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195名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/04/11(水) 23:42:04ID:Bgu1GtL7
今日、神楽が来る。
付き合い始めて一ヶ月。
デートは何回かしたけど、まだ一歩も進んでいない。
手をつなぐのさえ恥ずかしがる彼女。
そんな神楽が今日私の部屋に来る。
こんな状況、誰だって少しは期待するだろう?
外に出るわけじゃないけど、ちょっとだけお洒落した。
お化粧も少しした。
髪もいつもより丁寧に整えた。
香水は…マヤーが嫌がるから持っていない。
今日、神楽が家に来る。

196名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/04/11(水) 23:42:38ID:Bgu1GtL7

ピンポーン
独り暮らしを始めてからほとんど鳴ったことのないインターホン。
マヤーが外に出ないよう抱きかかえてドアを開ける。
「よう」
そこにはいつもと変わらない神楽が立っていた。
「いらっしゃい」
「お邪魔しま~す。お、マヤー久しぶり!」
マヤーはにゃーとないて不思議そうな顔をしている。
神楽を覚えていないのだろうか。
それとも私を取られたと思って妬いているのだろうか。
玄関に鍵を閉め、彼女をリビングへ通す。
普段散らかしているわけではないが、今日は特別きれいにしてある。
お風呂や台所はもちろん、シーツについていたマヤーの毛も全部取った。
そんな私の努力とは裏腹に、神楽はテーブルの横に座ると早速何か言いながら鞄を探り始めた。
「…今日はマヤーに見せたいものが…えぇ~っと」
厚めの生地のTシャツに、動きやすそうなジーンズ。
いつも通りの彼女に私は拍子抜けしてしまった。
気合いを入れすぎた自分が少し恥ずかしい。
お泊り用の荷物が入っているかもしれない大きめの鞄が唯一の救いだろうか。
「…あった!じゃーん!」
鞄から取り出した彼女の手にはカチューシャが握られていた。
ふわふわの耳のついたカチューシャが。

197名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/04/11(水) 23:43:31ID:Bgu1GtL7
「どう?榊?水泳部の新歓でゲームやって、当たったんだ~」
彼女はいかにも得意そうにそれを見せてくる。
一体何をしようというのだろうか。
まさか。
「じゃーん!猫神楽だぞー!どうだマヤー!がー!」
彼女は両手を挙げ、がーがーと言っている。
マヤーは不思議そうな顔のまま彼女を見ていたが、やがて私のほうによって来た。
すると当然神楽も私のほうに向かってくるのだが・・・
「逃げても無駄だぞ~。がー!」
うあ、か、可愛い。
だめだ・・・前から猫顔だとは思っていたけど・・・これは反則だ・・・。
「食べちゃうぞー!」
これはもう誘っているとしか・・・あ!
そうだ。神楽はふざけてる振りして私を誘ってるんだ・・・。
「がーがー!」
私が猫好きなのは知ってるし、絶対そうだ。
そうに決まってる・・・。
もうだめだ・・・。
神楽が悪いんだからな・・・そんな可愛い顔で誘うから・・・。
猫神楽・・・ねこにゃん・・・にゃんこ神楽・・・かぐにゃん・・・かぐにゃん!
「かぐにゃーん!」

198名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/04/11(水) 23:44:55ID:Bgu1GtL7
猫耳は本当に水泳部の歓迎会でもらったものだった。
当然、マヤーより榊に見て欲しかったんだけど・・・まぁ話題になればいいかな。
可愛いなんて言われたら嬉しいかもしれない。
そしたら榊にもつけてやろうかな。
「じゃーん!猫神楽だぞー!どうだマヤー!がー!」
私の頑張りはむなしく、マヤーは不思議そうな顔をしている。
あ、思ったより恥ずかしいなぁ。
榊がちょっと動揺してる。
うわ~、すべっちゃったかな。
でも今やめたら不自然・・・
「かぐにゃーん!」
うあ!待って、榊!?
私は抵抗するまもなく榊に抱きかかえられていた。
ちょうどお姫様抱っこのような・・・榊の膝の上に横向きに私が座る形で。
私だって単身恋人の部屋に乗り込んだんだ。覚悟はできてる。
そのつもりで今日は宿泊セットも持ってきたんだけど・・・。
何か榊の様子がおかしい。
私を抱えて、ただずっと頭をなでている。
すごく幸せな状況だけど・・・何か・・・。


199名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/04/11(水) 23:45:46ID:Bgu1GtL7
あ、この榊の目はマヤーを見る時の目だ。
そういえば今かぐにゃんて・・・。
榊の顔が近づいてくる。
「待って!榊」
私はあわてて榊の手を振りほどいた。
「榊、今私じゃなくて“猫の私”にキスしようとしただろ」
私の言葉に榊は明らかに動揺してる。
「この展開は不本意・・・ではないけど・・・やっぱ初めてなんだしムードとかあるだろ?」
榊は正気に戻ったのだろうか。
振りほどかれた手を膝において下を向いてしまった。
やばい、少し言い過ぎたかもしれない。
「あ・・・言い過ぎたよ。もとはと言えば耳つけたのは私だしな。悪い」
私は頭のカチューシャを取ってテーブルに置いた。
「だって・・・あんまり可愛かったから・・・」
榊・・・。
なんで私はこうガサツなんだろうか・・・。
自分から猫耳つけといて文句言うなんて。
・・・でも今日は榊も暴走してたよな。
今度は私が榊を抱きしめてなでる。
「榊もすごく可愛かった」
榊の体がぴくんと震えたのがわかった。
体を離し目を合わせる。
しばらく見つめあっていると、榊が先に目を閉じた。

200名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2007/04/11(水) 23:47:12ID:Bgu1GtL7
私からしろってことだよな・・・。
失敗しないようにゆっくり唇を近づけて、触れたのがわかってから目を閉じる。
心臓が飛び出そうなくらい速く動いている。
真っ白になった頭の中に伝わってくるのは、榊の唇の感触だけだった。
一瞬にも永遠にも感じる幸せな時間。
私は唇が離れてもしばらく余韻に浸っていた。
榊もうっとりした表情で私を見ている。
キスの味は甘酸っぱいって言ったのは誰だろうか。
本当に、本当に甘酸っぱい。
「なんて言ったらいいかわかんないけど、すっげー幸せ」
それしか言えない。
幸せ以上の言葉が無いのがもどかしい。
「もうずっとこうしていたいよ・・・ずっと」
うんうんと頷く榊の肩に頭を預けると、彼女が耳元で何かささやいた。
「・・・今度は耳もつけて・・・」
私はふきだしてしまった。
普段冗談なんか言わないのに、この状況で言うなんて。
でもこれは私にしか見せない榊なんだろうな。
預けていた体を起こすと、恥ずかしそうな笑顔の榊がいた。
榊、あんたもめちゃくちゃ可愛いよ。

私は立ち上がり、テーブルにおいてあったカチューシャをつけた。
今度は榊の後ろにまわり、背中から彼女をぎゅっと抱きしめる。
「そんなこと言ってると、かぐにゃん噛みついちゃうぞ」
マヤーが不思議そうにこちらを見ている。
榊は顔を両手で覆ってうつむいてしまった。
私は彼女の震える肩を強く抱きながら、ほっぺに軽くキスをした。