「228」(2007/05/06 (日) 11:52:01) の最新版変更点
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<p><dt><a href="menu:228" target="_top" name="228"><font color="#0000ff">228</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 22:14:00 <a href="id:228" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>fGunE2WE </dt><dd> 朝靄 <br />
<br />
千にも届きそうな星達が瞬く深い夜が終幕に近づき、東の空の端が僅かに白み始めた頃…… <br />
「ん…… 」 <br />
美浜ちよは目を覚ました。 <br />
何度か瞬きを繰り返し、小さな身体を引き起こすが、時計の針はまだ暗くて見えない。 <br />
目を凝らしてあたりを見渡すと、幾つかの布団の端から足や手がはみ出していて、それとともに <br />
寝息が耳朶を叩いている。 <br />
数度首を振って眠気を追い出すと、布団からゆっくりと起き上がり窓に向かって歩いていく。 <br />
美浜家が所有する別荘の窓からは大海原を望むことができるが、まだ周囲は暗い。 <br />
近海を行き交う幾つかの船舶の先端から瞬く光が見え ―― <br />
すぐ傍で、セミロングの少女がぼんやりと海を眺めていた。 <br />
<br />
「大阪さん…… 」 <br />
「あーちよちゃん。おはようさん」 <br />
大阪とよばれている少女は静かに微笑む。 <br />
<br />
どくん…… <br />
ちよの心臓が小さく動いた。いつもと変わらない穏やかな笑顔なのに。 <br />
「もう、起きたんですか」 <br />
問いかける声が何故か掠れてしまう。 <br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:229" target="_top" name="229"><font color="#0000ff">229</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 22:15:07 <a href="id:229" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>fGunE2WE </dt><dd> ちよは、吸い寄せられるように大阪の脇に座る。 <br />
「あはは、なんか眠れーへんくってなあ。あ、でもこれは早起きかもしれへん。早起きは <br />
三文の得ってゆうねんで。ほんでも三文くらい貰ってもしょーがあらへんなあ」 <br />
いつもどおりの、のんびりして不思議な親友の口調だったけど、ちよは顔を赤らめてうつむいて <br />
しまった。 <br />
(どうしてなんだろう) <br />
心の中に生じた疑問に回答を見出そうと思考をめぐらし、豊富な知性はすぐに答えを出した。 <br />
脳裏には、昨夜の黒沢先生の話が鮮明に蘇っていた。 <br />
したたかにお酒に酔って、はしゃいでいる先生はいつもの冷静で優しい先生ではなかったが、 <br />
彼女の刺激に満ちた話が、ちよのちょっとした好奇心と誘惑を芽生えさせて、瞬く間に押さえ <br />
切れなくなってしまう。 <br />
「大阪さん。あの、その」 <br />
「なんや。ちよちゃん」 <br />
こんな事言っていいのだろうか。心の中で激しく葛藤する。もしかしたら変に思われてしまう <br />
かもしれない。でも、たぶん『大阪さん』なら許してくれると思う。 <br />
<br />
「あのっ、キスってどんな感じなんですか」 <br />
言ってしまった。ちよは、飾り気の無いTシャツにプリントされた、にんじんの上に手を <br />
下ろして、ため息をついた。 <br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:230" target="_top" name="230"><font color="#0000ff">230</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 22:16:21 <a href="id:230" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>fGunE2WE </dt><dd> しばらくの間。大阪は、大きく瞼を見開きながら、二回りも小さい少女を見つめていたが、 <br />
やがて、ゆっくりとちよの頭の後ろに手を回す。 <br />
「大阪さん? 」 <br />
優しい手付きに心地よさを覚えながらも、あたふたした声をあげた少女に、大阪は漆黒の <br />
瞳を輝かせて、悪戯そうに耳元で呟く。 <br />
「ちよちゃんは、子供やからちょっと早いかもしれへんけどなあ。どないするん? 」 <br />
子供という言葉に、無性に反発を感じて頬を膨らましながら、強い口調で言い放つ。 <br />
「私、子供なんかじゃありません」 <br />
「ほんなら経験してみる? 」 <br />
大阪との距離はいつの間にか既に数センチ。ちよは小さく頷いた。 <br />
<br />
「ん……」 <br />
前触れも無く唇が塞がれて、少しだけ湿ったやわらかい感触が届く。 <br />
「んんっ……」 <br />
少しずつ周囲が明るくなり、闇が光に追い払われる中、二人の少女の喘ぎ声が部屋の端から <br />
漏れる。そして、可愛らしい二つの唇が重ね合わせてから、きっかり1分後 ―― <br />
<br />
「ぷはっ」 <br />
息をとめることに耐え切れなくなり、ちよは唇を離して大きく息を吐き出した。 <br />
今までキスをしていた、目の前の同級生を見上げると、先程と同じ柔らかい微笑が <br />
視界に映っている。 <br />
<br />
</dd><dt><a href="menu:231" target="_top" name="231"><font color="#0000ff">231</font></a> 名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 22:17:36 <a href="id:231" target="_top"><font color="#0000ff">ID:</font></a>fGunE2WE </dt><dd> 大阪は、ちよのお下げを興味深そうな瞳を浮かべたままいじっていたが、やがて小さく <br />
ため息をついて感想を漏らした。 <br />
「今日は、私がタチでちよちゃんがネコやったなあ」 <br />
<br />
華奢な腕を組みながら何度か頷く。 <br />
言葉の意味が分からずに、ちよは首をひねって尋ねる。 <br />
「あの。タチって何ですか」 <br />
「あれえ、にゃも先生が昨日言ってたねんで」 <br />
「でも、大阪さんが大人になったら分かるって」 <br />
少し頬を膨らましたちよに向かって、大阪は短い舌をほんの少しだけ出した。 <br />
「ちよちゃんはもう大人だから。もう、にゃも先生に聞いてもええねんで」 <br />
<br />
(終わり) </dd></p>
<dl><dt><a target="_top" href="menu:228" name="228"><font color="#0000ff">228</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 22:14:00<a target="_top" href="id:228"><font color="#0000ff">ID:</font></a>fGunE2WE</dt><dd> 朝靄<br />
<br />
千にも届きそうな星達が瞬く深い夜が終幕に近づき、東の空の端が僅かに白み始めた頃……<br />
「ん…… 」<br />
美浜ちよは目を覚ました。<br />
何度か瞬きを繰り返し、小さな身体を引き起こすが、時計の針はまだ暗くて見えない。<br />
目を凝らしてあたりを見渡すと、幾つかの布団の端から足や手がはみ出していて、それとともに<br />
寝息が耳朶を叩いている。<br />
数度首を振って眠気を追い出すと、布団からゆっくりと起き上がり窓に向かって歩いていく。<br />
美浜家が所有する別荘の窓からは大海原を望むことができるが、まだ周囲は暗い。<br />
近海を行き交う幾つかの船舶の先端から瞬く光が見え ――<br />
すぐ傍で、セミロングの少女がぼんやりと海を眺めていた。<br />
<br />
「大阪さん…… 」<br />
「あーちよちゃん。おはようさん」<br />
大阪とよばれている少女は静かに微笑む。<br />
<br />
どくん……<br />
ちよの心臓が小さく動いた。いつもと変わらない穏やかな笑顔なのに。<br />
「もう、起きたんですか」<br />
問いかける声が何故か掠れてしまう。<br />
<br />
</dd><dt><a target="_top" href="menu:229" name="229"><font color="#0000ff">229</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 22:15:07<a target="_top" href="id:229"><font color="#0000ff">ID:</font></a>fGunE2WE</dt><dd> ちよは、吸い寄せられるように大阪の脇に座る。<br />
「あはは、なんか眠れーへんくってなあ。あ、でもこれは早起きかもしれへん。早起きは<br />
三文の得ってゆうねんで。ほんでも三文くらい貰ってもしょーがあらへんなあ」<br />
いつもどおりの、のんびりして不思議な親友の口調だったけど、ちよは顔を赤らめてうつむいて<br />
しまった。<br />
(どうしてなんだろう)<br />
心の中に生じた疑問に回答を見出そうと思考をめぐらし、豊富な知性はすぐに答えを出した。<br />
脳裏には、昨夜の黒沢先生の話が鮮明に蘇っていた。<br />
したたかにお酒に酔って、はしゃいでいる先生はいつもの冷静で優しい先生ではなかったが、<br />
彼女の刺激に満ちた話が、ちよのちょっとした好奇心と誘惑を芽生えさせて、瞬く間に押さえ<br />
切れなくなってしまう。<br />
「大阪さん。あの、その」<br />
「なんや。ちよちゃん」<br />
こんな事言っていいのだろうか。心の中で激しく葛藤する。もしかしたら変に思われてしまう<br />
かもしれない。でも、たぶん『大阪さん』なら許してくれると思う。<br />
<br />
「あのっ、キスってどんな感じなんですか」<br />
言ってしまった。ちよは、飾り気の無いTシャツにプリントされた、にんじんの上に手を<br />
下ろして、ため息をついた。<br />
<br />
</dd><dt><a target="_top" href="menu:230" name="230"><font color="#0000ff">230</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 22:16:21<a target="_top" href="id:230"><font color="#0000ff">ID:</font></a>fGunE2WE</dt><dd> しばらくの間。大阪は、大きく瞼を見開きながら、二回りも小さい少女を見つめていたが、<br />
やがて、ゆっくりとちよの頭の後ろに手を回す。<br />
「大阪さん? 」<br />
優しい手付きに心地よさを覚えながらも、あたふたした声をあげた少女に、大阪は漆黒の<br />
瞳を輝かせて、悪戯そうに耳元で呟く。<br />
「ちよちゃんは、子供やからちょっと早いかもしれへんけどなあ。どないするん? 」<br />
子供という言葉に、無性に反発を感じて頬を膨らましながら、強い口調で言い放つ。<br />
「私、子供なんかじゃありません」<br />
「ほんなら経験してみる? 」<br />
大阪との距離はいつの間にか既に数センチ。ちよは小さく頷いた。<br />
<br />
「ん……」<br />
前触れも無く唇が塞がれて、少しだけ湿ったやわらかい感触が届く。<br />
「んんっ……」<br />
少しずつ周囲が明るくなり、闇が光に追い払われる中、二人の少女の喘ぎ声が部屋の端から<br />
漏れる。そして、可愛らしい二つの唇が重ね合わせてから、きっかり1分後 ――<br />
<br />
「ぷはっ」<br />
息をとめることに耐え切れなくなり、ちよは唇を離して大きく息を吐き出した。<br />
今までキスをしていた、目の前の同級生を見上げると、先程と同じ柔らかい微笑が<br />
視界に映っている。<br />
<br />
</dd><dt><a target="_top" href="menu:231" name="231"><font color="#0000ff">231</font></a>名前:<font color="#228b22"><strong>名無しさん@秘密の花園</strong></font>[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 22:17:36<a target="_top" href="id:231"><font color="#0000ff">ID:</font></a>fGunE2WE</dt><dd> 大阪は、ちよのお下げを興味深そうな瞳を浮かべたままいじっていたが、やがて小さく<br />
ため息をついて感想を漏らした。<br />
「今日は、私がタチでちよちゃんがネコやったなあ」<br />
<br />
華奢な腕を組みながら何度か頷く。<br />
言葉の意味が分からずに、ちよは首をひねって尋ねる。<br />
「あの。タチって何ですか」<br />
「あれえ、にゃも先生が昨日言ってたねんで」<br />
「でも、大阪さんが大人になったら分かるって」<br />
少し頬を膨らましたちよに向かって、大阪は短い舌をほんの少しだけ出した。<br />
「ちよちゃんはもう大人だから。もう、にゃも先生に聞いてもええねんで」<br />
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(終わり)</dd></dl>
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