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<p><dt><a href="menu:252" target="_top" name="252"><font color="#0000ff">252</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 23:22:09 <a href="id:252" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>cqA7hX8G </dt><dd><br /> <br /> 今日は学校が終わってから、帰り道が一緒の榊さんをそのまま家に呼んでみました。 <br /> 明確な理由はありません、ただ呼んでまったりとした時間を過ごしてみたかったからです。 <br /> 私の話をよく聞いてくれる人ですが、あまり自分から話そうとはしません。 <br /> いつも会話を主導するのは私からです。 <br /> でも、食卓で向かい合ったときに妙な単語を口にしました。ミステリーです。 <br /> 「赤い」 <br /> 「なんですか?」 <br /> 「ちよちゃんは、トマトが好きか」 <br /> 唐突な質問を気にしながらも首を縦に振ってみました。 <br /> 「じゃあ……お赤飯、は?」 <br /> 「好きですよ」 <br /> 意味は今ひとつ分かりませんが、ほほえましい質問です。 <br /> 榊さんのほおがいつのまにか新鮮なトマトのようになっていたのを見て、ちょっとひらめきました。 <br /> そういえば、お父さんから聞いたことがあったんです。勉強じゃなくて教養の領域ですが。 <br /> 体が大人に、お母さんになれる体に一歩近づいた時にお祝いで出てくるらしいです。 <br /> 私はまだまだですけど、必ずその時はやってくるはずです。楽しみにしています。 <br /> 「おいしい」 <br /> 「ありがとうございます」 <br /> 私は、今日も遅く帰ってくるお父さんやお母さんのために作っておいたスパゲッティを巻き取りながら、 <br /> 均一に染まった麺が榊さんの口に運ばれていくのを見つめています。 <br /> 昼もお弁当を食べましたが、今日は人を呼んできたので特別です。 <br /> 「やっぱり、ご飯は……ちゃんと噛んで食べるのが、いいな」 <br /> 「食事に長く時間をかけるほど、よく成長するんじゃないでしょうか」 <br /> 「消化」 <br /> 「そうですね。まあはっきりとした統計は取れてませんけど、私も努力してます」 <br /> 「体に負担をかけ過ぎずに、でも、ちよちゃんは小さい方が」 <br /> 「子供じゃないですよ!」 <br /> 「そうだね。『かわいい大人』とでも呼んでおこうか」 <br /> <br /> <br /> <br /> </dd><dt><a href="menu:253" target="_top" name="253"><font color="#0000ff">253</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 23:23:35 <a href="id:253" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>cqA7hX8G </dt><dd><br /> <br /> 表情はあまり変えませんが、不思議なほどに話が弾みます。 <br /> 学校で見せてくれるかっこいい姿とはまた別の榊さんです。 <br /> いえ、やっぱりかっこいいことには変わりないです。鋭い目に整った輪郭、男の人と同じくらいに締まった体の線。 <br /> それに、これは女の人らしいんですけど、ふくよかに突き出た胸。 <br /> 見るたびに、この人こそが私の目指している大人なんだって気がしてくるんです。 <br /> かおりんさん、いえ、かおりさんが好きになっちゃう気持ちもちょっと分かります。 <br /> 「ちよちゃん?」 <br /> 「あっ、はい」 <br /> 「大丈夫か」 <br /> 「はい、ちょっと考え事を」 <br /> 私のことを気遣ってくれるのも、また大人らしさだと思います。 <br /> それにしても、好きになる気持ちが分かるってことは、同じ気持ちを持っているってことなんですよね。 <br /> 「好きなんですよね」 <br /> あ、つい思っていたことを口にしてしまいました。 <br /> 榊さんが次に出す言葉はすぐに予想できましたが……。 <br /> 「え、と。やっぱり、大丈夫なのか?」 <br /> 「ナポリタンもたまにはいいですね」 <br /> 「ちよちゃん?」 <br /> 場を紛らわすために繕った会話が逆効果になってしまったようです。 <br /> ちょっと妙なことになってしまいました。ここはしばらく空気を鎮めておきましょう。 <br /> お昼にお弁当を食べたので、今はおやつという扱いです。 <br /> 今日二度目のナポリタンですが、二人で食べているとまた違う味覚を楽しめます。 <br /> 「榊さんも、お弁当作ってましたよね」 <br /> 「まあ、うん」 <br /> 「野菜の盛り付けがおいしそうでしたね。ところで、ご飯の上に書かれたあの模様は」 <br /> 今度は榊さんが黙り込んでしまいました。 <br /> ただ、少しして小声でつぶやいた言葉を、私は聞き逃しませんでした。 <br /> 「……ねここねこ」 <br /> <br /> <br /> <br /> </dd><dt><a href="menu:254" target="_top" name="254"><font color="#0000ff">254</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 23:24:38 <a href="id:254" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>cqA7hX8G </dt><dd><br /> <br /> 会話をしながらしっかりと噛み続けていたせいか、二人とも食べ終わるのにけっこう時間がかかりました。 <br /> 「デザート、用意してますからね」 <br /> 冷蔵庫からパックに詰められたいちごを出して、洗いながら歌ってみたりします。 <br /> 「作りましょう、作りましょう、さてさて何ができるかな?」 <br /> 皿に果実を乗せてテーブルに戻ります。 <br /> 「できましたー!」 <br /> 榊さんが私をじっと見て、また顔をトマトみたいにしています。 <br /> 「全くもう、かわいいな」 <br /> 「そんなにかわいい方がいいですか?」 <br /> 強いうなずきが見えました。大人らしくてかっこいい方がいいと思うんですけどねえ。 <br /> まあいいですね、それぞれの求めているものが合っていますから。 <br /> 「さっぱりとしてますね」 <br /> 「うん。甘い」 <br /> 「ナポリタンのお口直しになりましたか」 <br /> 「どっちも、ちよちゃんが……料理してくれたから、おいしかった」 <br /> 「いちごは洗っただけですよ?」 <br /> そんなことを真顔で言われたら照れちゃいますよ。 <br /> でも、静かな榊さんはいつも本当のことを伝えてくれるから、やっぱり嬉しいです。 <br /> 「ちょっとでも手が加わったら、それでいいんだ」 <br /> 「ありがとうございます」 <br /> <br /> <br /> <br /> </dd><dt><a href="menu:255" target="_top" name="255"><font color="#0000ff">255</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 23:25:51 <a href="id:255" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>cqA7hX8G </dt><dd><br /> <br /> お礼をしたときに、急に榊さんの顔が近づいてきました。 <br /> 「ねえ。あれ、やろうか」 <br /> あれ、ですか。二週間くらい前にこの食卓の上で試してみた、あれ、ですね。 <br /> 最初は突然今までのより強くなって戸惑いましたが、 <br /> また一つ大人になれた気がして、それにたまらず感激して、そのまま受け入れていました。 <br /> 榊さんがもっと顔を近づけてきます。 <br /> 私はゆっくりと目をつぶって、口どうしが合わさるのを待ちます。 <br /> しばらくすると、私の中に舌が割り込んで絡み付いてきます。 <br /> ただいちごを食べているときよりも、ずっとずっと甘いです。 <br /> 大人の味と温かさが伝わってきて不思議な気持ちになってきます。 <br /> でも、まだまだすぐに息が苦しくなってしまいます……精進ですね。 <br /> 「おいしい」 <br /> 「おいしいです」 <br /> 唇を離した直後の榊さんは、さっきよりも更に大人びて、艶めいていました。 <br /> 「もう少し先って、まだですか?」 <br /> 「……え、それは、待って」 <br /> 「赤飯でお祝いしてもらってから、ですね」 <br /> 向かいの頬がまた熟した色に変わってきました。 <br /> 榊さんが自分で聞いてきたのは、もしかしたらこの次のことを期待しているからかもしれません。 <br /> 私もその日が来るまでゆっくりと待ちます。 <br /> でも、できればアメリカに行く日までにはあの成長を迎えていたいですね。 <br /> 側にいられなくなったら寂しいですから。 <br /> とりあえず、今はゆったりとした幸福な雰囲気の中で過ごしていましょう。 <br /> <br /> (おわり) <br /> </dd></p>
<dl><dt><a target="_top" href="menu:252" name="252"><font color="#0000ff">252</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 23:22:09<a target="_top" href="id:252"><font color="#0000ff">ID:</font></a>cqA7hX8G</dt><dd><br /> <br /> 今日は学校が終わってから、帰り道が一緒の榊さんをそのまま家に呼んでみました。<br /> 明確な理由はありません、ただ呼んでまったりとした時間を過ごしてみたかったからです。<br /> 私の話をよく聞いてくれる人ですが、あまり自分から話そうとはしません。<br /> いつも会話を主導するのは私からです。<br /> でも、食卓で向かい合ったときに妙な単語を口にしました。ミステリーです。<br /> 「赤い」<br /> 「なんですか?」<br /> 「ちよちゃんは、トマトが好きか」<br /> 唐突な質問を気にしながらも首を縦に振ってみました。<br /> 「じゃあ……お赤飯、は?」<br /> 「好きですよ」<br /> 意味は今ひとつ分かりませんが、ほほえましい質問です。<br /> 榊さんのほおがいつのまにか新鮮なトマトのようになっていたのを見て、ちょっとひらめきました。<br /> そういえば、お父さんから聞いたことがあったんです。勉強じゃなくて教養の領域ですが。<br /> 体が大人に、お母さんになれる体に一歩近づいた時にお祝いで出てくるらしいです。<br /> 私はまだまだですけど、必ずその時はやってくるはずです。楽しみにしています。<br /> 「おいしい」<br /> 「ありがとうございます」<br /> 私は、今日も遅く帰ってくるお父さんやお母さんのために作っておいたスパゲッティを巻き取りながら、<br /> 均一に染まった麺が榊さんの口に運ばれていくのを見つめています。<br /> 昼もお弁当を食べましたが、今日は人を呼んできたので特別です。<br /> 「やっぱり、ご飯は……ちゃんと噛んで食べるのが、いいな」<br /> 「食事に長く時間をかけるほど、よく成長するんじゃないでしょうか」<br /> 「消化」<br /> 「そうですね。まあはっきりとした統計は取れてませんけど、私も努力してます」<br /> 「体に負担をかけ過ぎずに、でも、ちよちゃんは小さい方が」<br /> 「子供じゃないですよ!」<br /> 「そうだね。『かわいい大人』とでも呼んでおこうか」<br /> <br /> <br /> <br /> </dd><dt><a target="_top" href="menu:253" name="253"><font color="#0000ff">253</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 23:23:35<a target="_top" href="id:253"><font color="#0000ff">ID:</font></a>cqA7hX8G</dt><dd><br /> <br /> 表情はあまり変えませんが、不思議なほどに話が弾みます。<br /> 学校で見せてくれるかっこいい姿とはまた別の榊さんです。<br /> いえ、やっぱりかっこいいことには変わりないです。鋭い目に整った輪郭、男の人と同じくらいに締まった体の線。<br /> それに、これは女の人らしいんですけど、ふくよかに突き出た胸。<br /> 見るたびに、この人こそが私の目指している大人なんだって気がしてくるんです。<br /> かおりんさん、いえ、かおりさんが好きになっちゃう気持ちもちょっと分かります。<br /> 「ちよちゃん?」<br /> 「あっ、はい」<br /> 「大丈夫か」<br /> 「はい、ちょっと考え事を」<br /> 私のことを気遣ってくれるのも、また大人らしさだと思います。<br /> それにしても、好きになる気持ちが分かるってことは、同じ気持ちを持っているってことなんですよね。<br /> 「好きなんですよね」<br /> あ、つい思っていたことを口にしてしまいました。<br /> 榊さんが次に出す言葉はすぐに予想できましたが……。<br /> 「え、と。やっぱり、大丈夫なのか?」<br /> 「ナポリタンもたまにはいいですね」<br /> 「ちよちゃん?」<br /> 場を紛らわすために繕った会話が逆効果になってしまったようです。<br /> ちょっと妙なことになってしまいました。ここはしばらく空気を鎮めておきましょう。<br /> お昼にお弁当を食べたので、今はおやつという扱いです。<br /> 今日二度目のナポリタンですが、二人で食べているとまた違う味覚を楽しめます。<br /> 「榊さんも、お弁当作ってましたよね」<br /> 「まあ、うん」<br /> 「野菜の盛り付けがおいしそうでしたね。ところで、ご飯の上に書かれたあの模様は」<br /> 今度は榊さんが黙り込んでしまいました。<br /> ただ、少しして小声でつぶやいた言葉を、私は聞き逃しませんでした。<br /> 「……ねここねこ」<br /> <br /> <br /> <br /> </dd><dt><a target="_top" href="menu:254" name="254"><font color="#0000ff">254</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 23:24:38<a target="_top" href="id:254"><font color="#0000ff">ID:</font></a>cqA7hX8G</dt><dd><br /> <br /> 会話をしながらしっかりと噛み続けていたせいか、二人とも食べ終わるのにけっこう時間がかかりました。<br /> 「デザート、用意してますからね」<br /> 冷蔵庫からパックに詰められたいちごを出して、洗いながら歌ってみたりします。<br /> 「作りましょう、作りましょう、さてさて何ができるかな?」<br /> 皿に果実を乗せてテーブルに戻ります。<br /> 「できましたー!」<br /> 榊さんが私をじっと見て、また顔をトマトみたいにしています。<br /> 「全くもう、かわいいな」<br /> 「そんなにかわいい方がいいですか?」<br /> 強いうなずきが見えました。大人らしくてかっこいい方がいいと思うんですけどねえ。<br /> まあいいですね、それぞれの求めているものが合っていますから。<br /> 「さっぱりとしてますね」<br /> 「うん。甘い」<br /> 「ナポリタンのお口直しになりましたか」<br /> 「どっちも、ちよちゃんが……料理してくれたから、おいしかった」<br /> 「いちごは洗っただけですよ?」<br /> そんなことを真顔で言われたら照れちゃいますよ。<br /> でも、静かな榊さんはいつも本当のことを伝えてくれるから、やっぱり嬉しいです。<br /> 「ちょっとでも手が加わったら、それでいいんだ」<br /> 「ありがとうございます」<br /> <br /> <br /> <br /> </dd><dt><a target="_top" href="menu:255" name="255"><font color="#0000ff">255</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 23:25:51<a target="_top" href="id:255"><font color="#0000ff">ID:</font></a>cqA7hX8G</dt><dd><br /> <br /> お礼をしたときに、急に榊さんの顔が近づいてきました。<br /> 「ねえ。あれ、やろうか」<br /> あれ、ですか。二週間くらい前にこの食卓の上で試してみた、あれ、ですね。<br /> 最初は突然今までのより強くなって戸惑いましたが、<br /> また一つ大人になれた気がして、それにたまらず感激して、そのまま受け入れていました。<br /> 榊さんがもっと顔を近づけてきます。<br /> 私はゆっくりと目をつぶって、口どうしが合わさるのを待ちます。<br /> しばらくすると、私の中に舌が割り込んで絡み付いてきます。<br /> ただいちごを食べているときよりも、ずっとずっと甘いです。<br /> 大人の味と温かさが伝わってきて不思議な気持ちになってきます。<br /> でも、まだまだすぐに息が苦しくなってしまいます……精進ですね。<br /> 「おいしい」<br /> 「おいしいです」<br /> 唇を離した直後の榊さんは、さっきよりも更に大人びて、艶めいていました。<br /> 「もう少し先って、まだですか?」<br /> 「……え、それは、待って」<br /> 「赤飯でお祝いしてもらってから、ですね」<br /> 向かいの頬がまた熟した色に変わってきました。<br /> 榊さんが自分で聞いてきたのは、もしかしたらこの次のことを期待しているからかもしれません。<br /> 私もその日が来るまでゆっくりと待ちます。<br /> でも、できればアメリカに行く日までにはあの成長を迎えていたいですね。<br /> 側にいられなくなったら寂しいですから。<br /> とりあえず、今はゆったりとした幸福な雰囲気の中で過ごしていましょう。<br /> <br /> (おわり)<br /> </dd></dl>

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