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<p><dt><a href="menu:556" target="_top" name="556"><font color="#0000ff">556</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/21(月) 01:22:41 ID:w+cXAyJP </dt><dd><a href="about:blank#552" target="_top"><font color="#800080">&gt;&gt;552</font></a> GJです。 よみとも愛はいいですなあ。 <br /> <br /> 急に思いついきました。 <br /> どうぶつ奇(ryが終わらないうちにSSを書いてみるテスト。 <br /> <br /> しかし、途中でニコニコにはまってしまいアウト。 <br /> 結果的に私は全然番組を見ていません。 <br /> もう一時だ&hellip;&hellip;。 <br /> ====================================================== <br /> <br /> 『猫がテレビに食いつく映像、一位は卓球でした!』 <br /> <br /> 「た、卓球&hellip;&hellip;」 <br /> またこの時間が始まったぜ。 <br /> 私は最近、榊と言えばこの番組なんじゃないかっていう気がしてる。 <br /> なんていう名前だっけ、動物なんとか、まあ動物ばかり出てるから当たり前か、 <br /> あれだよ、あれ。 <br /> 大学に入ってから日曜はけっこう私か榊の家で一緒にいるのが多いけど、 <br /> 八時になるといつもチャンネルを替えないとダメなんだ。 <br /> で、今日は榊の家の方だな。 ぬいぐるみばっかりの部屋にもいいかげん慣れた。 <br /> マヤーも、いつも通り床の上を歩き回ってる。 <br /> <br /> 「おーい、もうちょっとしたら替えてもいいか?」 <br /> 「やめて」 <br /> 「でも、あの選手の話が」 <br /> 「次、犬だから」 <br /> まったく、少しはスポーツの番組も見せてくれよな。 <br /> 私があこがれてる女子水泳のヤツが出てくるっていうのにさ。 <br /> で、今度はなんだ? 犬の一番好きな映像、まあいいや。 <br /> これは&hellip;&hellip;なんで電柱を写してるんだろうな。 <br /> <br /> <br /> </dd><dt><a href="menu:557" target="_top" name="557"><font color="#0000ff">557</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/21(月) 01:26:21 ID:w+cXAyJP </dt><dd><br /> 『電柱、犬なら一度はお世話になったことがありますよね』 <br /> 犬が、電柱を使う、あ、そうか! <br /> <br /> 「あはは、そういやあ、いつも向こうの家の柱とか壁にひっかかってるよな」 <br /> 調子に乗ってこんなことを言ったら、思いっきり榊ににらまれた。 <br /> 集中しすぎだよ、まあ平日は勉強で忙しいみたいだし仕方ないか。 <br /> しっかし、榊もよくこんなにじっとテレビを見てられるよなあ。 <br /> 暇だから、持ってきた野球の雑誌でも読むか。 <br /> <br /> 『さて、第一位は&hellip;&hellip;犬です! 他の犬が走り回ったりする映像です!』 <br /> 「&hellip;&hellip;犬さん、いいなあ」 <br /> 番組が始まってからずっと釘付けになっている榊、こいつも犬みたいだ。 <br /> 言っちゃ悪いけど。 いやさ、一緒にいるんだからさ、もうちょっと私も見てほしいんだよ。 <br /> この番組は一時間くらいだから、あと四十分くらい振り向いてくれないわけだ。 <br /> 寂しい、超寂しい&hellip;&hellip;他の言葉が思いつかないな、すっげー寂しい。 <br /> 雑誌のページをめくって投球フォームとかを眺めてても、別に楽しいわけじゃないしな。 <br /> つまんねえ、このままじゃ。 <br /> <br /> 「なあ、榊」 <br /> ちょっとつぶやいてみても、全然こっちに顔を向けない。 <br /> いくら日曜にしか見られる暇がないって言ってもさ、そんなに集中するのはおかしいぜ。 <br /> だってよ、私と榊が一日中一緒にいられるのも日曜くらいだろ? <br /> <br /> 肩をたたいてみる、反応なし。 <br /> 雑誌のページをわざと音がするようにめくる、反応なし。 <br /> 足をバタバタさせてうるさくしてみる、反応なし&hellip;&hellip;。 <br /> 悔しいから、なんでもいいや、とりあえず猫の鳴きまねでもしておくか。 <br /> <br /> <br /> <br /> </dd><dt><a href="menu:558" target="_top" name="558"><font color="#0000ff">558</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/21(月) 01:28:14 ID:w+cXAyJP </dt><dd><br /> 「にゃー」 <br /> これだけじゃあまだまだ私を見たりはしない、やっぱり榊だしな。 <br /> だから、もう少し猫らしくやってみるんだ。 <br /> 例えば、榊の顔に近づいて、舌を出して、こう、ぺろってほおをなめてやるとどうだろう。 <br /> <br /> 「&hellip;&hellip;神楽」 <br /> 「おう、やっと気づいたか」 <br /> 「見てる、から」 <br /> 「見てる、って。 私は榊を見てるんだぜ?」 <br /> 「え?」 <br /> まだまだ榊は人の気持ちに鈍い。 <br /> 告白はちゃんとしてるし、絶対に私が寂しいとか分かりそうなはずなのに、 <br /> 時々素で困った顔をされる。 <br /> <br /> 「テレビなんか見てなくても、とりあえず、マヤーはいるだろ?」 <br /> 「いる。 ひざの、上に」 <br /> 「それに、私もいるだろ」 <br /> 「ん&hellip;&hellip;神楽がいて、何?」 <br /> もう! なんでこんなに気づかないんだよ! <br /> 座った榊の上にずっと乗ってられるマヤーがすごくうらやましい。 <br /> <br /> 「見るな、チャンネル替えろっ!」 <br /> 「ダメ。 日曜くらい」 <br /> 「と、に、か、く。 テレビ見るんなら別のにしろよ!」 <br /> あ、嫌そうな顔。 <br /> 無表情な榊がたまーに見せる顔の変化は、多分90パーセント以上猫や犬関係。 <br /> 強引にリモコンでチャンネル替えてやろうか、いや、強引にってのは、榊にやるのがいいか。 <br /> <br /> <br /> </dd><dt><a href="menu:559" target="_top" name="559"><font color="#0000ff">559</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/21(月) 01:29:18 ID:w+cXAyJP </dt><dd><br /> 「な&hellip;&hellip;何を!?」 <br /> 「動物との触れ合い方、一番はスキンシップ、なんだろ」 <br /> 榊が先週言ってた通りに、思いっきり前から抱きついてやった。 <br /> <br /> 「神楽、君は、動物じゃない」 <br /> 「人間だって動物だぜー」 <br /> 「いや、それは」 <br /> ここまですれば、さすがに私の方も見てくれる。 <br /> テクニックとかちゃんとしたやり方とかを全然知らない私は、勢いでやっていくしかない。 <br /> そのまま榊のでかい胸に頭を近づけて、谷間に顔をくっつけて甘える。 <br /> <br /> 「にゃー、にゃあ」 <br /> 「ま、全く、どうしたんだ、今日は」 <br /> 「お前の一番好きな、猫のまね」 <br /> 「そんなこと、されても」 <br /> 「ここで問題にゃ。 私が一番好きなのは何だにゃー?」 <br /> 「&hellip;&hellip;運動」 <br /> うわ、即答しやがった。 鈍いっていうもんじゃねーぞ。 <br /> なんでだ、勉強に疲れてるから忘れてるのか、それとも素でこうなのか? <br /> 質問の仕方が悪いのかもしれないな。 <br /> <br /> 「間違えたにゃ。 一番好きなのは、だ、れ、だ、にゃあ?」 <br /> これなら大丈夫だろうと思ってじっと榊の顔を見てみる。 <br /> だけど、期待した言葉はなかなか返ってこない。 マジで考え込んでるみたいだ。 <br /> このままだと、私が持ってた雑誌を見て、この選手か、とか言ってきそうだ。 <br /> しょうがない、答え、言ってやるよ、答え! <br /> <br /> <br /> </dd><dt><a href="menu:560" target="_top" name="560"><font color="#0000ff">560</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/21(月) 01:30:26 ID:w+cXAyJP </dt><dd><br /> 「正解は。 さ、か、き、お前だにゃあ」 <br /> 「あの」 <br /> 「何だにゃ?」 <br /> 「その、しゃべり方は&hellip;&hellip;君らしく、ない」 <br /> 気に入らないか。 しかも全然うれしそうにしないし。 <br /> そんなにテレビが見られないのが嫌なのか。 <br /> <br /> 「あ、そう。 そりゃあ残念でした」 <br /> 「ありがとう。 待っていたよ」 <br /> 「ん、何を?」 <br /> <br /> 「ちゃんと、言って、くれるのを」 <br /> <br /> やっと笑顔になった榊と、今言われたばかりの言葉を聞いて&hellip;&hellip;まさか、って思った。 <br /> 頭の悪い私でもなんとなく分かる。 そう、榊はそこまで鈍くなかったんだ。 <br /> ―― もしかして、私は、わざと待たされていた ―― <br /> <br /> 「寂しかった、か?」 <br /> 「くっそー、榊、すっごく寂しかったぜ!」 <br /> 「それは、良かった」 <br /> 榊はいつのまにかテレビの電源を切っていた。 <br /> ひざの上に乗ったマヤーをなでて下ろすと、笑顔のまま私のほうをじっと見つめる。 <br /> <br /> 「もちろん、番組も、楽しいし、好きだ」 <br /> 「そりゃ、分かってるよ」 <br /> 「でも。 <br />  君よりも、好きだ、と&hellip;&hellip;私が、言うと、思った?」 <br /> 「お、思ったぜ!」 <br /> 焦りながらそう言うと、榊の顔はちょっと驚いたみたいになった。 <br /> <br /> <br /> </dd><dt><a href="menu:561" target="_top" name="561"><font color="#0000ff">561</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/21(月) 01:31:45 ID:w+cXAyJP </dt><dd><br /> 「ごめん」 <br /> 「そりゃあ思ったさ! あんなに、あんなに夢中になって見てるんだし!」 <br /> 私は勢い余って、榊の肩を強くつかみながら大声でどなった。 <br /> <br /> 「ごめん、ふふ」 <br /> 「笑うなよ」 <br /> 「&hellip;&hellip;くっ、ふふふ、あははははは、はははっ」 <br /> 「笑うな、何がそんなにおかしいっつーんだ!」 <br /> 榊がこんなに大声で笑うだなんて、これは初めてだ。 <br /> 私は逆に、その笑いが自分をバカにしているんだって思って、半分キレた感じになった。 <br /> <br /> 「何がおかしいんだよ」 <br /> 「はは、ああ、かわいいなあ。 神楽らしい。 素直な君で、本当に、良かった」 <br /> そう言われても、本当にそう思っているのかが分からなくて。 <br /> 私は短刀直輸入、いや、間違えた、何だっけ、とりあえず正直に聞いてみた。 <br /> <br /> 「じゃあ質問だ。 榊が一番好きなのは、誰なんだ」 <br /> 「神楽。 誰って、聞かれたら」 <br /> うわ、即答しやがった。 恥ずかしい、って、もん、じゃ&hellip;&hellip;。 <br /> しかも、さっきまで思いっきり笑ってたのに、いきなり真剣になって。 <br /> <br /> <br /> <br /> </dd><dt><a href="menu:562" target="_top" name="562"><font color="#0000ff">562</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/21(月) 01:33:07 ID:w+cXAyJP </dt><dd><br /> 「本当にだな!? だったら、あのぬいぐるみよりも! あれよりも! あれよりも! <br />  ついでに、あのマヤーよりも!」 <br /> 「神楽」 <br /> 「何だよ」 <br /> 「誰が、って聞いたじゃないか。 <br />  それに、君は&hellip;&hellip;ぬいぐるみでも、動物でも、ない」 <br /> 「だからどうしたってんだよ。 今、今だよ。 <br />  今、私が聞きたいのはさ、本当に私が一番好きなのか、ってことだぜ」 <br /> 「人として、好きだ、愛している、という意味なら。 間違いなく、神楽だ」 <br /> その言葉を聞いた瞬間、テレビも猫も犬なんてのも、全部どうでもよくなった。 <br /> ちょっと心に浮かんだ恥ずかしさも一気に弾けた。 <br /> 人としてじゃなくても好きなのか、ってことを知りたかったはずなのに、 <br /> 人として、っていう言葉が、なんだかとてもうれしかったんだ。 <br /> <br /> 「待たせて、ごめん。 好きだよ、神楽」 <br /> 「さ、榊! 私も、好き、好きだぜっ!」 <br /> <br /> 本当に優しい顔だな、今の榊は。 外ではあんまり笑ってくれないけど、 <br /> 私の前ではもっとその表情を見せてほしいな。 <br /> <br /> 「ごめんな&hellip;&hellip;寂しかった?」 <br /> そう言って、榊は私に唇を合わせてくれた。 <br /> 温かい感触に夢中になって、何分でも、何時間でも続けていたくなる。 <br /> 私が榊の体を抱きしめると、あいつもぎゅっと抱きしめてくれた。 <br /> <br /> <br /> <br /> </dd><dt><a href="menu:563" target="_top" name="563"><font color="#0000ff">563</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/21(月) 01:37:57 ID:w+cXAyJP </dt><dd><br /> どうでもいいけど、マヤー、あと、そこらのぬいぐるみども、一応ごめんよ。 <br /> 榊の思ってる「好き」ってのは、いろんな種類があるんだよな。 <br /> 分かってたっちゃ分かってたけど、結構勘違いしてた。 <br /> 私のことは私で、好きでいてくれるんだ、榊は。 <br /> <br /> それに、何よりも、私からも、ごめん、榊。 <br /> ありがとうな。 <br /> <br /> 「大丈夫、寂しくなんてないぜ」 <br /> 「どうして?」 <br /> 「お前が、好きだって言ってくれたから」 <br /> 私は榊を抱いたまま、じっと目を見つめて言った。 <br /> さっきくっつけたばかりの榊の口が、ゆっくりと動きだす。 <br /> <br /> 「&hellip;&hellip;そうか、ありがとう。 <br />  それなら、もう一回、言ってあげるよ。 好きだ」 <br /> 私は榊とまた唇を合わせた。 <br /> <br /> 明日はまた月曜だ。 <br /> 今日のうちに、一週間分の気持ちを通わせておかないとな。 <br /> テレビの電源も切れて静かになったことだし、もっと近づいててやる。 <br /> <br /> 好きだぜ、榊。 <br /> <br /> (おしまいだよ) <br /> </dd></p>
<dl><dt><a target="_top" href="menu:556" name="556"><font color="#0000ff">556</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/21(月) 01:22:41 ID:w+cXAyJP</dt><dd><a target="_top" href="about:blank#552"><font color="#800080">&gt;&gt;552</font></a>GJです。 よみとも愛はいいですなあ。<br /> <br /> 急に思いついきました。<br /> どうぶつ奇(ryが終わらないうちにSSを書いてみるテスト。<br /> <br /> しかし、途中でニコニコにはまってしまいアウト。<br /> 結果的に私は全然番組を見ていません。<br /> もう一時だ&hellip;&hellip;。<br /> ======================================================<br /> <br /> 『猫がテレビに食いつく映像、一位は卓球でした!』<br /> <br /> 「た、卓球&hellip;&hellip;」<br /> またこの時間が始まったぜ。<br /> 私は最近、榊と言えばこの番組なんじゃないかっていう気がしてる。<br /> なんていう名前だっけ、動物なんとか、まあ動物ばかり出てるから当たり前か、<br /> あれだよ、あれ。<br /> 大学に入ってから日曜はけっこう私か榊の家で一緒にいるのが多いけど、<br /> 八時になるといつもチャンネルを替えないとダメなんだ。<br /> で、今日は榊の家の方だな。 ぬいぐるみばっかりの部屋にもいいかげん慣れた。<br /> マヤーも、いつも通り床の上を歩き回ってる。<br /> <br /> 「おーい、もうちょっとしたら替えてもいいか?」<br /> 「やめて」<br /> 「でも、あの選手の話が」<br /> 「次、犬だから」<br /> まったく、少しはスポーツの番組も見せてくれよな。<br /> 私があこがれてる女子水泳のヤツが出てくるっていうのにさ。<br /> で、今度はなんだ? 犬の一番好きな映像、まあいいや。<br /> これは&hellip;&hellip;なんで電柱を写してるんだろうな。<br /> <br /> <br /> </dd><dt><a target="_top" href="menu:557" name="557"><font color="#0000ff">557</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/21(月) 01:26:21 ID:w+cXAyJP</dt><dd><br /> 『電柱、犬なら一度はお世話になったことがありますよね』<br /> 犬が、電柱を使う、あ、そうか!<br /> <br /> 「あはは、そういやあ、いつも向こうの家の柱とか壁にひっかかってるよな」<br /> 調子に乗ってこんなことを言ったら、思いっきり榊ににらまれた。<br /> 集中しすぎだよ、まあ平日は勉強で忙しいみたいだし仕方ないか。<br /> しっかし、榊もよくこんなにじっとテレビを見てられるよなあ。<br /> 暇だから、持ってきた野球の雑誌でも読むか。<br /> <br /> 『さて、第一位は&hellip;&hellip;犬です! 他の犬が走り回ったりする映像です!』<br /> 「&hellip;&hellip;犬さん、いいなあ」<br /> 番組が始まってからずっと釘付けになっている榊、こいつも犬みたいだ。<br /> 言っちゃ悪いけど。 いやさ、一緒にいるんだからさ、もうちょっと私も見てほしいんだよ。<br /> この番組は一時間くらいだから、あと四十分くらい振り向いてくれないわけだ。<br /> 寂しい、超寂しい&hellip;&hellip;他の言葉が思いつかないな、すっげー寂しい。<br /> 雑誌のページをめくって投球フォームとかを眺めてても、別に楽しいわけじゃないしな。<br /> つまんねえ、このままじゃ。<br /> <br /> 「なあ、榊」<br /> ちょっとつぶやいてみても、全然こっちに顔を向けない。<br /> いくら日曜にしか見られる暇がないって言ってもさ、そんなに集中するのはおかしいぜ。<br /> だってよ、私と榊が一日中一緒にいられるのも日曜くらいだろ?<br /> <br /> 肩をたたいてみる、反応なし。<br /> 雑誌のページをわざと音がするようにめくる、反応なし。<br /> 足をバタバタさせてうるさくしてみる、反応なし&hellip;&hellip;。<br /> 悔しいから、なんでもいいや、とりあえず猫の鳴きまねでもしておくか。<br /> <br /> <br /> <br /> </dd><dt><a target="_top" href="menu:558" name="558"><font color="#0000ff">558</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/21(月) 01:28:14 ID:w+cXAyJP</dt><dd><br /> 「にゃー」<br /> これだけじゃあまだまだ私を見たりはしない、やっぱり榊だしな。<br /> だから、もう少し猫らしくやってみるんだ。<br /> 例えば、榊の顔に近づいて、舌を出して、こう、ぺろってほおをなめてやるとどうだろう。<br /> <br /> 「&hellip;&hellip;神楽」<br /> 「おう、やっと気づいたか」<br /> 「見てる、から」<br /> 「見てる、って。 私は榊を見てるんだぜ?」<br /> 「え?」<br /> まだまだ榊は人の気持ちに鈍い。<br /> 告白はちゃんとしてるし、絶対に私が寂しいとか分かりそうなはずなのに、<br /> 時々素で困った顔をされる。<br /> <br /> 「テレビなんか見てなくても、とりあえず、マヤーはいるだろ?」<br /> 「いる。 ひざの、上に」<br /> 「それに、私もいるだろ」<br /> 「ん&hellip;&hellip;神楽がいて、何?」<br /> もう! なんでこんなに気づかないんだよ!<br /> 座った榊の上にずっと乗ってられるマヤーがすごくうらやましい。<br /> <br /> 「見るな、チャンネル替えろっ!」<br /> 「ダメ。 日曜くらい」<br /> 「と、に、か、く。 テレビ見るんなら別のにしろよ!」<br /> あ、嫌そうな顔。<br /> 無表情な榊がたまーに見せる顔の変化は、多分90パーセント以上猫や犬関係。<br /> 強引にリモコンでチャンネル替えてやろうか、いや、強引にってのは、榊にやるのがいいか。<br /> <br /> <br /> </dd><dt><a target="_top" href="menu:559" name="559"><font color="#0000ff">559</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/21(月) 01:29:18 ID:w+cXAyJP</dt><dd><br /> 「な&hellip;&hellip;何を!?」<br /> 「動物との触れ合い方、一番はスキンシップ、なんだろ」<br /> 榊が先週言ってた通りに、思いっきり前から抱きついてやった。<br /> <br /> 「神楽、君は、動物じゃない」<br /> 「人間だって動物だぜー」<br /> 「いや、それは」<br /> ここまですれば、さすがに私の方も見てくれる。<br /> テクニックとかちゃんとしたやり方とかを全然知らない私は、勢いでやっていくしかない。<br /> そのまま榊のでかい胸に頭を近づけて、谷間に顔をくっつけて甘える。<br /> <br /> 「にゃー、にゃあ」<br /> 「ま、全く、どうしたんだ、今日は」<br /> 「お前の一番好きな、猫のまね」<br /> 「そんなこと、されても」<br /> 「ここで問題にゃ。 私が一番好きなのは何だにゃー?」<br /> 「&hellip;&hellip;運動」<br /> うわ、即答しやがった。 鈍いっていうもんじゃねーぞ。<br /> なんでだ、勉強に疲れてるから忘れてるのか、それとも素でこうなのか?<br /> 質問の仕方が悪いのかもしれないな。<br /> <br /> 「間違えたにゃ。 一番好きなのは、だ、れ、だ、にゃあ?」<br /> これなら大丈夫だろうと思ってじっと榊の顔を見てみる。<br /> だけど、期待した言葉はなかなか返ってこない。 マジで考え込んでるみたいだ。<br /> このままだと、私が持ってた雑誌を見て、この選手か、とか言ってきそうだ。<br /> しょうがない、答え、言ってやるよ、答え!<br /> <br /> <br /> </dd><dt><a target="_top" href="menu:560" name="560"><font color="#0000ff">560</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/21(月) 01:30:26 ID:w+cXAyJP</dt><dd><br /> 「正解は。 さ、か、き、お前だにゃあ」<br /> 「あの」<br /> 「何だにゃ?」<br /> 「その、しゃべり方は&hellip;&hellip;君らしく、ない」<br /> 気に入らないか。 しかも全然うれしそうにしないし。<br /> そんなにテレビが見られないのが嫌なのか。<br /> <br /> 「あ、そう。 そりゃあ残念でした」<br /> 「ありがとう。 待っていたよ」<br /> 「ん、何を?」<br /> <br /> 「ちゃんと、言って、くれるのを」<br /> <br /> やっと笑顔になった榊と、今言われたばかりの言葉を聞いて&hellip;&hellip;まさか、って思った。<br /> 頭の悪い私でもなんとなく分かる。 そう、榊はそこまで鈍くなかったんだ。<br /> ―― もしかして、私は、わざと待たされていた ――<br /> <br /> 「寂しかった、か?」<br /> 「くっそー、榊、すっごく寂しかったぜ!」<br /> 「それは、良かった」<br /> 榊はいつのまにかテレビの電源を切っていた。<br /> ひざの上に乗ったマヤーをなでて下ろすと、笑顔のまま私のほうをじっと見つめる。<br /> <br /> 「もちろん、番組も、楽しいし、好きだ」<br /> 「そりゃ、分かってるよ」<br /> 「でも。<br />  君よりも、好きだ、と&hellip;&hellip;私が、言うと、思った?」<br /> 「お、思ったぜ!」<br /> 焦りながらそう言うと、榊の顔はちょっと驚いたみたいになった。<br /> <br /> <br /> </dd><dt><a target="_top" href="menu:561" name="561"><font color="#0000ff">561</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/21(月) 01:31:45 ID:w+cXAyJP</dt><dd><br /> 「ごめん」<br /> 「そりゃあ思ったさ! あんなに、あんなに夢中になって見てるんだし!」<br /> 私は勢い余って、榊の肩を強くつかみながら大声でどなった。<br /> <br /> 「ごめん、ふふ」<br /> 「笑うなよ」<br /> 「&hellip;&hellip;くっ、ふふふ、あははははは、はははっ」<br /> 「笑うな、何がそんなにおかしいっつーんだ!」<br /> 榊がこんなに大声で笑うだなんて、これは初めてだ。<br /> 私は逆に、その笑いが自分をバカにしているんだって思って、半分キレた感じになった。<br /> <br /> 「何がおかしいんだよ」<br /> 「はは、ああ、かわいいなあ。 神楽らしい。 素直な君で、本当に、良かった」<br /> そう言われても、本当にそう思っているのかが分からなくて。<br /> 私は短刀直輸入、いや、間違えた、何だっけ、とりあえず正直に聞いてみた。<br /> <br /> 「じゃあ質問だ。 榊が一番好きなのは、誰なんだ」<br /> 「神楽。 誰って、聞かれたら」<br /> うわ、即答しやがった。 恥ずかしい、って、もん、じゃ&hellip;&hellip;。<br /> しかも、さっきまで思いっきり笑ってたのに、いきなり真剣になって。<br /> <br /> <br /> <br /> </dd><dt><a target="_top" href="menu:562" name="562"><font color="#0000ff">562</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/21(月) 01:33:07 ID:w+cXAyJP</dt><dd><br /> 「本当にだな!? だったら、あのぬいぐるみよりも! あれよりも! あれよりも!<br />  ついでに、あのマヤーよりも!」<br /> 「神楽」<br /> 「何だよ」<br /> 「誰が、って聞いたじゃないか。<br />  それに、君は&hellip;&hellip;ぬいぐるみでも、動物でも、ない」<br /> 「だからどうしたってんだよ。 今、今だよ。<br />  今、私が聞きたいのはさ、本当に私が一番好きなのか、ってことだぜ」<br /> 「人として、好きだ、愛している、という意味なら。 間違いなく、神楽だ」<br /> その言葉を聞いた瞬間、テレビも猫も犬なんてのも、全部どうでもよくなった。<br /> ちょっと心に浮かんだ恥ずかしさも一気に弾けた。<br /> 人としてじゃなくても好きなのか、ってことを知りたかったはずなのに、<br /> 人として、っていう言葉が、なんだかとてもうれしかったんだ。<br /> <br /> 「待たせて、ごめん。 好きだよ、神楽」<br /> 「さ、榊! 私も、好き、好きだぜっ!」<br /> <br /> 本当に優しい顔だな、今の榊は。 外ではあんまり笑ってくれないけど、<br /> 私の前ではもっとその表情を見せてほしいな。<br /> <br /> 「ごめんな&hellip;&hellip;寂しかった?」<br /> そう言って、榊は私に唇を合わせてくれた。<br /> 温かい感触に夢中になって、何分でも、何時間でも続けていたくなる。<br /> 私が榊の体を抱きしめると、あいつもぎゅっと抱きしめてくれた。<br /> <br /> <br /> <br /> </dd><dt><a target="_top" href="menu:563" name="563"><font color="#0000ff">563</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/05/21(月) 01:37:57 ID:w+cXAyJP</dt><dd><br /> どうでもいいけど、マヤー、あと、そこらのぬいぐるみども、一応ごめんよ。<br /> 榊の思ってる「好き」ってのは、いろんな種類があるんだよな。<br /> 分かってたっちゃ分かってたけど、結構勘違いしてた。<br /> 私のことは私で、好きでいてくれるんだ、榊は。<br /> <br /> それに、何よりも、私からも、ごめん、榊。<br /> ありがとうな。<br /> <br /> 「大丈夫、寂しくなんてないぜ」<br /> 「どうして?」<br /> 「お前が、好きだって言ってくれたから」<br /> 私は榊を抱いたまま、じっと目を見つめて言った。<br /> さっきくっつけたばかりの榊の口が、ゆっくりと動きだす。<br /> <br /> 「&hellip;&hellip;そうか、ありがとう。<br />  それなら、もう一回、言ってあげるよ。 好きだ」<br /> 私は榊とまた唇を合わせた。<br /> <br /> 明日はまた月曜だ。<br /> 今日のうちに、一週間分の気持ちを通わせておかないとな。<br /> テレビの電源も切れて静かになったことだし、もっと近づいててやる。<br /> <br /> 好きだぜ、榊。<br /> <br /> (おしまいだよ)<br /> </dd></dl>

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