「718」(2007/06/16 (土) 08:14:00) の最新版変更点
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<dt><strong><a href="menu:718" target="_top" name="718"><font color=
"#0000FF">718</font></a></strong> 名前：<font color=
"#228B22"><strong>ラッキープール、雨天決行</strong></font>[sage] 投稿日：2007/06/15(金) 17:28:57
<a href="id:718" target="_top"><font color=
"#0000FF">ID:</font></a>4abNXDJf</dt>
<dd>「ちょっとゆかり！起きなさいよ」<br>
「ん…？にゃも…？」<br>
寝起きの目に、照りつける日射しが眩しい。<br>
「ほら、もう終わったから帰るわよ」<br>
「…帰る？」<br>
生暖かい風の中にみなもの声が響き、ぼんやりした意識の中では、少しずつ状況が整理されていく。<br>
青い空に白い雲。<br>
水着のみなも。<br>
塩素のにおい。<br>
「…プール」<br>
「何言ってんのよ…」<br>
ゆかりは、閉じようとする目をこすって立ち上がると、めいっぱい伸びをした。<br>
「さあ、シャワー浴びて」<br>
部活の指導よりも、ゆかりのお守りに疲れたのか…、みなもは呆れた顔でため息をついた。<br>
<br></dd>
<dt><strong><a href="menu:719" target="_top" name="719"><font color=
"#0000FF">719</font></a></strong> 名前：<font color=
"#228B22"><strong>ラッキープール、雨天決行</strong></font>[sage] 投稿日：2007/06/15(金) 17:30:15
<a href="id:719" target="_top"><font color=
"#0000FF">ID:</font></a>4abNXDJf</dt>
<dd>更衣室の横に備え付けられたシャワーは、塩素を洗い流すためだけの簡易的なものだ。<br>
温度の調節もできず、申し訳程度の薄い板が個々の空間を仕切っている。<br>
「うわー冷たい…」<br>
隣に入ったはずのゆかりは、不満そうな声とともにみなもの個室に顔を覗かせた。<br>
「それで目ぇ覚ましなさいよ」<br>
「何だよー。シャワーもにゃもも冷たいなぁ…」<br>
「何よそれ…」<br>
もう眠気はないのか饒舌になりはじめたゆかりは、じりじりとみなもの後ろに近付いてくる。<br>
「こっち来たってお湯は出ないわよ」<br>
背を向けて冷たい言葉であしらうが、その口調に厳しさはない。<br>
甘えるゆかりに呆れた言葉を返すのは、二人の間の…お約束、のような。<br>
それを感じとったゆかりも、みなもの首に腕をまわして湿った体を押し付ける。<br>
「んー、やっぱスポーツしてるヤツの体は違うね」<br>
「もう、帰ってからにしなさいよ…」<br>
「えー、うち暑いじゃん」<br>
多少遠慮があるのか、それとも大きな声を出す必要もないほど接近しているからか、二人は小声で話している。<br>
ゆかりは背中に頬を押し当てると、<br>
「にゃも～、こっち向けよ～」<br>
精一杯の猫撫で声で囁いた。<br>
<br></dd>
<dt><strong><a href="menu:720" target="_top" name="720"><font color=
"#0000FF">720</font></a></strong> 名前：<font color=
"#228B22"><strong>ラッキープール、雨天決行</strong></font>[sage] 投稿日：2007/06/15(金) 17:31:07
<a href="id:720" target="_top"><font color=
"#0000FF">ID:</font></a>4abNXDJf</dt>
<dd>校庭の方から、生徒の笑い声が聞こえる。<br>
ふと、水泳部の子達はもう帰ったのだろうか…と、みなもは思った。<br>
「あの子達、もう帰ったかな」<br>
問いかけるわけでもなく呟いて振り返ると、満足そうな笑顔がみなもを見上げている。<br>
「鍵、あんたが持ってんでしょ？」<br>
「うん」<br>
「じゃあ、もう帰ったわよ。こんな暑い中わざわざ残ってる意味なんてないじゃない」<br>
「…そうね」<br>
普段通りの口調で会話を続けつつも、ゆかりは目を細め、腕を絡めてくる。<br>
みなもはそれに応えるわけでもなく立っていたが、<br>
お互いの呼吸が肌で感じられる距離まで顔が近付くと、やんわりとゆかりを抱き寄せた。<br>
剥き出しのコンクリートに背中を預け、先に目を閉じたみなもの鼻に…、<br>
何か冷たいものが当たった。<br>
「…ん？」<br>
「どした？」<br>
「…雨」<br>
見上げると、さっきまで真っ青だった空は薄暗い雲に覆われている。<br>
きょとんとする二人の表情は、次第に大きくなる雨粒とともに歪んでいった。<br>
「うわ、降ってきた…」<br>
「しょうがない…とりあえず更衣室に避難しよっか」<br>
<br></dd>
<dt><strong><a href="menu:721" target="_top" name="721"><font color=
"#0000FF">721</font></a></strong> 名前：<font color=
"#228B22"><strong>ラッキープール、雨天決行</strong></font>[sage] 投稿日：2007/06/15(金) 17:31:47
<a href="id:721" target="_top"><font color=
"#0000FF">ID:</font></a>4abNXDJf</dt>
<dd>腕を解いて歩きだそうとするみなもの体を、強い力がコンクリートの壁に押し返す。<br>
「何よ！？」<br>
「いいじゃん、どうせ通り雨だよ！もう濡れてるんだし一緒だって」<br>
ゆかりは、じゃれるように体をくねらせ、逃げようとする体を押さえ付ける。<br>
変に楽しそうな、妙な笑顔を浮かべながら。<br>
「ちょっと…」<br>
「へへ」<br>
そうしている間にも、本格的…どころではない激しさで雨は降り続いている。<br>
この近さでも、小声ならかき消されてしまいそうだ。<br>
「いい加減更衣室…」<br>
雨の中。<br>
突然の攻撃に、目を閉じる暇もなかった。<br>
言葉を封じるように覆いかぶさった唇は、雨粒が入ることさえ拒むほど密着している。<br>
<br>
その感触を味わう隙すら与えないほど激しく動く舌に、みなもは応えずにいられなかった。<br>
<br>
とろんとした瞼を思い出したように閉じると、<br>
強い雨音とは別に、内側から、粘っこい液体の絡まる音が聞こえた。<br>
<br>
<br>
雨水は二人の体をつたい、摺り寄せる肌の隙間を埋める。<br>
雨がやむまでこうしていたら…<br>
流れる水とともに、とろけてしまうんではないだろうか。<br>
そんな考えが…、すでにとろけ始めたみなもの頭の中にぼんやりと浮かんだ。<br>
<br></dd>
<dt><strong><a href="menu:722" target="_top" name="722"><font color=
"#0000FF">722</font></a></strong> 名前：<font color=
"#228B22"><strong>ラッキープール、雨天決行</strong></font>[sage] 投稿日：2007/06/15(金) 17:33:44
<a href="id:722" target="_top"><font color=
"#0000FF">ID:</font></a>4abNXDJf</dt>
<dd>「あうー、なんかだるい…。あ！」<br>
助手席でゆかりが鞄の中をあさっている。<br>
「これ持ってきたんだった」<br>
「…運転中に余計なことしないでよ」<br>
「じゃーん、ビール！」<br>
プールサイドで飲むつもりだったのか…、ゆかりの手には銀色の缶が握られていた。<br>
「うわ…、あんたねぇ」<br>
「げ、なんかぬるくなってる…。にゃもにあげるよ」<br>
みなもは、差し出された手を無視してアクセルを踏むと、<br>
「バカ」<br>
一言だけつぶやいた。<br>
<br>
「あれ？どこ行くの？」<br>
柔らかい陽射しが戻ってきた午後、みなもは、ゆかりの家とは反対にハンドルを切った。<br>
「あんたんち、暑いんでしょ？」<br>
<br>
《おわり》<br></dd>
</dl>
<dl>
<dt><strong><a target="_top" href="menu:718" name="718"><font color=
"#0000FF">718</font></a></strong>名前：<font color=
"#228B22"><strong>ラッキープール、雨天決行</strong></font>[sage] 投稿日：2007/06/15(金)
17:28:57<a target="_top" href="id:718"><font color=
"#0000FF">ID:</font></a>4abNXDJf</dt>
<dd>「ちょっとゆかり！起きなさいよ」<br>
「ん…？にゃも…？」<br>
寝起きの目に、照りつける日射しが眩しい。<br>
「ほら、もう終わったから帰るわよ」<br>
「…帰る？」<br>
生暖かい風の中にみなもの声が響き、ぼんやりした意識の中では、少しずつ状況が整理されていく。<br>
青い空に白い雲。<br>
水着のみなも。<br>
塩素のにおい。<br>
「…プール」<br>
「何言ってんのよ…」<br>
ゆかりは、閉じようとする目をこすって立ち上がると、めいっぱい伸びをした。<br>
「さあ、シャワー浴びて」<br>
部活の指導よりも、ゆかりのお守りに疲れたのか…、みなもは呆れた顔でため息をついた。<br>
<br></dd>
<dt><strong><a target="_top" href="menu:719" name="719"><font color=
"#0000FF">719</font></a></strong>名前：<font color=
"#228B22"><strong>ラッキープール、雨天決行</strong></font>[sage] 投稿日：2007/06/15(金)
17:30:15<a target="_top" href="id:719"><font color=
"#0000FF">ID:</font></a>4abNXDJf</dt>
<dd>更衣室の横に備え付けられたシャワーは、塩素を洗い流すためだけの簡易的なものだ。<br>
温度の調節もできず、申し訳程度の薄い板が個々の空間を仕切っている。<br>
「うわー冷たい…」<br>
隣に入ったはずのゆかりは、不満そうな声とともにみなもの個室に顔を覗かせた。<br>
「それで目ぇ覚ましなさいよ」<br>
「何だよー。シャワーもにゃもも冷たいなぁ…」<br>
「何よそれ…」<br>
もう眠気はないのか饒舌になりはじめたゆかりは、じりじりとみなもの後ろに近付いてくる。<br>
「こっち来たってお湯は出ないわよ」<br>
背を向けて冷たい言葉であしらうが、その口調に厳しさはない。<br>
甘えるゆかりに呆れた言葉を返すのは、二人の間の…お約束、のような。<br>
それを感じとったゆかりも、みなもの首に腕をまわして湿った体を押し付ける。<br>
「んー、やっぱスポーツしてるヤツの体は違うね」<br>
「もう、帰ってからにしなさいよ…」<br>
「えー、うち暑いじゃん」<br>
多少遠慮があるのか、それとも大きな声を出す必要もないほど接近しているからか、二人は小声で話している。<br>
ゆかりは背中に頬を押し当てると、<br>
「にゃも～、こっち向けよ～」<br>
精一杯の猫撫で声で囁いた。<br>
<br></dd>
<dt><strong><a target="_top" href="menu:720" name="720"><font color=
"#0000FF">720</font></a></strong>名前：<font color=
"#228B22"><strong>ラッキープール、雨天決行</strong></font>[sage] 投稿日：2007/06/15(金)
17:31:07<a target="_top" href="id:720"><font color=
"#0000FF">ID:</font></a>4abNXDJf</dt>
<dd>校庭の方から、生徒の笑い声が聞こえる。<br>
ふと、水泳部の子達はもう帰ったのだろうか…と、みなもは思った。<br>
「あの子達、もう帰ったかな」<br>
問いかけるわけでもなく呟いて振り返ると、満足そうな笑顔がみなもを見上げている。<br>
「鍵、あんたが持ってんでしょ？」<br>
「うん」<br>
「じゃあ、もう帰ったわよ。こんな暑い中わざわざ残ってる意味なんてないじゃない」<br>
「…そうね」<br>
普段通りの口調で会話を続けつつも、ゆかりは目を細め、腕を絡めてくる。<br>
みなもはそれに応えるわけでもなく立っていたが、<br>
お互いの呼吸が肌で感じられる距離まで顔が近付くと、やんわりとゆかりを抱き寄せた。<br>
剥き出しのコンクリートに背中を預け、先に目を閉じたみなもの鼻に…、<br>
何か冷たいものが当たった。<br>
「…ん？」<br>
「どした？」<br>
「…雨」<br>
見上げると、さっきまで真っ青だった空は薄暗い雲に覆われている。<br>
きょとんとする二人の表情は、次第に大きくなる雨粒とともに歪んでいった。<br>
「うわ、降ってきた…」<br>
「しょうがない…とりあえず更衣室に避難しよっか」<br>
<br></dd>
<dt><strong><a target="_top" href="menu:721" name="721"><font color=
"#0000FF">721</font></a></strong>名前：<font color=
"#228B22"><strong>ラッキープール、雨天決行</strong></font>[sage] 投稿日：2007/06/15(金)
17:31:47<a target="_top" href="id:721"><font color=
"#0000FF">ID:</font></a>4abNXDJf</dt>
<dd>腕を解いて歩きだそうとするみなもの体を、強い力がコンクリートの壁に押し返す。<br>
「何よ！？」<br>
「いいじゃん、どうせ通り雨だよ！もう濡れてるんだし一緒だって」<br>
ゆかりは、じゃれるように体をくねらせ、逃げようとする体を押さえ付ける。<br>
変に楽しそうな、妙な笑顔を浮かべながら。<br>
「ちょっと…」<br>
「へへ」<br>
そうしている間にも、本格的…どころではない激しさで雨は降り続いている。<br>
この近さでも、小声ならかき消されてしまいそうだ。<br>
「いい加減更衣室…」<br>
雨の中。<br>
突然の攻撃に、目を閉じる暇もなかった。<br>
言葉を封じるように覆いかぶさった唇は、雨粒が入ることさえ拒むほど密着している。<br>
<br>
その感触を味わう隙すら与えないほど激しく動く舌に、みなもは応えずにいられなかった。<br>
<br>
とろんとした瞼を思い出したように閉じると、<br>
強い雨音とは別に、内側から、粘っこい液体の絡まる音が聞こえた。<br>
<br>
<br>
雨水は二人の体をつたい、摺り寄せる肌の隙間を埋める。<br>
雨がやむまでこうしていたら…<br>
流れる水とともに、とろけてしまうんではないだろうか。<br>
そんな考えが…、すでにとろけ始めたみなもの頭の中にぼんやりと浮かんだ。<br>
<br></dd>
<dt><strong><a target="_top" href="menu:722" name="722"><font color=
"#0000FF">722</font></a></strong>名前：<font color=
"#228B22"><strong>ラッキープール、雨天決行</strong></font>[sage] 投稿日：2007/06/15(金)
17:33:44<a target="_top" href="id:722"><font color=
"#0000FF">ID:</font></a>4abNXDJf</dt>
<dd>「あうー、なんかだるい…。あ！」<br>
助手席でゆかりが鞄の中をあさっている。<br>
「これ持ってきたんだった」<br>
「…運転中に余計なことしないでよ」<br>
「じゃーん、ビール！」<br>
プールサイドで飲むつもりだったのか…、ゆかりの手には銀色の缶が握られていた。<br>
「うわ…、あんたねぇ」<br>
「げ、なんかぬるくなってる…。にゃもにあげるよ」<br>
みなもは、差し出された手を無視してアクセルを踏むと、<br>
「バカ」<br>
一言だけつぶやいた。<br>
<br>
「あれ？どこ行くの？」<br>
柔らかい陽射しが戻ってきた午後、みなもは、ゆかりの家とは反対にハンドルを切った。<br>
「あんたんち、暑いんでしょ？」<br>
<br>
《おわり》<br></dd>
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