「667」(2007/06/07 (木) 22:52:16) の最新版変更点
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<p><dt><a href="menu:667" target="_top" name="667"><font color="#0000ff">667</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>I loved you</strong></font>[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:18:44 ID:WFw6evpf </dt><dd>最近、暑い日が続いている。 <br />
新しい生活にも慣れ、自分以外の忙しさにも気が回るようになった初夏のある日。 <br />
<br />
私、水原暦の初恋は、失恋という形で終わりを告げようとしていた。 <br />
<br />
<br />
<br />
最初は友情の延長だった。 <br />
周りにいる友人の中で、とりわけ自分をわかってくれる人。 <br />
一緒にいれば楽しいし、いなければ寂しい。 <br />
冗談の限度も知っていて、喧嘩も時間が解決してくれる。 <br />
彼女の笑顔は私を癒してくれたし、私も彼女に向けて最高の笑顔を振り撒いた。 <br />
そんな関係。 <br />
<br />
いつだったか…ずっと小さい頃に、 <br />
「よみは私のこと好き?」 <br />
そんな風なことを聞かれたことがある。 <br />
「好きだよ!」 <br />
当たり前のように答えた。 <br />
<br />
幼馴染みという、半ば強制的に離れることができない環境で生まれた、当然の感情のはずだった。 <br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:668" target="_top" name="668"><font color="#0000ff">668</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>I loved you</strong></font>[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:19:34 ID:WFw6evpf </dt><dd>ある日、それは突然起きた。 <br />
いつもの教室…多分冬のことだった。 <br />
他愛もない、くだらない話が繰り広げられている。 <br />
「ばっかでー。何でそうなるんだよ」 <br />
「えー、わからへん」 <br />
普段と変わらない会話。 <br />
私はその片隅に…、 <br />
ふと違和感を感じた。 <br />
「よみも何か言ってやれよー」 <br />
「…」 <br />
「あれ?よみ?…どうしたの?」 <br />
「…っえ?あぁ」 <br />
彼女が私以外の人間に、あんなに楽しそうに笑いかけている…。 <br />
今まで当たり前だったことに、何故か胸が痛くなった。 <br />
「何ぼーっとしてんだよ」 <br />
向けられた笑顔に、私はその痛みの正体をとらえる。 <br />
「変なのー」 <br />
<br />
嫉妬だった。 <br />
<br />
あの笑顔は、私だけに向けられたものではなかった。 <br />
彼女を癒せるのは私だけではなかった。 <br />
何がきっかけになったのかはわからない。 <br />
ただ、自分の笑顔がひきつっていることに気付いて… <br />
その胸の痛みが恋愛感情であると知るのに、そう時間はかからなかった。 <br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:669" target="_top" name="669"><font color="#0000ff">669</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>I loved you</strong></font>[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:20:55 ID:WFw6evpf </dt><dd>だいたい、恋はハードルが多いほど燃えるというが…。 <br />
なってみて初めて気付く。 <br />
そんな格言が全くアテにならないということに。 <br />
<br />
前に並べられたハードルはあまりに高く、多すぎた。 <br />
私はそれに挑む前に見上げ、ため息をつき、諦めた。 <br />
自分のエゴで彼女に迷惑はかけられないと言い聞かせ…諦めた。 <br />
いつかは忘れると信じて…諦めた。 <br />
諦めた…はずだった。 <br />
はずだったのに…、気付くと私はまたスタートラインに立っていた。 <br />
高くそびえるハードルを見つめ、ため息をつき、諦めた…ふりをしていた。 <br />
そうしているうちに手遅れになる日がくると…。 <br />
その時が本当に諦めるときだと決めていた。 <br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:670" target="_top" name="670"><font color="#0000ff">670</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>I loved you</strong></font>[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:21:34 ID:WFw6evpf </dt><dd>そして、私は彼女への想いを秘めたまま、違う道へ進むことを決めた。 <br />
彼女を追うことは一般的に考えても普通ではなかったし、何より自分自身がそれを許さなかった。 <br />
<br />
…それからの日々は信じられないほど忙しく、余裕が持てる頃には既に卒業式が近付いていた。 <br />
<br />
式はとても感動的なものだった。 <br />
いつも通りの日常が、今ここで終わるんだ、と…。 <br />
彼女との別れを度外視しても、忘れられない青春の一ページとして私の心に刻まれた。 <br />
<br />
…いい三年間だった。 <br />
欠けがえのない友人と、先生と。 <br />
進路も問題なく決まった。 <br />
…恋もした。 <br />
置いていくにはもったいない思い出に感謝して、私は母校に別れを告げた。 <br />
<br />
<br />
新しい生活は、忙しいなりにうまくいった。 <br />
独り暮らしに不自由することはなかったし、友達もできた。 <br />
置いてきたはずの恋は…、 <br />
時々くる彼女からのメールに後ろ髪引かれたが、なんとか踏ん切りはつきそうだった。 <br />
<br />
落ち着いた日常。 <br />
そんな中、それは突然訪れた。 <br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:671" target="_top" name="671"><font color="#0000ff">671</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>I loved you</strong></font>[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:23:30 ID:WFw6evpf </dt><dd><br />
<br />
From:とも <br />
Sub:(non title) <br />
本文: <br />
久しぶり! <br />
いきなりですが重大発表があります <br />
<br />
<br />
彼氏ができました! <br />
どうだ!参ったか! <br />
<br />
<br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:672" target="_top" name="672"><font color="#0000ff">672</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>I loved you</strong></font>[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:24:52 ID:WFw6evpf </dt><dd>いつも通りの蒸し暑い夜だった。 <br />
見たい番組もなく、借りてきたCDを聴いてまどろんでいたとき…。 <br />
そのメールはきた。 <br />
<br />
疑うことのできない現実。 <br />
私は、彼女への想いをふっ切れてなどいなかったことを思い知らされた。 <br />
震える手の中でぼんやりと光る画面が、だんだんとかすれていく。 <br />
私が越えられなったハードルが、今、スタートラインごと消えていっている。 <br />
後悔した。 <br />
悔しかった。 <br />
悲しかった。 <br />
そしてなにより、羨ましかった。 <br />
彼女に愛してもらえる知らない男が。 <br />
<br />
心臓が握り潰されるように痛み、息ができない。 <br />
倒れこんだベッドのシーツを両手で突かむと、おしゃれのために伸ばしはじめたツメが、痛かった。 <br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:673" target="_top" name="673"><font color="#0000ff">673</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>I loved you</strong></font>[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:26:36 ID:WFw6evpf </dt><dd>私、お前のことずっと好きだったんだ。 <br />
<br />
普通にしてたからわかんなかっただろ? <br />
<br />
手ぇ繋いだり、隣り合って歩いてたとき、ドキドキしてた。 <br />
<br />
どうやって想いを伝えようかとかさ…悩んで。 <br />
<br />
そんなとこでまごまごしてたんだ。 <br />
<br />
バカみたいだろ? <br />
<br />
でもさ、お前は彼氏とこれから…私が夢見て、想像してたこと、簡単にしちゃうんだろうな。 <br />
<br />
キスも、デートも、エッチなことも…。 <br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:674" target="_top" name="674"><font color="#0000ff">674</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>I loved you</strong></font>[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:27:23 ID:WFw6evpf </dt><dd>もう遅い。 <br />
この言葉を、これほど強く思ったことはない。 <br />
私の前からは、越えるべきハードルも、踏み出すべき一歩も、 <br />
心を痛める笑顔も、甘酸っぱい悩みも、全て消えていったのだから。 <br />
<br />
私にチャンスはないんだ。 <br />
<br />
胸の痛みは収まらなかった。 <br />
涙も止まらなかった。 <br />
この涙と一緒に彼女への想いが溢れ出ていけばいいのに。 <br />
<br />
私の嗚咽をかき消すように、CDから声が聞こえている。 <br />
美しく響く、女性のボーカルだった。 <br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:675" target="_top" name="675"><font color="#0000ff">675</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>I loved you (おわり)</strong></font>[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:28:16 ID:WFw6evpf </dt><dd><br />
<br />
From:よみ <br />
Sub:Re: <br />
本文: <br />
お前に先を越されると思わなかったよ <br />
大事にしろよ <br />
<br />
<br />
おめでとう <br />
<br />
<br />
</dd></p>
<dl><dt><a target="_top" href="menu:667" name="667"><font color="#0000ff">667</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>I loved you</strong></font>[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:18:44 ID:WFw6evpf</dt><dd>最近、暑い日が続いている。<br />
新しい生活にも慣れ、自分以外の忙しさにも気が回るようになった初夏のある日。<br />
<br />
私、水原暦の初恋は、失恋という形で終わりを告げようとしていた。<br />
<br />
<br />
<br />
最初は友情の延長だった。<br />
周りにいる友人の中で、とりわけ自分をわかってくれる人。<br />
一緒にいれば楽しいし、いなければ寂しい。<br />
冗談の限度も知っていて、喧嘩も時間が解決してくれる。<br />
彼女の笑顔は私を癒してくれたし、私も彼女に向けて最高の笑顔を振り撒いた。<br />
そんな関係。<br />
<br />
いつだったか…ずっと小さい頃に、<br />
「よみは私のこと好き?」<br />
そんな風なことを聞かれたことがある。<br />
「好きだよ!」<br />
当たり前のように答えた。<br />
<br />
幼馴染みという、半ば強制的に離れることができない環境で生まれた、当然の感情のはずだった。<br />
<br />
</dd><dt><a target="_top" href="menu:668" name="668"><font color="#0000ff">668</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>I loved you</strong></font>[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:19:34 ID:WFw6evpf</dt><dd>ある日、それは突然起きた。<br />
いつもの教室…多分冬のことだった。<br />
他愛もない、くだらない話が繰り広げられている。<br />
「ばっかでー。何でそうなるんだよ」<br />
「えー、わからへん」<br />
普段と変わらない会話。<br />
私はその片隅に…、<br />
ふと違和感を感じた。<br />
「よみも何か言ってやれよー」<br />
「…」<br />
「あれ?よみ?…どうしたの?」<br />
「…っえ?あぁ」<br />
彼女が私以外の人間に、あんなに楽しそうに笑いかけている…。<br />
今まで当たり前だったことに、何故か胸が痛くなった。<br />
「何ぼーっとしてんだよ」<br />
向けられた笑顔に、私はその痛みの正体をとらえる。<br />
「変なのー」<br />
<br />
嫉妬だった。<br />
<br />
あの笑顔は、私だけに向けられたものではなかった。<br />
彼女を癒せるのは私だけではなかった。<br />
何がきっかけになったのかはわからない。<br />
ただ、自分の笑顔がひきつっていることに気付いて…<br />
その胸の痛みが恋愛感情であると知るのに、そう時間はかからなかった。<br />
<br />
</dd><dt><a target="_top" href="menu:669" name="669"><font color="#0000ff">669</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>I loved you</strong></font>[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:20:55 ID:WFw6evpf</dt><dd>だいたい、恋はハードルが多いほど燃えるというが…。<br />
なってみて初めて気付く。<br />
そんな格言が全くアテにならないということに。<br />
<br />
前に並べられたハードルはあまりに高く、多すぎた。<br />
私はそれに挑む前に見上げ、ため息をつき、諦めた。<br />
自分のエゴで彼女に迷惑はかけられないと言い聞かせ…諦めた。<br />
いつかは忘れると信じて…諦めた。<br />
諦めた…はずだった。<br />
はずだったのに…、気付くと私はまたスタートラインに立っていた。<br />
高くそびえるハードルを見つめ、ため息をつき、諦めた…ふりをしていた。<br />
そうしているうちに手遅れになる日がくると…。<br />
その時が本当に諦めるときだと決めていた。<br />
<br />
</dd><dt><a target="_top" href="menu:670" name="670"><font color="#0000ff">670</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>I loved you</strong></font>[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:21:34 ID:WFw6evpf</dt><dd>そして、私は彼女への想いを秘めたまま、違う道へ進むことを決めた。<br />
彼女を追うことは一般的に考えても普通ではなかったし、何より自分自身がそれを許さなかった。<br />
<br />
…それからの日々は信じられないほど忙しく、余裕が持てる頃には既に卒業式が近付いていた。<br />
<br />
式はとても感動的なものだった。<br />
いつも通りの日常が、今ここで終わるんだ、と…。<br />
彼女との別れを度外視しても、忘れられない青春の一ページとして私の心に刻まれた。<br />
<br />
…いい三年間だった。<br />
欠けがえのない友人と、先生と。<br />
進路も問題なく決まった。<br />
…恋もした。<br />
置いていくにはもったいない思い出に感謝して、私は母校に別れを告げた。<br />
<br />
<br />
新しい生活は、忙しいなりにうまくいった。<br />
独り暮らしに不自由することはなかったし、友達もできた。<br />
置いてきたはずの恋は…、<br />
時々くる彼女からのメールに後ろ髪引かれたが、なんとか踏ん切りはつきそうだった。<br />
<br />
落ち着いた日常。<br />
そんな中、それは突然訪れた。<br />
<br />
</dd><dt><a target="_top" href="menu:671" name="671"><font color="#0000ff">671</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>I loved you</strong></font>[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:23:30 ID:WFw6evpf</dt><dd><br />
<br />
From:とも<br />
Sub:(non title)<br />
本文:<br />
久しぶり!<br />
いきなりですが重大発表があります<br />
<br />
<br />
彼氏ができました!<br />
どうだ!参ったか!<br />
<br />
<br />
<br />
</dd><dt><a target="_top" href="menu:672" name="672"><font color="#0000ff">672</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>I loved you</strong></font>[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:24:52 ID:WFw6evpf</dt><dd>いつも通りの蒸し暑い夜だった。<br />
見たい番組もなく、借りてきたCDを聴いてまどろんでいたとき…。<br />
そのメールはきた。<br />
<br />
疑うことのできない現実。<br />
私は、彼女への想いをふっ切れてなどいなかったことを思い知らされた。<br />
震える手の中でぼんやりと光る画面が、だんだんとかすれていく。<br />
私が越えられなったハードルが、今、スタートラインごと消えていっている。<br />
後悔した。<br />
悔しかった。<br />
悲しかった。<br />
そしてなにより、羨ましかった。<br />
彼女に愛してもらえる知らない男が。<br />
<br />
心臓が握り潰されるように痛み、息ができない。<br />
倒れこんだベッドのシーツを両手で突かむと、おしゃれのために伸ばしはじめたツメが、痛かった。<br />
<br />
</dd><dt><a target="_top" href="menu:673" name="673"><font color="#0000ff">673</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>I loved you</strong></font>[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:26:36 ID:WFw6evpf</dt><dd>私、お前のことずっと好きだったんだ。<br />
<br />
普通にしてたからわかんなかっただろ?<br />
<br />
手ぇ繋いだり、隣り合って歩いてたとき、ドキドキしてた。<br />
<br />
どうやって想いを伝えようかとかさ…悩んで。<br />
<br />
そんなとこでまごまごしてたんだ。<br />
<br />
バカみたいだろ?<br />
<br />
でもさ、お前は彼氏とこれから…私が夢見て、想像してたこと、簡単にしちゃうんだろうな。<br />
<br />
キスも、デートも、エッチなことも…。<br />
<br />
</dd><dt><a target="_top" href="menu:674" name="674"><font color="#0000ff">674</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>I loved you</strong></font>[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:27:23 ID:WFw6evpf</dt><dd>もう遅い。<br />
この言葉を、これほど強く思ったことはない。<br />
私の前からは、越えるべきハードルも、踏み出すべき一歩も、<br />
心を痛める笑顔も、甘酸っぱい悩みも、全て消えていったのだから。<br />
<br />
私にチャンスはないんだ。<br />
<br />
胸の痛みは収まらなかった。<br />
涙も止まらなかった。<br />
この涙と一緒に彼女への想いが溢れ出ていけばいいのに。<br />
<br />
私の嗚咽をかき消すように、CDから声が聞こえている。<br />
美しく響く、女性のボーカルだった。<br />
<br />
</dd><dt><a target="_top" href="menu:675" name="675"><font color="#0000ff">675</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>I loved you (おわり)</strong></font>[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:28:16 ID:WFw6evpf</dt><dd><br />
<br />
From:よみ<br />
Sub:Re:<br />
本文:<br />
お前に先を越されると思わなかったよ<br />
大事にしろよ<br />
<br />
<br />
おめでとう<br />
<br />
<br />
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