「614」(2007/05/31 (木) 23:34:28) の最新版変更点
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<p><dt><a href="menu:614" target="_top" name="614"><font color="#0000ff">614</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 02:12:05 ID:FasAn/dS </dt><dd><br />
やっぱりさかぐら至上な自分にはたまりませんなあ。 <br />
「榊せんぱーい!」とか、本当に神楽がやりそうですからね。 <br />
GJです。 <br />
<br />
カップリングを問わず書ける能力、私も身につけたいです。 <br />
========================================================== <br />
<br />
私は神楽と一緒に走っている。 <br />
ただひたすら一言もしゃべらずに、音もなくひっそりとした夜道を走り続ける。 <br />
忙しい勉強で動かせなくなっている体を慣らすのには最適だ。 <br />
体育会系が嫌いでも、運動することは悪くない。 <br />
健康のためには、どんな時でも怠けず、適度に汗をかく必要がある。 <br />
<br />
それに、神楽の一生懸命な姿をずっと見ていられるんだから、とても幸せなものだ。 <br />
鍛えられた体を磨き上げ、自分を先へと突き進める努力に共感するとともに、 <br />
変な話だけれど、彼女のかわいさと美しさに惹かれてしまう。 <br />
全身から発散される熱が、言い表せないほどに不思議な感情を呼び起こす。 <br />
<br />
ジョギングが普段の生活で一番集中していられる時だと、神楽はいつも言う。 <br />
目標が見えるからこそ、長い道を単調に走っていられるんだそうだ。 <br />
何十、何百メートル先を真っ直ぐ見つめて走る彼女を見ていると、本当によく分かる。 <br />
<br />
神楽は今、何も考えずに、自分自身を突破するために足を先に向かわせている。 <br />
こんな時に、彼女の口から漏れる吐息に魅力を感じてはいけない。 <br />
そう知っていても、速い間隔で繰り返される呼吸に、私の胸は高鳴らずにはいられない。 <br />
長く走るのには当然大量の酸素が必要だ、それだけなんだ。 <br />
彼女の喘ぎが、あの時の、体を重ね合わせる時のものに似ていると感じても。 <br />
私は雑念を捨てなければならない。 <br />
自分自身の奥底からあふれ出る感情、ひとことで言えば「かわいい」という思いが頭をよぎっても。 <br />
私はただ、この時ばかりはあの子の側にいる以上のことをしてはならない。 <br />
<br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:615" target="_top" name="615"><font color="#0000ff">615</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 02:14:16 ID:FasAn/dS </dt><dd><br />
あの子は時々、私に対して、宝の持ち腐れだとつぶやく。 <br />
互いに感情を分かち合うまで、何が宝なのだろうかと疑問に思っていた。 <br />
他人から羨まれていたとしても、自分が望まなければただの飾りに過ぎないだろう、と。 <br />
今は違う。 <br />
私のこの体が、この思いが、この存在が、すべてが彼女に望まれている。 <br />
理解されずに生きてきた十数年が、幸せに満たされるようになった。 <br />
あの子が宝だと思っているなら、私の体を欲しいと言うなら、いつでも分けてあげたい。 <br />
代わりに、彼女のすべてを、私が受け取りたい。 <br />
―― 神楽が愛してくれるなら、この大きいだけの体でも構わない。 <br />
<br />
何キロかを走り終えて、二十センチくらい下にあるあの子の顔に目を向ける。 <br />
一面に薄い汗が流れ、喘ぎはさっきよりも一段と激しくなっていた。 <br />
神楽が私を見上げても、大体同じように感じるのだろう。 <br />
でも、自分のように、かわいさやあの類の欲求を覚えてしまうほど汚れてはいないはず。 <br />
「ふぅ、終わったぜ」 <br />
「……うん」 <br />
達成感にあふれた表情を眺めていると、私も喜びを共有したくなる。 <br />
長距離はそこまで慣れていないから、同じペースを保つことに苦労する時もあるけれど、 <br />
この瞬間があるからこそ、ずっと走っていられる。 <br />
何ヶ月か続けてきて、だんだんと安定した速さを得られるようになってきた。 <br />
「あの。 帰ったら、何しようか」 <br />
「私はなんでもいいぜ」 <br />
「何でも……」 <br />
「ああ」 <br />
「本当、に?」 <br />
「いいけど」 <br />
私が次の言葉を口にした時、神楽はどう反応するだろうか。 <br />
今までは、二人で家にたどり着いた後になんとなく誘っていたから、まあ驚くとは思う。 <br />
<br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:616" target="_top" name="616"><font color="#0000ff">616</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 02:32:38 ID:FasAn/dS </dt><dd><br />
「ええ、と。 体も、熱いし」 <br />
「ん、まあ」 <br />
「思い切って、その。 ……して、みないか?」 <br />
「して、って……ま、まさか、帰ってすぐにやろうってのか!」 <br />
「うん」 <br />
「へ、変態だな! 榊は」 <br />
言い方はきつくても、態度ですぐに答えが分かる。 <br />
暗くても見えるほどに顔が赤くなっているのは、運動の直後だから、ということだけではないはず。 <br />
<br />
「そんなに、言われたらよ、私も……なんだか、熱くなってきちまった」 <br />
「良かった」 <br />
「おい、笑うなよな。 まったく」 <br />
「……笑ってる?」 <br />
「笑ってるぜ。 ずっと付き合ってんだからよ、バカでガサツな私でも気づくぜ?」 <br />
<br />
ようやく、人に対しても笑えるようになったんだな。 <br />
もしかしたら、神楽にしか見せることのできない笑顔かもしれないけれど。 <br />
別に構わない、だって、神楽さえいれば十分なんだから。 <br />
<br />
「ありがとう」 <br />
「何だ、いきなりだな」 <br />
「……ありがとう」 <br />
「まだ笑ってんのか? 榊がそういう顔してくれるのはすごくうれしいけど」 <br />
―― ありがとう、私と一緒にいてくれて。 <br />
今直接言うのは恥ずかしいから、帰った後……体を交わす時に、私の気持ちを伝えるよ。 <br />
<br />
ありがとう、毎日、君と過ごせることに。 <br />
<br />
(おわり) <br />
</dd></p>
<dl><dt><a target="_top" href="menu:614" name="614"><font color="#0000ff">614</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 02:12:05 ID:FasAn/dS</dt><dd><br />
やっぱりさかぐら至上な自分にはたまりませんなあ。<br />
「榊せんぱーい!」とか、本当に神楽がやりそうですからね。<br />
GJです。<br />
<br />
カップリングを問わず書ける能力、私も身につけたいです。<br />
==========================================================<br />
<br />
私は神楽と一緒に走っている。<br />
ただひたすら一言もしゃべらずに、音もなくひっそりとした夜道を走り続ける。<br />
忙しい勉強で動かせなくなっている体を慣らすのには最適だ。<br />
体育会系が嫌いでも、運動することは悪くない。<br />
健康のためには、どんな時でも怠けず、適度に汗をかく必要がある。<br />
<br />
それに、神楽の一生懸命な姿をずっと見ていられるんだから、とても幸せなものだ。<br />
鍛えられた体を磨き上げ、自分を先へと突き進める努力に共感するとともに、<br />
変な話だけれど、彼女のかわいさと美しさに惹かれてしまう。<br />
全身から発散される熱が、言い表せないほどに不思議な感情を呼び起こす。<br />
<br />
ジョギングが普段の生活で一番集中していられる時だと、神楽はいつも言う。<br />
目標が見えるからこそ、長い道を単調に走っていられるんだそうだ。<br />
何十、何百メートル先を真っ直ぐ見つめて走る彼女を見ていると、本当によく分かる。<br />
<br />
神楽は今、何も考えずに、自分自身を突破するために足を先に向かわせている。<br />
こんな時に、彼女の口から漏れる吐息に魅力を感じてはいけない。<br />
そう知っていても、速い間隔で繰り返される呼吸に、私の胸は高鳴らずにはいられない。<br />
長く走るのには当然大量の酸素が必要だ、それだけなんだ。<br />
彼女の喘ぎが、あの時の、体を重ね合わせる時のものに似ていると感じても。<br />
私は雑念を捨てなければならない。<br />
自分自身の奥底からあふれ出る感情、ひとことで言えば「かわいい」という思いが頭をよぎっても。<br />
私はただ、この時ばかりはあの子の側にいる以上のことをしてはならない。<br />
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</dd><dt><a target="_top" href="menu:615" name="615"><font color="#0000ff">615</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 02:14:16 ID:FasAn/dS</dt><dd><br />
あの子は時々、私に対して、宝の持ち腐れだとつぶやく。<br />
互いに感情を分かち合うまで、何が宝なのだろうかと疑問に思っていた。<br />
他人から羨まれていたとしても、自分が望まなければただの飾りに過ぎないだろう、と。<br />
今は違う。<br />
私のこの体が、この思いが、この存在が、すべてが彼女に望まれている。<br />
理解されずに生きてきた十数年が、幸せに満たされるようになった。<br />
あの子が宝だと思っているなら、私の体を欲しいと言うなら、いつでも分けてあげたい。<br />
代わりに、彼女のすべてを、私が受け取りたい。<br />
―― 神楽が愛してくれるなら、この大きいだけの体でも構わない。<br />
<br />
何キロかを走り終えて、二十センチくらい下にあるあの子の顔に目を向ける。<br />
一面に薄い汗が流れ、喘ぎはさっきよりも一段と激しくなっていた。<br />
神楽が私を見上げても、大体同じように感じるのだろう。<br />
でも、自分のように、かわいさやあの類の欲求を覚えてしまうほど汚れてはいないはず。<br />
「ふぅ、終わったぜ」<br />
「……うん」<br />
達成感にあふれた表情を眺めていると、私も喜びを共有したくなる。<br />
長距離はそこまで慣れていないから、同じペースを保つことに苦労する時もあるけれど、<br />
この瞬間があるからこそ、ずっと走っていられる。<br />
何ヶ月か続けてきて、だんだんと安定した速さを得られるようになってきた。<br />
「あの。 帰ったら、何しようか」<br />
「私はなんでもいいぜ」<br />
「何でも……」<br />
「ああ」<br />
「本当、に?」<br />
「いいけど」<br />
私が次の言葉を口にした時、神楽はどう反応するだろうか。<br />
今までは、二人で家にたどり着いた後になんとなく誘っていたから、まあ驚くとは思う。<br />
<br />
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</dd><dt><a target="_top" href="menu:616" name="616"><font color="#0000ff">616</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 02:32:38 ID:FasAn/dS</dt><dd><br />
「ええ、と。 体も、熱いし」<br />
「ん、まあ」<br />
「思い切って、その。 ……して、みないか?」<br />
「して、って……ま、まさか、帰ってすぐにやろうってのか!」<br />
「うん」<br />
「へ、変態だな! 榊は」<br />
言い方はきつくても、態度ですぐに答えが分かる。<br />
暗くても見えるほどに顔が赤くなっているのは、運動の直後だから、ということだけではないはず。<br />
<br />
「そんなに、言われたらよ、私も……なんだか、熱くなってきちまった」<br />
「良かった」<br />
「おい、笑うなよな。 まったく」<br />
「……笑ってる?」<br />
「笑ってるぜ。 ずっと付き合ってんだからよ、バカでガサツな私でも気づくぜ?」<br />
<br />
ようやく、人に対しても笑えるようになったんだな。<br />
もしかしたら、神楽にしか見せることのできない笑顔かもしれないけれど。<br />
別に構わない、だって、神楽さえいれば十分なんだから。<br />
<br />
「ありがとう」<br />
「何だ、いきなりだな」<br />
「……ありがとう」<br />
「まだ笑ってんのか? 榊がそういう顔してくれるのはすごくうれしいけど」<br />
―― ありがとう、私と一緒にいてくれて。<br />
今直接言うのは恥ずかしいから、帰った後……体を交わす時に、私の気持ちを伝えるよ。<br />
<br />
ありがとう、毎日、君と過ごせることに。<br />
<br />
(おわり)<br />
</dd></dl>
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