山の科学
森林 と樹木 と動物 (一)
林学博士 山と人
(一)森林の効用
(イ)それが、だんだんと人口がふえ、みんなの知恵も
なお
日本では
こうしたおそろしい
よく
(ロ)水源の
こういうわけで、森林は
その保安林だけでは、そこから流れ出す
(ハ)精神の
以上で森林と人との密接な関係、人間がむかしから森林をいろいろに利用してきているお話をしました。このほかにも森林は、人間の生活にいろいろの
(ニ)気候の調節。 山に木がしげっていれば、気候の調節をはかることができます。森林でおおわれている土地は、日光は
こうして林の中の空気は、つねに林の外とくらべて、昼間はすずしく、夜間は
(ホ)雪なだれと
また森林が海岸にあれば、
こういうふうに、森林の
もともと山には、高い山、低い山、なめらかな山、けわしい山とさまざまありますが、日本でも、どれにもはじめは自然に木がしげっていたのです。もっとも、富士山や日本アルプス以下、すべての
つまり山は高いばかりが
(二)山を愛 せよ
以上のわけで、ついでですが、みなさんは木ばかりでなく、そこいらの町の中にある樹木も大切にして
こんなに樹木でもおたがいにとっていろいろな役に立つことをお知りになったら、みなさんも道ばたに遊んでる子どもがなみ
樹木 の話
(一)伝説の巨木
今から一八〇〇年ばかりむかし、しかし、これはただ伝説ですから
(二)大きさによる樹木の区別
ただ樹木といっても、マツやスギのような大きくなる木もあり、ツツジやボケのように高く(三)葉の形による樹木の区別
すべての樹木はそれぞれ葉の形がちがっていますが、それを大きく二つに(イ)針葉樹に
(ロ)闊葉樹に属するものは、サクラ、モミジ、ヤナギ、アオギリ、クリ、カシ、シイ、クスなど。
です。
しかし、同じ針葉樹の中にもマツとヒノキの葉はたいへんちがっていますし、闊葉樹の中にもアオギリのような広く大きい葉、モミジの葉のように
(四)春のおとずれ
みなさんがお正月の休みを以上の二つは、冬から春にかけて花の
(五)新緑
同じ新緑のうちにも
これで木の若葉の美しい色や、新緑の緑色のこともおわかりになったと思いますから、つぎには樹木の生活について少しお話をしましょう。第一に、
(六)夏の景色
そういうわけで夏には海岸には、
また登山をするばあいには、
(七)秋の紅葉
春の若葉や関東では日光や
つぎには
(八)冬の森
そうしたみなさまはしかし、冬の間にも木の
以上で、樹木が春
(九)老樹 ・名木 の話
樹木が地上につぎに、日本にある
いま、日本でいちばん大きい木といえば鹿児島県
以上のほか、日本には各地に
また、高さのもっとも高くなるのはスギで、秋田県の
各地に残っているこういう老樹・名木は、ただ植物学上または林業上、あるいは
みなさん、こんないろいろのわけをお話したら、われわれがおたがいに、いま生き
(つづく)
底本:
1982(昭和57)年6月20日発行
親本:
1927(昭和2)年10月3日発行
入力:しだひろし
校正:
xxxx年xx月xx日作成
青空文庫作成ファイル:
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森林と樹木と動物(一)
林學博士 本多靜六山《やま》と人《ひと》
(一)森林《しんりん》の效用《こうよう》
(イ)洪水《こうずい》の豫防《よぼう》。 森林《しんりん》とは山《やま》や丘《をか》の一面《いちめん》に、こんもり木《き》が生《は》え茂《しげ》つて、大《おほ》きな深《ふか》い林《はやし》となつてゐる状態《じようたい》をいふのです。われ/\の遠《とほ》い/\最初《さいしよ》の祖先《そせん》が、はじめてこの地球上《ちきゆうじよう》に現《あらは》れたころには、森林《しんりん》は、そのまゝ人間《にんげん》の住《す》みかでもあり、また食《た》べ物《もの》の出《で》どころでもありました。たゞ今《いま》でも馬來《まれい》半島《はんとう》のある野蠻《やばん》人種《じんしゆ》は、木《き》の枝《えだ》の上《うへ》に家《いへ》を作《つく》つて住《す》んでゐますが、これなどは、今《いま》言《い》つたように、人間《にんげん》がぢかに森林《しんりん》の中《なか》にゐた習慣《しゆうかん》が殘《のこ》り傳《つた》はつた面白《おもしろ》い一例《いちれい》です。ともかく大昔《おほむかし》の人間《にんげん》は、森林《しんりん》に住《す》んで、草《くさ》や、木《き》の實《み》や、野獸《やじゆう》や、河《かは》の魚《さかな》などをとつて、生《なま》のまゝで食《た》べてゐたもので、ちょうど今日《こんにち》の山猿《やまざる》のような生活《せいかつ》をしてゐたのです。
それが、だん/\と人口《じんこう》がふえ、みんなの智慧《ちえ》も開《ひら》けて來《く》るに從《したが》つて、やうやく火《ひ》といふものを使《つか》ふことを知《し》り、食《た》べ物《もの》も※[#「赭のつくり/火」、第3水準1-87-52]《に》たり燒《や》いたりして食《た》べるようになり、また寒《さむ》いときには木《き》を燃《もや》してあたゝまることをおぼえたのです。つまり薪《まき》や炭《すみ》の材料《ざいりよう》として森林《しんりん》を利用《りよう》するようになつたわけです。それに、また一方《いつぽう》では人口《じんこう》の増加《ぞうか》につれてこれまで食料《しよくりよう》にしてゐた草《くさ》や木《き》の實《み》もだん/\足《た》りなくなり、それを補《おぎな》ふために畑《はたけ》をこしらへて、農作《のうさく》をする必要《ひつよう》がおこるし、同時《どうじ》にまた野獸《やじゆう》も、しだいに少《すくな》くなつて來《き》たので、牧畜《ぼくちく》といふことをしなければたちいかなくなりました。その農作地《のうさくち》と牧場《まきば》とを作《つく》るためには森林《しんりん》の一部分《いちぶぶん》を燒《や》き拂《はら》ひ燒《や》き拂《はら》ひしました。ですから彼等《かれら》のゐる村落《そんらく》附近《ふきん》の山林《さんりん》は、後《のち》にはだん/\に狹《せま》く、まばらになつて來《き》て、つひには薪《まき》の材料《ざいりよう》にも不足《ふそく》するようになりました。
なほ人智《じんち》がいよ/\發達《はつたつ》し人口《じんこう》がどん/\増《ま》すにつれて、最後《さいご》には奧山《おくやま》の木《き》までも伐《き》つて家屋《かおく》、橋梁《きようりよう》、器具《きぐ》、機械《きかい》、汽車《きしや》、電車《でんしや》、鐵道《てつどう》の枕木《まくらぎ》、電信《でんしん》、電信《でんわ》[#「でんわ」は底本のまま]の柱《はしら》といふように、建築《けんちく》土木《どぼく》の用材《ようざい》にも使《つか》ふようになりました。それから、大《おほ》きな木材《もくざい》から細《こま》かな纎維《せんい》をとつて紙《かみ》をこしらへたり、その他《ほか》にも使《つか》ふようにもなり、最近《さいきん》では人造《じんぞう》絹絲《けんし》の原料《げんりよう》にも澤山《たくさん》の木材《もくざい》を使《つか》つてゐます。こんな風《ふう》に薪炭用《しんたんよう》、建築《けんちく》土木用《どぼくよう》、木纎維用《もくせんいよう》等《など》のために森林《しんりん》はどん/\伐《き》り倒《たふ》され、深《ふか》い山《やま》、ふかい谷底《たにぞこ》の森林《しんりん》までがだん/\に荒《あら》されるようになりました。かうなると大雨《おほあめ》が降《ふ》るたびに、山《やま》の土《つち》や砂《すな》はどん/\流《なが》れおち、またおそろしい洪水《こうずい》がおこるようになりました。
日本《につぽん》では明治《めいじ》維新《いしん》の後《のち》、森林《しんりん》をむやみに伐《き》つた結果《けつか》、方々《ほう/″\》で洪水《こうずい》に犯《をか》され、明治《めいじ》二十九《にじゆうく》年度《ねんど》には二萬《にまん》九百《くひやく》八十一《はちじゆういつ》町村《ちようそん》といふものが水《みづ》につかり、一千《いつせん》二百《にひやく》五十人《ごじゆうにん》の死人《しにん》と二千《にせん》四百《しひやく》五十人《ごじゆうにん》の負傷者《ふしようしや》を出《だ》した外《ほか》に、船《ふね》の流失《りゆうしつ》三千《さんぜん》六百《ろつぴやく》八十隻《はちじつせき》、家《いへ》の流《なが》れたり、こはれたりしたのが七十二萬《しちじゆうにまん》九千《くせん》六百《ろつぴやく》餘棟《よむね》、田畑《たはた》の荒《あら》されたこと七十八萬《しちじゆうはちまん》五千《ごせん》餘町《よちよう》に上《のぼ》り、そのほか道路《どうろ》の破損《はそん》、橋《はし》の流《なが》れおちたもの等《など》を加《くは》へて、總損失《そうそんしつ》一億《いちおく》一千《いつせん》三百《さんびやく》餘萬圓《よまんえん》、その復舊費《ふつきゆうひ》二千《にせん》四百《しひやく》餘萬圓《よまんえん》を入《い》れると合計《ごうけい》一億《いちおく》三千《さんぜん》七百《しちひやく》餘萬圓《よまんえん》といふ計算《けいさん》でした。つまりその年《とし》、日本《につぽん》が外國《がいこく》へ輸出《ゆしゆつ》した總額《そうがく》の一億《いちおく》一千《いつせん》七百《しちひやく》萬圓《まんえん》よりもまだ遙《はるか》に多《おほ》くの金額《きんがく》だつたので、人々《ひと/″\》はみんな洪水《こうずい》の大慘害《だいさんがい》には震《ふる》へ上《あが》つたものです。
かうした恐《おそ》ろしい洪水《こうずい》はどうして起《おこ》るのかといへば、それはむろん一時《いちじ》に多量《たりよう》の雨《あめ》が降《ふ》つたからですが、その雨《あめ》が洪水《こうずい》になるといふそのもとは、つまり河《かは》の水源《すいげん》地方《ちほう》の森林《しんりん》が荒《あら》されたために、雨水《うすい》を止《とゞ》めためておく餘裕《よゆう》がなくなり、降《ふ》つただけの雨水《うすい》が一《いち》どに流《なが》れ下《くだ》つて、山《やま》にある土《つち》や砂《すな》を河底《かはぞこ》に流《なが》し埋《うづ》めるために、水《みづ》の流《なが》れかたが急《きゆう》に變《かは》つて、あふれひろがるからです。
よく茂《しげ》つてゐる森林《しんりん》では、降《ふ》つた雨《あめ》の四分《しぶん》の一《いち》は枝《えだ》や葉《は》の上《うへ》にたまつて後《のち》にだん/\と蒸發《じようはつ》します。そして殘《のこ》つた四分《しぶん》の三《さん》の雨《あめ》が葉《は》から枝《えだ》、枝《えだ》から幹《みき》へ流《なが》れて、徐々《じよ/\》に地面《じめん》に落《お》ち、そこにある落《お》ち葉《ば》に吸《す》ひ取《と》られるのです。實際《じつさい》の試驗《しけん》によると松《まつ》の落《お》ち葉《ば》は、その目方《めかた》の五倍分《ごばいぶん》の水《みづ》をたゝえ、たもつことが出來《でき》ます。ですから、一貫目《いつかんめ》だけの分量《ぶんりよう》の松《まつ》の落《お》ち葉《ば》は、五貫目《ごかんめ》の水《みづ》を含《ふく》むことになります。なほ松《まつ》より外《ほか》のいろ/\な雜木《ぞうき》、苔類《こけるい》は七倍《しちばい》も十倍《じゆうばい》もの雨水《うすい》を含《ふく》みためることが出來《でき》ますから、森林《しんりん》ではかなりの大雨《おほあめ》があつても一時《いちじ》に洪水《こうずい》を出《だ》すことはなく、雨水《うすい》は數日《すうじつ》かゝつてそろ/\流《なが》れ出《だ》し、また地中《ちちゆう》にも多《おほ》くしみこみます。だから山《やま》に森林《しんりん》が茂《しげ》つてさへゐれば、決《けつ》して洪水《こうずい》の出《で》る心配《しんぱい》はないのです。
[#図版(3_01.png)、温根場の國有林][#「温根場」は底本のまま]
(ロ)水源《すいげん》の涵養《かんよう》。 森林《しんりん》はかように雨量《うりよう》を調節《ちようせつ》することが出來《でき》ると同時《どうじ》に一方《いつぽう》では水源《すいげん》の養《やしな》ひとなり、河水《かすい》の涸《か》れるのを防《ふせ》ぎます。くはしくいふと森林《しんりん》の中《なか》は比較的《ひかくてき》濕氣《しつき》が多《おほ》く、温度《おんど》も低《ひく》く、木《き》が茂《しげ》つてゐますから、水分《すいぶん》の蒸發《じようはつ》することも少《すくな》い。またさきほどお話《はなし》したように、落《お》ち葉《ば》や、苔類《こけるい》が水《みづ》を多《おほ》く含《ふく》み、したがつて、地中《ちちゆう》にも多量《たりよう》の水分《すいぶん》をしみこませますから、たとひ旱天《かんてん》が久《ひさ》しく續《つゞ》いても森林《しんりん》はその保《たも》つてゐる水分《すいぶん》を徐々《じよ/\》に流《なが》し出《だ》し、河水《かすい》が涸《か》れないことになるのです。
かういふわけで、森林《しんりん》は洪水《こうずい》の害《がい》を防《ふせ》ぎ、河《かは》の水《みづ》を不斷《ふだん》に絶《た》えず流《なが》し、水田《すいでん》をもからさないといふ點《てん》で、土地《とち》を安全《あんぜん》に保《たも》つてくれる效用《こうよう》があることがわかつて來《き》たので、以來《いらい》はじめて森林《しんりん》を保護《ほご》して育《そだ》てるようになり、なほ國土《こくど》の保安《ほあん》のために森林《しんりん》の一部《いちぶ》を『保安林《ほあんりん》』といふものにして、永久《えいきゆう》に伐《き》らないで置《お》くようにもなつたのです。
その保安林《ほあんりん》だけでは、そこから流《なが》れ出《だ》す河川《かせん》の流域《りゆういき》一帶《いつたい》の人々《ひと/″\》が利益《りえき》をうけるといふのみで、これだけではまだ完全《かんぜん》に一國民《いつこくみん》全體《ぜんたい》が森林《しんりん》を利用《りよう》してゐるとはいへませんでしたが、ついで現《あらは》れて來《き》た水力《すいりよく》電氣《でんき》そのものはすべてこの都市《とし》村落《そんらく》の燈火《あかり》や、いろ/\の動力《どうりよく》にも利用《りよう》せられ、電車《でんしや》、電信《でんしん》、電話《でんわ》、電燈《でんとう》、工業用《こうぎようよう》機械《きかい》動力《どうりよく》をはじめ、朝夕《あさゆふ》の※[#「赭のつくり/火」、第3水準1-87-52]炊《にた》き、すとうぶ[#「すとうぶ」に傍点]や按摩《あんま》、行火《あんか》の代《かは》りにまでも用《もち》ひられるようになり、今日《こんにち》では人間《にんげん》の生活上《せいかつじよう》電氣《でんき》は寸時《すんじ》も缺《か》くことの出來《でき》ない必要《ひつよう》なものとなりました。その水力《すいりよく》電氣《でんき》の水源《すいげん》は森林《しんりん》によつて、はじめて完全《かんぜん》に養《やしな》ふことが出來《でき》るのです。それで、今《いま》では特《とく》に山岳《さんがく》地方《ちほう》の森林《しんりん》は、一《いち》ばんにはこの意味《いみ》の水源《すいげん》を養《やしな》ふのに利用《りよう》され、建築《けんちく》土木用《どぼくよう》の木材《もくざい》や、薪炭《しんたん》材料《ざいりよう》等《など》をとるのは第二《だいに》とされるようになりました。
(ハ)精神《せいしん》の保養《ほよう》。 しかし、ずっと最近《さいきん》では、森林《しんりん》の利用《りよう》を、もっとすゝめて、直接《ちよくせつ》に人々《ひとびと》の健康《けんこう》のために應用《おうよう》することを考《かんが》へつきました。大部分《だいぶぶん》の人《ひと》が生活《せいかつ》してゐる都會《とかい》は、狹《せま》い土地《とち》に大勢《おほぜい》の人《ひと》が住《す》み、石炭《せきたん》の煤煙《ばいえん》や、その他《ほか》の塵埃《じんあい》でもって空氣《くうき》がおそろしく濁《にご》つてをり、また各種《かくしゆ》の交通《こうつう》機關《きかん》が發達《はつたつ》して晝夜《ちゆうや》の分《わか》ちなく、がた/\と騷々《そう/″\》しいので、都會《とかい》に住《す》む人《ひと》は、體《からだ》が弱《よわ》くなつたり病氣《びようき》をしたりします。それで時々《とき/″\》は自然《しぜん》の森林《しんりん》に遊《あそ》んで、すがすがしい空氣《くうき》を吸《す》ひ、精神《せいしん》を保養《ほよう》する必要《ひつよう》があります。都會《とかい》には大小《だいしよう》の公園《こうえん》も設《まう》けられてゐますが、そんなものは完全《かんぜん》な安靜《あんせい》場所《ばしよ》といへません。どうしても町《まち》を遠《とほ》く離《はな》れた美《うつく》しい自然《しぜん》の森林《しんりん》へ出《で》かけるに越《こ》したことはないのです。この意味《いみ》で近來《きんらい》、休《やす》みを利用《りよう》して各地《かくち》で開《ひら》いてゐる林間《りんかん》野營《やえい》や、それから山岳《さんがく》旅行《りよこう》などはまことに結構《けつこう》なことです。お互《たがひ》に身體《しんたい》が丈夫《じようぶ》でなければ何事《なにごと》も出來《でき》ませんから、新《あたら》しい空氣《くうき》の呼吸《こきゆう》と、十分《じゆうぶん》な日光浴《につこうよく》と、運動《うんどう》とによつて食物《しよくもつ》をうまく食《た》べることが一番《いちばん》大切《たいせつ》です。これがために運動《うんどう》や、競技《きようぎ》や、登山《とざん》など家《いへ》の外《そと》で生活《せいかつ》することがはやり、ひいては森林《しんりん》を世人《せじん》の休養《きゆうよう》、保健《ほけん》のため利用《りよう》すること、つまり森林《しんりん》を公園《こうえん》として利用《りよう》することが盛《さか》んになつたわけです。
以上《いじよう》で森林《しんりん》と人《ひと》との密接《みつせつ》な關係《かんけい》、人間《にんげん》が昔《むかし》から森林《しんりん》をいろ/\に利用《りよう》して來《き》てゐるお話《はなし》をしました。この外《ほか》にも森林《しんりん》は人間《にんげん》の生活《せいかつ》にいろ/\の役立《やくだ》ちをしてゐます。
(ニ)氣候《きこう》の調節《ちようせつ》。 山《やま》に木《き》が茂《しげ》つてゐれば、氣候《きこう》の調節《ちようせつ》をはかることが出來《でき》ます。森林《しんりん》でおほはれてゐる土地《とち》は、日光《につこう》は枝葉《えだは》で遮《さへ》ぎられて、地面《じめん》を温《あたゝ》めることが少《すくな》いのと、もう一《ひと》つは、日光《につこう》が直射《ちよくしや》によつて葉《は》の面《めん》の水分《すいぶん》が蒸發《じようはつ》するときに、多量《たりよう》の潜熱《せんねつ》を必要《ひつよう》とします。潜熱《せんねつ》といふのは物體《ぶつたい》が融解《ゆうかい》したり、また蒸發《じようはつ》するときに要《よう》する熱量《ねつりよう》です。そんなわけで森林《しんりん》の附近《ふきん》の空氣《くうき》はいつも冷《ひ》えてゐます。ちょうど夏《なつ》の暑《あつ》い日《ひ》に、庭前《ていぜん》に水《みづ》をまけばにわかに涼《すゞ》しさが感《かん》ぜられるのと同《おな》じりくつです。しかし、夜《よる》になると森林《しんりん》は、枝葉《えだは》で土地《とち》をおほつてゐますから、その地面《じめん》と空氣《くうき》と、熱《ねつ》を放散《ほうさん》するのを妨《さまた》げるので、そこの空氣《くうき》は冷《ひ》え方《かた》が少《すくな》いことになります。
かうして林《はやし》の中《なか》の空氣《くうき》は、常《つね》に林《はやし》の外《そと》と比《くら》べて、晝間《ちゆうかん》は涼《すゞ》しく、夜間《やかん》は温《あたゝ》かで、從《したが》つて晝《ひる》と夜《よる》とで氣温《きおん》が急《きゆう》に變《かは》ることを和《やは》らげます。そして同《おな》じわけで、夏《なつ》を涼《すゞ》しく、冬《ふゆ》を暖《あたゝ》かくして、一年中《いちねんじゆう》の温度《おんど》の變化《へんか》を調節《ちようせつ》します。
(ホ)雪《ゆき》なだれと海嘯《つなみ》の防止《ぼうし》。 それから前《まへ》にお話《はなし》した洪水《こうずい》の豫防《よぼう》や、水源《すいげん》の涵養《かんよう》のほかに森林《しんりん》は雪國《ゆきぐに》ですと『雪《ゆき》なだれ』の害《がい》を防《ふせ》ぐことも出來《でき》ます。雪《ゆき》なだれとは、傾斜地《けいしやち》に積《つも》つた雪《ゆき》が、春《はる》暖《あたゝ》かくなつたために、下側《したがは》の地面《じめん》に氷結《ひようけつ》した部分《ぶぶん》が急《きゆう》に溶《と》けるのでもつて、急《きゆう》に滑《すべ》り落《お》ちるもので、そのために山麓《さんろく》の人畜《じんちく》、農地《のうち》、道路《どうろ》等《など》を破損《はそん》し、土砂《どしや》、岩石《がんせき》等《など》を落《おと》して、恐《おそ》ろしい害《がい》を與《あた》へることがあります。これも森林《しんりん》があれば雪《ゆき》が急《きゆう》に溶《と》けませんし、たとひ、おちた雪《ゆき》も樹幹《じゆかん》で支《さゝ》へられるので、なだれがおきないですむのです。
また森林《しんりん》が海岸《かいがん》にあれば、天災中《てんさいちゆう》の、恐《おそ》ろしい『海嘯《つなみ》』の害《がい》も少《すくな》くなります。かの明治《めいじ》二十九年《にじゆうくねん》の三陸《さんりく》地方《ちほう》の海嘯《つなみ》の被害《ひがい》區域《くいき》は長《なが》さ百五十《ひやくごじゆう》まいるにわたり、死者《ししや》二萬《にまん》二千人《にせんにん》、重傷者《じゆうしようしや》四千《しせん》四百人《しひやくにん》、家《いへ》や、船《ふね》の流《なが》されたもの、農地《のうち》の損失《そんしつ》などで損害《そんがい》總額《そうがく》は數千《すうせん》萬圓《まんえん》に上《のぼ》りました。こんな海嘯《つなみ》などは、到底《とうてい》人間《にんげん》の力《ちから》で防《ふせ》ぎ止《と》めることは出來《でき》ませんが、しかし、もし海岸《かいがん》に浴《そ》[#「浴」は底本のまま]うて帶《おび》のように森林《しんりん》があれば、非常《ひじよう》な速力《そくりよく》でおし寄《よ》せてくる潮水《しほみづ》の勢《いきほひ》を殺《そ》ぎ、從《したが》つて慘害《さんがい》も少《すくな》くなる道理《どうり》です。
かういふ風《ふう》に、森林《しんりん》の效用《こうよう》を上《あ》げれば限《かぎ》りもありません。ところで日本《につぽん》にはかういふ大切《たいせつ》な森林《しんりん》がどのくらゐあるのかといひますと、日本中《につぽんじゆう》の森林《しんりん》面積《めんせき》は總計《そうけい》四千《しせん》三百《さんびやく》九十二萬《くじゆうにまん》町《ちよう》で、實《じつ》に日本《につぽん》の土地《とち》の總面積《そうめんせき》の六割《ろくわり》四分《しぶ》をしめてゐます。これを國民《こくみん》の頭割《あたまわ》りにして見《み》ますと、一人《いちにん》につき平均《へいきん》五反《ごたん》五畝《ごせ》五歩《ごぶ》に當《あた》ります。即《すなはち》、皆樣《みなさま》が五反《ごたん》五畝《ごせ》五歩《ごぶ》の森林《しんりん》の中《なか》に一人《ひとり》づゝ住《す》める勘定《かんじよう》です。
もと/\山《やま》には、高《たか》い山《やま》、低《ひく》い山《やま》、滑《なめら》かな山《やま》、嶮《けは》しい山《やま》とさま/″\ありますが、日本《につぽん》でも、どれにも、はじめは、自然《しぜん》に木《き》が茂《しげ》つてゐたのです。もっとも、富士山《ふじさん》や日本《につぽん》アルプス以下《いか》、すべての高山《こうざん》の頂《いたゞ》き近《ちか》くには、寒《さむ》さが強《つよ》くて樹木《じゆもく》が育《そだ》ちません。このことは後《のち》にくはしくお話《はなし》します。しかし普通《ふつう》の山《やま》では木《き》の育《そだ》つてゐないところはなかつたのです。それが前《まへ》に言《い》つたように人間《にんげん》が多《おほ》くなるにつれて木材《もくざい》がいよ/\多《おほ》く必要《ひつよう》となり、どんどん伐《き》るため、村落《そんらく》に近《ちか》い山《やま》の木《き》はもとより、高《たか》い山《やま》にも青々《あを/\》としてゐた木《き》が無《な》くなつて赤《あか》い山《やま》の地《じ》はだを見《み》せるようになつたのです。こんな赤《あか》はげ山《やま》は、山《やま》としては決《けつ》して立派《りつぱ》なものとはいへません。人間《にんげん》でいへば體《からだ》ばかり大《おほ》きくて徳《とく》も智慧《ちえ》もないとすれば、人《ひと》としててんで品位《ひんい》がないのと同《おな》じです。たとひ低《ひく》い山《やま》でも木《き》がよく茂《しげ》つてゐれば、山《やま》のねうちがあつて、限《かぎ》りない效用《こうよう》をもちます。
つまり山《やま》は高《たか》いばかりが貴《たつと》いのではなく、木《き》が茂《しげ》つてゐるので本當《ほんとう》に貴《たつと》いのです。そのためには、いふまでもなく、お互《たがひ》に十分《じゆうぶん》に山《やま》を愛《あい》して、むやみに木《き》を伐《き》らないようにし、もし伐《き》れば、その跡《あと》に代《かは》りの木《き》を植《う》ゑて仕《し》たてることを忘《わす》れてはなりません。
(二)山《やま》を愛《あい》せよ
以上《いじよう》のわけで一國《いつこく》の山《やま》全部《ぜんぶ》が青々《あを/\》としてゐる間《あひだ》はその國《くに》は盛《さか》んになるのですが、反對《はんたい》に、いくら、必要《ひつよう》だからと言《い》つて、やたらに樹木《じゆもく》を伐《き》るばかりで、荒《あら》しつくしてしまへば、その國《くに》は滅《ほろ》びることにもなります。なほ伐木《ばつぼく》についで用心《ようじん》しなければならないのは恐《おそ》ろしい山火事《やまかじ》です。生《なま》の立《た》ち木《き》はちよっと燃《も》えにくいようにおもへますが、一度《いちど》火勢《かせい》がつけば、こんもりと茂《しげ》つた美《うつく》しい森林《しんりん》もまたゝくまに灰《はひ》になつてしまふのです。春《はる》から夏《なつ》にかけて山《やま》の雪《ゆき》が消《き》えた頃《ころ》が、この山火事《やまかじ》の一番《いちばん》多《おほ》い時《とき》で、煙草《たばこ》の吸《す》ひ殼《がら》や、たき火《び》をした人《ひと》のちよっとした不注意《ふちゆうい》で、百年《ひやくねん》かゝつて出來上《できあが》つた森林《しんりん》も數時間《すうじかん》もたゝない間《あひだ》に、すっかり燒《や》けてしまふわけです。だから山登《やまのぼ》りをする人《ひと》は特《とく》に火《ひ》の用心《ようじん》をすることが大事《だいじ》です。
ついでですが、みなさんは木《き》ばかりでなく、そこいらの町《まち》の中《なか》にある樹木《じゆもく》も大切《たいせつ》にして枝《えだ》を折《を》つたりしないようにして下《くだ》さらなければいけません。春《はる》、美《うつく》しい花《はな》が咲《さ》くのが見《み》たく、夏《なつ》の暑《あつ》いときに涼《すゞ》しい木蔭《こかげ》が欲《ほ》しい以上《いじよう》は、庭《には》の木《き》でも、町《まち》のなみ木《き》でも、同《おな》じように可愛《かわい》がつてやらねばなりません。こないだの關東《かんとう》の大震災《だいしんさい》のときには、淺草《あさくさ》の觀音《かんのん》のお堂《どう》の裏《うら》のいてふ[#「いてふ」に傍点]の木《き》は片側《かたがは》半分《はんぶん》は火《ひ》に燒《や》けても、他《た》の半分《はんぶん》の枝葉《えだは》のために火《ひ》がお堂《どう》に燃《も》えうつるのを防《ふせ》ぎました。ひとりいてふ[#「いてふ」に傍点]に限《かぎ》らず、しひのき[#「しひのき」に傍点]やかしのき[#「かしのき」に傍点]等《など》、家《いへ》のまはりや公園《こうえん》の垣根《かきね》沿《ぞ》ひに植《う》ゑてある木《き》は、平常《へいじよう》は木蔭《こかげ》や風《かぜ》よけになるばかりでなく、火事《かじ》の時《とき》には防火樹《ぼうかじゆ》として非常《ひじよう》に役《やく》に立《た》ち家《いへ》も燒《や》かずに濟《す》み、時《とき》には人《ひと》の命《いのち》すら救《すく》はれることがあることも忘《わす》れてはなりません。
こんなに樹木《じゆもく》でもお互《たがひ》にとつていろ/\な役《やく》に立《た》つことをお知《し》りになつたら、みなさんも道《みち》ばたに遊《あそ》んでる子供《こども》がなみ木《き》の皮《かは》を剥《む》いたり、枝《えだ》を打《う》つたりしてゐるのを見《み》られたらすぐに言《い》ひ聞《き》かせて、とめて下《くだ》さらなければこまります。それはとりもなほさず樹木《じゆもく》を愛《あい》し、引《ひ》いては山《やま》をも愛《あい》することになつて、國家《こつか》の安榮《あんえい》をつくることになるからです。
(つづく)
底本:『山の科学 No.47』復刻版 日本児童文庫、名著普及会
1982(昭和57)年6月20日発行
親本:『山の科學』日本兒童文庫、アルス
1927(昭和2)年10月3日発行
入力:しだひろし
校正:
xxxx年xx月xx日作成
青空文庫作成ファイル:
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*地名
(※ 市町村名は、平成の大合併以前の表記のまま。一般的な国名・地名などは解説省略。- [北海道]
- 温根場 → 温根湯温泉か
- 温根湯温泉 おんねゆ おんせん 現、常呂郡留辺蘂町字温根湯。無加川北岸にある温泉。/北海道北見市留辺蘂町にある温泉。国道39号沿いにあり、無加川の清流をはさんで旅館やホテルが立ち並ぶ。
「温根湯」の名称は、アイヌ語の「オンネ」 (大きな) ・ 「ユ」 (お湯)に由来する。 (Wikipedia) - [岩手県]
- 三陸 さんりく (1) 陸前・陸中・陸奥の総称。(2) 三陸地方の略。東北地方北東部、北上高地の東側の地域。
- 三陸大津波 さんりく おおつなみ 津波の常襲地の三陸地方沿岸で、過去100年間に起こったもののうち最大規模の1896年(明治29)6月15日(明治三陸地震津波)および1933年(昭和8)3月3日(昭和三陸地震津波)の津波を指す。
- 三陸沖地震 さんりくおき じしん 三陸沖に起こる巨大地震。震源は日本海溝付近にあるため、地震動による被害は少ないが、リアス海岸になっているため津波の被害が大きい。1896年には3万人近い死者、1933年には3000人以上の死者を出した。
- [秋田県]
- 長木沢 ながきざわ/ながきさわ 現、大館市雪沢。秋田郡東部の山地を占め長木川の上流域一帯。藩内随一の天然杉の産地。長木川は、鹿角および青森県境に広がる長木沢に源をもつのでこの名がある。長木沢は山中七里四方に八〇八沢があるといわれ、秋田藩領第一の天然杉の産地であった。杉材の輸送はもっぱら長木川によった。
- [栃木県]
- 日光 にっこう 栃木県北西部の市。奈良末期、勝道上人によって開かれ、江戸時代以後、東照宮の門前町として発達。日光国立公園の中心をなす観光都市。二荒山神社・東照宮・輪王寺の建造物群と周辺は「日光の社寺」として世界遺産。人口9万4千。
- 塩原 しおばら 栃木県那須塩原市の一地区。箒川の渓谷に沿った温泉地で、塩原十一湯として古くから知られる。
- [東京都]
- 関東大震災 かんとう だいしんさい 1923年(大正12)9月1日午前11時58分に発生した、相模トラフ沿いの断層を震源とする関東地震(マグニチュード7.9)による災害。南関東で震度6(当時の最高震度)。被害は、死者・行方不明10万5000人余、住家全半壊21万余、焼失21万余に及び、京浜地帯は壊滅的打撃をうけた。また震災の混乱に際し、朝鮮人虐殺事件・亀戸事件・甘粕事件が発生。
- 浅草 あさくさ 東京都台東区の一地区。もと東京市35区の一つ。浅草寺の周辺は大衆的娯楽街。
- 浅草観音 あさくさ かんのん 浅草寺の通称。
- 浅草寺 せんそうじ 東京都台東区浅草にある聖観音宗(天台系の一派)の寺。山号は金竜山。本坊は伝法院。628年、川より示現した観音像を祀ったのが始まりと伝え、円仁・源頼朝らの再興を経て、近世は観音霊地の代表として信仰を集めた。浅草観音。
- 日比谷公園 ひびや こうえん 日比谷にある公園。1903年(明治36)6月開園。日本最初の洋式公園。
- 青山 あおやま (もと青山氏の邸があった) 東京都港区西部から渋谷区東部にかけての地区名。
- 赤坂通り あかさかどおり
- 明治神宮 めいじ じんぐう 東京都渋谷区代々木にある元官幣大社。祭神は明治天皇・昭憲皇太后。境内(内苑)は約22万坪。1915年(大正4)起工、20年竣成。例祭は11月3日。
- 大鳥居 おおとりい
- [富山県]
- 高岡 たかおか 富山県北西部の市。礪波平野北東部の商工業都市で交通の要地。銅器・漆器・捺染の特産地。紡績・化学・アルミ・製紙工業が盛ん。人口18万1千。
- 末広町 すえひろちょう
- 七本杉 しちほんすぎ
- [山梨県]
- 甲州 こうしゅう 甲斐国の別称。
- 身延山 みのぶさん (1) 山梨県南巨摩郡身延町にある山。富士川西岸に沿う身延山地の一峰。標高1153m。富士川の支流波木井川によって山地が深く刻まれ、山腹に日蓮宗総本山身延山久遠寺がある。(2) 久遠寺の別称。
- 千本杉 せんぼんすぎ 山腹のスギの美林は身延山の千本スギとして県指定天然記念物であるとともに、ブッポウソウ繁殖地として国指定天然記念物でもある。
- 富士山 ふじさん (不二山・不尽山とも書く) 静岡・山梨両県の境にそびえる日本第一の高山。富士火山帯にある典型的な円錐状成層火山で、美しい裾野を引き、頂上には深さ220mほどの火口があり、火口壁上では剣ヶ峰が最も高く3776m。史上たびたび噴火し、1707年(宝永4)爆裂して宝永山を南東中腹につくってから静止。箱根・伊豆を含んで国立公園に指定。立山・白山と共に日本三霊山の一つ。芙蓉峰。富士。
- [長野県]
- 木曽 きそ 木曾。木曾谷。長野県の南西部、木曾川上流の渓谷一帯の総称。古来中山道が通じ、重要な交通路をなす。木曾桟道・寝覚の床・小野滝の三絶勝があり、ヒノキその他の良材の産地。木曾。
- 日本アルプス にほん アルプス 中部地方の飛騨・木曾・赤石の3山脈の総称。ヨーロッパのアルプスに因んで1881年(明治14)英人ゴーランドが命名。のち小島烏水が3部に区分し、飛騨山脈を北アルプス、木曾山脈の駒ヶ岳連峰を中央アルプス、赤石山脈を南アルプスとした。
- [京都]
- 嵐山 あらしやま (1) 京都市西部にある山。桜・紅葉の名所。大堰川に臨み、亀山・小倉山に対する。
(歌枕) - 高尾 たかお 高雄・高尾。京都市右京区梅ヶ畑の一地区。清滝川の右岸に位置する。栂尾・槙尾とともに三尾と称し、古来紅葉の勝地。真言宗の名刹、高雄山神護寺がある。
- 九州
- 筑紫 つくし 九州の古称。また、筑前・筑後を指す。
- [佐賀県]
- 杵島岳 きしまだけ → 杵島山か
- 杵島山 きしまやま 杵島郡北方町・白石町・有明町・武雄市橘町にまたがり、南西の一部は藤津郡塩田町に接する南北に細長い丘陵。鳴瀬山・勇猛山・犬山岳などの数峰からなり、標高345mを最高とする。
- 阿蘇山 あそさん 熊本県北東部、外輪山と数個の中央火口丘(阿蘇五岳という)から成る活火山。外輪山に囲まれた楕円形陥没カルデラは世界最大級。最高峰の高岳は標高1592m。
- 高田の行宮 たかだのあんぐう
- [熊本] くまもと
- 有明 ありあけ → 有明海
- 有明海 ありあけかい 九州北西部の、長崎・佐賀・福岡・熊本四県に囲まれた浅海域。潮汐の干満差が大きく、古くから干潟の干拓事業が進められた。筑紫潟。筑紫の海。
- [長崎県]
- 肥前国 ひぜんのくに 旧国名。一部は今の佐賀県、一部は長崎県。
- 温泉岳 うんぜんだけ → 雲仙岳
- 雲仙岳 うんぜんだけ 長崎県島原半島にある火山群の総称。標高1486mの普賢岳を主峰とする。南西の山麓に硫黄泉の雲仙温泉がある。ミヤマキリシマ・霧氷などは有名。1990年、普賢岳が噴火。
- [鹿児島県]
- 姶良郡 あいらぐん 鹿児島県北部にある郡。鹿児島湾奥、北岸一帯を占める。古代の桑原郡から分かれた始羅(しら)郡が、古代の姶羅郡と郡名を混用されていたのを、明治4(1871)姶良郡に改称統一。同30年、桑原郡・西曽於郡を編入した。
- 蒲生村 かもうむら 現、姶良郡蒲生町。姶良郡の西端に位置し、町域はほぼ三角形をなす。正保2(1645)鹿児島藩の家老島津久通は蒲生の地勢・土質が杉材に適していること、前郷川・後郷川が材木運搬に至便であることに目をつけ、造林事業に着手したと伝える(蒲生郷土史)。蒲生杉は良材として広く県外に知られる。
- [台湾] たいわん
- 阿里山 ありさん (Alishan) 台湾、嘉義市の東部にある山。また、玉山(新高山)の西方一帯の山地の総称。主峰大塔山は標高2663m。桧の良材で名高い。
- [シナ]
- [タイ][マレーシア]
- マレー半島 マレー はんとう インドシナ半島から南方に突出した半島。北部はタイ領、南部はマレーシア、南端にジョホール水道を隔ててシンガポール島がある。マラッカ半島。
◇参照:Wikipedia、
*年表
- 1896年(明治29)6月15日 明治三陸地震津波。
- 1923年(大正12)9月1日。関東大震災。午前11時58分に発生した、相模トラフ沿いの断層を震源とする関東地震(マグニチュード7.9)による災害。南関東で震度6(当時の最高震度)。被害は、死者・行方不明10万5000人余、住家全半壊21万余、焼失21万余に及び、京浜地帯は壊滅的打撃をうけた。また震災の混乱に際し、朝鮮人虐殺事件・亀戸事件・甘粕事件が発生。
- 1933年(昭和8)3月3日 昭和三陸地震津波。
◇参照:
*人物一覧
(人名、および組織・団体名・神名)- 景行天皇 けいこう てんのう 記紀伝承上の天皇。垂仁天皇の第3皇子。名は大足彦忍代別。熊襲を親征、後に皇子日本武尊を派遣して、東国の蝦夷を平定させたと伝える。
◇参照:
*書籍
(書名、雑誌名、論文名、映画・能・狂言・謡曲などの作品名)- 『日本書紀』 にほん しょき 六国史の一つ。奈良時代に完成した日本最古の勅撰の正史。神代から持統天皇までの朝廷に伝わった神話・伝説・記録などを修飾の多い漢文で記述した編年体の史書。30巻。720年(養老4)舎人親王らの撰。日本紀。
◇参照:Wikipedia、
*難字、求めよ
- 橋梁 きょうりょう 交通路を連絡するために、河川・湖沼・運河・渓谷などの上に架設する構造物。構造上、桁橋・アーチ橋・吊橋などがある。かけはし。はし。
- 人造絹糸 じんぞう けんし 天然絹糸にまねた人造の織物用繊維。綿花や木材パルプのセルロースを種々の方法で溶解し、コロイド溶液とし、これを細孔から凝固液中へ射出して繊維状に凝固させたもの。人絹。レーヨン。
- レーヨン rayon 人造絹糸。また、それで織った織物。人絹。
- 苔類 こけるい (→)苔植物に同じ。
- 苔植物 こけ しょくぶつ 緑色植物の一門。有性世代(配偶体)と無性世代(胞子体)を規則的に繰り返す(世代交代)。配偶体がよく発達し、その上に形成された胞子体は配偶体から独立しない。この点シダ植物や種子植物と異なる。蘚類・苔類・ツノゴケ類の3群からなるが、それぞれを門とする考えもある。コケ類。蘚苔植物。
- 国有林 こくゆうりん 国家の所有に属する森林・原野。林野庁所管の国有林は国有林野法(1899年公布、1951年全面改正)の適用を受け、国立大学法人の演習林は国有財産法などの適用を受ける。
- 涵養 かんよう (
「涵」はうるおす意) 自然に水がしみこむように徐々に養い育てること。 - 河水 かすい 河の水。河の流れ。
- 干天・旱天 ひでりの空。夏の照りつける空。
- 保安林 ほあんりん 森林法に基づき、水源涵養、砂防、風水害などの予防、魚付き、風致保存などの目的を達成するため農林水産大臣が指定した森林。伐採・放牧・土石採掘などが制限される。
- 水力電気 → 水力発電
- 水力発電 すいりょく はつでん 発電の一方式。水力によって発電機を運転し、電力を発生する方式。ダム式・水路式・揚水式などがある。
- 行火 あんか (アンは唐音) 炭火を入れて手足をあたためる道具。外側は木製または土製。
- 寸時 すんじ わずかな時間。寸刻。
- 保養 ほよう 心身を休ませて健康を保ち活力を養うこと。養生。
- 林間野営 りんかん やえい
- 潜熱 せんねつ 物質が蒸発したり融解したりする時に、状態の変化のためにだけ費やされて、温度上昇にあずからない熱。すなわち融解熱・気化熱・昇華熱のこと。
- 樹幹 じゅかん 樹木の幹。みき。
- 津波・津浪 つなみ 地震による海底陥没や隆起、海中への土砂くずれ、海底火山の噴火などが原因で生ずる水面の波動。海岸付近で海面が高くなり、湾内などで大きな災害をひき起こす。高潮を暴風津波ということもある。
- 伐木 ばつぼく 樹木を伐り倒すこと。
- 山火事 やまかじ 山で起こる火事。やまび。山やけ。山燃え
- 防火樹 ぼうかじゅ 家屋の周囲に植えて火災を防ぐための樹。珊瑚樹・椎・樫などを用いる。
- 安栄 あんえい 身がやすらかで栄えること。また、そのさま。
- 扶桑木 ふそうぼく (1) 太陽の出るところにあるという神木。扶桑樹。扶桑。(2)埋木の炭化したもの、すなわり、石炭をいうか。
- 扶桑 ふそう (1) [山海経海外東経]中国で、東海の日の出る所にあるという神木。また、その地の称。(2) 〔植〕ブッソウゲの別称。(3) [南史夷貊伝下、東夷]中国の東方にあるという国。日本国の異称。扶桑国。
- 行宮 あんぐう (アンは唐音) 天皇行幸の時の仮の宮居。かりみや。行在所。
- 機状 きじょう
- 喬木 きょうぼく (1) 高い木。(2) 〔植〕(→)高木に同じ。←
→灌木 - 灌木 かんぼく (1) 枝がむらがり生える樹木。(2) (→)低木に同じ。←
→喬木。 - アオギリ 青桐・梧桐。アオギリ科の落葉高木。中国南部原産。樹皮は緑色。葉は大きく、3〜5裂、長柄。夏、黄白色5弁の小花を群生。果実は熟すと舟形の5片に割れ、各片に小球状の種子が載る。庭木・街路樹にし、材を建具・家具・楽器などとする。蒼梧。碧梧。
- 闊葉樹 かつようじゅ (→)広葉樹に同じ。
- 広葉樹 こうようじゅ 双子葉植物の樹木で、広く平たい葉をもつ木。常緑性のものと落葉性のものとがあり、熱帯から温帯に分布。闊葉樹。←
→針葉樹 - 針葉樹 しんようじゅ 裸子植物の一群。マツ科・スギ科・ヒノキ科・イチイ科・イヌガヤ科などを含む。葉は針状または鱗片状。普通、常緑で、稀に落葉樹もある。一般に高木で毬果を結ぶ。材は建築材・土木材などとして重要。また、パルプ原料。北半球北部に広大な樹林をなす。松柏類。←
→広葉樹。 - 掌状 しょうじょう 開いた手のひらのかたち。
- 常緑樹 じょうりょくじゅ 四季を通じて緑の葉をつけている樹木。マツ・シイ・クスノキなど。ときわぎ。←
→落葉樹 - 落葉樹 らくようじゅ 秋、または乾季の始めに葉が落ち、翌春または次の雨季に新葉の萌え出る樹木。大部分は広葉樹で温帯に多い。紅葉・黄葉の美しいものがある。落葉木。←
→常緑樹 - 代闊葉樹 かかつようじゅ
- マンサク マンサク科の落葉大低木。山地に自生。高さ3mくらい。早春、黄色・線形の4弁花を開き、楕円形のj果を結ぶ。茶花として栽培、花季が早いので珍重される。葉を止血剤とする。金縷梅。
- ロウバイ 蝋梅・臘梅。ロウバイ科の落葉低木。中国の原産。高さ約3m。葉は卵形で両面ともざらつく。冬、葉に先だって香気のある花を開く。外側の花弁は黄色、内側のは暗紫色で、蝋細工のような光沢を有し、のち卵形の果実を結ぶ。観賞用。唐梅。南京梅。
- レンギョウ 連翹 モクセイ科の落葉低木。中国の原産。古くから観賞用に栽培。高さ約2m。枝は長く伸びて先端はやや垂れる。早春、葉に先だって鮮黄色・4弁の筒状花を開く。中国から輸入された別種のシナレンギョウもまれに栽培。欧米ではこれらの園芸品種を栽培。果実は漢方生薬の連翹で、消炎・利尿・排膿・解毒剤。イタチグサ。
- ジンチョウゲ 沈丁花 ジンチョウゲ科の常緑低木。中国原産。高さ約1m。葉は無柄革質で楕円状披針形、斑入りもある。春分前後に15、6花を球形に配列して開く。花は管状、内面は白色、外面は紫赤色または白色。香気が強く沈香・丁字に似るとしてこの名。通常は雄木で果実を結ばない。漢名、瑞香。輪丁花。
- 花木 かぼく 美しい花の咲く木。花樹。
- ふさう 相応ふ。つり合う。適合する。相当する。
- 陰樹 いんじゅ 日陰によく成長・繁殖し得る樹木。ブナ・トドマツの類。←
→陽樹 - 陽樹 ようじゅ 日射光のもとで種子が発芽し、生育する樹木。乾燥や貧栄養の土地でも成長が早い。アカメガシワ・カラスザンショウ・アカマツ・クリなど。←
→陰樹 - 暖帯林 だんたいりん 暖温帯によく発達する森林帯。熱帯林と温帯林との中間にあり、常緑広葉樹を主とした森林からなる。日本では本州西部以西に分布する照葉樹林が該当する。
- 河岸 かし (1) 河川の岸の、舟から人または荷物を揚げおろしする所。海や湖の岸にもいう。浜。川端。
- 陽炎 かげろう 春のうららかな日に、野原などにちらちらと立ちのぼる気。日射のために熱くなった空気で光が不規則に屈折されて起こるもの。いとゆう。はかないもの、ほのかなもの、あるかなきかに見えるもの、などを形容するのにも用いる。その際「蜉蝣」を意味することもある。
- ヤマザクラ 山桜。(1) 山に咲く桜。(2) バラ科の高木。関東以南の山地に自生するサクラ。葉は卵形で若葉は赤褐色。4月頃、新葉とともに白花を開き、赤紫色の小核果を結ぶ。吉野山の桜はこの種。
- カナメモチ 要黐。バラ科の常緑小高木。新葉は紅色を帯び、また落葉前も紅葉。5〜6月頃多数の小白花をつけ、秋、紅色の実が熟す。暖地に自生。庭木・生垣とする。古来扇の骨としたことによる命名ともいい、車軸・鎌の柄などにもする。アカメモチ。扇骨。
- スズカケノキ 篠懸の木。スズカケノキ科の落葉高木。普通、属の学名プラタナスで呼ばれる。高さ約10m。小アジア原産。庭園樹として栽培。葉は大きく、カエデに似、5〜7裂、葉柄の基部に小さい托葉がある。春、葉のつけ根に淡黄緑色の花を頭状につけ、晩秋、長い柄の先に球形の果実を下垂するのでこの名がある。材は器具用。街路樹には本種とアメリカスズカケノキとの雑種モミジバスズカケが多く使われる。
- 緑色素 りょくしょくそ
- 葉緑素 ようりょくそ 緑色植物・藻類の細胞に含まれている緑色色素。マグネシウムと結合したポルフィリン。大部分の植物では葉緑体の中にある。光合成色素の一つで、赤色光線を吸収して炭酸同化作用を行う。a・b・cの3種がある。クロロフィル。
- クロロフィル chlorophyll 葉緑素。
- 葉緑粒 ようりょくりゅう 葉緑体に同じ。
- 葉緑体 ようりょくたい (chloroplast) 藻類・緑色植物の、葉その他の緑色組織にある細胞小器官。色素体の一種。独自のDNAとグラナと呼ぶ内膜構造を持ち、緑色の葉緑素および黄色のカロテノイドを含有。この中で光合成が行われる。もとは独立した原核生物であったと考えられている。
- 器官 きかん (organ) 生物体に局在し、特定の生理機能をもち、形態的に独立した構造体。1種または数種の組織が一定の秩序で結合する。細胞内の小構造は細胞小器官という。
- 炭酸ガス たんさん ガス 二酸化炭素の気体の通称。
- 澱粉 でんぷん 葉緑素をもつ植物で炭酸固定により生産され、栄養貯蔵物質として、種子・根茎・塊根・球根などに含まれる炭水化物。アミロースとアミロペクチンの集合体で、無味無臭の白色粉末。植物には澱粉粒として存在し、その構造は植物の種類によって異なる。動物の栄養源として重要。
- 含水炭素 がんすい たんそ 炭水化物の旧称。
- 炭水化物 たんすい かぶつ 炭素・水素・酸素の3元素から成り、一般式C(n)H(2m)O(m)の形の分子式をもつ化合物。すなわち水素と酸素との割合が水の組成と同じ。植物では炭酸同化作用によって生産される。糖類・澱粉・セルロースなど、動植物体の構成物質・エネルギー源として重要な物質が多い。含水炭素。
- 炭素同化作用 たんそ どうかさよう (→)炭酸同化作用に同じ。
- 炭酸同化作用 たんさん どうかさよう 生物が、光のエネルギーによって、空気中から摂取した炭酸ガスと根から吸収した水分とから炭水化物をつくり出す作用。細菌には光エネルギーでなく化学エネルギーを用いて行うものがある。炭素同化作用。炭酸固定。
- 紅葉・黄葉 もみじ (上代にはモミチと清音。上代は「黄葉」、平安時代以後「紅葉」と書く例が多い) (1) 秋に、木の葉が赤や黄色に色づくこと。また、その葉。(2) (→)カエデの別称。(3) 「もみじば」の略。(4) 襲の色目。
「雑事鈔」によると、表は紅、裏は濃い蘇芳。 「雁衣鈔」では表は赤、裏は濃い赤。もみじがさね。(5) (鹿にはもみじが取り合わされるところから) 鹿の肉。(6) (関西で) 麦のふすま。もみじご。(7) 茶を濃く味よくたてること。 「紅葉」を「濃う好う」にかけたしゃれ。 - クロマツ 黒松。マツ科の常緑高木。樹皮は黒褐色、アカマツよりも、葉は太くて剛く、海岸近くに多い。樹形が良いので庭園に植える。4月頃、雌花は新しい枝の先端に、雄花は下部に生じ、球果は翌年の秋熟し、有翼の種子を飛散する。材質堅硬で、建築材料として用い、また、薪とし、樹幹から松脂を採る。雄松。男松。
- アカマツ 赤松。マツ科の常緑高木。樹皮は亀甲状にはげやすく、芽の色と共に赤褐色。山地に多い。クロマツより葉が柔らかい。材は建築用皮付丸太、薪炭用、パルプの原料。雌松。
- 砂丘 さきゅう 風のために吹き寄せられた砂のつくる小丘。海岸・大河の沿岸または砂漠地方に多く生ずる。しゃきゅう。
- 草本 そうほん (2) 植物の地上部が柔軟で木質をなさないものの総称。俗に草と称するもの。←
→木本。 - 高山植物 こうざん しょくぶつ 森林限界の上方から雪線の間の高山帯に生える植物。きびしい生育条件に適応し、形は概して矮小化し、地表を這うものもある。イワギキョウ・コマクサ・イワベンケイなど。
- 槭樹 せきじゅ/かえで 槭樹・楓。(カエルデ(蛙手)の約。葉の形が似ているからいう) (1) カエデ科の落葉高木の総称。北半球の温帯に分布。葉は多くは掌状で、初め緑色、秋に赤・黄色に紅葉するが、全く葉の裂けないもの、複葉になるもの、また紅葉しないものもある。4〜5月頃、黄緑色や暗紅色の多数の小花をつけ、後に2枚の翼を持った果実をつける。材は器具・細工物にする。日本のイタヤカエデ・イロハカエデ、北米のサトウカエデなど種類が多い。モミジ。
- ヤマモミジ 山紅葉。カエデ科の落葉高木。高さ約10m。葉は掌状に7〜9片に深裂。春、紅色の小花を開き、翼果を結ぶ。庭園樹イロハモミジの母種。
- ハウチワカエデ 羽団扇楓。本州と北海道の山地に普通のカエデの一種で、落葉高木。対生する葉は円形で直径6〜12cm、掌状に9〜11片に浅裂する。裂片には明瞭な鋸歯がある。春に葉腋から束状の花序を下垂し、暗紅色5弁の小花をつける。果実(翼果)の羽は鋭角に開く。紅葉が美しい。大きな葉を天狗の羽団扇にたとえて命名。
- 羽団扇 はうちわ 鳥の羽を用いて作ったうちわ。
- ハゼ → ハゼノキ
- ハゼノキ 黄櫨・櫨・梔。(1) ウルシ科の落葉高木。高さは約10mになる。暖地の山地に自生、秋に美しく紅葉する。5〜6月頃、葉腋に黄緑色の小花をつける。果実は灰黄色、扁円形。実から木蝋を採り、樹皮は染料となるので栽培される。ハゼ。ハジ。ハジノキ。ハジウルシ。ハゼウルシ。ヤマハゼ。漢名、野漆樹。(2) ヤマウルシの別称。
- ナナカマド 七竈。バラ科の落葉小高木。山地に生じ、高さ約10m。街路樹のほか庭木として植える。花は小形白色で、7月に群がり咲く。果実は球形で、秋に葉とともに鮮やかに赤く色づき、落葉後も残る。材は堅くて腐朽しにくく、細工物に用い、7度かまどに入れても燃えないという俗説がある。近縁種にウラジロナナカマド・タカネナナカマド・ナンキンナナカマドなどがある。
- イチョウ 鴨脚樹・銀杏・公孫樹。(イテフの仮名を慣用するのは「一葉」にあてたからで、語源的には「鴨脚」の近世中国音ヤーチャオより転訛したもの。一説に、
「銀杏」の唐音の転) (1) イチョウ科の落葉高木。中国原産とされるが自生の有無は不明。高さ約30mに達し、葉は扇形で葉柄があり、秋、黄葉する。雌雄異株。春、新葉と共に黄緑色の花を生じ、雄花は穂状、雌花に2胚珠。受粉後、精子により受精。秋、黄色の種子を結び、内に白色硬質の核がある。これを「ぎんなん」といい、食用。材は緻密で美しく加工しやすい。 - 冬芽 とうが 晩夏から秋にかけて生じ、越冬して春になって成長する芽。ふゆめ。←
→夏芽 - 年輪 ねんりん (1) (annual ring 明治以前に蘭学者は「歳輪」と訳した) 樹木の横断面に見える同心円状の輪。裸子植物および双子葉植物の樹木の幹や根で、1年間に形成される材が、夏は量も多く質が粗く(夏材)
、冬は少なくて緻密(冬材)なため、両者が交互に並んで輪状をなし、1年ごとに円輪をなす。その数で樹木の年齢を知りうる。魚類の鱗・耳石や獣の歯などにも、同様な年輪が見られる。 - 擬年輪 ぎねんりん 偽年輪。正常の年輪のほかに虫害、干害などの異変で形成層の働きが異常になるためできる年輪をいう。真の年輪と比べて秋材と春材の境がはっきりしない。仮年輪。
- クスノキ 樟・楠。(クスは「臭し」と同源か。
「楠」は南国から渡来した木の意) クスノキ科の常緑高木。関東以南の暖地、特に海岸に多い。高さ20m以上に達し、全体に芳香がある。5月頃、黄白色の小花をつけ、果実は球形で黒熟。材は堅く、樟脳および樟脳油を作る。街路樹に植栽し、建築材・船材としても有用。くす。樟脳の木。 - タイワンサワラ 台湾花柏。カマエキパリス・フォルモセンシス。ヒノキ科の常緑高木。別名タイワンヒノキ、タイワンサワラ、ベニヒ。高さは20m。
(植物レ) - サワラ 椹。ヒノキ科の常緑高木。ヒノキに酷似、幹高30mに達する。葉の裏面の白斑がV字形で、ヒノキのY字形と区別できる。花は4月に開き雌雄同株。木曾五木の一つ。材は耐水性に富み香気が少ない。桶・障子・襖の組子の材となる。ニッコウヒバ・ヒヨクヒバなど葉の美しい園芸品種がある。サワラギ。
- 紅桧 べにひ (→)タイワンヒノキの別称。
- タイワンヒノキ 台湾桧。ヒノキ科の常緑高木。台湾の山地に自生。高さ60mに達する。葉はヒノキに似るが薄い。花は単性、雌雄同株。材は樹脂に富み、心材は淡紅色。建築用・器具用。紅桧。
- 風致 ふうち 景色のおもむき。あじわい。風趣。
- 植物帯 しょくぶつたい (→)植生帯に同じ。
- 植生帯 しょくせいたい (vegetation zone) 帯状に配列する性質を用いた植生の分類。植物の生育に影響する温度と降水量が、緯度や海からの距離に沿い並行的に減少することが、群落の帯状配列をもたらす。植生の垂直分布では主に温度による相観の違いが表われ、下方から上方に丘陵帯・低山帯・山地帯・亜高山帯・高山帯のように植生帯の区分ができる。
◇参照:
*後記(工作員 日記)
書きかえメモ。
河《かわ》 → 川
等《とう》 → など
海嘯 → 津波
伐《き》る → 切る
畠《はた》 → 畑《はた》
紅葉《もみじ》 → 紅葉《こうよう》
小野忠博『縄文美術館』
縄文土器のあの過剰なビラビラは、ラジエーターではないだろうかという説を思いつく。
また、素焼きの
多数の縄文土器の写真を見ていて、あのビラビラが何かに似ていると思っていたら、スーパーの精肉コーナーにあるモツ、内臓表面のヒダヒダとそっくりなことに気がついた。
ただでさえ多孔質の素焼の表面。そこにヒダヒダを装飾することで外気と接触する表面積を増やしている。
ラジエーターとするならば、第一に考えられるのは飲料水。それから揮発性の高いアルコール類。気化熱と毛細管現象をセットにして製塩という用途もありうるだろうか。
*次週予告
第五巻 第四四号
森林と樹木と動物(二)本多静六
第五巻 第四四号は、
二〇一三年五月二五日(土)発行予定です。
月末最終号:無料
T-Time マガジン 週刊ミルクティー* 第五巻 第四三号
森林と樹木と動物(一)本多静六
発行:二〇一三年五月一八日(土)
編集:しだひろし / PoorBook G3'99
http://www33.atwiki.jp/asterisk99/
出版:*99 出版
〒994-0024 山形県天童市鎌田2丁目
アパートメント山口A−202
販売:DL-MARKET
※ T-Timeは(株)ボイジャーの商標・製品です。
- T-Time マガジン 週刊ミルクティー* *99 出版
- バックナンバー
※ おわびと訂正
長らく、創刊号と第一巻第六号の url 記述が誤っていたことに気がつきませんでした。アクセスを試みてくださったみなさま、申しわけありませんでした。(しょぼーん)/2012.3.2 しだ
- 第一巻
- 創刊号 竹取物語 和田万吉
- 第二号 竹取物語小論 島津久基(210円)
- 第三号 竹取物語の再検討(一)橘 純一(210円)
- 第四号 竹取物語の再検討(二)橘 純一(210円)
「絵合」 『源氏物語』より 紫式部・与謝野晶子(訳) - 第五号
『国文学の新考察』より 島津久基(210円)- 昔物語と歌物語 / 古代・中世の「作り物語」/
- 平安朝文学の弾力 / 散逸物語三つ
- 第六号 特集 コロボックル考 石器時代総論要領 / コロボックル北海道に住みしなるべし 坪井正五郎 マナイタのばけた話 小熊秀雄 親しく見聞したアイヌの生活 / 風に乗って来るコロポックル 宮本百合子
- 第七号 コロボックル風俗考(一〜三)坪井正五郎(210円)
- シペ物語 / カナメの跡 工藤梅次郎
- 第八号 コロボックル風俗考(四〜六)坪井正五郎(210円)
- 第九号 コロボックル風俗考(七〜十)坪井正五郎(210円)
- 第十号 特集 コロボックル考 喜田貞吉
- 日本太古の民族について / 日本民族概論 / 土蜘蛛種族論につきて
- 第十一号 特集 コロボックル考 喜田貞吉
- 東北民族研究序論 / 猪名部と佐伯部 / 吉野の国巣と国樔部
- 第十二号 日高見国の研究 喜田貞吉
- 第十三号 夷俘・俘囚の考 喜田貞吉
- 第十四号 東人考 喜田貞吉
- 第十五号 奥州における御館藤原氏 喜田貞吉
- 第十六号 考古学と古代史 喜田貞吉
- 第十七号 特集 考古学 喜田貞吉
- 遺物・遺蹟と歴史研究 / 日本における史前時代の歴史研究について / 奥羽北部の石器時代文化における古代シナ文化の影響について
- 第十八号 特集 考古学 喜田貞吉
- 日本石器時代の終末期について /「あばた」も「えくぼ」、
「えくぼ」も「あばた」― ―日本石器時代終末期― ― - 第十九号 特集 考古学 喜田貞吉
- 本邦における一種の古代文明 ―
―銅鐸に関する管見― ― / - 銅鐸民族研究の一断片
- 第二〇号 特集 考古学 喜田貞吉
「鐵」の字の古体と古代の文化 / 石上神宮の神宝七枝刀 / - 八坂瓊之曲玉考
- 第二一号 博物館(一)浜田青陵
- 第二二号 博物館(二)浜田青陵
- 第二三号 博物館(三)浜田青陵
- 第二四号 博物館(四)浜田青陵
- 第二五号 博物館(五)浜田青陵
- 第二六号 墨子(一)幸田露伴
- 第二七号 墨子(二)幸田露伴
- 第二八号 墨子(三)幸田露伴
- 第二九号 道教について(一)幸田露伴
- 第三〇号 道教について(二)幸田露伴
- 第三一号 道教について(三)幸田露伴
- 第三二号 光をかかぐる人々(一)徳永 直
- 第三三号 光をかかぐる人々(二)徳永 直
- 第三四号 東洋人の発明 桑原隲蔵
- 第三五号 堤中納言物語(一)池田亀鑑(訳)
- 第三六号 堤中納言物語(二)池田亀鑑(訳)
- 第三七号 堤中納言物語(三)池田亀鑑(訳)
- 第三八号 歌の話(一)折口信夫
- 第三九号 歌の話(二)折口信夫
- 第四〇号 歌の話(三)
・花の話 折口信夫- 第四一号 枕詞と序詞(一)福井久蔵
- 第四二号 枕詞と序詞(二)福井久蔵
- 第四三号 本朝変態葬礼史 / 死体と民俗 中山太郎
- 第四四号 特集 おっぱい接吻
- 乳房の室 / 女の情欲を笑う 小熊秀雄
- 女体 芥川龍之介
- 接吻 / 接吻の後 北原白秋
- 接吻 斎藤茂吉
- 第四五号 幕末志士の歌 森 繁夫
- 第四六号 特集 フィクション・サムライ 愛国歌小観 / 愛国百人一首に関連して / 愛国百人一首評釈 斎藤茂吉
- 第四七号
「侍」字訓義考 / 多賀祢考 安藤正次- 第四八号 幣束から旗さし物へ / ゴロツキの話 折口信夫
- 第四九号 平将門 幸田露伴
- 第五〇号 光をかかぐる人々(三)徳永 直
- 第五一号 光をかかぐる人々(四)徳永 直
- 第五二号
「印刷文化」について 徳永 直- 書籍の風俗 恩地孝四郎
- 第二巻
- 第一号 奇巌城(一)モーリス・ルブラン
- 第二号 奇巌城(二)モーリス・ルブラン
- 第三号 美し姫と怪獣 / 長ぐつをはいた猫 楠山正雄(訳)
- 第四号 毒と迷信 / 若水の話 / 麻薬・自殺・宗教 小酒井不木 / 折口信夫 / 坂口安吾
- 第五号 空襲警報 / 水の女 / 支流 海野十三 / 折口信夫 / 斎藤茂吉
- 第六号 新羅人の武士的精神について 池内 宏
- 第七号 新羅の花郎について 池内 宏
- 第八号 震災日誌 / 震災後記 喜田貞吉
- 第九号 セロ弾きのゴーシュ / なめとこ山の熊 宮沢賢治
- 第一〇号 風の又三郎 宮沢賢治
- 第一一号 能久親王事跡(一)森 林太郎
- 第一二号 能久親王事跡(二)森 林太郎
- 第一三号 能久親王事跡(三)森 林太郎
- 第一四号 能久親王事跡(四)森 林太郎
- 第一五号 能久親王事跡(五)森 林太郎
- 第一六号 能久親王事跡(六)森 林太郎
- 第一七号 赤毛連盟 コナン・ドイル
- 第一八号 ボヘミアの醜聞 コナン・ドイル
- 第一九号 グロリア・スコット号 コナン・ドイル
- 第二〇号 暗号舞踏人の謎 コナン・ドイル
- 第二一号 蝦夷とコロボックルとの異同を論ず 喜田貞吉
- 第二二号 コロポックル説の誤謬を論ず 上・下 河野常吉
- 第二三号 慶長年間の朝日連峰通路について 佐藤栄太
- 第二四号 まれびとの歴史 /「とこよ」と「まれびと」と 折口信夫
- 第二五号 払田柵跡について二、三の考察 / 山形県本楯発見の柵跡について 喜田貞吉
- 第二六号 日本天変地異記 田中貢太郎
- 第二七号 種山ヶ原 / イギリス海岸 宮沢賢治
- 第二八号 翁の発生 / 鬼の話 折口信夫
- 第二九号 生物の歴史(一)石川千代松
- 第三〇号 生物の歴史(二)石川千代松
- 第三一号 生物の歴史(三)石川千代松
- 第三二号 生物の歴史(四)石川千代松
- 第三三号 特集 ひなまつり
- 雛 芥川龍之介 / 雛がたり 泉鏡花 / ひなまつりの話 折口信夫
- 第三四号 特集 ひなまつり
- 人形の話 / 偶人信仰の民俗化並びに伝説化せる道 折口信夫
- 第三五号 右大臣実朝(一)太宰 治
- 第三六号 右大臣実朝(二)太宰 治
- 第三七号 右大臣実朝(三)太宰 治
- 第三八号 清河八郎(一)大川周明
- 第三九号 清河八郎(二)大川周明
- 第四〇号 清河八郎(三)大川周明
- 第四一号 清河八郎(四)大川周明
- 第四二号 清河八郎(五)大川周明
- 第四三号 清河八郎(六)大川周明
- 第四四号 道鏡皇胤論について 喜田貞吉
- 第四五号 火葬と大蔵 / 人身御供と人柱 喜田貞吉
- 第四六号 手長と足長 / くぐつ名義考 喜田貞吉
- 第四七号
「日本民族」とは何ぞや / 本州における蝦夷の末路 喜田貞吉- 第四八号 若草物語(一)L.M. オルコット
- 第四九号 若草物語(二)L.M. オルコット
- 第五〇号 若草物語(三)L.M. オルコット
- 第五一号 若草物語(四)L.M. オルコット
- 第五二号 若草物語(五)L.M. オルコット
- 第五三号 二人の女歌人 / 東北の家 片山広子
- 第三巻
- 第一号 星と空の話(一)山本一清
- 第二号 星と空の話(二)山本一清
- 第三号 星と空の話(三)山本一清
- 第四号 獅子舞雑考 / 穀神としての牛に関する民俗 中山太郎
- 第五号 鹿踊りのはじまり 宮沢賢治 / 奥羽地方のシシ踊りと鹿供養 喜田貞吉
- 第六号 魏志倭人伝 / 後漢書倭伝 / 宋書倭国伝 / 隋書倭国伝
- 第七号 卑弥呼考(一)内藤湖南
- 第八号 卑弥呼考(二)内藤湖南
- 第九号 卑弥呼考(三)内藤湖南
- 第一〇号 最古日本の女性生活の根底 / 稲むらの陰にて 折口信夫
- 第一一号 瀬戸内海の潮と潮流(他三編)寺田寅彦
- 瀬戸内海の潮と潮流 / コーヒー哲学序説 /
- 神話と地球物理学 / ウジの効用
- 第一二号 日本人の自然観 / 天文と俳句 寺田寅彦
- 第一三号 倭女王卑弥呼考(一)白鳥庫吉
- 第一四号 倭女王卑弥呼考(二)白鳥庫吉
- 第一五号 倭奴国および邪馬台国に関する誤解 他 喜田貞吉
- 倭奴国と倭面土国および倭国とについて稲葉君の反問に答う /
- 倭奴国および邪馬台国に関する誤解
- 第一六号 初雪 モーパッサン 秋田 滋(訳)
- 第一七号 高山の雪 小島烏水
- 第一八号 光をかかぐる人々 続『世界文化』連載分(一)徳永 直
- 第一九号 光をかかぐる人々 続『世界文化』連載分(二)徳永 直
- 第二〇号 光をかかぐる人々 続『世界文化』連載分(三)徳永 直
- 第二一号 光をかかぐる人々 続『世界文化』連載分(四)徳永 直
- 第二二号 光をかかぐる人々 続『世界文化』連載分(五)徳永 直
- 第二三号 銀河鉄道の夜(一)宮沢賢治
- 第二四号 銀河鉄道の夜(二)宮沢賢治
- 第二五号 ドングリと山猫 / 雪渡り 宮沢賢治
- 第二六号 光をかかぐる人々 続『世界文化』連載分(六)徳永 直
- 第二七号 特集 黒川能・春日若宮御祭 折口信夫
- 黒川能・観点の置き所 / 村で見た黒川能
- 能舞台の解説 / 春日若宮御祭の研究
- 第二八号 面とペルソナ / 人物埴輪の眼 他 和辻哲郎
- 面とペルソナ / 文楽座の人形芝居
- 能面の様式 / 人物埴輪の眼
- 第二九号 火山の話 今村明恒
- 第三〇号 現代語訳『古事記』
(一)上巻(前編) 武田祐吉(訳)- 第三一号 現代語訳『古事記』
(二)上巻(後編) 武田祐吉(訳)- 第三二号 現代語訳『古事記』
(三)中巻(前編) 武田祐吉(訳)- 第三三号 現代語訳『古事記』
(四)中巻(後編) 武田祐吉(訳)- 第三四号 山椒大夫 森 鴎外
- 第三五号 地震の話(一)今村明恒
- 第三六号 地震の話(二)今村明恒
- 第三七号 津波と人間 / 天災と国防 / 災難雑考 寺田寅彦
- 第三八号 春雪の出羽路の三日 喜田貞吉
- 第三九号 キュリー夫人 / はるかな道(他)宮本百合子
- 第四〇号 大正十二年九月一日よりの東京・横浜間 大震火災についての記録 / 私の覚え書 宮本百合子
- 第四一号 グスコーブドリの伝記 宮沢賢治
- 第四二号 ラジウムの雁 / シグナルとシグナレス(他)宮沢賢治
- 第四三号 智恵子抄(一)高村光太郎
- 第四四号 智恵子抄(二)高村光太郎
- 第四五号 ヴェスヴィオ山 / 日本大地震(他)斎藤茂吉
- 第四六号 上代肉食考 / 青屋考 喜田貞吉
- 第四七号 地震雑感 / 静岡地震被害見学記(他)寺田寅彦
- 第四八号 自然現象の予報 / 火山の名について 寺田寅彦
- 第四九号 地震の国(一)今村明恒
- 第五〇号 地震の国(二)今村明恒
- 第五一号 現代語訳『古事記』
(五)下巻(前編) 武田祐吉(訳)- 第五二号 現代語訳『古事記』
(六)下巻(後編) 武田祐吉(訳)
- 第四巻
- 第一号 日本昔話集 沖縄編(一)伊波普猷・前川千帆(絵)
- 第二号 日本昔話集 沖縄編(二)伊波普猷
- 第三号 アインシュタイン(一)寺田寅彦
- 物質とエネルギー / 科学上における権威の価値と弊害 /
- アインシュタインの教育観
- 第四号 アインシュタイン(二)寺田寅彦
- アインシュタイン / 相対性原理側面観
- 第五号 作家のみた科学者の文学的活動 / 科学の常識のため 宮本百合子
- 第六号 地震の国(三)今村明恒
- 第七号 地震の国(四)今村明恒
- 第八号 地震の国(五)今村明恒
- 第九号 地震の国(六)今村明恒
- 第一〇号 土神と狐 / フランドン農学校の豚 宮沢賢治
- 第一一号 地震学の角度から見た城輪柵趾 今村明恒
- 第一二号 庄内と日高見(一)喜田貞吉
- 第一三号 庄内と日高見(二)喜田貞吉
- 第一四号 庄内と日高見(三)喜田貞吉
- 第一五号 私は海をだきしめてゐたい / 安吾巷談・ストリップ罵倒 坂口安吾
- 第一六号 三筋町界隈 / 孫 斎藤茂吉
- 第一七号 原子力の管理(他)仁科芳雄
- 原子力の管理 / 日本再建と科学 / 国民の人格向上と科学技術 /
- ユネスコと科学
- 第一八号 J・J・トムソン伝(他)長岡半太郎
- J・J・トムソン伝 / アインシュタイン博士のこと
- 第一九号 原子核探求の思い出(他)長岡半太郎
- 総合研究の必要 / 基礎研究とその応用 / 原子核探求の思い出
- 第二〇号 蒲生氏郷(一)幸田露伴
- 第二一号 蒲生氏郷(二)幸田露伴
- 第二二号 蒲生氏郷(三)幸田露伴
- 第二三号 科学の不思議(一)アンリ・ファーブル
- 第二四号 科学の不思議(二)アンリ・ファーブル
- 第二五号 ラザフォード卿を憶う(他)長岡半太郎
- ラザフォード卿を憶う / ノーベル小伝とノーベル賞 / 湯川博士の受賞を祝す
- 第二六号 追遠記 / わたしの子ども時分 伊波普猷
- 第二七号 ユタの歴史的研究 伊波普猷
- 第二八号 科学の不思議(三)アンリ・ファーブル
- 第二九号 南島の黥 / 琉球女人の被服 伊波普猷
- 第三〇号
『古事記』解説 / 上代人の民族信仰 武田祐吉・宇野円空 - 第三一号 科学の不思議(四)アンリ・ファーブル
- 第三二号 科学の不思議(五)アンリ・ファーブル
- 第三三号 厄年と etc. / 断水の日 / 塵埃と光 寺田寅彦
- 第三四号 石油ランプ / 流言蜚語 / 時事雑感 寺田寅彦
- 第三五号 火事教育 / 函館の大火について 寺田寅彦
- 第三六号 台風雑俎 / 震災日記より 寺田寅彦
- 第三七号 火事とポチ / 水害雑録 有島武郎・伊藤左千夫
- 第三八号 特集・安達が原の黒塚 楠山正雄・喜田貞吉・中山太郎
- 第三九号 大地震調査日記(一)今村明恒
- 第四〇号 大地震調査日記(二)今村明恒
- 第四一号 大地震調査日記(続)今村明恒
- 第四二号 科学の不思議(六)アンリ・ファーブル
- 第四三号 科学の不思議(七)アンリ・ファーブル
- 第四四号 震災の記 / 指輪一つ 岡本綺堂
- 第四五号 仙台五色筆 / ランス紀行 岡本綺堂
- 第四六号 東洋歴史物語(一)藤田豊八
- 第四七号 東洋歴史物語(二)藤田豊八
- 第四八号 東洋歴史物語(三)藤田豊八
- 第四九号 東洋歴史物語(四)藤田豊八
- 第五〇号 東洋歴史物語(五)藤田豊八
- 第五一号 科学の不思議(八)アンリ・ファーブル
- 第五二号 科学の不思議(九)アンリ・ファーブル
- 第五巻
- 第一号 校註『古事記』
(一) 武田祐吉- 第二号 校註『古事記』
(二) 武田祐吉- 第三号 校註『古事記』
(三) 武田祐吉- 第四号 兜 / 島原の夢 / 昔の小学生より / 三崎町の原 岡本綺堂
- 第五号 新旧東京雑題 / 人形の趣味(他)岡本綺堂
- 第六号 大震火災記 鈴木三重吉
- 第七号 校註『古事記』
(四) 武田祐吉- 第八号 校註『古事記』
(五) 武田祐吉- 第九号 校註『古事記』
(六) 武田祐吉- 第一〇号 校註『古事記』
(七) 武田祐吉- 第一一号 大正十二年九月一日の大震に際して(他)芥川龍之介
- オウム―
―大震覚え書きの一つ― ― - 第一二号 日本歴史物語〈上〉
(一) 喜田貞吉- 第一三号 日本歴史物語〈上〉
(二) 喜田貞吉- 第一四号 日本歴史物語〈上〉
(三) 喜田貞吉- 第一五号 日本歴史物語〈上〉
(四) 喜田貞吉- 第一六号 校註『古事記』
(八) 武田祐吉- 第一七号 校註『古事記』
(九) 武田祐吉- 第一八号 校註『古事記』
(一〇) 武田祐吉- 第一九号 校註『古事記』
(一一) 武田祐吉- 語句索引 / 歌謡各句索引
- 第二〇号 日本歴史物語〈上〉
(五) 喜田貞吉- 第二一号 日本歴史物語〈上〉
(六) 喜田貞吉- 第二二号 日本歴史物語〈上〉索引 喜田貞吉
- 語句索引 / 人名索引 / 地名一覧
- 第二三号 クリスマスの贈り物/街の子/少年・春 竹久夢二
- 第二四号 風立ちぬ(一)堀 辰雄
- 第二五号 風立ちぬ(二)堀 辰雄
- 第二六号 風立ちぬ(三)堀 辰雄
- 第二七号 山の科学・山と川(一)今井半次郎
- 第二八号 山の科学・山と川(二)今井半次郎
- 第二九号 山の科学・山と川(三)今井半次郎
- 第三〇号 菜穂子(一)堀 辰雄
- 第三一号 菜穂子(二)堀 辰雄
- 第三二号 菜穂子(三)堀 辰雄
- 第三三号 菜穂子(四)堀 辰雄
- 第三四号 菜穂子(五)堀 辰雄
- 第三五号 山の科学・湖と沼(一)田中阿歌麿
- 第三六号 山の科学・湖と沼(二)田中阿歌麿
- 第三七号 恐怖について / 寺田先生と僕(他)海野十三
- 第五巻 第三八号 電気物語(一)石原 純
- 緒言
- 一、電気および磁気に関する古代の知識
- 二、電気学および磁気学研究の曙光
- 三、電気に関する最初の仮説
- 四、電気の重要な基本現象
- 五、電池の発明
- 今日の世の中は「電気の世界」であるといってもよいほどに、われわれは日常の生活で電気を取りあつかい、始終これに接触するようになっている。誰でも電灯のスイッチをひねらないものはないだろうし、電話器を手に取らないものもまれである。家の中や往来でラジオの発声を聞くのも普通であるし、電車の走ることなどはもう、どんな子どもでも不思議がらない。大きなビルディングへ行くと、どこでもエレベーターがわれわれを運んでくれるし、電熱を利用した暖炉や煮沸器などもだんだんおこなわれてくる。電気はまったくわれわれ人間にとって便利な必需品になってしまった。だが、電気がどうしてこんな作用を持つのであろうか、電気とはそもそも何であるか、また、どうしてこれらの応用が発明されるようになったか、そういう疑問に対して一般の人々はまだまだそれほど明瞭には答えることができないであろう。わたしはここで、電気の性質についてできるだけわかりやすく物語ってみたいと思う。電気のいっさいの取りあつかいを学者や技術者だけに任せきりにした時代はすでに過ぎ去っているので、われわれの家庭の中にまで電気器械が入りこんでくるようになると、誰でもこれに対するひととおりの知識をそなえて、少しぐらいの故障は自分でなおしたり、漏電などの災害に対する予防にも注意することが必要になるのである。また、すでに電気について学んだ人々にしても、その知識をいっそう正確にして自然の不思議な本質についてじゅうぶんの理解を得るようにすることは、はなはだ望ましいしだいである。この物語がこれらの意味でなんらかの役に立てばさいわいであるとわたしは思っている。
( 「緒言」より)
- 第五巻 第三九号 電気物語(二)石原 純
- 六、電流の法則
- 七、電流の化学作用
- 八、電流による熱と光、熱電流
- 九、電流の磁気作用(一)
- 一〇、電流の磁気作用(二)
- 電気分解の現象は、最初ドイツのグロートゥス(一八〇五年)によって、ちょうど磁石の極が鉄に力をおよぼすと同様に、分解せられる各成分が両極から引力および斥力を受けるためであると解せられ、また、イギリスのハンフリー・デヴィーによって同様の解釈があたえられたが、成分がなにゆえに電気力に働かれるかについてじゅうぶん明らかでなかった。ところが一八三三年にいたってファラデーがはじめて、溶液内では電解質の分子成分が最初から解離して存在しており、すなわち、おのおの陽および陰電気を有する二種のイオンを形づくっていることを仮定し、これらが電流の通過にともなう電位差のためにそれぞれ陰極および陽極に運ばれるのであると説明してから、今日までこのイオン解離説が信ぜられている。
(略) - 電気分解は種々の実用に応用せられる。硫酸銅・硝酸銀・塩化金などの溶液を分解すると、それぞれ銅・銀・金などの金属が陰極に集まるから、陰極導体の表面はこれらの金属でメッキせられる。このばあいに陽極としてはメッキする金属の板をもちいて溶液から費消せられる金属をおぎなうようにする。また電鋳術〔電気鋳造〕ではロウや石膏で木板または彫刻などの型を取り、その表面に石墨を塗って導体としたものを陰極とし、電気メッキと同様にしてその表面に銅を厚く付着させ、電気銅版や銅像などをつくる。さらに電気冶金としては、金属化合物の溶液から電気分解によって金属を陰極に析出させ、これを精製する目的にもちいられ、またこの方法で種々の物質の純粋結晶をつくることもできる。
( 「七、電流の化学作用」より)
- 第五巻 第四〇号 電気物語(三)石原 純
- 一一、磁気および電気の場、地球磁気
- 一二、媒質論の発展
- 一三、感応電流
- 一四、電流の自己感応および交流
- 一五、放電
- 一六、電気振動、電波
- 一七、真空放電、陰極線
- 一八、陽放射線
- ライデン瓶の放電やそのほかの火花放電を肉眼で見ると、一瞬時のあいだしか続かないで、その短い時間に電気がひと飛びに中和してしまうように思われるけれども、これを非常に早く回転する回転鏡に映してみると、両極のあいだに多くの往復振動をなして漸次に減衰するものであることがわかる。
- この事実は、一八四二年にアメリカのジョセフ・ヘンリーがはじめて鋼鉄針の不規則な磁化によってあきらかにしたのであり、その後、一八五三年イギリスのケルビン卿〔ウィリアム・トムソン〕によって理論的に研究せられ、一八五八年ドイツのフェツ・ダーセンによって回転鏡による実験が工夫せられたのであった。これはちょうど、振子の球を鉛直からはずして離すばあいに直接に静止の位置に達することなく、かえって数回の往復振動をくり返して漸次に止まるのとまったく同様の現象であり、振子の球と等しく電気の運動に対しても一種の惰性の存在するためであることが確かめられる。電流の自己感応もまた、かような惰性のためにおこることはすでに述べたところであるが、交流を断絶したさいに電流が同様の減衰振動をなして後に〇(ゼロ)に達することも実験的に示される。
( 「一六、電気振動、電波」より)
- 第五巻 第四一号 電気物語(四)石原 純
- 一九、X線および放射能
- 二〇、光電気効果、リチャードソン効果
- 二一、電気素量、電子の性質
- 二二、物質の電子論およびその発展
- 二三、電子の波動性
- 二四、宇宙線
- 一九〇二年に、ラザフォードおよびソッディーはこれらの事実にもとづいて、放射性物質の変脱理論を提出し、物質元素に関する従来の化学上の見解に対してまったく新しい変革をあたえた。すなわち放射性物質の原子は、放射線を放出するとともに異なった原子に崩壊変脱してゆくものであるというのである。この理論は実際に、かような変脱によって生成せられてゆく多くの物質が実験的に確定せられ、その原子量や化学的性質や光のスペクトルなどがあきらかにせられるにしたがって漸次、動かすことのできないものとなった。今日われわれは変脱系列として、ウラニウム・ラジウム系列、トリウム系列、アクチニウム系列の三つを知り、それらの中にそれぞれ十数個の元素を見い出すにいたった。そして変脱の最後において、これらの系列のいずれもが鉛を生ずることは一つの注目すべき事実である。
( 「一九、X線および放射能」より)
- 第五巻 第四二号 電気物語(五)総索引 石原 純
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