
「木村に気に入られただけならまだしも・・・いや、よくないけど」
次の言葉はだいたい予想できる。
「榊さんと別のクラスなんて・・・」
肩を落とす彼女の顔は今にも泣き出しそうだった。
受験で大変な年の担任が木村だなんて、想像しただけでも寒気がする。
その上気に入られるなんて・・・。
「よみ・・・もう学校来たくないよ」
「おいおい、そんなこと言うなよ」
ついに泣き出した彼女の悲痛な叫びを、私は月並みな言葉で慰めることしかできない。
「大丈夫だよ。すぐ慣れるから」
かわいそうだとは思う・・・思うが、当事者でない私ができることなんてたかが知れている。

「うぅ・・・・・・榊さん・・・」
私の冷めた慰めなんかより、この子には榊の一言が何より力になるんだろう。

仕方ない。
「とりあえずここで待ってろ」
昼休みはまだ始まったばかり・・・。
「すぐ戻る!」

はぁ・・・世話の焼けるやつだなぁ。

447名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 11:44:51ID:ZVWP2ZK7
榊に事情を話すと、彼女は何も言わずに頷いた。
「体育館のとこ。待たせてあるから・・・」
うんと言って私に付いて来る彼女の表情は、いつもと変わらないものだった。

こいつはかおりんの気持ちに気付いているんだろうか。

あんなあからさまな態度取られて、気付かないやつがいるのかとは思う。
ただ・・・それは相手が異性ならばの話で。
榊にしてみれば、彼女にあこがれる女の子の中の一人くらいにしか感じていないのかもしれない。
「榊、・・・かおりんの気持ちには・・・」
あいつは、この後の状況によっては告白さえしかねない。
榊に嫌われるようなことがあったら本当に学校に・・・。
「・・・それなりに」
「?」
「大丈夫だ。心配要らない」

448名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 11:45:31ID:ZVWP2ZK7
かおりんはさっきまでの姿でそこに立っていた。
さすがにもう涙は止まっていたが、ぐったりした表情は変わらない。
・・・いや、前言撤回。
「お待たせ」
榊を見た途端、彼女の顔に健康的な血色が戻る。
「さ・・・榊さん!」
両手を胸に握って縮こまる姿はいかにも女の子だ。
いつもと変わらない姿で立っている榊の横でもじもじしている彼女を見ていると、本当に告白の一場面のように思える。

「榊さん、クラス変わっちゃって・・・あの・・・」
かおりんの目に再び涙が浮かぶ。
榊の前でも取り乱してしまうなんて・・・。
彼女の心労は想像以上だったのかもしれない。
正直、榊に会わせたくらいで癒えるものなのだろうか。
そう思った。
・・・思った。
眼前に広がる光景を目にするまでは。

449名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 11:46:28ID:ZVWP2ZK7
「泣かないで・・・」
榊は赤い顔で泣いている少女を抱きしめていた。
とても自然な動きで・・・まるでハンカチか何かがふわりと覆いかぶさるように。
「さか・・・さん・・・」
彼女はまだ何が起きたかわかっていない。
口をぱくぱくさせて震える少女の背中を、さっきよりも強い力が抱きとめる。

「大丈夫だから」
憧れの人の一言に、少女は胸に当てていた両腕を邪魔に感じたようだ。
少しでも体を密着させようと握った手のひらを解き、榊の背中の向こうでもう一度握りなおす。
豊満な胸に埋まった少女の顔は、私のほうからはもう見えない。
真っ赤に染まった耳だけが、彼女の幸せを知らせている。

450名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 11:48:11ID:ZVWP2ZK7
「来たくないなんて言っちゃだめだ」
榊は・・・かおりんを慰めるためにこうしたのだろうか。
「私は毎日学校に来る」
この抱擁は・・・同情の抱擁なんだろうか。
「だから、かおりんも・・・」
ここからでは表情は見えないが、かおりんは泣いているようだった。
彼女の手のひらには榊の制服が強く握られている。
「つらくなったらいつでもおいで。・・・私にできることは少ないかもしれないけど」
二人の体が離れ、真っ赤な目で榊を見上げる少女の顔が現れる。
「榊さん・・・ありがとうございます」
震える声を振り絞る。
と、彼女の顔が再び何かで隠された。

少女の顔を覆ったのは、美しい、黒い長髪だった。

・・・榊のかおりんへの気持ちは・・・同情なんかではないんだろう。
鈍感と言うか、つかみどころの無いやつだと思ってたけど。
本当は一番敏感で、周りのことを良く見てるのかもしれない。

離れた唇を名残惜しそうに触るかおりんの笑顔がその証拠だろう。

でも・・・やり方が不器用なんだよなぁ。
本当に、世話の焼けるやつらだよ。

二人がこちらを見て笑っている。
私は、自分の顔が彼女たちよりも赤くなっていることに気付いた。