山 の科学 ・山 と川 (一)
理学博士 一、山の生まれるまで
山の力 と人の力
しかし、われわれは
日本は
こういうふうに、山は、その
同時にいっぽうでは、山はその
地球 の誕生
山というものは、
地球ができあがった
ともかく、いまお
しかし、地球の
山のできたわけ
(一)地殻 のしわ
こういうわけで(二)しわの山
こうしてできた以上のごとく、
かく、しわの山は
しかし、注意を
地球 の表面
(一)水の世界 と陸 の世界
以上でほぼ、地球のすると、すぐに
ここで、ちょっと注意しておきたいことは、その大陸と
(二)桑滄 の変
こう考えてくると、海とですから、この
(三)陸地 の表面 の形
人間の顔にも
それでは、
(四)平原
世界で有名なエジプトのナイル
平原には
(五)高原
まわりの土地よりずっと高くて、その表面がだいたい高原は、大きな高い
高原には、海の底に
日本の
(六)盆地
盆地は
日本は
(七)段丘
みなさんは、海や川に行かれたときに、海成段丘はカラフトの
段丘には、もう一つ
(八)斜面 と崖
ですから、陸地表面の
しかし、なおよく考えてみると、土地の
ですから、
二、山のいろいろとその形
山のいろいろ
いま、お
「
山岳のいちばん高い
山はその
(一)生まれ出た山
生まれ出た山というのは、ちょうど、みなさんが(イ)
(ロ)
日本は
(ニ)しわの山。 これはすでに前にお
日本で、そのシエラネバダ山脈によく
以上で、だいたい、生まれ出た山のお話をしました。つぎにはこわれ残った山のお話です。
(二)こわれ残った山
もともと日本には、こわれ残りの山だとはっきりいえる大きな山はありませんが、
しかし、しわの山でも
(三)山の高さ
世界中でいちばんのなおおもしろいことは、世界最高の山脈はほとんどみんなインドの
ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、
日本で
そこで、今度は
ですから、地球上の最低のところと最高のところとのへだたり、つまりこの
それゆえ、けっきょく
(四)山の形をあらわす図面
(イ)
(ロ)ケバ
(ハ)
(ニ)ボカシ
(つづく)
底本:
1982(昭和57)年6月20日発行
親本:
1927(昭和2)年10月3日発行
入力:しだひろし
校正:
xxxx年xx月xx日作成
青空文庫作成ファイル:
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山の科學・山と河(一)
理學博士 今井半次郎-------------------------------------------------------
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)山《やま》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)明治《めいじ》四三|年《ねん》一一|月《がつ》
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(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)人々《ひと/″\》
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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一、山《やま》の生《うま》れるまで
山《やま》の力《ちから》と人《ひと》の力《ちから》
開《ひら》けない昔《むかし》の人《ひと》たちの多《おほ》くは、山《やま》といふものを、すっかり神祕《しんぴ》なものと考《かんが》へて、たゞ一途《いちず》におそれ崇《あが》めてゐました。それ等《ら》の未開《みかい》の人々《ひと/″\》はたかい山《やま》の峯《みね》が、雲《くも》をついて聳《そび》え立《た》つてゐる、かう/″\しいさまを仰《あふ》ぎ見《み》たり、山上《さんじよう》の密林《みつりん》などにまよひ入《い》つたりして、しんしんとした、幽玄《ゆうげん》な感《かん》じに打《う》たれるたびに、山《やま》そのものに、生《い》きた靈《れい》と偉大《いだい》な神威《しんい》があるような迷信《めいしん》がおこり、つひにはその山靈《さんれい》に向《むか》つて、じぶん達《たち》の罪《つみ》がきえることや未來《みらい》の加護《かご》をも祈《いの》つたりしたものです。その後《のち》だん/\と文化《ぶんか》が開《ひら》けて來《き》てからも、たかい山《やま》の清淨《せいじよう》な境地《きようち》を貴《たつと》んで、たいていの山《やま》の上《うへ》に社《やしろ》や寺《てら》をたてました。今《いま》でも御嶽講《おんたけこう》だの三峯講《みつみねこう》、秋葉講《あきはこう》などといふ信者《しんじや》の團體《だんたい》ができてゐて、山《やま》の上《うへ》の、それ/″\の社《やしろ》やお宮《みや》へ祈願《きがん》をしに登《のぼ》つてゐます。ともかく、昔《むかし》の人《ひと》は山《やま》といふものを單《たん》に宗教的《しゆうきようてき》に、畏《おそ》れ敬《うやま》つてゐたものです。
しかし、われ/\は最早《もはや》、山《やま》にたいしてそんな單純《たんじゆん》な態度《たいど》をとつて生《い》きてゐるわけにはいきません。山《やま》はそれこそさま/″\の意味《いみ》でわれ/\の生活《せいかつ》には密接《みつせつ》な關係《かんけい》があるもので後《のち》に森林《しんりん》の場合《ばあひ》もお話《はなし》があるとほり、十分《じゆうぶん》山《やま》を愛護《あいご》すべきであると同時《どうじ》に、一方《いつぽう》、あくまで山《やま》を研究《けんきゆう》し、征服《せいふく》して、われ/\は都合《つごう》よく利用《りよう》することに努《つと》めなければならないのです。
日本《につぽん》は細長《ほそなが》く南北《なんぼく》につらなつた島國《しまぐに》ですが、同《おな》じ島國《しまぐに》のイギリスなどに比《くら》べると、土地《とち》の面積《めんせき》のわりに、非常《ひじよう》に山《やま》の多《おほ》い國《くに》です。その山々《やま/\》はたいてい、島《しま》のまん中《なか》の脊骨《せぼね》にあたるところに多《おほ》く集《あつま》つて、高《たか》い峯《みね》のつゞきを聳《そび》えさせてゐます。ですから、本州《ほんしゆう》などでいひますと、そのために土地《とち》が縱《たて》二《ふた》つに分《わか》れ、太平洋《たいへいよう》に向《むか》つた東側《ひがしがは》と、日本海《につぽんかい》に向《むか》つた西側《にしがは》との斜面《しやめん》になり、そして、この嶺《みね》つゞきを界《さかひ》して、河《かは》は兩側《りようがは》に向《むか》つて流《なが》れ下《くだ》つてゐます。かういふ嶺《みね》の、一《いち》ばんたかい續《つゞ》きを『分水界《ぶんすいかい》』又《また》は『分水嶺《ぶんすいれい》』といひますが、かういふ山脈《さんみやく》は、風《かぜ》をさへぎつたり、雲《くも》をせきとめたりしますから、本州《ほんしゆう》でも東側《ひがしがは》と西側《にしがは》とでは氣候《きこう》がひどくちがひます。われ/\は、その東側《ひがしがは》の部分《ぶぶん》を表日本《おもてにつぽん》、一方《いつぽう》を裏日本《うらにつぽん》とよんでゐます。裏日本《うらにつぽん》が表日本《おもてにつぽん》とちがつて、冬《ふゆ》になると、いつも大雪《おほゆき》になやまされてゐることは、どなたもご存《ぞん》じでせう。インドのヒマラヤ山《さん》の北側《きたがは》にある大《おほ》きなゴビの沙漠《さばく》も、あの山脈《さんみやく》のために雨雲《あまぐも》がさへぎられて、雨《あめ》がふらないからできたのです。
かういふ風《ふう》に、山《やま》は、その地方《ちほう》々々《/\》の氣候《きこう》を作《つく》る上《うへ》に非常《ひじよう》な影響《えいきよう》をもつものです。つぎにわれ/\の文化《ぶんか》が進《すゝ》めば進《すゝ》むほど、交通《こうつう》や物《もの》の運搬《うんぱん》がはげしくなつて來《き》ます。それについては山《やま》は大變《たいへん》な邪魔《じやま》をするもので、高《たか》く、けはしいと、なほ妨害《ぼうがい》が大《おほ》きいわけです。そのため、昔《むかし》は、山《やま》がしぜんに地方《ちほう》の境界線《きようかいせん》になり、互《たがひ》の交通《こうつう》が阻《はゞ》まれるので、地方《ちほう》々々《/\》の言語《げんご》や風俗《ふうぞく》や人情《にんじよう》までが、ちがつてゐたりしました。山《やま》が作《つく》り出《だ》す氣候《きこう》については、これはわれ/\人間《にんげん》の力《ちから》でどうすることも出來《でき》ないのですが、今《いま》いつた交通《こうつう》の上《うへ》からは、われわれは、その邪魔《じやま》ものゝ山《やま》を、どん/\切《き》り開《ひら》いて道《みち》をつけたり、とんねる[#「とんねる」に傍点]をうがつて鐵道《てつどう》を通《とほ》すといふ風《ふう》に、出來《でき》るだけ山《やま》を征服《せいふく》しなければなりません。つまり、山《やま》の力《ちから》にうちかつて、自由《じゆう》に支配《しはい》していくことが必要《ひつよう》なのです。
同時《どうじ》に一方《いつぽう》では、山《やま》はその森林《しんりん》に雨水《あまみづ》を保《たも》つてわれ/\のためにだいじな河《かは》の水源《すいげん》を養《やしな》つてくれ、木《き》を茂《しげ》らせて薪炭《しんたん》や材木《ざいもく》を供給《きようきゆう》してくれ、いろ/\の有用《ゆうよう》な鑛物《こうぶつ》などをも持《も》つてゐてくれ、われ/\の食用《しよくよう》やその他《た》に利用《りよう》できる鳥獸《ちようじゆう》をも飼《か》つてくれてゐます。ですから、われ/\は、十分《じゆうぶん》に山《やま》について研究《けんきゆう》をつゞけて、われ/\の生活《せいかつ》の安定《あんてい》の一面《いちめん》を計《はか》らなければなりません。恐《おそ》ろしい地震《じしん》の原因《げんいん》や火山《かざん》の爆發《ばくはつ》のわけを知《し》るためにも、その手《て》はじめとしては、山《やま》にある一《ひと》つ/\の石《いし》ころをとり調《しら》べることからかゝるのです。なんでもないつまらない山《やま》の草木《そうもく》でも、それを研究《けんきゆう》した結果《けつか》、案外《あんがい》に、われ/\の病氣《びようき》を直《なほ》す新《あたら》しい藥《くすり》を發見《はつけん》する場合《ばあひ》もあり、今日《こんにち》までに、有用《ゆうよう》な金《きん》や銀《ぎん》や銅《どう》、鐵《てつ》、石炭《せきたん》などの鑛物《こうぶつ》を見《み》つけ出《だ》したのも、みんなさういふ注意《ちゆうい》ぶかい研究《けんきゆう》から來《き》たのです。
近來《きんらい》では、登山《とざん》といふことが盛《さか》んになり、それによつて體育《たいいく》をはかり、山上《さんじよう》での神靈的《しんれいてき》な氣分《きぶん》によつて精神《せいしん》を養《やしな》つたり、いろ/\の美觀《びかん》によつて疲《つか》れた身心《しんしん》に慰藉《いしや》を得《え》たりすることが、だいぶんひろく行《おこな》はれて來《き》ましたが、みなさんもそれ以外《いがい》に、多《おほ》くの意味《いみ》で今《いま》から根本《こんぽん》に、山《やま》について、いろ/\の知識《ちしき》をそなへておかれることが必要《ひつよう》です。それで以下《いか》、山《やま》についての學問上《がくもんじよう》のお話《はなし》を、だいたいお話《はなし》して見《み》ませう。
地球《ちきゆう》の誕生《たんじよう》
山《やま》といふものは、一口《ひとくち》にいへば、地球《ちきゆう》の表面《ひようめん》のでこぼこ[#「でこぼこ」に傍点]であります。それですから、その山《やま》がどうして出來《でき》たかといふお話《はなし》をするには、第一《だいいち》、地球《ちきゆう》が生《うま》れ出《で》た手續《てつゞ》きからお話《はなし》しなければなりません。
地球《ちきゆう》ができ上《あが》つた順序《じゆんじよ》については、だいたい、二通《ふたとほ》りの説《せつ》があります。その一《ひと》つは星雲説《せいうんせつ》といつて、はじめ廣《ひろ》い宇宙間《うちゆうかん》に漲《みなぎ》つてゐた非常《ひじよう》に熱度《ねつど》のたかい瓦斯體《がすたい》が、渦卷《うづま》きのように急速度《きゆうそくど》の運動《うんどう》をしながら凝《こゞ》りちゞまり、ちょうど桶《をけ》たが[#「たが」に傍点]のような瓦斯體《がすたい》の環《わ》がいくつもいくつも出來《でき》、それがおの/\、だん/\に離《はな》れてそれ/″\一塊《ひとかたまり》になつて來《き》た、地球《ちきゆう》もその塊《かたまり》の一《ひと》つに外《ほか》ならないといふのです。もう一《ひと》つの説《せつ》は、流星説《りゆうせいせつ》とでもいふべきもので、これは宇宙間《うちゆうかん》に浮動《ふどう》してゐる無數《むすう》の小《ちひ》さい星《ほし》が互《たがひ》に衝突《しようとつ》し合《あ》ひ、それによつて生《しよう》じた高熱《こうねつ》によつて、團子《だんご》へ團子《だんご》をくっつけては大《おほ》きくするように、すべてがとけ合《あ》つて一《ひと》つの塊《かたまり》になつたのが地球《ちきゆう》だといふのです。
[#図版(01.png)、星雲の圖]
いづれにしても、地球《ちきゆう》はもと/\非常《ひじよう》に熱《あつ》い、光《ひか》つた流動體《りゆうどうたい》であつたものが、くる/\廻《まは》りながら、次第《しだい》に冷《ひ》えて、だん/\に固《かた》まり、つひには、表面《ひようめん》に薄《うす》い皮《かは》が出來《でき》たのであるといふことには、誰《だれ》も反對《はんたい》をとなへる人《ひと》もありません。つまり、地球《ちきゆう》も一度《いちど》はあの赤《あか》くたゞれた太陽《たいよう》のような姿《すがた》の時代《じだい》もあつたのだから、また、いつかはまったく冷《ひ》え切《き》つて、月《つき》のようなものになる時《とき》が來《く》るであらうと想像《そうぞう》するのも無理《むり》のないことです。ところが近頃《ちかごろ》では、らぢうむ[#「らぢうむ」に傍点]といふ元素《げんそ》の研究《けんきゆう》が非常《ひじよう》に進《すゝ》んで來《き》ました。それによつて、地球《ちきゆう》の持《も》つてゐるらぢうむ[#「らぢうむ」に傍点]は絶《た》えず變化《へんか》し、そして、その際《さい》に出《だ》す熱《ねつ》の量《りよう》が大變《たいへん》おほきいので、たとひ、地球《ちきゆう》自身《じしん》が、年々《ねん/\》熱《ねつ》を失《うしな》ふとしてもそのわりあひには [#全角あきは底本のまま]早《はや》く冷《ひ》え切《き》りはしないといふことがわかつて來《き》ました。
ともかく、今《いま》お話《はなし》したようにして出來《でき》た、地球《ちきゆう》の表面《ひようめん》の、薄《うす》い皮《かは》のことを學問上《がくもんじよう》では地殼《ちかく》と名《な》づけてゐます。地球《ちきゆう》ができ上《あが》つたばかりの頃《ころ》は、地殼《ちかく》もまだ極《ご》く薄《うす》く弱《よわ》かつたために、その内側《うちがは》に包《つゝ》まれてゐる、どろ/\に熔《と》けた岩《いは》が吹《ふ》き上《あが》つたり、ひっこんだりするにつれて、膨《ふく》れたり、くぼんだりしてぶよ/\してゐました。そしてのちには、ところ/″\に裂《さ》け目《め》ができて、中《なか》から、ちょうど鎔鑛爐《ようこうろ》で見《み》るような眞赤《まつか》な岩《いは》の汁《しる》(岩漿《がんしよう》)が流《なが》れ出《だ》しては固《かた》まつて、地殼《ちかく》はだん/\に厚《あつ》さが増《ま》して來《き》たのです。
しかし、地球《ちきゆう》の表面《ひようめん》から、その中心《ちゆうしん》までの距離《きより》、つまり地球《ちきゆう》の半徑《はんけい》は、おほよそ四千《しせん》まいる[#「まいる」に傍点]もあるのにたいして、地殼《ちかく》の厚《あつ》さは僅《わづか》に五十《ごじゆう》まいる[#「まいる」に傍点]ぐらゐしかありませんから、地球《ちきゆう》全體《ぜんたい》からいひますと、まだ/\大變《たいへん》薄《うす》いもので、たとへば林檎《りんご》の皮《かは》と、中《なか》の實《み》の部分《ぶぶん》とのわりあひぐらゐしか當《あた》りません。それでもわれ/\人間《にんげん》が、これまで掘《ほ》り下《さ》げた一番《いちばん》深《ふか》い孔《あな》は、約《やく》六千《ろくせん》五百尺《ごひやくしやく》で一《いち》まいる[#「まいる」に傍点]半《はん》にも足《た》りないほどですから、一方《いつぽう》からいへば地殼《ちかく》の五十《ごじゆう》まいる[#「まいる」に傍点]そのものが、どんなに厚《あつ》いかといふ想像《そうぞう》もつくでせう。
山《やま》の出來《でき》たわけ
(一)地殼《ちかく》の皺《しわ》
かういふわけで地殼《ちかく》は、中《なか》みからいふとわりあひに薄《うす》い皮《かは》でもあるので、中《なか》にあるまだ非常《ひじよう》に温度《おんど》の高《たか》い岩漿《がんしよう》の熱《ねつ》は、絶《た》えず地殼《ちかく》をくゞつて地表《ちひよう》から逃《に》げ出《だ》していきます。ですから地球《ちきゆう》の中《なか》みは少《すこ》しづゝ冷却《れいきやく》し、從《したが》つて收縮《しゆうしゆく》する筈《はず》です。ところが地殼《ちかく》はすでに冷《ひ》え切《き》つて堅《かた》い岩《いは》の盤《ばん》になつてゐる以上《いじよう》、あたらしく收縮《しゆうしゆく》する中《なか》みといっしよに縮小《しゆくしよう》するわけにはいきません。さうかといつて地殼《ちかく》と岩漿《がんしよう》とは一續《ひとつゞ》きのもので、別々《べつ/\》にはなれることも出來《でき》ない。そこで止《や》むを得《え》ず地殼《ちかく》の部分《ぶぶん》には互《たがひ》に強《つよ》い壓《お》し合《あ》ひがおこつて、そのため皺《しわ》が出來《でき》て來《き》ます。これは、張《は》りつめたごむ[#「ごむ」に傍点]板《いた》の上《うへ》に、軟《やはらか》い粘土《ねばつち》か油土《あぶらつち》で作《つく》つた平《たひら》な板《いた》をのせ、次《つ》ぎにごむ[#「ごむ」に傍点]板《いた》の張《は》りを弛《ゆる》めて見《み》ると、その粘土《ねばつち》や油土《あぶらつち》に澤山《たくさん》の皺《しわ》が出來《でき》ます。地殼《ちかく》についていつたことも、この實驗《じつけん》をしてごらんになるとすぐおわかりになります。また、林檎《りんご》や橙《だいだい》のような果物《くだもの》を久《ひさ》しく貯《たくは》へて置《お》くと、中《なか》みもだん/\に水分《すいぶん》を失《うしな》つて收縮《しゆうしゆく》し、皮《かは》に澤山《たくさん》の皺《しわ》ができます。これも大體《だいたい》同《おな》じ理窟《りくつ》によるのです。
(二)皺《しわ》の山《やま》
かうして出來《でき》た地殼《ちかく》の皺《しわ》の、高《たか》いところが山《やま》にあたり、低《ひく》いところが谷《たに》になつたのはいふまでもありますまい。地球《ちきゆう》の表面《ひようめん》は、海《うみ》の底《そこ》であらうと陸地《りくち》であらうと、いたるところに、かういふ皺《しわ》ができて、でこぼこ[#「でこぼこ」に傍点]になつてゐるのです。いひかへれば、海《うみ》の底《そこ》にも山《やま》や谷《たに》があるといふことになりますが、しかし、海底《かいてい》の山《やま》や谷《たに》はわれ/\の住《す》んでゐる陸上《りくじよう》のそれらとは樣子《ようす》が大變《たいへん》違《ちが》つてゐます。それは海底《かいてい》では後《のち》にお話《はなし》する浸蝕《しんしよく》とか、風化《ふうか》とかいふ働《はたら》きが行《おこな》はれないためです。
以上《いじよう》のごとく、地殼《ちかく》をかたち造《づく》つてゐる岩《いは》が、互《たがひ》に壓《お》し合《あ》つて皺《しわ》を作《つく》る働《はたら》きを『褶曲《しゆうきよく》作用《さよう》』といひます。その壓《お》し合《あ》ふ力《ちから》は、われわれが人混《ひとご》みのうちでお互《たがひ》に肘《ひぢ》を張《は》つて押《お》し合《あ》ふのと同《おな》じで、別《べつ》に名《な》づけて横壓力《おうあつりよく》ともいひ、また結局《けつきよく》は山《やま》を造《つく》る結果《けつか》になるので、造山力《ぞうざんりよく》ともいひます。かうして出來上《できあが》つた山《やま》は、しぜん皺《しわ》の山《やま》とも褶曲山《しゆうきよくざん》ともいはれ得《う》るわけです。
[#図版(02.png)、褶曲作用によつて出來た山と谷]
かく、皺《しわ》の山《やま》は最初《さいしよ》は地球《ちきゆう》のぐるりに堅《かた》い地殼《ちかく》ができるとすぐに、ひき續《つゞ》きできたのですが、なほ、地球《ちきゆう》がだん/\に冷《ひ》えて收縮《しゆうしゆく》するに從《したが》つて、いくたびでも皺《しわ》ができるわけですから、皺《しわ》はつぎ/\に複雜《ふくざつ》になつて來《く》るわけです。しかし、地球《ちきゆう》が冷却《れいきやく》するのには非常《ひじよう》に長《なが》い時間《じかん》がかゝるので、われ/\人間《にんげん》の眼《め》には到底《とうてい》皺《しわ》のできるあり樣《さま》を實際《じつさい》に見《み》ることはできません。
地殼《ちかく》の皺《しわ》の山《やま》も、紙《かみ》に出來《でき》た皺《しわ》や、果物《くだもの》の皮《かは》にできた皺《しわ》と同《おな》じく、それ/″\みな相當《そうとう》の長《なが》さを持《も》つてゐます。ですから地球《ちきゆう》の上《うへ》の山《やま》はいづれもうち續《つゞ》いた山脈《さんみやく》となつてゐるのが常《つね》です。世界《せかい》で有名《ゆうめい》な大《おほ》きな山脈《さんみやく》は、たいていみなかうして出來《でき》た皺《しわ》のつゞきです。地球上《ちきゆうじよう》で最《もつと》も高《たか》いと誇《ほこ》つてゐるインドのヒマラヤ山脈《さんみやく》でも、ヨーロッパで最《もつと》も名高《なだか》いアルプス山脈《さんみやく》、そのお隣《とな》りにあるユラ山脈《さんみやく》でも、また北《きた》アメリカのロッキー山脈《さんみやく》や、南《みなみ》アメリカのアンデス山脈《さんみやく》もすべてそれです。かうした大《おほ》きな皺《しわ》の山《やま》は大抵《たいてい》の場合《ばあひ》、大陸《たいりく》と大洋《たいよう》との境《さかひ》に沿《そ》うたところにできることが多《おほ》いようです。わが日本《につぽん》群島《ぐんとう》も大《おほ》きくいへば、もと/\アジア大陸《たいりく》と太平洋《たいへいよう》との境《さかひ》に沿《そ》うて出來《でき》た皺《しわ》の山《やま》がだん/\高《たか》まつて波《なみ》の上《うへ》に現《あらは》れて來《き》たもので、つまりは一續《ひとつゞ》きの大山脈《だいさんみやく》であると見《み》てもいゝのですが、それができ上《あが》つた後《のち》、いろいろの外《そと》からの働《はたら》きで、部分《ぶぶん》々々《/\》が壞《こは》されたり、變化《へんか》したりして、今日《こんにち》では今《いま》いつたことの證據《しようこ》が大分《だいぶ》わからなくなつて來《き》てゐます。しかし、赤石《あかいし》山脈《さんみやく》や、北上《きたかみ》山脈《さんみやく》や、阿武隈《あぶくま》山脈《さんみやく》などには、まだ多少《たしよう》は、以上《いじよう》の事實《じじつ》を想像《そうぞう》し得《う》る點《てん》が殘《のこ》つてゐます。
しかし、注意《ちゆうい》を要《よう》するのは、われ/\が今日《こんにち》見《み》る山《やま》は、地殼《ちかく》の皺《しわ》からできた山《やま》ばかりではないことです。それ以外《いがい》にも、山《やま》はいろ/\の原因《げんいん》で出來《でき》ます。もと皺《しわ》からできた山《やま》でも、後《のち》にいろ/\に變化《へんか》したり無《な》くなつたりして、そこに別《べつ》の新《あたら》しい山《やま》ができることもあります。かうして地球《ちきゆう》の表面《ひようめん》はます/\複雜《ふくざつ》となり、こみいつた状態《じようたい》になつていくのです。
地球《ちきゆう》の表面《ひようめん》
(一)水《みづ》の世界《せかい》と陸《りく》の世界《せかい》
以上《いじよう》で、ほゞ、地球《ちきゆう》の出生《しゆつしよう》から、その表面《ひようめん》にでこぼこ[#「でこぼこ」に傍点]が出來《でき》たわけがわかりました。そこで、今度《こんど》は飛行機《ひこうき》に乘《の》つたつもりで、空中《くうちゆう》から地球《ちきゆう》の表面《ひようめん》をひとわたり見下《みおろ》して見《み》ませう。
すると、すぐに眼《め》につくことは、地球《ちきゆう》の表面《ひようめん》は大體《だいたい》、青々《あを/\》と水《みづ》を湛《たゝ》へた大《おほ》きな海《うみ》と、草木《そうもく》の生《お》い繁《しげ》つた廣大《こうだい》な陸地《りくち》との二《ふた》つの部分《ぶぶん》からなり立《た》つてゐることです。しかし、その海《うみ》となつてゐる水《みづ》の世界《せかい》と、陸地《りくち》となつてゐる陸《りく》の世界《せかい》とのわりあひは、決《けつ》して同《おな》じではありません。海《うみ》の面積《めんせき》はおよそ三億《さんおく》七千萬《しちせんまん》平方《へいほう》きろめーとる[#「きろめーとる」に傍点]、陸《りく》の面積《めんせき》は約《やく》一億《いちおく》五千萬《ごせんまん》平方《へいほう》きろめーとる[#「きろめーとる」に傍点]ですから、海《うみ》の方《ほう》が遙《はるか》に廣《ひろ》く、陸地《りくち》のほとんど三倍《さんばい》ぐらゐもあります。つまり、地球《ちきゆう》全表面《ぜんひようめん》のおよそ四分《しぶん》の三《さん》が海面《かいめん》で、四分《しぶん》の一《いち》が陸地《りくち》といふことになります。
[#図版(03.png)、陸半球]
同時《どうじ》に、海《うみ》と陸《りく》との廣《ひろが》りも大變《たいへん》かたよつてゐて、陸《りく》は多《おほ》く北半球《きたはんきゆう》に集《あつま》り、海《うみ》は多《おほ》く南半球《みなみはんきゆう》にひろがつてゐます。北半球《きたはんきゆう》は實《じつ》に、地球《ちきゆう》全體《ぜんたい》の陸地《りくち》の四分《しぶん》の三《さん》だけあつて、それが太平洋《たいへいよう》と大西洋《たいせいよう》との二《ふた》つの大海洋《だいかいよう》によつて東西《とうざい》の兩大陸《りようたいりく》に分《わけ》られてゐます。
[#図版(04.png)、水半球]
こゝで、ちよっと注意《ちゆうい》しておきたいことは、その大陸《たいりく》と海洋《かいよう》との出《で》はひりのことです。大陸《たいりく》の一方《いつぽう》が海洋《かいよう》に突《つ》き出《で》てゐると、それと向《むか》ひ合《あ》つた大陸《たいりく》は、ちょうどそれにあてはまるようにくぼ[#「くぼ」に傍点]んでゐます。それでこれ等《ら》の大陸《たいりく》は、はじめはお互《たがひ》にくっついてゐたのが、後《あと》にだん/\離《はな》れたものではないかと想像《そうぞう》する學者《がくしや》もあります。實際《じつさい》、現在《げんざい》の海岸《かいがん》から深《ふか》さ二百《にひやく》めーとる[#「めーとる」に傍点](百尋《ひやくひろ》)だけの水《みづ》を取《と》り除《のぞ》いて、海岸《かいがん》の水《みづ》を乾《ほ》して見《み》たとしたら、ヨーロッパ大陸《たいりく》とアメリカ大陸《たいりく》とは非常《ひじよう》に接近《せつきん》して來《く》るし、アフリカ大陸《たいりく》とヨーロッパ大陸《たいりく》、及《およ》びオーストラリア大陸《たいりく》とアジア大陸《たいりく》とは、それ/″\ほとんど一續《ひとつゞ》きの大陸《たいりく》となつてしまつて、今日《こんにち》われ/\が地圖《ちず》の上《うへ》で見《み》る形《かたち》とは大變《たいへん》違《ちが》つたものになつて來《き》ます。中《なか》でも、わが日本《につぽん》群島《ぐんとう》のごときは、まったくアジア大陸《たいりく》といっしよになつて、たゞそのふちどり[#「ふちどり」に傍点]となつてゐるに過《す》ぎないことゝなります。
(二)桑滄《そうそう》の變《へん》
かう考《かんが》へて來《く》ると、海《うみ》と陸《りく》の境界《きようかい》はさも明瞭《めいりよう》のようですが、實際《じつさい》はさうではないことがわかります。昔《むかし》から「桑田《そうでん》變《へん》じて滄海《そうかい》となる」と、いふ言葉《ことば》があります。それは、今《いま》まで桑《くは》を植《う》ゑてゐた畠《はたけ》が沈《しづ》んで、遂《つひ》にはあをい海《うみ》の底《そこ》にかくれてしまつたといふ意味《いみ》で、加賀《かゞ》の安宅《あたか》の關所《せきしよ》が、今《いま》では海岸《かいがん》から離《はな》れた海《うみ》の中《なか》に沈《しづ》んでしまつたといふ話《はなし》を、皆《みな》さんの中《なか》には聞《き》かれた方《かた》があるでせう。これは、われ/\人間《にんげん》の短《みじか》い歴史《れきし》の間《あひだ》に起《おこ》つた事實《じじつ》ですが、もっと/\眼《め》を大《おほ》きくして、地球《ちきゆう》ができてから今日《こんにち》までの永《なが》い/\歴史《れきし》を調《しら》べて見《み》ますと、實《じつ》に驚《おどろ》くような恐《おそ》ろしい變動《へんどう》が起《おこ》つてゐます。それは前《まへ》には非常《ひじよう》に深《ふか》い海《うみ》の底《そこ》であつた場所《ばしよ》が、後《のち》に隆起《りゆうき》して非常《ひじよう》に高《たか》い陸上《りくじよう》の山《やま》となつたところもありますし、その反對《はんたい》に高《たか》かつた陸地《りくち》がだん/\沈降《ちんこう》して、遂《つひ》に深《ふか》い海《うみ》の底《そこ》にかくれてしまつたところもあるのです。しかも、かういふことが同《おな》じ一《ひと》つの地方《ちほう》で、何度《なんど》もくりかへしおこつたことがあります。前《まへ》にお話《はなし》したアルプス山脈《さんみやく》でもロッキー山脈《さんみやく》でも、みんな大昔《おほむかし》は海《うみ》の底《そこ》であつたものが、今《いま》は高《たか》い山《やま》として陸地《りくち》に聳《そび》えてゐるのです。
ですから、今後《こののち》[#「今後《こののち》」は底本のまま]とても、かういふ變化《へんか》が地球上《ちきゆうじよう》のどこに、いつ起《おこ》らないとは限《かぎ》りません。しかし、その度《ど》あひは後《のち》になるほどだん/\小《ちひ》さくなつていくはずです。それにしても、こんな大《おほ》きな水陸《すいりく》の變化《へんか》の起《おこ》るのは、やはり皺《しわ》の山《やま》ができるのと同《おな》じ理窟《りくつ》によるのです。みなさんが地理《ちり》でお習《なら》ひになる地球上《ちきゆうじよう》の大陸《たいりく》と海洋《かいよう》の配列《はいれつ》といふことも、地球《ちきゆう》の永《なが》い歴史《れきし》から見《み》れば、實《じつ》は一時的《いちじてき》な不安定《ふあんてい》なものともいへるのです。
(三)陸地《りくち》の表面《ひようめん》の形《かたち》
陸地《りくち》はわれ/\の生活《せいかつ》する場所《ばしよ》ですから、今少《いますこ》し詳《くは》しく話《はな》しておきませう。陸地《りくち》と海《うみ》との境界《きようかい》は、いふまでもなく海岸《かいがん》で、これによつて陸地《りくち》の輪廓《りんかく》ができ上《あが》るのです。海岸《かいがん》から陸地《りくち》の内部《ないぶ》に進《すゝ》むにつれて、土地《とち》は通常《つうじよう》、だん/\高《たか》まつていくわけですが、しかしその間《あひだ》には平《たひら》なところ、高《たか》く尖《とが》つたところ、また窪《くぼ》くへこんだところもあつて、一定《いつてい》してはをりません。これは人間《にんげん》の顏《かほ》に、尖《とが》つた鼻《はな》があり、くぼんだ口《くち》や、眼《め》があつて、人《ひと》それ/″\に特有《とくゆう》な容貌《ようぼう》を作《つく》つてゐるのと少《すこ》しも違《ちが》はないので、その状態《じようたい》を地貌《ちぼう》とも地形《ちけい》とも呼《よ》んでゐます。
人間《にんげん》の顏《かほ》にも年《とし》よつた顏《かほ》や、若《わか》い顏《かほ》や、生《うま》れたばかりの赤《あか》ん坊《ぼう》の顏《かほ》といろ/\あるように、地貌《ちぼう》にも老幼《ろうよう》の差別《さべつ》があります。また、容貌《ようぼう》には美《うつく》しいもの、やさしいもの、痩《や》せて骨《ほね》ばつたもの、醜《みにく》いものもあるように、地貌《ちぼう》にも眼《め》で見《み》て美《うつく》しい景色《けしき》となつて展開《てんかい》するもの、男性的《だんせいてき》で雄大《ゆうだい》なものもあり、あまり人《ひと》の感興《かんきよう》をひかない平凡《へいぼん》なものもあります。
それでは、地貌《ちぼう》を組《く》み立《た》てる、鼻《はな》や、口《くち》や、眼《め》などに當《あた》るものは何々《なに/\》でせうか。まづ地貌《ちぼう》の輪廓《りんかく》を作《つく》るものは、いふまでもなく海岸《かいがん》ですが、その内側《うちがは》にあつて主《おも》な要素《ようそ》となつてゐるものは、(一)平原《へいげん》、(二)高原《こうげん》、(三)山《やま》、(四)河《かは》、谷《たに》、(五)盆地《ぼんち》、(六)湖《みづうみ》、沼《ぬま》、(七)段丘《だんきゆう》、(八)斜面《しやめん》、(九)崖《がけ》といつたようなものにわかつことが出來《でき》ます。これ等《ら》のうち、山《やま》、谷《たに》、河《かは》及《およ》び湖沼《こしよう》のことについては、いづれ後《あと》でお話《はなし》しますから、こゝではそれ以外《いがい》のものについて手短《てみじか》に話《はな》しておきませう。
(四)平原《へいげん》
平原《へいげん》はまた平野《へいや》ともいひます。地表面《ちひようめん》の、大體《だいたい》に平《たひら》なところをいふのですが、それには大《たい》へん廣《ひろ》い平野《へいや》と狹《せま》い平野《へいや》とがあり、また多少《たしよう》は緩《ゆる》い波《なみ》を打《う》つたところもあります。通例《つうれい》は海《うみ》の波打《なみう》ち際《ぎは》のあまり高《たか》くない海岸《かいがん》地方《ちほう》に多《おほ》くできるのですが、たまには大陸《たいりく》の内部《ないぶ》にも出來《でき》、降雨《こうう》が少《すくな》いために、沙漠《さばく》となることもあります。このほか大《おほ》きな河《かは》の兩側《りようがは》には、その氾濫《はんらん》によつて大《たい》へんに廣《ひろ》い平原《へいげん》ができたり、また河《かは》の海《うみ》に注《そゝ》ぐところには澤山《たくさん》の泥《どろ》や砂《すな》が押《お》し流《なが》されて來《き》て、廣《ひろ》い三角形《さんかつけい》の平原《へいげん》を作《つく》ることもあります。河《かは》の兩側《りようがは》にできたのを『河平原《かへいげん》』といひ、河《かは》の出口《でぐち》にできたのを『三角洲《さんかくす》平原《へいげん》』と名《な》づけます。
世界《せかい》で有名《ゆうめい》なエジプトのナイル河《がは》、支那《しな》の楊子江《ようすこう》[#「楊子江」は底本のまま]、北《きた》アメリカのミシシッピー河《がは》、南《みなみ》アメリカのアマゾン河《がは》等《など》には、非常《ひじよう》に大《おほ》きな河平原《かへいげん》や三角洲《さんかくす》平原《へいげん》があつて、みな重要《じゆうよう》な農作物《のうさくぶつ》の産地《さんち》となつてゐます。日本《につぽん》は山國《やまぐに》ですから、それらに比《くら》べるような平原《へいげん》はありませんが、それでも北海道《ほつかいどう》の石狩《いしかり》平原《へいげん》、東京《とうきよう》附近《ふきん》の關東《かんとう》平原《へいげん》、裏日本《うらにつぽん》の越後《えちご》平原《へいげん》、富山《とやま》平原《へいげん》、岐阜《ぎふ》附近《ふきん》の濃尾《のうび》平原《へいげん》、大阪《おほさか》附近《ふきん》の攝津《せつつ》河内《かはち》平原《へいげん》、九州《きゆうしゆう》の熊本《くまもと》平原《へいげん》などは、かなり廣《ひろ》い方《ほう》です。なほ、小《ちひ》さいものなら、海《うみ》に近《ちか》いところ、大《おほ》きな山《やま》の麓《ふもと》、湖《みづうみ》のまはり、河《かは》に沿《そ》うたところなどに數《かぞ》へ切《き》れないほどあります。
平原《へいげん》には沙漠《さばく》もあり、濕地《しつち》や密林《みつりん》があり、またシベリアや樺太《からふと》の北《きた》の方《ほう》で見《み》るように、年中《ねんじゆう》寒《さむ》く凍《こほ》りついたところもありますが、海《うみ》や、河《かは》や、湖《みづうみ》に沿《そ》うた平原《へいげん》は、たいがい、土地《とち》が肥《こ》えて農作《のうさく》に適《てき》するばかりでなく、地面《じめん》が平《たひら》ですから、交通《こうつう》、運搬《うんぱん》の便《べん》がよく、從《したが》つて昔《むかし》から人々《ひと/″\》は好《この》んでそこへ集《あつ》まつて來《き》て都會《とかい》を作《つく》りました。
(五)高原《こうげん》
まはりの土地《とち》よりずっと高《たか》くて、その表面《ひようめん》が大體《だいたい》平《たひら》になつてゐる所《ところ》を『高原《こうげん》』といひます。ですから、まはりの土地《とち》と高原《こうげん》との間《あひだ》には、峻《けは》しい坂《さか》があるのが通例《つうれい》です。しかし、われ/\が實際《じつさい》高原《こうげん》に立《た》つて見《み》ただけでは、それが平原《へいげん》であるか、高原《こうげん》であるか、ちよっと區別《くべつ》がつきにくいものです。それゆゑ、高原《こうげん》はそこから離《はな》れて見《み》て、海《うみ》の面《めん》よりの高《たか》さが平原《へいげん》にくらべて、ずっと高《たか》いところといふより外《ほか》はありません。
高原《こうげん》は、大《おほ》きな高《たか》い山脈《さんみやく》と山脈《さんみやく》との間《あひだ》に出來《でき》ることがよくあります。北《きた》アメリカの西海岸《にしかいがん》に近《ちか》いロッキー山脈《さんみやく》とシエラネバダ山脈《さんみやく》との間《あひだ》にあるアリゾナ高原《こうげん》、アジアのコンロン山脈《さんみやく》とヒマラヤ山脈《さんみやく》との間《あひだ》にあるチベット高原《こうげん》、パミール高原《こうげん》のようなものは、世界《せかい》でもっとも名高《なだか》いものです。ことに、アリゾナ高原《こうげん》は海面《かいめん》からの高《たか》さが、およそ二千《にせん》めーとる[#「めーとる」に傍点]もあつてその間《あひだ》をコロラド河《がは》が流《なが》れ、高原《こうげん》を作《つく》る岩《いは》を深《ふか》く削《けづ》り取《と》つて兩岸《りようがん》に高《たか》い崖《がけ》を作《つく》り、コロラド大峽谷《だいきようこく》と稱《とな》へられてゐます。そこには汽車《きしや》も通《とほ》つてをり、世界《せかい》を旅行《りよこう》する人《ひと》はわざ/\見物《けんぶつ》に行《ゆ》くほど有名《ゆうめい》です。
[#図版(05.png)、北アメリカのコロラド大峽谷]
高原《こうげん》には、海《うみ》の底《そこ》に沈澱《ちんでん》して出來《でき》た岩《いは》の厚《あつ》い層《そう》が、前《まへ》にお話《はなし》した桑滄《そうそう》の變《へん》で、持《も》ち上《あが》つて出來《でき》たものもありますが、また火山《かざん》の噴《ふ》き出《だ》したどろ/\に熔《と》けた岩《いは》が、そのまゝ地表《ちひよう》で固《かた》まつて、表面《ひようめん》の平《たひら》な、廣《ひろ》い、高《たか》い臺地《だいち》を作《つく》ることもあります。インドの南部《なんぶ》にあるデカン高原《こうげん》は、かうして出來《でき》た熔岩《ようがん》の高臺《たかだい》で、海拔《かいばつ》二千《にせん》めーとる[#「めーとる」に傍点]もある名高《なだか》いものです。朝鮮《ちようせん》の北《きた》、支那《しな》との境《さかひ》にもこれに似《に》たものがありますが、デカン高原《こうげん》のように高《たか》くはありません。
日本《につぽん》の内地《ないち》は、山《やま》は多《おほ》いけれど、地貌《ちぼう》が細《こま》かくきざまれてゐて、高原《こうげん》といふようなものはあまりありません。近頃《ちかごろ》有名《ゆうめい》になつた日本《につぽん》アルプスの一部《いちぶ》である飛騨《ひだ》山脈《さんみやく》には、かなり高原《こうげん》らしいところがあります。また熔岩《ようがん》からできた高臺《たかだい》では、讃岐《さぬき》の屋島《やしま》、火山《かざん》の大《おほ》きなので名高《なだか》い九州《きゆうしゆう》の阿蘇《あそ》などを擧《あ》げることができますが、これらはもとより小形《こがた》のもので、到底《とうてい》前《まへ》にお話《はなし》した外國《がいこく》のものなどとは比《くら》べものにはなりません。
(六)盆地《ぼんち》
平原《へいげん》のまはりが山《やま》でかこまれ、盆《ぼん》のように中《なか》が窪《くぼ》んでゐる所《ところ》を『盆地《ぼんち》』といひます。ちようど高原《こうげん》をうら向《む》けにしたようなものと考《かんが》へればいゝわけです。それで、盆地《ぼんち》へまはりの山《やま》から水《みづ》が流《なが》れ落《お》ちて、そこに溜《たま》り、湖《みづうみ》や、大《おほ》きな池《いけ》や、沼《ぬま》になることがあります。しかし、その水《みづ》がどこかにはけ口《くち》ができて干上《ひあが》つてしまふと、立派《りつぱ》な農業《のうぎよう》に適《てき》する土地《とち》となり、澤山《たくさん》の人《ひと》が、しぜんと集《あつ》まつて來《き》て住《す》みつきます。
盆地《ぼんち》は地殼《ちかく》の皺《しわ》の山《やま》の低《ひく》いところにできることもありますし、火山《かざん》が噴火《ふんか》を止《や》めた後《のち》、落《お》ち凹《くぼ》んで出來《でき》たのもあります。また土地《とち》の下《した》に熔《と》けやすい岩《いは》があると、それが、だん/\水《みづ》に溶《と》かされて空《うつろ》ができ、つひに地表《ちひよう》が落《お》ちこんで出來《でき》たのもあります。ある時《とき》は河《かは》に沿《そ》うた平地《へいち》が、河《かは》の運《はこ》んで來《き》た土砂《どしや》の積《つ》み重《かさ》ねでしきられて、淺《あさ》い盆地《ぼんち》を作《つく》ることもあります。
日本《につぽん》は一體《いつたい》に土地《とち》の昇《あが》り降《さが》りの變動《へんどう》が烈《はげ》しく行《おこな》はれてゐる上《うへ》に、雨量《うりよう》が多《おほ》い國《くに》ですから、いたるところに、窪地《くぼち》ができ、はじめは、それに水《みづ》が湛《たゝ》へたまつて湖《みづうみ》や沼《ぬま》となり、後《のち》にその湖沼《こしよう》が乾《かわ》いて小《ちひ》さな盆地《ぼんち》になつたような例《れい》が非常《ひじよう》に多《おほ》いようです。北海道《ほつかいどう》では上川《かみかは》盆地《ぼんち》富良野《ふらの》盆地《ぼんち》、本州《ほんしゆう》では新庄《しんしよう》[#「しんしよう」は底本のまま]盆地《ぼんち》、會津《あひづ》盆地《ぼんち》、丹那《たんな》盆地《ぼんち》、四國《しこく》では佐川《さがは》盆地《ぼんち》、九州《きゆうしゆう》では庄原《しようばる》盆地《ぼんち》、人吉《ひとよし》盆地《ぼんち》などと數《かぞ》へきれないほどあります。
(七)段丘《だんきゆう》
みなさんは、海《うみ》や河《かは》にいかれたときに、海岸《かいがん》や河《かは》の岸《きし》に沿《そ》うて細長《ほそなが》い平《たひら》な、棚《たな》のようになつたところがあるのをごらんになつたことがおありでせう。それはちょうど停車場《ていしやば》のぷらっとふぉーむ[#「ぷらっとふぉーむ」に傍点]のように規則《きそく》正《たゞ》しく、わざ/\人間《にんげん》が地《じ》ならしをしたのではないかと思《おも》はるゝほど平《たひら》で、たまには二段《にだん》にも三段《さんだん》にも階段《かいだん》のように重《かさ》なつてゐることがあります。しかし、これは人工《じんこう》ではなく、まったく自然《しぜん》の力《ちから》で出來《でき》たもので、『段丘《だんきゆう》』と名《な》づけられてゐます。
段丘《だんきゆう》は後《のち》にお話《はなし》する海《うみ》や河《かは》の浸蝕《しんしよく》作用《さよう》で出來《でき》るものですが、海岸《かいがん》にあるものを『海成《かいせい》段丘《だんきゆう》』、河岸《かはぎし》にあるものを『河成《かせい》段丘《だんきゆう》』といひます。
[#図版(06.png)、河成段丘]
海成《かいせい》段丘《だんきゆう》は樺太《からふと》の西海岸《せいかいがん》・北海道《ほつかいどう》の北見《きたみ》、天鹽《てしほ》の海岸《かいがん》、津輕《つがる》海峽《かいきよう》、日本海《につぽんかい》北部《ほくぶ》沿岸《えんがん》の秋田《あきた》、新潟《にひがた》地方《ちほう》に最《もつと》もよく發達《はつたつ》してをり、天鹽《てしほ》の海岸《かいがん》には海面《かいめん》から、四十尺《しじつしやく》、百《ひやく》三十尺《さんじつしやく》、二百尺《にひやくしやく》の高《たか》さの三段《さんだん》の階段《かいだん》のあることが、はっきりと見《み》られます。
河成《かせい》段丘《だんきゆう》は大《おほ》きな河《かは》なら、大抵《たいてい》どこにでも見《み》ることが出來《でき》ますから、みなさんよく注意《ちゆうい》してごらんなさい。しかし人《ひと》の造《つく》つた堤防《ていぼう》を、それと間違《まちが》へてはいけません。
段丘《だんきゆう》には、もう一《ひと》つ今《いま》いつたのとは少《すこ》し性質《せいしつ》の違《ちが》つたのがあります。それは地面《じめん》に出來《でき》た割《わ》れ目《め》に沿《そ》うて、片方《かたほう》の土地《とち》が、落《お》ち込《こ》み、自然《しぜん》そこに高低《たかひく》の階段《かいだん》が出來《でき》た場合《ばあひ》で、よく大《おほ》きな地震《じしん》のあつた後《あと》に出來《でき》るものです。濃尾《のうび》地震《じしん》のときにも、關東《かんとう》地震《じしん》のときにも、奧丹後《おくたんご》地震《じしん》のときにも、小《ちひ》さいながら、さういふ段丘《だんきゆう》が出來《でき》ました。これは斷層《だんそう》段丘《だんきゆう》と呼《よ》ばれてゐます。
(八)斜面《しやめん》と崖《がけ》
陸地《りくち》の表面《ひようめん》は平坦《へいたん》だといつても、水《みづ》の表面《ひようめん》のように眞平《まつたひら》なものはほとんどありません。多少《たしよう》は、どちらかに傾《かたむ》いて斜面《しやめん》を作《つく》つてゐます。この傾《かたむ》きのことを『勾配《こうばい》』といひます。
ですから、陸地《りくち》表面《ひようめん》の地貌《ちぼう》とは、いひかへればいろ/\の度《ど》あひの勾配《こうばい》をもつた斜面《しやめん》から作《つく》り上《あ》げられた立體《りつたい》だともいへます。つまりは山《やま》も川《かは》も海《うみ》も斜面《しやめん》の組《く》み合《あは》せの變化《へんか》に過《す》ぎません。その組《く》み合《あは》せ方《かた》の巧妙《こうみよう》に出來上《できあが》つたものは、複雜《ふくざつ》した曲線美《きよくせんび》をもち、私《わたくし》どもの眼《め》を喜《よろこ》ばすよい景色《けしき》となつて來《く》るのです。
斜面《しやめん》の勾配《こうばい》の度《ど》あひは、その土地《とち》を造《つく》つてゐる岩《いは》の性質《せいしつ》によつて變《かは》つて來《き》ます。軟《やはらか》くて固《かた》まらない砂《すな》や、火山灰《かざんばひ》や、小石《こいし》などから出來《でき》てゐる土地《とち》は、ざく/\ぼろ/\してゐますから、あまり急《きゆう》な斜面《しやめん》にはなりません。しかし、軟《やはらか》い粘土《ねんど》でも、水《みづ》で固《かた》まるとずいぶん急《きゆう》な、眞直《まつす》ぐに、突《つ》き立《た》つた崖《がけ》を作《つく》ることがあります。東京《とうきよう》附近《ふきん》の赤土《あかつち》(ろーむ[#「ろーむ」に傍点]ともいひます)や、支那《しな》の平地《へいち》を廣《ひろ》く蔽《おほ》うてゐる黄土《おうど》(れす[#「れす」に傍点]ともいひます)などはそのいゝ例《れい》です。それも雨《あめ》が降《ふ》り續《つゞ》いて水《みづ》を澤山《たくさん》吸《す》ひこみますと、急《きゆう》に崖崩《がけくづ》れや、山崩《やまくづ》れを起《おこ》して、恐《おそ》ろしい害《がい》を被《かうむ》らすことがあるから注意《ちゆうい》しなければなりません。
堅《かた》い岩《いは》でも、もと火山《かざん》から噴《ふ》き出《だ》した、どろ/\の熔《と》けた岩《いは》のかたまつたものは、岩《いは》の汁《しる》の粘《ねば》り氣《け》の多《おほ》い少《すくな》いで、その固《かた》まる時《とき》に出來《でき》る斜面《しやめん》の勾配《こうばい》が違《ちが》つて來《き》ます。富士山《ふじさん》の裾野《すその》の斜面《しやめん》は富士岩《ふじがん》(安山岩《あんざんがん》とも云《い》ふ)と云《い》ふ熔岩《ようがん》の固《かた》まつた時《とき》の勾配《こうばい》を示《しめ》してゐます。
しかし、なほよく考《かんが》へて見《み》ると、土地《とち》の斜面《しやめん》は、それを造《つく》る岩《いは》の質《しつ》ばかりによるものではありません。それは土地《とち》が出來《でき》てから後《のち》に、外部《がいぶ》から受《う》けるいろ/\の働《はたら》き、つまり、風化《ふうか》作用《さよう》や浸蝕《しんしよく》作用《さよう》によることが、餘程《よほど》多《おほ》いのです。そのことは後《のち》に改《あらた》めてお話《はなし》するつもりです。
崖《がけ》は斜面《しやめん》の角度《かくど》の一《いつ》そう甚《はなは》だしく、峻《けは》しくなつたもので、眞直《まつす》ぐにつき立《た》つたものか、またはそれに近《ちか》いものをいふのです。
ですから、崖《がけ》も斜面《しやめん》もつまりは同《おな》じ性質《せいしつ》のもので、たゞその度《ど》あひがちがふのに過《す》ぎません。崖《がけ》を云《い》ひ表《あらは》すに斷崖《だんがい》とか、絶壁《ぜつぺき》とか、または懸崖《けんがい》とかいろ/\の言葉《ことば》がありますが、美《うつく》しいよい景色《けしき》には大抵《たいてい》崖《がけ》はつきものになつてゐます。
二、山《やま》のいろ/\とその形《かたち》
山《やま》のいろ/\
いま、お話《はなし》した高原《こうげん》が、さらに高《たか》くなると山《やま》といふものになります。『山《やま》』といふよりも『山岳《さんがく》』といつた方《ほう》がいゝ。たゞ山《やま》と云《い》へば庭《には》にある築《つ》き山《やま》も山《やま》であり、海邊《うみべ》や河原《かはら》で、みなさんがおこしらへになる砂山《すなやま》も、やはり山《やま》ですし、小《ちひ》さくいへば、蟻《あり》や虫《むし》から見《み》れば、もぐらもち[#「もぐらもち」に傍点]の作《つく》つた塚穴《つかあな》も山《やま》でせう。
『山岳《さんがく》』とは、普通《ふつう》は大《おほ》きくて高《たか》く、海面《かいめん》から五百《ごひやく》めーとる[#「めーとる」に傍点]以上《いじよう》もあるものをいひます。それより低《ひく》いものは、通常《つうじよう》、岡《をか》と云《い》つたり丘陵《きゆうりよう》と云《い》つたりします。奈良《なら》の三笠《みかさ》の山《やま》など、學問上《がくもんじよう》からは、たゞの丘陵《きゆうりよう》です。
山岳《さんがく》の一《いち》ばん高《たか》い頂上《ちようじよう》は通例《つうれい》筍《たけのこ》の頭《あたま》のように尖《とが》つて狹《せま》くなつてゐます。そこを『峯《みね》』といひます。しかし、ある時《とき》は馬《うま》の脊筋《せすぢ》や屋根《やね》の棟《むね》のように狹《せま》くて、細長《ほそなが》くなつてゐることもあります。かういふのを『嶺《みね》』と呼《よ》びます。おなじ『みね』でも意味《いみ》が大變《たいへん》違《ちが》つてゐます。普通《ふつう》はこの『峯《みね》』と『嶺《みね》』とが互《たがひ》に、たちまざつて一群《いちぐん》となり、長《なが》くのび續《つゞ》いてゐます。これを『山脈《さんみやく》』といひます。本州《ほんしゆう》の木曾《きそ》山脈《さんみやく》、北上《きたかみ》山脈《さんみやく》、寶達《ほうたつ》山脈《さんみやく》などは、この例《れい》です。
木《こ》の葉《は》の葉脈《ようみやく》は、眞中《まんなか》に大《おほ》きな主脈《しゆみやく》といふものがあり、それから四方《しほう》に小《ちひ》さな支脈《しみやく》が枝《えだ》のように出《で》てゐます、[#読点は底本のまま]山脈《さんみやく》もこれと同《おな》じように大抵《たいてい》は四方《しほう》に支脈《しみやく》が出《で》て、他《た》の幾《いく》つもの山脈《さんみやく》と互《たがひ》に相連《あひつ》らなり、複雜《ふくざつ》なものになつて來《き》ます。かうなると、これらの幾《いく》つもの山脈《さんみやく》を一《いつ》しよにひっくるめて『山系《さんけい》』と云《い》ひます。例《たと》へば日本《につぽん》アルプスの赤石《あかいし》山系《さんけい》は白峯《しらみね》、巨摩《こま》、伊那《いな》の各《かく》山脈《さんみやく》から、なりたつてゐるようなものです。
山《やま》はその出來方《できかた》によつて、生《うま》れ出《で》た山《やま》と、こはれ殘《のこ》つた山《やま》との二《ふた》つの大《おほ》きな部類《ぶるい》に分《わ》けます。
(一)生《うま》れ出《で》た山《やま》
生《うま》れ出《で》た山《やま》といふのは、ちょうど、みなさんが砂《すな》や粘土《ねばつち》で山《やま》をおこしらへになるように、實際《じつさい》新《あたら》しく地球上《ちきゆうじよう》に生《うま》れ出《で》てきた山《やま》です。その生《うま》れ方《かた》も、いろ/\違《ちが》つてゐるので、便宜上《べんぎじよう》、次《つ》ぎのように分《わ》けてゐます。
(イ)堆《つ》み上《あ》げ山《やま》。 これは地表《ちひよう》の上《うへ》に砂《すな》や粘土《ねんど》や砂利《じやり》のような軟《やはら》かいものが、風《かぜ》や水《みづ》の働《はたら》きで堆《つ》み上《あ》げられて出來《でき》たもので、山《やま》としては最《もつと》も簡單《かんたん》なものです。海岸《かいがん》や沙漠《さばく》に風《かぜ》で吹《ふ》き寄《よ》せられて出來《でき》た砂丘《さきゆう》や、日本《につぽん》にはありませんが、氷河《ひようが》の運《はこ》んで來《き》た石《いし》(堆石《たいせき》といひます)や、砂《すな》が氷《こほり》のとけるとともに積《つ》み重《かさ》なつて出來《でき》た山《やま》などは、そのいゝ例《れい》です。ある時《とき》は河《かは》が運《はこ》んで來《き》た泥《どろ》や砂《すな》が一個所《いつかしよ》に溜《たま》つて山《やま》を築《きづ》くこともありませう。しかし、これらはしよせん大《おほ》きな山《やま》にはなりません。
(ロ)噴《ふ》き出《で》た山《やま》。 これは『火山《かざん》』のことです。火山《かざん》は土地《とち》の割《わ》れ目《め》から、どろ/\の熔岩《ようがん》を地表《ちひよう》に噴《ふ》き出《だ》したもので、その噴《ふ》き出《だ》すときには、大抵《たいてい》恐《おそ》ろしい爆發《ばくはつ》をして、まはりの堅《かた》い岩《いは》を粉《こな》みじんに碎《くだ》いて吹《ふ》き飛《と》ばします。かうして出來《でき》た火山灰《かざんばひ》や、火山砂《かざんずな》や、火山《かざん》小石《こいし》や、大《おほ》きな岩《いは》のかけらなどが、噴《ふ》き出《だ》した口《くち》(『火口《かこう》』とも『噴火口《ふんかこう》』ともいひます)のまはりに熔岩《ようがん》と一《いつ》しよに、つみ重《かさ》なつて、摺《す》り鉢《ばち》をふせたような形《かたち》の山《やま》を作《つく》ります。普通《ふつう》は爆發《ばくはつ》を度々《たび/\》くり返《かへ》せば、くり返《かへ》すほど、火山《かざん》は高《たか》く大《おほ》きくなつて來《き》ます。
日本《につぽん》は歐洲《おうしゆう》のイタリイと共《とも》に火山國《かざんこく》といはれるほどですから、富士山《ふじさん》をはじめ數《かぞ》へきれないほど、澤山《たくさん》の火山《かざん》があります。それには富士形《ふじがた》をした、形《かたち》の整《とゝの》つた美《うつく》しいのもありますが、中《なか》には大變《たいへん》不規則《ふきそく》にこはれたのもあります。火山《かざん》のことは、今後《こんご》、他《ほか》の先生《せんせい》から詳《くは》しいお話《はなし》がある筈《はず》ですから、私《わたし》はこのくらゐで打《う》ち切《き》つておきます。
(ハ)押《お》し上《あ》げ山《やま》。 地球《ちきゆう》内部《ないぶ》の熔《と》けた岩《いは》が火山《かざん》のように地表《ちひよう》に流《なが》れ出《だ》すことなく、地殼《ちかく》の途中《とちゆう》まで出《で》て來《き》て岩《いは》の間《あひだ》に流《なが》れこむと、その上部《じようぶ》にある土地《とち》は圓《まる》く押《お》し上《あ》げられて、ちょうど正月《しようがつ》の、おそなへ餅《もち》のような形《かたち》をした山《やま》が出來上《できあが》ります。これを『圓頂山《えんちようざん》』といひます。その出《で》て來《き》た岩《いは》の固《かた》まつたものを『餅磐《べいばん》[#「磐」は底本のまま]』といひます。外國《がいこく》ではかうして出來《でき》た山《やま》は、ところ/″\にありますが、日本《につぽん》にはまだはっきりわかつたものはないようです。
[#図版(07.png)、圓頂山と餅磐[#「磐」は底本のまま]]
(ニ)皺《しわ》の山《やま》。 これは既《すで》に前《まへ》にお話《はなし》した、横壓力《おうあつりよく》で出來《でき》た褶曲山《しゆうきよくざん》のことです。世界《せかい》の大《おほ》きな山脈《さんみやく》は大抵《たいてい》、この褶曲山《しゆうきよくざん》であることも、ちゃんとおぼえておいでのことゝ思《おも》ひます。
(ホ)斷層《だんそう》の山《やま》。 ところが、地殼《ちかく》の皺《しわ》も、だん/\強《つよ》くなると、つひにはそこに割《わ》れ目《め》や裂《さ》け目《め》のひゞ[#「ひゞ」に傍点]ができます。青竹《あをだけ》を力《ちから》一《いつ》ぱい曲《ま》げて見《み》ると、はじめのうちはだん/\曲《まが》つて山《やま》が出來《でき》ますが、後《のち》にはその一《いち》ばん張《は》りつめた山《やま》の頂上《ちようじよう》のところにひゞ[#「ひゞ」に傍点]が出來《でき》、しまひには竹《たけ》が折《を》れます。これと同《おな》じ理窟《りくつ》で土地《とち》も終《しま》ひにはその裂《さ》け目《め》に沿《そ》うて折《を》れて、一方《いつぽう》がすべり落《お》ちて食《く》ひ違《ちが》ひの形《かたち》になることがあります。これを『斷層《だんそう》』ができたといひます。そして裂《さ》け目《め》のところを『斷層線《だんそうせん》』といひます。
[#図版(08.png)、斷層で出來た崖と斷層の山(模型)]
斷層《だんそう》で一方《いつぽう》の土地《とち》がすべり落《お》ちると、そこは谷《たに》となり、殘《のこ》つた一方《いつぽう》の土地《とち》は山《やま》となります。これが斷層《だんそう》の山《やま》です。斷層《だんそう》は、ときに幾《いく》つも/\互《たがひ》に平行《へいこう》して起《おこ》ることがあります。この場合《ばあひ》は、階段《かいだん》を平《たひら》にして見《み》たときのように、或《あるひ》は煉瓦疊《れんがだたみ》の道路《どうろ》がこはれて、でこぼこ[#「でこぼこ」に傍点]になつたときのように、幾《いく》つもの平行《へいこう》した斷層《だんそう》の谷《たに》と山《やま》とができあがります。
斷層《だんそう》で出來《でき》た山《やま》は日本《につぽん》にも外國《がいこく》にも例《れい》が多《おほ》いようです。外國《がいこく》の例《れい》でよくひきあひに出《だ》されるのは、北《きた》アメリカ合衆國《がつしゆうこく》にあるシエラネバダ大山脈《だいさんみやく》です。これは比較的《ひかくてき》平《たひら》な土地《とち》に起《おこ》つた斷層《だんそう》で、一方《いつぽう》が持《も》ちあがり、一方《いつぽう》がすべり落《お》ちて出來《でき》たもので、斷層《だんそう》のできた方《ほう》はけはしい崖《がけ》となり、その反對《はんたい》の側《がは》は次第《しだい》にサクラメント平原《へいげん》に向《むか》つて、ゆるやかな傾斜《けいしや》を作《つく》つてゐます。
[#図版(09.png)、斷層]
日本《につぽん》で、そのシエラネバダ山脈《さんみやく》によく似《に》てゐるのは、日本《につぽん》北《きた》アルプスと呼《よ》ばれてゐる、本州《ほんしゆう》中部《ちゆうぶ》の飛騨《ひだ》山脈《さんみやく》地方《ちほう》です。飛騨側《ひだがは》はわりあひにゆるやかな斜面《しやめん》で、だん/\高《たか》さを加《くは》へて行《ゆ》きますが、それが東《ひがし》の方《ほう》、信州《しんしゆう》に跨《またが》る地方《ちほう》になりますと、つひには海拔《かいばつ》一萬尺《いちまんじやく》内外《ないがい》にも達《たつ》する我國《わがくに》第一《だいゝち》の高《たか》い山岳《さんがく》地方《ちほう》となり、御嶽《おんたけ》、乘鞍《のりくら》、穗高《ほだか》、鎗《やり》[#「鎗」は底本のまま]、藥師《やくし》、蓮華《れんげ》、立山《たてやま》、白馬《しろうま》などの峻《けは》しい、高《たか》い峯《みね》が遙《はる》かに白《しろ》い雲《くも》の上《うへ》に聳《そび》え立《た》つて、紫色《むらさきいろ》の美《うつく》しい姿《すがた》を青空《あをぞら》に輝《かゞや》かしてゐます。ところが、これが信州側《しんしゆうがは》に行《ゆ》くと急《きゆう》にぷっつり[#「ぷっつり」に傍点]と、たち切《き》られて、屏風《びようぶ》を立《た》てたようにけはしい斷崖《だんがい》(斷層《だんそう》の崖《がけ》)となつて現《あらは》れ、信州《しんしゆう》松本平《まつもとだひら》や大町《おほまち》方面《ほうめん》から見《み》ると、ます/\その雄大《ゆうだい》さを加《くは》へてゐます。
以上《いじよう》で、大體《だいたい》、生《う》まれ出《で》た山《やま》のお話《はなし》をしました。次《つ》ぎにはこはれ殘《のこ》つた山《やま》のお話《はなし》です。
(二)こはれ殘《のこ》つた山《やま》
もと/\陸地《りくち》は、海《うみ》から顏《かほ》を出《だ》して空氣中《くうきちゆう》に曝《さら》されるようになると、すぐその時《とき》から、空氣《くうき》と水《みづ》の働《はたら》きが絶《た》えず加《くは》はつて、だん/\に磨《す》り減《へ》らされていきます。たとへば、ちよつと大雨《おほあめ》が降《ふ》つても道路《どうろ》の、こゝかしこがこはれ崩《くづ》されることがあります。今《いま》言《い》つた陸地《りくち》の磨滅《まめつ》は長年《ながねん》かゝつて絶《た》え間《ま》なく行《おこな》はれるのですから恐《おそ》ろしいもので、さきには高原《こうげん》であつたところも、そこへ、はじめにできた淺《あさ》い川筋《かはすぢ》がだん/\に深《ふか》い廣《ひろ》い谷《たに》となつて、兩側《りようがは》を刻《きざ》みおとし、しまひには堅《かた》い部分《ぶぶん》だけが殘《のこ》つて、軟《やはらか》い部分《ぶぶん》はこと/″\く洗《あら》ひ流《なが》され、とう/\幾《いく》つかの獨立《どくりつ》した山《やま》ができ上《あが》ります。これが、こはれ殘《のこ》りの山《やま》です。山《やま》といふものはかうして出來《でき》ることもあるのです。
日本《につぽん》には、こはれ殘《のこ》りの山《やま》だと、はっきりいへる大《おほ》きな山《やま》はありませんが、英國《えいこく》スコットランドの西北部《せいほくぶ》やスカンヂナビア半島《はんとう》などには、そのいゝ例《れい》があります。
しかし、皺《しわ》の山《やま》でも、噴《ふ》き出《だ》した山《やま》でも、その外《ほか》の山《やま》でも、みな絶《た》えず風化《ふうか》作用《さよう》や浸蝕《しんしよく》作用《さよう》を受《う》けますから、できたてのときとくらべると、どれも、今《いま》では、ひどく磨《す》り削《けづ》られてゐるわけです。殊《こと》に皺《しわ》の山《やま》は、大昔《おほむかし》に出來《でき》たものになりますと、もはやその大部分《だいぶぶん》が削《けづ》り取《と》られて、胴體《どうたい》のみが殘《のこ》り、こはれ殘《のこ》りの山《やま》とちよっと區別《くべつ》がつかないことがあります。赤石《あかいし》山脈《さんみやく》、木曾《きそ》山脈《さんみやく》、筑波《つくば》山脈《さんみやく》、中國《ちゆうごく》山脈《さんみやく》のように、主《しゆ》として御影石《みかげいし》からできてゐる山《やま》がそれです。
(三)山《やま》の高《たか》さ
世界中《せかいじゆう》で一《いち》ばんの高山《こうざん》といへば、なんといつても、インドの北部《ほくぶ》、チベットとの境《さかひ》にあるヒマラヤ山脈《さんみやく》の上《うへ》に出《で》るものはありません。この山脈《さんみやく》には八千《はつせん》めーとる[#「めーとる」に傍点]以上《いじよう》の峯《みね》が五《いつ》つもあり、ことに、大體《だいたい》中央《ちゆうおう》に近《ちか》いところにあるエベレスト峯《ほう》は海拔《かいばつ》八千《はつせん》八百《はつぴやく》四十《しじゆう》めーとる[#「めーとる」に傍点]にも上《のぼ》つてゐて、地球上《ちきゆうじよう》での最高《さいこう》の場所《ばしよ》となつてゐます。日本《につぽん》で一《いち》ばん高《たか》い山《やま》は、いふまでもなく臺灣《たいわん》の新高山《にひたかやま》ですが、それは海拔《かいばつ》三千《さんぜん》九百《くひやく》五十《ごじゆう》めーとる[#「めーとる」に傍点]ですから、エベレストに比《くら》べると、その半分《はんぶん》にも足《た》らないわけです。
[#図版(10.png)、ヒマラヤ連峯を望む]
なほ面白《おもしろ》いことは、世界《せかい》最高《さいこう》の山脈《さんみやく》はほとんどみんなインドの北方《ほつぽう》からチベット、トルキスタン地方《ちほう》に至《いた》るアジアの中央部《ちゆうおうぶ》に集《あつま》つてゐることです。ヒマラヤ山脈《さんみやく》につぐ世界《せかい》で第二《だいに》の高山《こうざん》は、そのすぐ西北《せいほく》に隣《とな》りしてゐるカラコルム山脈《さんみやく》で、それには八千《はつせん》百《ひやく》二十《にじゆう》めーとる[#「めーとる」に傍点]から八千《はつせん》六百《ろつぴやく》二十《にじゆう》めーとる[#「めーとる」に傍点]に至《いた》る三《みつ》つの高《たか》い峯《みね》があります。チベット高原《こうげん》でも七千二百《ちしせんにひやく》めーとる[#「めーとる」に傍点]から八千《はつせん》めーとる[#「めーとる」に傍点]あり、トルキスタンのパミール高原《こうげん》は七千《しちせん》めーとる[#「めーとる」に傍点]から七千八百《しちせんはつぴやく》六十《ろくじゆう》めーとる[#「めーとる」に傍点]もあります。
ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、大洋洲《たいようしゆう》とアジア以外《いがい》の大陸《たいりく》を見渡《みわた》しても、たゞ一《ひと》つ南《みなみ》アメリカのアンデス山脈《さんみやく》の最高峯《さいこうほう》アコンカグワが七千《しちせん》四十《しじゆう》めーとる[#「めーとる」に傍点]に達《たつ》してゐるだけで、その他《た》は大抵《たいてい》六千《ろくせん》めーとる[#「めーとる」に傍点]以下《いか》のものばかりです。ヨーロッパで有名《ゆうめい》なアルプス山脈《さんみやく》の最高峯《さいこうほう》モン・ブラン(白山《はくさん》)は四千《しせん》八百《はつぴやく》十《じゆう》めーとる[#「めーとる」に傍点]、北米《ほくべい》ロッキー山脈《さんみやく》の最高孝《さいこうほう》[#「孝」は底本のまま]ブランカ・ピークは四千《しせん》三百《さんびやく》八十六《はちじゆうろく》めーとる[#「めーとる」に傍点]しかありません。
日本《につぽん》で新高山《にひたかやま》に次《つ》ぐ高山《こうざん》は臺灣《たいわん》にはなか/\多《おほ》いですが、内地《ないち》では富士山《ふじさん》(三・七七八めーとる)が最《もつと》も高《たか》く、それに次《つ》ぐものは駿河《するが》、甲斐《かひ》に跨《またが》る白根山《しらねさん》(三・一九二めーとる)信州《しんしゆう》の鎗《やり》が嶽《たけ》[#「鎗」は底本のまま](三・一八〇めーとる)駿河《するが》の東嶽《ひがしだけ》(三・一四六めーとる)駿《すん》、信《しん》の赤石嶽《あかいしだけ》(三・一二〇めーとる)などで、三千《さんぜん》めーとる以上《いじよう》の高山《こうざん》は臺灣《たいわん》のを除《のぞ》いては、こと/″\く本州《ほんしゆう》中部《ちゆうぶ》の甲斐《かひ》、駿河《するが》、飛騨《ひだ》、信濃《しなの》の四箇國《しかこく》に集《あつま》つてゐます。
そこで、今度《こんど》は陸《りく》の高《たか》さと海《うみ》の深《ふか》さとを比《くら》べてみませう。太平洋《たいへいよう》、大西洋《たいせいよう》、インド洋《よう》などの、大《おほ》きな海洋《かいよう》の平均《へいきん》の深《ふか》さは大體《だいたい》三千《さんぜん》めーとる[#「めーとる」に傍点]から四千《しせん》めーとる[#「めーとる」に傍点]ぐらゐですが、ところどころに、急《きゆう》にぐい[#「ぐい」に傍点]と深《ふか》くなつてゐるところがあります。そこを『海溝《かいこう》』と名《な》づけてゐます。太平洋《たいへいよう》にはことに海溝《かいこう》が非常《ひじよう》に多《おほ》く、その中《なか》でも最《もつと》も深《ふか》いのは日本《につぽん》本州《ほんしゆう》の沖《おき》、伊豆七島《いずしちとう》の東方《とうほう》にある海溝《かいこう》で、九千《くせん》九百《くひやく》五十《ごじゆう》めーとる以上《いじよう》に達《たつ》してゐるといはれてゐます。これが世界中《せかいじゆう》で、最深《さいしん》の場所《ばしよ》で、世界《せかい》最高《さいこう》のエベレスト峯《ほう》に比《くら》べても、なほ一千《いつせん》百十《ひやくじゆう》めーとる[#「めーとる」に傍点]も深《ふか》くなつてゐるわけです。
ですから、地球上《ちきゆうじよう》の最低《さいてい》のところと最高《さいこう》のところとの隔《へだた》り、つまりこの日本島沖《につぽんとうおき》の海溝《かいこう》の深《ふか》さと、エベレストの高《たか》さとを加《くは》へた和《わ》は、實《じつ》に一萬《いちまん》八千《はつせん》七百《しちひやく》九十《くじゆう》めーとる、ざっと十二《じゆうに》まいる[#「まいる」に傍点]にもなります。しかし、これも地球《ちきゆう》の直徑《ちよつけい》八千《はつせん》まいる[#「まいる」に傍点]に比《くら》べるとあまり大《たい》したものではないでせう。太平洋《たいへいよう》には、なほほかに九千《くせん》めーとる以上《いじよう》に達《たつ》する海溝《かいこう》が五箇所《ごかしよ》もあり、五千《ごせん》めーとる以上《いじよう》九千《くせん》めーとるに及《およ》ぶものは世界中《せかいじゆう》になほ十六箇所《じゆうろつかしよ》もあります。
それゆゑ、けっきよく陸地《りくち》の高《たか》さは海《うみ》の深《ふか》さとは到底《とうてい》比《くら》べものにはなりません。陸地《りくち》をすっかり削《けづ》りとつて、海《うみ》の底《そこ》に沈《しづ》めるとなれば、それこそ影《かげ》も形《かたち》もなくなつてしまふわけです。
(四)山《やま》の形《かたち》を表《あらは》す圖面《ずめん》
陸地《りくち》表面《ひようめん》のでこぼこ[#「でこぼこ」に傍点]や配列《はいれつ》のあり樣《さま》を圖面上《ずめんじよう》に表《あらは》して、研究《けんきゆう》するといふことは、私《わたくし》どもにとつての大切《たいせつ》な爲事《しごと》の一《ひと》つです。これは、みなさんが遠足《えんそく》や修學《しゆうがく》旅行《りよこう》や、山登《やまのぼ》りにいかれる際《さい》にも、なくてはならないもので、つまり地形《ちけい》を細《こま》かく圖面上《ずめんじよう》に寫《うつ》し出《だ》したものなのですから、これを『地形圖《ちけいず》』と名《な》づけてゐます。
[#図版(11.png)、山の形を表す圖面]
地形圖《ちけいず》上《じよう》で山《やま》の高低《こうてい》を表《あらは》す、方式《ほうしき》はいろ/\ありますが、その主《おも》なものは、等高線式《とうこうせんしき》、けば式《しき》、鳥瞰式《ちようかんしき》、ぼかし式《しき》などです。
(イ)等高線式《とうこうせんしき》。 これは曲線式《きよくせんしき》ともいひ、山《やま》の同《おな》じ高《たか》さのところを線《せん》でつないで圖面上《ずめんじよう》に表《あらは》したものです。それには大抵《たいてい》海水面《かいすいめん》を高《たか》さ零度《れいど》とし、だん/\と上方《じようほう》に同《おな》じ高《たか》さをもとめて線《せん》を引《ひ》くのです。この式《しき》は地形《ちけい》を表《あらは》すには最《もつと》も正確《せいかく》な優《すぐ》れた仕方《しかた》で、曲線《きよくせん》が互《たがひ》に接近《せつきん》して複雜《ふくざつ》になつてゐるところは山《やま》の急《きゆう》な場所《ばしよ》で、あらいところは緩《ゆる》い坂《さか》を示《しめ》すことになります。
(ロ)けば式《しき》。 けば[#「けば」に傍点]と云《い》ふ細《こま》かい毛《け》のような線《せん》で、山《やま》に陰日向《かげひなた》をつけ、しぜんに高低《こうてい》を表《あらは》したものをいひます。ですから、また『陰影式《いんえいしき》』とも呼《よ》んでゐます。普通《ふつう》は、麓《ふもと》の、坂《さか》の緩《ゆるや》かなところはけば[#「けば」に傍点]をあらく、長《なが》くかつ細《こま》かくかき、高《たか》くなるほど密《みつ》に、短《みじか》く太《ふと》くしていくのです。この式《しき》の地形圖《ちけいず》では山《やま》の高低《こうてい》ははっきりわかりますが、等高線式《とうこうせんしき》のようにある場所《ばしよ》が海拔《かいばつ》何《なん》めーとる[#「めーとる」に傍点]あるかといふ正確《せいかく》なことは表《あらは》せません。
(ハ)鳥瞰式《ちようかんしき》。 これは鳥《とり》になつて高《たか》い空《そら》から見下《みおろ》してかいたような地形圖《ちけいず》で、たとへば飛行機《ひこうき》からうつした山《やま》の寫眞《しやしん》と同《おな》じわけのものです。これはまるで、ぱのらま[#「ぱのらま」に傍点]のようで、一《いち》ばん實物《じつぶつ》に近《ちか》いので、だれにでも地貌《ちぼう》が手《て》にとるようにわかります。昔《むかし》の地圖《ちず》や、今日《こんにち》でも名勝《めいしよう》、舊跡《きゆうせき》などの案内圖《あんないず》には、よくこの式《しき》をとつてゐます。
(ニ)ぼかし式《しき》。 これは褐色《かばいろ》や黒色《くろいろ》の繪《え》の具《ぐ》で濃淡《のうたん》をつけ、その濃《こ》さの度合《どあ》ひでもつて山《やま》の區域《くいき》や高低《こうてい》を表《あらは》したものです。色《いろ》の濃《こ》いほど高《たか》く、低《ひく》くなるに從《したが》つてうすく塗《ぬ》ります。ですから、また『濃淡式《のうたんしき》』とも名《な》づけてゐます。海《うみ》の深《ふか》さを表《あらは》すにも、よくこの式《しき》が用《もち》ひられますが、海《うみ》の方《ほう》は必《かなら》ず青色《あをいろ》を使《つか》ひ、深《ふか》いほど色《いろ》を濃《こ》く強《つよ》くつけます。
(つづく)
底本:『山の科学 No.47』復刻版 日本児童文庫、名著普及会
1982(昭和57)年6月20日発行
親本:『山の科學』日本兒童文庫、アルス
1927(昭和2)年10月3日発行
入力:しだひろし
校正:
xxxx年xx月xx日作成
青空文庫作成ファイル:
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*地名
(※ 市町村名は、平成の大合併以前の表記のまま。一般的な国名・地名などは解説省略。- [日本]
- 本州 ほんしゅう 日本列島の本幹をなす最大の島。東は太平洋、西は日本海に面し、北は津軽海峡を隔てて北海道、南は瀬戸内海を距てて四国・九州に対する。東北・関東・中部・近畿・中国の5地方に区分される。
- 日本海 にほんかい アジア大陸の東、朝鮮半島と日本列島との間にある海。面積約100万平方km。間宮・宗谷・津軽・朝鮮の諸海峡によってオホーツク海・太平洋・東シナ海に通ずる。水深は平均1667m、最深部は3796m。
- 表日本 おもて にほん 本州の、太平洋に臨む一帯の地。←
→裏日本。 - 裏日本 うら にほん 本州の、日本海に臨む一帯の地。冬季降雪が多い。明治以後、近代化の進んだ表日本に対して用いられ始めた語。←
→表日本 - -----------------------------------
- 北海道地方:
- [北海道] ほっかいどう
- 石狩平野 いしかり へいや 北海道西部、石狩川下流にひろがる平野。北海道第一の農牧地、また、産業・文化の中心地域。
- 上川盆地 かみかわ ぼんち 北海道中央部にある盆地。気候は内陸性。日本の最寒冷地の一つ。中心に旭川市があり、旭川盆地ともいう。米作が盛ん。
- 富良野盆地 ふらの ぼんち 北海道中央部、夕張山地と十勝岳火山群との間にある南北に長い断層盆地。空知川上流域に当たり、稲作・畑作が発達、ラベンダー栽培で有名。
- 北見 きたみ (1) 北海道もと11カ国の一つ。1869年(明治2)国郡制設定により成立。現在は網走支庁と宗谷支庁に分かれる。(2) 北海道北東部の市。農産物の集散地で、農林産加工業が盛ん。人口12万9千。
- 天塩 てしお (1) 北海道もと11カ国の一つ。1869年(明治2)国郡制設定により成立。現在は上川・留萌・宗谷支庁に分属。(2) 北海道留萌地方北西部、天塩川河口の町。
- 津軽海峡 つがる かいきょう 本州と北海道との間にある海峡。太平洋と日本海とを通ずる。長さ110km、最狭部18km。西口は別に松前海峡の名がある。
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- 東北地方:
- [岩手県]
- 北上山脈 きたかみ さんみゃく → 北上高地、北上山地
- 北上高地 きたかみ こうち 主として岩手県の東部を南北に連なる、割合に山頂のそろったなだらかな山地。地形学的には隆起準平原。最高峰は早池峰山(標高1917m)。北上山地。
- [秋田県]
- [山形県]
- 新庄盆地 しんじょう ぼんち 山形県北東部に位置する盆地。
- [福島県]
- 阿武隈山脈 あぶくま さんみゃく → 阿武隈高地
- 阿武隈高地 あぶくま こうち 宮城県南部より福島県東部を経て茨城県北部に至る、南北に連なる高原状山地。高さ500〜800mの隆起準平原で、大滝根山(1192m)などが残丘としてそびえる。阿武隈山地。
- 会津盆地 あいづ ぼんち 福島県西部の盆地。南方から阿賀川(大川)
、宮川、北方から大塩川、濁川が注ぐ水稲単作地帯。会津身不知柿、薬用ニンジンが特産。中心都市は会津若松市。 - -----------------------------------
- 関東地方:
- [茨城県]
- 筑波山脈 つくば さんみゃく → 筑波山地
- 筑波山地 つくば さんち 茨城県中央部にある山地。主峰は筑波山(876m)。加波山・足尾山からなる西列と、吾国山・難台山からなる東側とに分かれる。
- 筑波山 つくばさん 茨城県南西部にある山。標高877m。峰は二つに分かれ西を男体、東を女体という。
「西の富士、東の筑波」と称せられ、風土記や万葉集の�歌の記事などに名高く、古来の歌枕。農業神として信仰登山が盛ん。筑波嶺。 - [東京]
- 関東平野 かんとう へいや 関東地方の大部分を占める日本最大の平野。
- 伊豆七島 いず しちとう 伊豆半島南東方にある大島・利島・新島・神津島・三宅島・御蔵島・八丈島の7島。東京都に属する。各島黒潮につつまれ、近海は好漁場。椿油を産出。地下水に乏しく天水を利用する所もある。
- -----------------------------------
- 中部地方:
- [新潟県]
- 越後平野 えちご へいや 新潟平野の別称。
- 新潟平野 にいがた へいや 新潟県中部、信濃川・阿賀野川下流に広がる沖積平野。水田耕作のほか、天然ガスの採掘も行われる。越後平野。蒲原平野。
- [富山県]
- 富山平原 とやま へいげん → 富山平野か
- 富山平野 とやま へいや 富山県の中央部に富山湾に面して広がる沖積平野。
- 薬師岳 やくしだけ 富山県南東部、飛騨山脈中央部にある山。標高2926m。重厚な山容を誇り、頂上に薬師如来の祠がある。東斜面にある南稜・中央・金作谷のカール(圏谷群)は特別天然記念物。
- 蓮華岳 れんげだけ 北アルプス北部、富山県と長野県にまたがる山。標高2,799m。針ノ木岳の東にあり、間に針ノ木峠がある。
- 立山 たてやま 富山県の南東部、北アルプスの北西端に連なる連峰。標高3003mの雄山を中心とし、北に大汝山(3015m)
、南に浄土山が屹立。剣岳・薬師岳などと立山連峰をなす。雄山山頂には雄山神社がある。日本三霊山の一つ。古名、たちやま。 - 白馬岳 しろうまだけ 北アルプスの北部、長野・富山・新潟の3県にまたがる後立山連峰の主峰。標高2932m。南の杓子岳・鑓ヶ岳とともに白馬三山と称し、お花畑・大雪渓などで有名。大蓮華岳。はくばさん。
- [石川県]
- 宝達山脈 ほうたつ さんみゃく 石川県、宝達(ほうだつ)丘陵か。
- [加賀] かが (1) 旧国名。今の石川県の南部。加州。賀州。
- 安宅 あたか 石川県小松市の西部、日本海沿岸の一地区。江戸時代は北前船の寄港地。古く安宅の関があったという。
- [山梨県]
- [甲斐] かい 旧国名。いまの山梨県。甲州。
- 白根山 しらねさん 三一九二メートル。(
「白峰山」とも書く) 山梨・長野・静岡の県境付近にそびえる高山の総称。甲斐嶺ともいう。南アルプスの主峰。北岳・間ノ岳・農鳥岳の3峰がつらなる。白根三山。 - 北岳 きただけ 赤石山脈の北部、山梨県西部の白峰三山の一峰。日本で第2位の高峰。標高3193m。
- 巨摩山脈 こま さんみゃく → 巨摩山地。山梨県。
- [長野県]
- [信濃] しなの 旧国名。いまの長野県。科野。信州。
- [信州] しんしゅう 信濃国の別称。
- 松本平 まつもとだいら 長野県。
- 大町 おおまち 長野県北西部の市。松本盆地北部の中心。北アルプス東側の観光拠点・登山基地。人口3万2千。
- 木曽山脈 きそ さんみゃく → 木曾山脈
- 木曾山脈 きそ さんみゃく 長野県南西部から岐阜・愛知の県境に連なる山脈。天竜川と木曾川の間にあり、最高峰は駒ヶ岳(2956m)。
- 御岳・御嶽 おんたけ 長野・岐阜県にまたがる活火山。北アルプスの南端に位置し、標高3067m。1979年に史上初めて噴火。頂上に御岳神社があり、古来、修験道で屈指の霊峰。きそおんたけ。おんたけさん。
- 伊那山脈 いな さんみゃく → 伊那山地。長野県。
- 伊那山地 いな さんち 南アルプスの西側に平行して南北に延びる標高1,600〜1,800mの山域の総称である。
- [岐阜県] ぎふ
- 濃尾平野 のうび へいや 岐阜・愛知両県にまたがる広大な平野。木曾川・長良川・揖斐川などがその間を流れ、下流には輪中が発達。
- 日本アルプス にほん- (アルプスは Alps スイスのアルプスのように、高峰が連なるところから名づけられた)本州中央部を占める飛騨・木曾・赤石山脈の総称。イギリス人ウィリアム・ゴーランドが明治14(1881)飛騨山脈をさして用いたのに始まる。のち、イギリス人ウェストンが赤石山脈を南アルプス、小島烏水が木曾山脈を中央アルプスとよび、同29年ウェストンが北アルプス(飛騨山脈)
・中央アルプス・南アルプスの総称として用いた。狭義には北アルプスをいう。 - [飛騨] ひだ 旧国名。今の岐阜県の北部。飛州。
- 飛騨山脈 ひだ さんみゃく 本州中央部、新潟・長野・富山・岐阜4県の境に連なる山脈。山頂近くにカールが残る。立山・剣岳・白馬岳・槍ヶ岳・乗鞍岳などを含み、最高峰は奥穂高岳(3190m)。大部分、中部山岳国立公園に入る。北アルプス。
- 御岳 おんたけ 御岳・御嶽。長野・岐阜県にまたがる活火山。北アルプスの南端に位置し、標高3067m。1979年に史上初めて噴火。頂上に御岳神社があり、古来、修験道で屈指の霊峰。きそおんたけ。おんたけさん。
- 乗鞍岳 のりくらだけ (西方から望むと馬の背に似ているからいう) 岐阜県北部から長野県中部にまたがる火山。飛騨山脈南部の峻峰。標高3026m。山頂近くにコロナ観測所がある。
- 穂高岳 ほだか/ほたかだけ 北アルプス南部、槍ヶ岳の南方、上高地の北にそびえる一群の山峰。長野・岐阜県境にあって、最高峰の奥穂高岳(3190m)のほか前穂高岳(3090m)
・西穂高岳(2909m) ・北穂高岳・涸沢岳などに分かれる。東側には涸沢カールがある。 - 鎗 やり → 槍ヶ岳
- 槍ヶ岳 やりがたけ 長野・岐阜両県境にある、北アルプス第2位の高峰。その頂上が槍の穂のように直立している。穂高岳に連なる。標高3180m。
- 赤石岳 あかいしだけ 赤石山脈の主要峰の一つ。日本で第7位の高峰。静岡県と長野県にまたがる。標高3120m。
- 赤石山系 あかいし さんけい
- 赤石山脈 あかいし さんみゃく 中部地方の南部にある山脈。長野・山梨・静岡の3県にわたり、南アルプス国立公園をなす。最高峰は北岳(3193m)。
- 白峰山脈 しらみね さんみゃく 石川県、両白(りょうはく)山地か。
- 両白山地 りょうはく さんち 富山・石川・福井・岐阜の県境にまたがる山地。白山を中心とする白山山地(加越山地)と、能郷白山(1617m)を中心とする越美山地をあわせていう。加濃越山地。
- [静岡県]
- 丹那盆地 たんな ぼんち 静岡県、伊豆半島北部か。
- 富士山 ふじさん (不二山・不尽山とも書く) 静岡・山梨両県の境にそびえる日本第一の高山。富士火山帯にある典型的な円錐状成層火山で、美しい裾野を引き、頂上には深さ220mほどの火口があり、火口壁上では剣ヶ峰が最も高く3776m。史上たびたび噴火し、1707年(宝永4)爆裂して宝永山を南東中腹につくってから静止。箱根・伊豆を含んで国立公園に指定。立山・白山と共に日本三霊山の一つ。芙蓉峰。富士。
- [駿河] するが 旧国名。今の静岡県の中央部。駿州。
- 東岳 ひがしだけ 三一四六メートル。
- 悪沢岳 わるさわだけ 静岡県北部、赤石山脈にある山。日本で第6位の高峰。前岳・中岳(荒川岳)とともに荒川三山をなす。標高3141m。東岳。
- -----------------------------------
- 近畿地方:
- [京都府]
- 奥丹後半島 おくたんご はんとう 丹後半島の別称。
- 丹後半島 たんご はんとう 京都府北部、日本海に突出し、若狭湾の西を限る半島。奥丹後半島。与謝半島。
- [大阪府] おおさか
- 摂津河内平野 せっつ かわち へいや → 摂河泉平野、大阪平野か
- 摂河泉 せっかせん 摂津国(大阪府・兵庫県)と河内国(大阪府)と和泉国(大阪府)。
- 大阪平野 おおさか へいや 大阪湾の沿岸、大阪府と兵庫県南東部にまたがる、近畿地方最大の平野。淀川・大和川などが流れる。
- [奈良県] なら
- 三笠山 みかさやま 奈良市の東部、高円山と若草山との間にある山。春日神社の東に接してその神域をなす。山容は衣笠形。阿倍仲麻呂の歌に名高い。春日山の一部をなす。標高283m。御笠山。御蓋山。
(歌枕) - -----------------------------------
- 中国地方:
- 中国山脈 ちゅうごく さんみゃく → 中国山地
- 中国山地 ちゅうごく さんち 中国地方の主体をなす山地。中国脊梁山地とその南北にある吉備高原・石見高原などに分けられる。脊梁部の高さは、1200〜1300mに達するが、大部分は1000m以下で高原状の隆起準平原。多くの盆地を抱く。
- -----------------------------------
- 四国地方:
- [香川県]
- [讃岐] さぬき
- 屋島 やしま 香川県高松市にある島山。かつての島が陸繋して半島となる。山頂の平坦な溶岩台地で屋根形をなし、南北二嶺に分かれる。長門の壇ノ浦とともに源平古戦場として名高く、南嶺に屋島寺がある。
- [高知県]
- 佐川盆地 さがわ ぼんち 高知県高岡郡佐川町周辺地域をさす。秩父累帯中帯および南帯から四万十(累)帯にまたがり、各種の中・古生界が分布。化石を多産し、複雑な構造で古くから研究され、日本のなかで、最も早く近代地質学の調査が及んだ地域の一つ。川内が谷・蔵法院・斗賀野・鳥巣式石灰岩・仏像構造線など日本地史上の重要な模式地が集中している。
(新版地学) - -----------------------------------
- 九州地方:
- 庄原盆地 しょうばる ぼんち
- [熊本県]
- 阿蘇 あそ 熊本県北東部、阿蘇山の北麓に位置する市。稲作と高原野菜栽培、牛の放牧が盛ん。観光資源にも富む。人口3万。
- 熊本平原 くまもと へいげん → 熊本平野
- 熊本平野 くまもと へいや 熊本県北西部に広がる平野。阿蘇山麓から続く洪積台地(肥後台地)と島原湾に面する沖積低地(熊本低地)とから成る。白川、緑川が流れ、かつては県下第一の穀倉地帯を形成した。
- 人吉盆地 ひとよし ぼんち 熊本県南部、九州山地にある断層盆地。球磨川が貫流。江戸時代、水田を開くために百太郎溝、幸野溝などが開削された。中心は人吉市。
- 人吉 ひとよし 熊本県南端、人吉盆地の中心都市。もと相良氏2万石の城下町。球磨川が貫流し、景勝の地。林産物の集散地。人口3万8千。
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- 太平洋 たいへいよう (Pacific Ocean) (マゼランが1520〜21年に初めて横断した時に無風平穏だったため名づけた) 三大洋の一つ。アジア大陸の東、南北アメリカ大陸の西にあり、世界海洋の半ばを占める大洋。面積約1億6624万平方km。平均深度4188m。最大深度1万920m(マリアナ海溝中のチャレンジャー海淵)。
- 大西洋 たいせいよう (Atlantic Ocean) 三大洋の一つ。ヨーロッパおよびアフリカと南北アメリカとの間にある大洋。総面積約8656万平方km。地球表面の約6分の1、世界海面の約4分の1を占める。平均深度3736m。最大深度8605m(プエルト‐リコ海溝)。
- インド洋 インド よう 三大洋の一つ。アジア・オーストラリア・アフリカの各大陸と南極大陸とに囲まれた海。その北部はベンガル湾・アラビア海。面積約7343万平方km。平均深度3872m。最大深度7125m(ジャワ海溝)。
- [ロシア]
- シベリア Siberia・西比利亜 アジア北部、ウラル山脈からベーリング海にわたる広大な地域。ロシア連邦の一地方でシベリア連邦管区を構成。西シベリア平原・中央シベリア高原・東シベリアに三分される。面積約1000万平方km。十月革命までは極東も含めてシベリアと称した。ロシア語名シビーリ。
- カラフト 樺太 サハリンの日本語名。唐太。
- サハリン Sakhalin 東はオホーツク海、西は間宮(タタール)海峡の間にある細長い島。1875年(明治8)ロシアと協約して日露両国人雑居の本島をロシア領北千島と交換、1905年ポーツマス条約により北緯50度以南は日本領土となり、第二次大戦後、ソ連領に編入。現ロシア連邦サハリン州の主島。北部に油田がある。面積7万6000平方km。樺太。サガレン。
- [朝鮮]
- 蓋馬高原 ケーマ/ケマこうげん Kaema Plateau 朝鮮半島北部にある高原地帯。現在は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の両江道、咸鏡南道などに属している。広さは 40,000 平方km、標高は1,000m から 2,000m ほどの間で、朝鮮半島最大の高原であり、
「朝鮮の屋根」とも呼ばれる。 - [台湾] たいわん (Taiwan) 中国福建省と台湾海峡をへだてて東方200kmにある島。台湾本島・澎湖列島および他の付属島から成る。総面積3万6000平方km。明末・清初、鄭成功がオランダ植民者を追い出して中国領となったが、日清戦争の結果1895年日本の植民地となり、1945年日本の敗戦によって中国に復帰し、49年国民党政権がここに移った。60年代以降、経済発展が著しい。人口2288万(2006)。フォルモサ。
- 新高山 にいたかやま 台湾第一の高山である玉山の日本統治時代の呼称。
- 玉山 ぎょくざん (Yu Shan) 台湾第一の高山。標高3952m。→新高山
- [中国]
- [シナ] 支那 (
「秦(しん) 」の転訛)外国人の中国に対する呼称。初めインドの仏典に現れ、日本では江戸中期以来第二次大戦末まで用いられた。戦後は「支那」の表記を避けて多く「シナ」と書く。 - 揚子江 ようすこう (Yanzi Jiang) 長江の通称。本来は揚州付近の局部的名称。
- 長江 ちょうこう (2) (Chang Jiang) 中国第一の大河。青海省南西部に発源、雲南・四川の省境を北東流し、重慶市を貫き、三峡を経て湖北省を横断、江西・安徽・江蘇3省を流れて東シナ海に注ぐ。全長約6300km。流域は古来交通・産業・文化の中心。揚子江。大江。江。
- アジア大陸 Asia・亜細亜 六大州の一つ。東半球の北東部を占め、ヨーロッパ州と共にユーラシアを成す。面積は約4400万平方km、世界陸地の約3分の1。人口は約34億6000万(1995)で、世界人口の2分の1以上。東は日本、北はシベリア、南はインドネシア、西はトルコ・アラビアにわたる地域。
- ヨーロッパ大陸 Europa・欧羅巴 (ギリシア語のEuropeから) 六大州の一つ。ユーラシア大陸の西部をなす半島状の部分と、それに付属する諸島とから成り、面積約1050万平方km。人口約7億2600万(1995)。北は北極海、西は大西洋に臨み、南は地中海を距ててアフリカ大陸に対し、アジアとは東はウラル山脈、南東はカフカス山脈・黒海・カスピ海で境を接する。ギリシア・ローマの高度古代文明を経て、中世の約千年間キリスト教的統一文明圏を形成。イギリス・ドイツ・フランス・イタリア・ロシアなど約40の独立国に分かれる。エウロパ。欧州。
- アメリカ大陸 America・亜米利加 (1) 北アメリカと南アメリカの総称。コロンブスより少し遅れて渡航したイタリアの航海者アメリゴ=ヴェスプッチの名に因んだ呼称。
- アフリカ大陸 Africa・阿弗利加 (ローマ人がカルタゴ隣接地方を呼んだ語。のち南方の大陸全土を指した) 六大州の一つ。ヨーロッパの南方に位置する大陸。かつて暗黒大陸といわれ、ヨーロッパ列強の植民地であったが、第二次大戦後急速に独立国が生まれ、その数は周辺の島嶼国も含めて54に達する(2006)。イスラム世界の北アフリカとサハラ以南アフリカとに大別される。面積3030万平方km。人口8億9千万(2004)。
- オーストラリア大陸 Australia・濠太剌利 (1) 世界最小の大陸。東は太平洋、西・南はインド洋、北はアラフラ海に面する。4万〜5万年前から先住民アボリジニが居住。
- [インド]
- ヒマラヤ山脈 -さんみゃく Himalaya (
「雪の家」の意) パミール高原に続いて南東に走り、インド・チベット間に東西に連なる世界最高の大山脈。長さ約2550km、幅約220km、平均高度4800m。最高峰はエヴェレスト(8850m)。 - エベレスト Everest エヴェレスト。(ヒマラヤ山脈の測量者イギリス人エヴェレスト(George E.1790〜1866)に因んで命名) ヒマラヤ山脈の高峰。ネパールとチベットとの国境にそびえ、巨大な氷河を持ち、世界の最高峰。標高8848m。1953年5月29日イギリス登山隊のヒラリーとテンジンが初めて登頂。チベット語名チョモランマ。ネパール語名サガルマーター。
- -----------------------------------
- [中央アジア] ちゅうおう アジア (Central Asia)アジア中央部、中国のタリム盆地からカスピ海に至る内陸乾燥地域。狭義には旧ソ連側の西トルキスタンを指し、カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・トルクメニスタンの五つの共和国がある。イスラム教徒が多い。面積約400万平方km。
- ゴビ砂漠 -さばく Gobi・戈壁。(モンゴル語で、砂礫を含むステップの意) モンゴル地方から天山南路に至る一帯の砂礫のひろがる大草原。狭義(通常)には、モンゴル高原南東部の砂漠。標高約1000m。ゴビ砂漠。
- コンロン山脈 -さんみゃく 崑崙山脈。中国西部の山脈。チベット高原とタリム盆地の間を東西に走る山地。全長2400km。西部、中部、南部に大別され、狭義には西部崑崙をさす。黄河、揚子江の水源で、最高峰はウルー-ムズターク(7723m)。
- 崑崙 こんろん (1) 中国古代に西方にあると想像された高山。書経の禹貢、爾雅・山海経などに見える。崑山。(2) チベットと新疆ウイグル自治区の境を東西に走る大山系。(3) 唐・宋の頃、マレー半島・インドシナ半島方面の総称。
- チベット高原 Tibet・西蔵 中国四川省の西、インドの北、パミール高原の東に位置する高原地帯。7世紀には吐蕃が建国、18世紀以来、中国の宗主権下にあったが、20世紀に入りイギリスの実力による支配を受け、その保護下のダライ=ラマ自治国の観を呈した。第二次大戦後中華人民共和国が掌握、1965年チベット自治区となる。住民の約90%はチベット族で、チベット語を用い、チベット仏教を信仰する。平均標高約4000mで、東部・南部の谷間では麦などの栽培、羊・ヤクなどの牧畜が行われる。面積約123万平方km。人口263万(2005)。区都ラサ(拉薩)。
- カラコルム山脈 Karakorum チベット高原とパミール高原との間にあり、北は崑崙山脈、南はヒマラヤ山脈に続く山脈。7千m以上の高峰が多く、最高峰はK2(8611m)。古来パミールと共に葱嶺と称した。
- パミール高原 Pamir 中央アジア南東部の地方。チベット高原の西に連なり、標高7000m級の高峰を含む諸山系と高原とから成り、世界の屋根といわれる。大部分はタジキスタンに含まれる。葱嶺。
- デカン高原 Deccan インド南部の半島部をなす高原地帯。東はベンガル湾、西はアラビア海に面する。
- トルキスタン Turkestan アジア中央部、パミール高原および天山山脈を中心としてその東西にわたる地方。西部の西トルキスタンはカザフスタン・トルクメニスタン・ウズベキスタン・タジキスタン・キルギスの5共和国から成り、東部の東トルキスタンは中国の新疆ウイグル自治区に属す。
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- [オセアニア] Oceania オーストラリア・ニュー‐ジーランド・メラネシア・ポリネシア・ミクロネシアの総称。広義には、インドネシアその他東南アジアの島々をも含む。大洋州。
- 大洋州 たいようしゅう (→)オセアニアに同じ。
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- [ヨーロッパ]
- アルプス山脈 Alps ヨーロッパの中央南部に横たわる山脈。イタリア・フランス・スイス・ドイツ・オーストリア各国境に連なる。最高峰モンブラン(4807m)をはじめマッターホルン・ユングフラウ・アイガーなどの高峰がそびえ、氷河がある。
- モン‐ブラン Mont Blanc (
「白い山」の意) アルプス山脈中の最高峰。標高4807m。フランス・イタリア両国の国境にそびえる。万年雪に覆われて多くの氷河が流下。山麓に登山基地シャモニの町がある。イタリア語名モンテ‐ビアンコ。 - ユラ山脈 → ジュラ山脈
- ジュラ山脈 Jura フランスとスイスにまたがる山脈。褶曲構造がよく地形に現れている。延長300km。ドイツ語名ユラ。侏羅。
- スカンジナビア半島 -はんとう Scandinavia スカンディナヴィア。北ヨーロッパの半島。長さ約1800km、幅最大約800km。フィンランドの北西端から南西に延びて、バルト海・ボスニア湾と大西洋との間に横たわり、東部はスウェーデン、西部はノルウェー。両国国境にスカンディナヴィア山脈が走り、海岸にフィヨルド(峡湾)が多い。
- [イギリス]
- スコットランド Scotland・蘇格蘭 イギリス、グレート‐ブリテン島北部の地方。古くはカレドニアと称。1707年イングランドと合併。中心都市エディンバラ。
- [イタリア]
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- [アフリカ]
- [エジプト]
- ナイル川 -がわ Nile アフリカ大陸北東部を北流する世界最長の大河。ヴィクトリア湖西方の山地に発源、同湖とアルバート湖とを経、白ナイルと呼ばれて北流、南スーダンを過ぎ、ハルツーム付近で東方エチオピア高原から流下する青ナイルと合して、エジプトを貫流し、地中海に注ぐ。長さ6650km。下流域は灌漑による農業地帯で、古代文明発祥の地。
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- [北アメリカ]
- ミシシッピー川 -がわ Mississippi 北アメリカの大河。ミネソタ州のイタスカ湖に発源し、中央大平原を南流し、メキシコ湾に注ぐ。支流ミズーリ川の源流から本流河口部までの長さ6210km。
- ロッキー山脈 Rocky 北アメリカ大陸西部の大山脈。メキシコの中部からアメリカ合衆国・カナダを縦断してアラスカに及ぶ。長さ約4500km。最高峰はコロラド州のエルバート山(4399m)で、ほかにも4000m級の高峰が多い。
- ブランカ・ピーク Blanca Peak アメリカ、コロラド州。サングレ・ド・クリスト山脈。プエブロの南西約80km。高さ4370m(4364m)。リオ・グランデの源流サン・ルーイス谷の東側にそびえる。記録のある初登頂は、1874年8月に G.M.ウィーラー測量隊に属したギルバート=トムソンとフランク・カーペンター。1875年6月にヘイドゥン測量隊は頂上に2〜3mの穴を発見した。これはワシを捕らえる罠をしかける所か、見張場の跡であろうという。
(コン外国山名) - エルバート山 Elbert, Mount アメリカ西部、コロラド州中部、ロッキー山脈支脈のサワッチ Sawatch 山脈にあり、ロッキー山脈の最高峰。高さ4399m。
(コン外国地名) - シエラネバダ山脈 Sierra Nevada (
「雪に被われた山脈」の意) (2) アメリカ、カリフォルニア州の山脈。延長650km、最高峰はホイットニー山(4418m)。西側にサン‐ホーキン構造谷が併走する。 - アリゾナ高原 → コロラド高原か
- コロラド高原
- アリゾナ Arizona アメリカ合衆国南西部の州。鉱業が盛ん。州都フェニックス。
- コロラド川 -がわ Colorado アメリカ合衆国の西部、ロッキー山脈に発源し、南西に流れてカリフォルニア湾に注ぐ川。中流の峡谷はグランド‐キャニオンとして知られる。長さ2320km。
- コロラド大峡谷 -だいきょうこく → グランド‐キャニオンか
- グランド‐キャニオン Grand Canyon アメリカ西部、アリゾナ州北西部にある峡谷。コロラド川がコロラド高原を浸食して形成したもので、長さ450km、深さ1600mに及ぶ。大峡谷。世界遺産。
- サクラメント平原 -へいげん
- サクラメント Sacramento アメリカ合衆国カリフォルニア州の州都。同州中央部の盆地にあり、果実栽培・稲作などの農業地帯の中心都市。ゴールド-ラッシュで発展。人口40万7千(2000)。
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- [南アメリカ]
- アマゾン川 -がわ 南米の大河。アンデス山脈中の源流からブラジル北部アマゾン盆地を東に貫流して大西洋に注ぐ。密林が流域の大部分をおおい、長さ約6516km。川幅は河口で100km。流域705万平方km。水量・流域面積とも世界第一。
- アンデス山脈 Andes 南米大陸の北岸から西岸に沿って連なる大山脈。延長約9000km。最高峰アコンカグアは標高6960m。
- アコンカグワ → アコンカグア
- アコンカグア Aconcagua 南米、アンデス山脈中の最高峰。標高6960m。アルゼンチン西部、チリとの国境近くにそびえる。1897年初登頂。
- 裏日本 うら にほん 本州の、日本海に臨む一帯の地。冬季降雪が多い。明治以後、近代化の進んだ表日本に対して用いられ始めた語。←
◇参照:Wikipedia、
*年表
- 濃尾地震 のうび じしん 1891年(明治24)10月28日、岐阜・愛知両県を中心として起こった大地震。マグニチュード8.0。激震地域は濃尾平野一帯から福井県に及び、死者7200人余、負傷者1万7000人余、全壊家屋14万余。また、根尾谷(岐阜県本巣市根尾付近)を通る大断層を生じた。
- 関東地震 かんとう じしん → 関東大震災か
- 関東大震災 かんとう だいしんさい 1923年(大正12)9月1日午前11時58分に発生した、相模トラフ沿いの断層を震源とする関東地震(マグニチュード7.9)による災害。南関東で震度6(当時の最高震度)。被害は、死者・行方不明10万5000人余、住家全半壊21万余、焼失21万余に及び、京浜地帯は壊滅的打撃をうけた。また震災の混乱に際し、朝鮮人虐殺事件・亀戸事件・甘粕事件が発生。
- 奥丹後地震 おくたんご じしん → 丹後地震か
- 丹後地震 たんご じしん 丹後半島を中心に1927年3月7日に起こった地震。マグニチュード7.3、死者2925人、1万戸以上の建物が全壊。半島の付け根の郷村断層の3mに達する左ずれが震源。北丹後地震。
◇参照:Wikipedia、
*難字、求めよ
- 幽玄 ゆうげん (1) 奥深く微妙で、容易にはかり知ることのできないこと。また、あじわいの深いこと。情趣に富むこと。
- 神威 しんい 神の威光・威力。
- 山霊 さんれい 山の神。山の精。
- 御嶽講 おんたけこう 長野・岐阜県境にある御嶽山へ登山する人たちの宗教団体。
(大日本語)/おもに長野・岐阜県境に位置する木曾御嶽山に対する信仰。タケは雨・雲を支配する神霊のすむ高所の霊界を意味し、御嶽は各地方でかなめとされる山をさした。各地のタケの一つ御嶽山は、近世中期に黒沢・王滝に新たに登山道が開設され、江戸・尾張を中心に御嶽講が結成されるなどして、富士山とともに庶民登拝の山として信仰を集めるようになった。御嶽講は神がかりして託宣をする点に特徴があり、死後信者の霊魂は霊神となって御嶽に回帰するという信仰も顕著である。 (日本史) - 三峰講 みつみねこう → 三峰信仰
- 三峰信仰 みつみね しんこう 埼玉県秩父郡大滝村三峰三峯神社に関する信仰。狼を使令(つかわしめ)とし、講組織で参詣し、またお札をいただいてきて神棚・門口に貼ったり、竹にはさんで畑に立てたりして、魔よけ・虫よけ・泥棒よけにする。
(大日本語)/埼玉県大滝村の三峰神社に対する信仰。同社の別当観音院高雲寺は本山派の修験道場として栄え、秩父山中に棲息する狼(山犬)を眷属「大口真神(おおくちまがみ) 」としていたが、これを印刷した護符が害虫・盗難・火難除けとして霊験あらたかであるという信仰が広まり、江戸中期以降、東北・関東・東海の各地に三峰講が結成され、代参が盛んにおこなわれた。1868(明治元)神仏分離により修験を廃し、神社となったが、現在も盛んな信仰を集めている。 (日本史) - 秋葉講 あきはこう → 秋葉神社
- 秋葉神社 あきは じんじゃ 静岡県春野町の秋葉山に鎮座。旧県社。祭神は火之迦具土(ほのかぐつち)神。祭祀は不詳だが、
「三代実録」にみえる岐気保神が当社にあたるとの説がある。中世、仏教と習合し、修験霊場として発展。曹洞宗大登山霊雲院秋葉寺が別当寺として一山を支配した。近世以降、火防の神として民衆の信仰を集め、秋葉詣が盛んになり各地に秋葉講が組織された。近世の朱印領は26石。神仏分離で秋葉神社として独立、秋葉寺は一時廃寺となった。例祭は12月15・16日。 (日本史) - 分水界 ぶんすいかい 地表の水が二つ以上の水系に分かれる境界。分水線。
- 分水嶺 ぶんすいれい (1) 分水界となっている山脈。分水山脈。
- 慰藉 いしゃ 慰めいたわること。同情して慰めること。
- 地球 ちきゅう (earth) われわれ人類の住んでいる天体。太陽系の惑星の一つ。形はほぼ回転楕円体で、赤道半径は6378km、極半径は6357km。太陽からの距離は平均1億4960万kmで、365日強で太陽を1周し、24時間で1自転する。地殻・マントル・核の3部分から成り、平均密度は1立方cm当り5.52グラム。表面は大気によって囲まれる。
- 星雲説 せいうんせつ (→)
「カント‐ラプラスの星雲説」に同じ。 - カントラプラスの星雲説 カント‐ラプラス‐の‐せいうんせつ 主として太陽系の成因を説明しようとした宇宙進化論の先駆。高温の星雲状のガスがゆるやかに回転運動をしているうちに重力で収縮して環を形成し、それが球状にまとまってできた惑星が、中心のガスから作られた太陽のまわりを回るようになったとする。1755年にカントが提唱し、96年にラプラスが発展させた説。星雲説。
- 流星説 りゅうせいせつ
- ラジウム radium (ラテン語で光線の意のradiusから) アルカリ土類金属元素の一種。元素記号Ra 原子番号88。ピッチブレンド中にウランと共存する。1898年キュリー夫妻が発見。銀白色の金属。天然に産する最長寿命の同位体は質量数226、アルファ線を放射して半減期1602年でラドンに変化する。医療などに用いる。
- 地殻 ちかく 地球の最外層。その下のマントルとはモホロヴィチッチ不連続面で境をなす。モホロヴィチッチ不連続面の深さは、大陸域で地表から30〜60km、海洋域で海底から約7km。地殻はマントルに比べて地震波の伝播が遅く、密度が小。海洋地殻は主に玄武岩質岩石から成り、大陸地殻の上部は主に花崗岩質岩石から成る。地皮。
- 岩漿 がんしょう (→)マグマのこと。
- マグマ magma 溶融した造岩物質(メルト)を主体とする、地下に存在する流動物体。メルト中に結晶を含み、水などの揮発成分が融けこんでいるのが普通。地上に出れば火山ガスと溶岩流などになる。固結したものが火成岩。岩漿。
- 粘土 ねばつち ねばりのある土。ねんど。
- 油土 あぶらつち (→)
「ゆど」に同じ。 - 油土 ゆど 彫刻・鋳金などの原型を作るのに用いる、オリーブ油・硫黄・蝋などをまぜた人工の粘土。緑色を帯びた暗灰色で、放置しても固化・乾燥しない。油粘土。あぶらつち。
- 橙 だいだい (ダイは「橙」の中国音の転訛) (1) ミカン科の常緑低木。幹は高さ3mほどで、葉は卵形、透明な小油点を有し葉柄に翼を持つ。初夏、葉のつけ根に白色5弁の小花をつける。果実は冬に黄熟するが、翌年の夏に再び緑色にもどるので回青橙の名がある。暖地に栽培。皮は苦味健胃薬、果実は正月の飾りにも使用。オレンジ・サンボウカン・ナツミカンは同類、また臭橙はこの一種。
- 浸食・浸蝕 しんしょく
〔地〕流水・氷河・波浪・風などが地表面を掘り削る作用。 - 風化 ふうか (2) 地表およびその近くの岩石が、空気・水などの物理的・化学的作用で次第にくずされること。岩石が土に変わる変化の過程。比喩的に、心にきざまれたものが弱くなって行くこと。
- 褶曲 しゅうきょく 堆積当時水平であった地層が、地殻変動のため、波状に曲がる現象。また、それが曲がっている状態。
- 横圧力 おうあつりょく 褶曲山脈の生成などの地殻変動の原因となる地殻内に水平に働く圧縮力。
- 造山力 ぞうざんりょく → 造山運動・造山作用
- 造山運動 ぞうざん うんどう 陸上の大山脈や弧状列島の地質構造をつくる機構。プレート収束帯における付加・衝突作用を含む地殻変動、火成活動、変成作用すべてを含む。稀に山脈形成の隆起運動だけを指す。
- 褶曲山脈 しゅうきょく さんみゃく 地殻変動によって地層が褶曲している山脈。ヒマラヤ・アルプスなど陸上の大山脈はすべてこれに属する。
- 桑田変じて滄海となる そうでん へんじて そうかいとなる
[劉廷芝、白頭を悲しむ翁に代われる詩]桑畑が変わって青い海になる。世の変遷のはげしいことのたとえ。 「滄海変じて桑田となる」とも。 - 地貌 ちぼう 地表面の形状、すなわち高低・起伏・斜面などの状態。
- 地形 ちけい 地表の形態。ちぎょう。じぎょう。
- としよる 年寄る 年をとる。老いる。
- 感興 かんきょう 興味を感ずること。面白がること。また、その興味。
- 平原 へいげん たいらな野原。
- 平野 へいや 起伏が小さく、ほとんど平らで広い地表面。ほぼ水平な古い地質時代の地層から成る構造平野(西シベリア低地の類)
、河川の沖積作用でできた沖積平野、浅海底の隆起した海岸平野などに分けられる。 - 砂漠・沙漠 さばく 乾燥気候のため、植物がほとんど生育せず、岩石や砂礫からなる荒野。ゴビ・サハラ・アラビアの砂漠の類。
- 河平原 かへいげん
- 三角洲・三角州 さんかくす 河水の運搬した土砂が、河口に沈積して生じたほぼ三角形の土地。デルタ。
- 三角州平原 さんかくす へいげん
- 湿地 しっち 河川・湖沼の近辺などで、地下水が地表に近く、水けの多いじめじめした土地。
- 密林 みつりん 木や草が密生した林。ジャングル。
- 高原 こうげん (plateau; table-landの訳語。明治32年刊「英華字典」所載) 海面からかなり高い位置にあって、平らな表面をもち、比較的起伏が小さく、谷の発達があまり顕著でない高地。
- 台地 だいち 平野および盆地のうち一段と高い台状の地形。武蔵野台地など。
- 内地 ないち (1) 一国の領土内。版図内。国内。(2) 一国の領土内で、新領土または島地以外の地。日本で、もと朝鮮・台湾・樺太(サハリン)などを除いた領土を指した。←
→外地。(3) 北海道や沖縄からみて、本州などを指して言った語。(4) 海岸から遠ざかった内部の土地。内陸。 - 溶岩・熔岩 ようがん
〔地〕(lava) マグマが溶融体または半溶融体として地表に噴出したもの、また、それが冷却固結して生じた岩石。 - 溶岩台地 ようがん‐だいち 火山の形態の一種。玄武岩のように流動性の著しい溶岩が噴出して形成した平坦な台地。
- 盆地 ぼんち 周囲を山地によって囲まれた平地。成因により褶曲盆地・断層盆地・浸食盆地の3種に分かれ、湖が形成されていれば湖盆、堆積物で埋められていれば堆積盆地という。
- うらむけ 裏向。裏を向けること。裏返し。
- 昇り降り あがり さがり
- 段丘 だんきゅう 河川・湖・海などに接する階段状の地形。もとの氾濫原や浅海底であった平坦な部分の段丘面と、その前面に河川や海水の浸食によって形成された急傾斜の段丘崖とから成る。
- 海成段丘 かいせい だんきゅう 過去の海面に関連してできた海成平坦面が、海岸線に沿って階段状に分布する地形。海岸段丘とも。段丘面は波食による場合と堆積による場合とがある。段丘崖はもとの海食崖で、段丘面とその内陸側の段丘崖との傾斜換点を連ねた線は旧汀線である。段丘の規模・形態・堆積物の厚さなどは段丘形成前の地形・海況・構成岩石・地殻変動の様式などによって異なる。段丘の形成年代は段丘堆積物中の化石や被覆火山灰などから決められるが、年代決定が難しいことが多い。段丘面を形成した高海水準期が温暖期と対応し、段丘形成期が間氷期に相当するものが多い。海成段丘の形成は土地の間欠的な隆起によるとされていたが、段丘の分化を生じさせたのは地殻変動の緩急ではなく、地殻が一定の速さで隆起している間に繰り返された氷河性海面変化の結果とみるべきである。短い時間単位では、巨大地震による隆起で生まれた完新世段丘もある。
(地学) - 河成段丘 かせい だんきゅう 河川に沿って片側または両側に分布する階段状の地形で、谷底平野が浸食の復活により河床より高く台地状になった地形。河岸段丘とも。平坦面を段丘面と呼び、旧谷底の遺物で、旧河川堆積物におおわれることが多い。段丘面を境する崖を段丘崖と呼ぶ。一般に、高い段丘ほど形成期が古い。河成段丘はその地域の浸食営力の消長を記録しており、地形発達史・地殻変動などを考慮する資料として重要。地殻変動が激しい日本ではほとんどの川に沿って河成段丘が発達し、現河床からの比高・縦断面形は地殻変動の指標となる。火山活動によって埋積された谷底が段丘化している場合もある。山地地域には、氷期の荷重の増大による堆積段丘も多い。
(地学) - 高低 たかひく 高いことと低いこと。高低があって一様でないこと。でこぼこ。でくぼく。
- 断層 だんそう 地層や岩石に割れ目を生じ、これに沿って両側が互いにずれている現象。ずれかたによって図のように分類する。比喩的にも使う。
- 断層段丘 だんそう だんきゅう
- 火山灰 かざんばい 火山から噴出する灰のような物質で、溶岩の砕片の微細なもの。火山塵。
- 粘土 ねんど 土壌学的には通常0.002mm以下の粒子をいう。造岩鉱物の化学的風化過程で生成する結晶質、非晶質の各種の粘土鉱物、酸化物鉱物から成る。広くは水を含めば粘性をもつ土の総称。れんが・瓦・セメント・陶磁器の製造原料となり、また児童の工作材料とする。ねばつち。
- 赤土 あかつち 赭土。(1) 鉄分を含み、赤く黄ばんだ粘土。赤色土。黄色土。赭土。
- ローム loam (1) (→)壌土。(2) 風成火山灰土の一種。関東ロームが代表的で、10mに達する層をなす。酸化鉄に富み、赤褐色。赤土。
- 黄土 おうど 中国北部・ヨーロッパ・アメリカ合衆国中央部などに広く分布している厚い黄灰色の主として風成の堆積物。更新世の氷期に大陸氷の周辺地域や、氷河・周氷河作用をうけた高山帯山麓の沖積平野の堆積物が風で運ばれて堆積。レス。
- レス loess (→)黄土。
- 山崩れ やまくずれ 急斜面をなす山腹の岩石や表土が急激に崩れ落ちる現象。大雨の後、または地震・火山爆発などによって起こる。
- 富士岩 ふじがん 安山岩の異称。
- 安山岩 あんざんがん (もとアンデス山系で発見され、andesiteに由来する) 火山岩の一種。暗灰色で緻密。斜長石・角閃石・黒雲母・輝石などを含み、板状・柱状等の節理がある。造山帯に産出。広く土木・建築に使用。
- 懸崖 けんがい (1) 切り立ったようながけ。きりぎし。
- 山岳 さんがく 陸地の表面のいちじるしく隆起した部分。やま。
- もぐらもち 土竜・�鼠 (→)モグラの異称。
- 丘陵 きゅうりょう (1) こやま。おか。(2) 山地より低くなだらかな山の高まり。
- 峰 みね 峰・嶺。(1) 山のいただきのとがった所。山頂。ね。
- 峰(峯) みね/ホウ 高い山で、上の方のそびえ立っているところ。山のするどくとがったいただき。頂上の方がとがった形の山。
- 嶺 みね/レイ 横に広がったみね。みねの続いたもの。山の連なっているもの。
- 山脈 さんみゃく 脈状に連なる山地。やまなみ。
- 山系 さんけい 二つ以上の山脈が、互いに緊密な関係で一つの系統をなしているもの。ヒマラヤ山系の類。
- 砂丘 さきゅう 風のために吹き寄せられた砂のつくる小丘。海岸・大河の沿岸または砂漠地方に多く生ずる。しゃきゅう。
- 氷河 ひょうが 高山の雪線以上のところで凝固した万年雪が、上層の積雪の圧力の増加につれて、氷塊となり、低地に向かって流れ下るもの。流速は、山岳氷河では一般に年50〜400m、海に流れ出る氷河では年1000mを超えるものもある。
- 堆石 たいせき (1) 石をうずたかく積むこと。また、その堆積した石。(2) (moraine) 氷河によって運搬され堆積した岩屑。また、その集積。氷堆石。モレーン。
- 火山 かざん (volcano) 地下の深所に存在する溶融したマグマが、地殻の裂け目を通って地表に噴出して生じた山。地形によって分類されることがある。やけやま。
- 火山砂 かざんずな/かざんさ 噴火の際に放出される粟粒ないし豆粒大の溶岩の破片。
- 火山礫 かざんれき 噴火の際に放出される溶岩の砕片で、大豆または胡桃大のもの。
- 火口 かこう (1) (crater) 火山の噴出物を地表に出す漏斗状の開口部。下方は火道に連なり、活動休止期は溶岩・火山噴出物で閉ざされる。噴火口。
- 噴火口 ふんかこう 火山の噴火する口。火口。
- 富士形 ふじがた 富士山のような形、すなわち円錐形の上部が欠けていて、横から見て扇を逆さまにしたように見える形。富士山形。
- 円頂山 えんちょうざん
- 円頂 えんちょう (1) 最上部がまるくなっていること。まるいいただき。
- 餅磐 べいばん → 餅盤
- 餅盤 べいばん 地学でマグマが地層の層理面に沿って上向きに貫入してできた鏡餅状の火成岩。ラコリス。
- 断層線 だんそうせん 断層面と地表面との交線。
- 御影石 みかげいし (1) 花崗岩石材の総称。神戸市御影付近(六甲山麓)が産地として有名であったのでいう。→本御影。(2) (1) に似た石の俗称。斑糲岩・閃緑岩・閃長岩など等粒状の構造を示す深成岩。
- 本御影 ほんみかげ 六甲山麓の御影付近から産出した、淡紅色の長石を含む美しい本来の御影石。類似の石を広く御影石と称するのに対していう。古来有名。
- 高山 こうざん 高い山。植生帯では、森林限界より高く、高山帯のある山。
- 海溝 かいこう (trench) 水深6000mを超える大洋底の細長い凹所。その側面は急傾斜する。最深部が1万m以上に達するものもあり、日本海溝・フィリピン海溝など主な海溝は北太平洋西側に多い。プレートの沈み込む場所。
- 地形図 ちけいず 土地の起伏・形態・水系、地表に分布する地物の配置などを描いた地図。通常、等高線によって地形を表す。一般に縮尺が1万分の1から10万分の1のもので、日本では縮尺1万分の1、2万5000分の1、5万分の1の3種類。
- 等高線 とうこうせん 地図上で、土地の起伏を正確に表すために、標準海面から等しい高度の点を結んだ曲線。水平曲線。コンター。
- 暈式 うんおうしき 地図における地表の起伏の表現の仕方の一つで、等高線に直角に多数の細く短い線を描く方法。けば。←
→暈式 - 鳥瞰図 ちょうかんず 高い所から見おろしたように描いた風景図または地図。鳥目絵。
- 暈式 うんせんしき 地図における地表起伏の表現の仕方の一つで、地表の高低を彩色の濃淡で表す方法。直照光線式と斜照光線式とがある。ぼかし。←
→暈式 - パノラマ panorama (1) 全景。広い眺望。一望の下に収められた景色。(2) 都市や大自然・聖地などの眺望を屋内で見せる絵画的装置。円環状の壁面に緻密で連続した風景を描き、立体模型を配したり照明をあてたりして、中央の観覧者に壮大な実景の中にいるような感覚を与える。1789年イギリスのロバート=バーカー(R. Barker1739〜1806)が制作。日本では1890年(明治23)上野・浅草で公開。映画などの発達により衰退。回転画。
- 褐色 かばいろ
- 褐色 かっしょく 黒みをおびた茶色。
◇参照:
*後記(工作員 日記)
「堆《つ》み上げ」は「積み上げ」にした。
「浸食」はそのままにした。
「北アメリカ合衆国」はそのままにした。
アコンカグア、富士山の標高は『広辞苑』を参照した。
関連地図を用意したいところだけれども、時間切れ。今回はここまで。そろそろ、ビットマップからベクター形式の地図へ移行をと考えている。ePub ならばそのまま表示できるはずなので、使いなれない Inkscape ではあるけれども、地図のトレース作業がこれからの課題。
過去の郡域を確認するには、いまのところ一県ごとに平凡社『日本歴史地名大系』の口絵にあたるくらいしか思いつかない。めんどうではあるけれども、これがもっとも確実な方法かなあという気がする。
話うってかわって、地球の温暖化と巨大地震の因果関係はありやなしや。
北極と南極の氷がとける。とけた水はたぶん北極と南極にはとどまらず、均一に地球表面へ拡散しようとする。むしろ、地球の自転と公転の力にひっぱられて、赤道近辺へ移動する。つまり、おおざっぱに見て、コマの軸の上下におもりがついて回転していた状態が、極の氷がとけると、おもりがコマの横腹に移動するんじゃないだろうか。とするならば……。
ひとつめ。とけて赤道付近へ移動した氷の質量のぶん、遠心力がはたらいて、地球の自転スピードがたぶんおそくなる。
ふたつめ。とけて移動した氷の質量のぶん、地球表面上の重力の分布が、たぶん各地域ごとに大きく変動することになる。両極は軽くなり、赤道付近は重くなる。
温暖化 → 両極の氷解 → 重力分布の変動 → 重力バランスの地殻への作用
氷(水)の質量の問題にくわえて、体積の問題も生じる。温度の低い水は体積が小さいけれども、温度が上がると数パーセントの規模で体積が膨張する。重力バランスの地殻への作用、プラス、海水の体積の変化。
寡聞のためか、温暖化と巨大地震の因果を関連づけようとする説をこれまで聞いたことがない。ということは、やっぱり無関係なんだろうか。あるいはもしも、このしろうと考えの説が正しいならば、ちかごろの巨大地震の連発は、さもありなんという気がする。
ご回答、おまちしまーす。
*次週予告
第五巻 第二八号
山の科学・山と河(二) 今井半次郎
第五巻 第二八号は、
二〇一三年二月二日(土)発行予定です。
定価:200円
T-Time マガジン 週刊ミルクティー* 第五巻 第二七号
山の科学・山と河
発行:二〇一三年一月二六日(土)
編集:しだひろし / PoorBook G3'99
http://www33.atwiki.jp/asterisk99/
出版:*99 出版
〒994-0024 山形県天童市鎌田2丁目
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販売:DL-MARKET
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- T-Time マガジン 週刊ミルクティー* *99 出版
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※ おわびと訂正
長らく、創刊号と第一巻第六号の url 記述が誤っていたことに気がつきませんでした。アクセスを試みてくださったみなさま、申しわけありませんでした。(しょぼーん)/2012.3.2 しだ
- 第一巻
- 創刊号 竹取物語 和田万吉
- 第二号 竹取物語小論 島津久基(210円)
- 第三号 竹取物語の再検討(一)橘 純一(210円)
- 第四号 竹取物語の再検討(二)橘 純一(210円)
「絵合」 『源氏物語』より 紫式部・与謝野晶子(訳) - 第五号
『国文学の新考察』より 島津久基(210円)- 昔物語と歌物語 / 古代・中世の「作り物語」/
- 平安朝文学の弾力 / 散逸物語三つ
- 第六号 特集 コロボックル考 石器時代総論要領 / コロボックル北海道に住みしなるべし 坪井正五郎 マナイタのばけた話 小熊秀雄 親しく見聞したアイヌの生活 / 風に乗って来るコロポックル 宮本百合子
- 第七号 コロボックル風俗考(一〜三)坪井正五郎(210円)
- シペ物語 / カナメの跡 工藤梅次郎
- 第八号 コロボックル風俗考(四〜六)坪井正五郎(210円)
- 第九号 コロボックル風俗考(七〜十)坪井正五郎(210円)
- 第十号 特集 コロボックル考 喜田貞吉
- 日本太古の民族について / 日本民族概論 / 土蜘蛛種族論につきて
- 第十一号 特集 コロボックル考 喜田貞吉
- 東北民族研究序論 / 猪名部と佐伯部 / 吉野の国巣と国樔部
- 第十二号 日高見国の研究 喜田貞吉
- 第十三号 夷俘・俘囚の考 喜田貞吉
- 第十四号 東人考 喜田貞吉
- 第十五号 奥州における御館藤原氏 喜田貞吉
- 第十六号 考古学と古代史 喜田貞吉
- 第十七号 特集 考古学 喜田貞吉
- 遺物・遺蹟と歴史研究 / 日本における史前時代の歴史研究について / 奥羽北部の石器時代文化における古代シナ文化の影響について
- 第十八号 特集 考古学 喜田貞吉
- 日本石器時代の終末期について /「あばた」も「えくぼ」、
「えくぼ」も「あばた」― ―日本石器時代終末期― ― - 第十九号 特集 考古学 喜田貞吉
- 本邦における一種の古代文明 ―
―銅鐸に関する管見― ― / - 銅鐸民族研究の一断片
- 第二〇号 特集 考古学 喜田貞吉
「鐵」の字の古体と古代の文化 / 石上神宮の神宝七枝刀 / - 八坂瓊之曲玉考
- 第二一号 博物館(一)浜田青陵
- 第二二号 博物館(二)浜田青陵
- 第二三号 博物館(三)浜田青陵
- 第二四号 博物館(四)浜田青陵
- 第二五号 博物館(五)浜田青陵
- 第二六号 墨子(一)幸田露伴
- 第二七号 墨子(二)幸田露伴
- 第二八号 墨子(三)幸田露伴
- 第二九号 道教について(一)幸田露伴
- 第三〇号 道教について(二)幸田露伴
- 第三一号 道教について(三)幸田露伴
- 第三二号 光をかかぐる人々(一)徳永 直
- 第三三号 光をかかぐる人々(二)徳永 直
- 第三四号 東洋人の発明 桑原隲蔵
- 第三五号 堤中納言物語(一)池田亀鑑(訳)
- 第三六号 堤中納言物語(二)池田亀鑑(訳)
- 第三七号 堤中納言物語(三)池田亀鑑(訳)
- 第三八号 歌の話(一)折口信夫
- 第三九号 歌の話(二)折口信夫
- 第四〇号 歌の話(三)
・花の話 折口信夫- 第四一号 枕詞と序詞(一)福井久蔵
- 第四二号 枕詞と序詞(二)福井久蔵
- 第四三号 本朝変態葬礼史 / 死体と民俗 中山太郎
- 第四四号 特集 おっぱい接吻
- 乳房の室 / 女の情欲を笑う 小熊秀雄
- 女体 芥川龍之介
- 接吻 / 接吻の後 北原白秋
- 接吻 斎藤茂吉
- 第四五号 幕末志士の歌 森 繁夫
- 第四六号 特集 フィクション・サムライ 愛国歌小観 / 愛国百人一首に関連して / 愛国百人一首評釈 斎藤茂吉
- 第四七号
「侍」字訓義考 / 多賀祢考 安藤正次- 第四八号 幣束から旗さし物へ / ゴロツキの話 折口信夫
- 第四九号 平将門 幸田露伴
- 第五〇号 光をかかぐる人々(三)徳永 直
- 第五一号 光をかかぐる人々(四)徳永 直
- 第五二号
「印刷文化」について 徳永 直- 書籍の風俗 恩地孝四郎
- 第二巻
- 第一号 奇巌城(一)モーリス・ルブラン
- 第二号 奇巌城(二)モーリス・ルブラン
- 第三号 美し姫と怪獣 / 長ぐつをはいた猫 楠山正雄(訳)
- 第四号 毒と迷信 / 若水の話 / 麻薬・自殺・宗教 小酒井不木 / 折口信夫 / 坂口安吾
- 第五号 空襲警報 / 水の女 / 支流 海野十三 / 折口信夫 / 斎藤茂吉
- 第六号 新羅人の武士的精神について 池内 宏
- 第七号 新羅の花郎について 池内 宏
- 第八号 震災日誌 / 震災後記 喜田貞吉
- 第九号 セロ弾きのゴーシュ / なめとこ山の熊 宮沢賢治
- 第一〇号 風の又三郎 宮沢賢治
- 第一一号 能久親王事跡(一)森 林太郎
- 第一二号 能久親王事跡(二)森 林太郎
- 第一三号 能久親王事跡(三)森 林太郎
- 第一四号 能久親王事跡(四)森 林太郎
- 第一五号 能久親王事跡(五)森 林太郎
- 第一六号 能久親王事跡(六)森 林太郎
- 第一七号 赤毛連盟 コナン・ドイル
- 第一八号 ボヘミアの醜聞 コナン・ドイル
- 第一九号 グロリア・スコット号 コナン・ドイル
- 第二〇号 暗号舞踏人の謎 コナン・ドイル
- 第二一号 蝦夷とコロボックルとの異同を論ず 喜田貞吉
- 第二二号 コロポックル説の誤謬を論ず 上・下 河野常吉
- 第二三号 慶長年間の朝日連峰通路について 佐藤栄太
- 第二四号 まれびとの歴史 /「とこよ」と「まれびと」と 折口信夫
- 第二五号 払田柵跡について二、三の考察 / 山形県本楯発見の柵跡について 喜田貞吉
- 第二六号 日本天変地異記 田中貢太郎
- 第二七号 種山ヶ原 / イギリス海岸 宮沢賢治
- 第二八号 翁の発生 / 鬼の話 折口信夫
- 第二九号 生物の歴史(一)石川千代松
- 第三〇号 生物の歴史(二)石川千代松
- 第三一号 生物の歴史(三)石川千代松
- 第三二号 生物の歴史(四)石川千代松
- 第三三号 特集 ひなまつり
- 雛 芥川龍之介 / 雛がたり 泉鏡花 / ひなまつりの話 折口信夫
- 第三四号 特集 ひなまつり
- 人形の話 / 偶人信仰の民俗化並びに伝説化せる道 折口信夫
- 第三五号 右大臣実朝(一)太宰 治
- 第三六号 右大臣実朝(二)太宰 治
- 第三七号 右大臣実朝(三)太宰 治
- 第三八号 清河八郎(一)大川周明
- 第三九号 清河八郎(二)大川周明
- 第四〇号 清河八郎(三)大川周明
- 第四一号 清河八郎(四)大川周明
- 第四二号 清河八郎(五)大川周明
- 第四三号 清河八郎(六)大川周明
- 第四四号 道鏡皇胤論について 喜田貞吉
- 第四五号 火葬と大蔵 / 人身御供と人柱 喜田貞吉
- 第四六号 手長と足長 / くぐつ名義考 喜田貞吉
- 第四七号
「日本民族」とは何ぞや / 本州における蝦夷の末路 喜田貞吉- 第四八号 若草物語(一)L.M. オルコット
- 第四九号 若草物語(二)L.M. オルコット
- 第五〇号 若草物語(三)L.M. オルコット
- 第五一号 若草物語(四)L.M. オルコット
- 第五二号 若草物語(五)L.M. オルコット
- 第五三号 二人の女歌人 / 東北の家 片山広子
- 第三巻
- 第一号 星と空の話(一)山本一清
- 第二号 星と空の話(二)山本一清
- 第三号 星と空の話(三)山本一清
- 第四号 獅子舞雑考 / 穀神としての牛に関する民俗 中山太郎
- 第五号 鹿踊りのはじまり 宮沢賢治 / 奥羽地方のシシ踊りと鹿供養 喜田貞吉
- 第六号 魏志倭人伝 / 後漢書倭伝 / 宋書倭国伝 / 隋書倭国伝
- 第七号 卑弥呼考(一)内藤湖南
- 第八号 卑弥呼考(二)内藤湖南
- 第九号 卑弥呼考(三)内藤湖南
- 第一〇号 最古日本の女性生活の根底 / 稲むらの陰にて 折口信夫
- 第一一号 瀬戸内海の潮と潮流(他三編)寺田寅彦
- 瀬戸内海の潮と潮流 / コーヒー哲学序説 /
- 神話と地球物理学 / ウジの効用
- 第一二号 日本人の自然観 / 天文と俳句 寺田寅彦
- 第一三号 倭女王卑弥呼考(一)白鳥庫吉
- 第一四号 倭女王卑弥呼考(二)白鳥庫吉
- 第一五号 倭奴国および邪馬台国に関する誤解 他 喜田貞吉
- 倭奴国と倭面土国および倭国とについて稲葉君の反問に答う /
- 倭奴国および邪馬台国に関する誤解
- 第一六号 初雪 モーパッサン 秋田 滋(訳)
- 第一七号 高山の雪 小島烏水
- 第一八号 光をかかぐる人々 続『世界文化』連載分(一)徳永 直
- 第一九号 光をかかぐる人々 続『世界文化』連載分(二)徳永 直
- 第二〇号 光をかかぐる人々 続『世界文化』連載分(三)徳永 直
- 第二一号 光をかかぐる人々 続『世界文化』連載分(四)徳永 直
- 第二二号 光をかかぐる人々 続『世界文化』連載分(五)徳永 直
- 第二三号 銀河鉄道の夜(一)宮沢賢治
- 第二四号 銀河鉄道の夜(二)宮沢賢治
- 第二五号 ドングリと山猫 / 雪渡り 宮沢賢治
- 第二六号 光をかかぐる人々 続『世界文化』連載分(六)徳永 直
- 第二七号 特集 黒川能・春日若宮御祭 折口信夫
- 黒川能・観点の置き所 / 村で見た黒川能
- 能舞台の解説 / 春日若宮御祭の研究
- 第二八号 面とペルソナ / 人物埴輪の眼 他 和辻哲郎
- 面とペルソナ / 文楽座の人形芝居
- 能面の様式 / 人物埴輪の眼
- 第二九号 火山の話 今村明恒
- 第三〇号 現代語訳『古事記』
(一)上巻(前編) 武田祐吉(訳)- 第三一号 現代語訳『古事記』
(二)上巻(後編) 武田祐吉(訳)- 第三二号 現代語訳『古事記』
(三)中巻(前編) 武田祐吉(訳)- 第三三号 現代語訳『古事記』
(四)中巻(後編) 武田祐吉(訳)- 第三四号 山椒大夫 森 鴎外
- 第三五号 地震の話(一)今村明恒
- 第三六号 地震の話(二)今村明恒
- 第三七号 津波と人間 / 天災と国防 / 災難雑考 寺田寅彦
- 第三八号 春雪の出羽路の三日 喜田貞吉
- 第三九号 キュリー夫人 / はるかな道(他)宮本百合子
- 第四〇号 大正十二年九月一日よりの東京・横浜間 大震火災についての記録 / 私の覚え書 宮本百合子
- 第四一号 グスコーブドリの伝記 宮沢賢治
- 第四二号 ラジウムの雁 / シグナルとシグナレス(他)宮沢賢治
- 第四三号 智恵子抄(一)高村光太郎
- 第四四号 智恵子抄(二)高村光太郎
- 第四五号 ヴェスヴィオ山 / 日本大地震(他)斎藤茂吉
- 第四六号 上代肉食考 / 青屋考 喜田貞吉
- 第四七号 地震雑感 / 静岡地震被害見学記(他)寺田寅彦
- 第四八号 自然現象の予報 / 火山の名について 寺田寅彦
- 第四九号 地震の国(一)今村明恒
- 第五〇号 地震の国(二)今村明恒
- 第五一号 現代語訳『古事記』
(五)下巻(前編) 武田祐吉(訳)- 第五二号 現代語訳『古事記』
(六)下巻(後編) 武田祐吉(訳)
- 第四巻
- 第一号 日本昔話集 沖縄編(一)伊波普猷・前川千帆(絵)
- 第二号 日本昔話集 沖縄編(二)伊波普猷
- 第三号 アインシュタイン(一)寺田寅彦
- 物質とエネルギー / 科学上における権威の価値と弊害 /
- アインシュタインの教育観
- 第四号 アインシュタイン(二)寺田寅彦
- アインシュタイン / 相対性原理側面観
- 第五号 作家のみた科学者の文学的活動 / 科学の常識のため 宮本百合子
- 第六号 地震の国(三)今村明恒
- 第七号 地震の国(四)今村明恒
- 第八号 地震の国(五)今村明恒
- 第九号 地震の国(六)今村明恒
- 第一〇号 土神と狐 / フランドン農学校の豚 宮沢賢治
- 第一一号 地震学の角度から見た城輪柵趾 今村明恒
- 第一二号 庄内と日高見(一)喜田貞吉
- 第一三号 庄内と日高見(二)喜田貞吉
- 第一四号 庄内と日高見(三)喜田貞吉
- 第一五号 私は海をだきしめてゐたい / 安吾巷談・ストリップ罵倒 坂口安吾
- 第一六号 三筋町界隈 / 孫 斎藤茂吉
- 第一七号 原子力の管理(他)仁科芳雄
- 原子力の管理 / 日本再建と科学 / 国民の人格向上と科学技術 /
- ユネスコと科学
- 第一八号 J・J・トムソン伝(他)長岡半太郎
- J・J・トムソン伝 / アインシュタイン博士のこと
- 第一九号 原子核探求の思い出(他)長岡半太郎
- 総合研究の必要 / 基礎研究とその応用 / 原子核探求の思い出
- 第二〇号 蒲生氏郷(一)幸田露伴
- 第二一号 蒲生氏郷(二)幸田露伴
- 第二二号 蒲生氏郷(三)幸田露伴
- 第二三号 科学の不思議(一)アンリ・ファーブル
- 第二四号 科学の不思議(二)アンリ・ファーブル
- 第二五号 ラザフォード卿を憶う(他)長岡半太郎
- ラザフォード卿を憶う / ノーベル小伝とノーベル賞 / 湯川博士の受賞を祝す
- 第二六号 追遠記 / わたしの子ども時分 伊波普猷
- 第二七号 ユタの歴史的研究 伊波普猷
- 第二八号 科学の不思議(三)アンリ・ファーブル
- 第二九号 南島の黥 / 琉球女人の被服 伊波普猷
- 第三〇号
『古事記』解説 / 上代人の民族信仰 武田祐吉・宇野円空 - 第三一号 科学の不思議(四)アンリ・ファーブル
- 第三二号 科学の不思議(五)アンリ・ファーブル
- 第三三号 厄年と etc. / 断水の日 / 塵埃と光 寺田寅彦
- 第三四号 石油ランプ / 流言蜚語 / 時事雑感 寺田寅彦
- 第三五号 火事教育 / 函館の大火について 寺田寅彦
- 第三六号 台風雑俎 / 震災日記より 寺田寅彦
- 第三七号 火事とポチ / 水害雑録 有島武郎・伊藤左千夫
- 第三八号 特集・安達が原の黒塚 楠山正雄・喜田貞吉・中山太郎
- 第三九号 大地震調査日記(一)今村明恒
- 第四〇号 大地震調査日記(二)今村明恒
- 第四一号 大地震調査日記(続)今村明恒
- 第四二号 科学の不思議(六)アンリ・ファーブル
- 第四三号 科学の不思議(七)アンリ・ファーブル
- 第四四号 震災の記 / 指輪一つ 岡本綺堂
- 第四五号 仙台五色筆 / ランス紀行 岡本綺堂
- 第四六号 東洋歴史物語(一)藤田豊八
- 第四七号 東洋歴史物語(二)藤田豊八
- 第四八号 東洋歴史物語(三)藤田豊八
- 第四九号 東洋歴史物語(四)藤田豊八
- 第五〇号 東洋歴史物語(五)藤田豊八
- 第五一号 科学の不思議(八)アンリ・ファーブル
- 第五二号 科学の不思議(九)アンリ・ファーブル
- 第五巻
- 第一号 校註『古事記』
(一) 武田祐吉- 第二号 校註『古事記』
(二) 武田祐吉- 第三号 校註『古事記』
(三) 武田祐吉- 第四号 兜 / 島原の夢 / 昔の小学生より / 三崎町の原 岡本綺堂
- 第五号 新旧東京雑題 / 人形の趣味(他)岡本綺堂
- 第六号 大震火災記 鈴木三重吉
- 第七号 校註『古事記』
(四) 武田祐吉- 第八号 校註『古事記』
(五) 武田祐吉- 第九号 校註『古事記』
(六) 武田祐吉- 第一〇号 校註『古事記』
(七) 武田祐吉- 第一一号 大正十二年九月一日の大震に際して(他)芥川龍之介
- オウム―
―大震覚え書きの一つ― ― - 第一二号 日本歴史物語〈上〉
(一) 喜田貞吉- 第一三号 日本歴史物語〈上〉
(二) 喜田貞吉- 第一四号 日本歴史物語〈上〉
(三) 喜田貞吉- 第一五号 日本歴史物語〈上〉
(四) 喜田貞吉- 第一六号 校註『古事記』
(八) 武田祐吉- 第一七号 校註『古事記』
(九) 武田祐吉- 第一八号 校註『古事記』
(一〇) 武田祐吉- 第一九号 校註『古事記』
(一一) 武田祐吉- 語句索引 / 歌謡各句索引
- 第五巻 第二〇号 日本歴史物語〈上〉
(五) 喜田貞吉- 四十一、地方政治の乱(みだ)れ(一)
- 四十二、地方政治の乱れ(二)
- 四十三、地方政治の乱れ(三)
- 四十四、地方政治の乱れ(四)
- 四十五、武士・僧兵・海賊のおこり(一)
- 四十六、武士・僧兵・海賊のおこり(二)
- 四十七、武士・僧兵・海賊のおこり(三)
- 四十八、武士・僧兵・海賊のおこり(四)
- 四十九、平安朝の仏教
- じっさい平安朝時代には、貴族と平民とのあいだにはたいそうな隔(へだ)たりがありました。貴族たちが京都で好き勝手な栄華にふけっているあいだに、平民は地方で国司らにいじめられていました。そこで平民らは、自分で国民たるの権利を捨てて諸国に浮浪するというようなありさまでしたから、世の中の人気もしだいに荒くなります。活きるに困っているものは、活きるためにはやむを得ず悪いこともします。どうでこの世の中に活き長らえていたからとて、その末がよくなるという見込みがあるではなし、またすでに悪いことをしている身であれば、死んだのちには地獄へ落ちると仏教は教えています。こうなってはどんなものでも、自然やけになってくる。
(略) - このような気の毒な人たちを救うて、たといその日その日の暮らしは苦しくても、せめては心だけにでもゆっくりした安心をあたえて、無暗にやけにならぬようにと親切に教えをひろめたのは、念仏の宗旨でした。口に南無阿弥陀仏ととなえて、阿弥陀如来にすがりさえすれば、どんな罪の深いものでも、死んだのちにはみな必ず極楽へ行くことができるという教えです。
- はじめてこの教えを民間に説きすすめたのは、空也上人でありました。東には平将門、西には藤原純友の謀反があったのち、世の中がますます騒がしくなり、食うに困るような浮浪民がそこにも、ここにも、うようよしているというころに、空也は盛んにその仲間に説いてまわったものですから、いたるところに信者がたくさんにできました。平民らはこれがために、ひどくやけにもならず、救われて安心を得たものがはなはだ多かったのです。
- そののち平安朝も末になり、源平二氏の戦争が長いあいだ続いて、武士は多くの人を殺し、その罪のむくいがおそろしくなる。また一般の民衆は、多年の戦争に苦しんで、ますます貧乏のどん底に落ちこむというように、多数の人がひどく悩んでいるころに、法然上人が出て、盛んにこの教えをひろめました。
(略) ( 「四十九、平安朝の仏教」より)
- 第五巻 第二一号 日本歴史物語〈上〉
(六) 喜田貞吉- 五十、蝦夷地の経営
- 五十一、前九年の役(一)
- 五十二、前九年の役(二)
- 五十三、後三年の役
- 五十四、平泉の隆盛
- 五十五、古代史の回顧
- 先生や父兄の方々に
- 平安朝のはじめのころは、朝廷のご威光が盛んで、坂上田村麻呂や文室(ぶんやの)綿麻呂の蝦夷征伐があり、これがために蝦夷の地がおおいに開けてまいり、蝦夷人もだんだん日本民族の仲間になってきましたことは、前に申したようなしだいでありましたが、なにぶんにも国の政治が乱れて、地方が騒々しくなり、武士や海賊が盛んにおこるという時代になりましては、蝦夷のいた奥羽地方だとて、その影響を受けないではいられません。第五十七代陽成(ようぜい)天皇の御代(在位八七六〜八八四)には、今の秋田県あたりにいる蝦夷がそむきまして大騒ぎがおこりました。しかしこれというのも、もともと国司の政治が悪いからであります。はじめは蝦夷のいきおいがつよく、官軍も容易にこれをしずめることができなかったのですが、藤原保則(やすのり)という人が新たに国司になって、よくこれを諭し、よい政治をおこないますと、かれらはことごとく降参して、おとなしくなりましたのを見ても、その罪がおもに国司にあったことがわかりましょう。
(略) ( 「五十一、前九年の役(一) 」より) - そのうちに、いよいよ頼義(よりよし)二度目の国司の任期がすみまして、新しい国司がやってまいりました。しかしこんな騒ぎの最中でやって来たもののなんともしてみようがありませぬ。さっそく都へ逃げて帰りました。そこで頼義は、今はどうでも自分の手で安倍氏を滅ぼして、自分の命ぜられたつとめを完(まっと)うして、新しい国司に引きわたさなければならぬと、しきりに清原氏の助けを催促します。武則(たけのり)も頼義の誠意に感じて、一万余人という大勢の仲間をつれてやってまいりました。こうなってはさすがの貞任も、とてもかないっこはありません。
(略)最後に今の盛岡市の近所の、厨川(くりやがわ)の館までも攻め落とされ、貞任は殺されて、弟の宗任(むねとう)らは降参しました。頼義が国司となってから十二年かかって、やっと安倍氏征伐の目的を達することができたのです。世間でこれを奥州十二年の合戦と申しました。奥州とは今の福島・宮城・岩手・青森の四県の地方のことで、むかしはこれを陸奥といい、出羽とあわせて奥羽地方というのです。 ( 「五十二、前九年の役(二) 」より)
- 第五巻 第二二号 日本歴史物語〈上〉索引 喜田貞吉
- 語句索引 / 人名索引 / 地名一覧
- 第五巻 第二三号 クリスマスの贈り物/街の子/少年・春 竹久夢二
- 「い」とあなたがいうと
- 「それから」と母(かあ)さまはおっしゃった。
- 「ろ」
- 「それから」
- 「は」
- あなたは母(かあ)さまのひざに抱(だ)っこされていた。外(そと)では凩(こがらし)がおそろしくほえ狂(くる)うので、地上(ちじょう)のありとあらゆる草も木も悲(かな)しげに泣(な)きさけんでいる。
- そのときあなたは慄(ふる)えながら、母(かあ)さまの首(くび)へしっかりとしがみつくのでした。
- 凩(こがらし)がすさまじくほえ狂(くる)うと、ランプの光(ひかり)が明(あか)るくなって、テーブルの上のリンゴはいよいよ紅(あか)く、暖炉(だんろ)の火はだんだん暖(あたた)かくなった。
- あなたのひざの上には絵本(えほん)が置(お)かれ、悲(かな)しい話(はなし)のところが開(ひら)かれてあった。それを母(かあ)さまは読(よ)んでくださる。―
―それは、もうまえに百(ひゃっ)ぺんも読んでくださった物語(ものがたり)であった。― ―そのときの母(かあ)さまの顔色(かおいろ)の眼(め)はしずんで、声は低(ひく)く悲(かな)しかった。あなたは呼吸(いき)をころして一心(いっしん)に聞(き)き入(い)るのでした。 - 誰(た)ぞ、コマドリを殺(ころ)せしは?
- スズメはいいぬ、われこそ! と
- わがこの弓(ゆみ)と矢(や)をもちて
- わがコマドリを殺(ころ)しけり。
- (
「少年・春」より)
- 第五巻 第二四号 風立ちぬ(一)堀 辰雄
- それらの夏の日々、一面に薄(すすき)の生いしげった草原の中で、おまえが立ったまま熱心に絵を描いていると、わたしはいつもそのかたわらの一本の白樺の木陰に身をよこたえていたものだった。そうして夕方になって、おまえが仕事をすませてわたしのそばにくると、それからしばらくわたしたちは肩に手をかけあったまま、はるか彼方の、縁だけ茜色をおびた入道雲のむくむくした塊りにおおわれている地平線のほうをながめやっていたものだった。ようやく暮れようとしかけているその地平線から、反対になにものかが生まれて来つつあるかのように……
- そんな日のある午後、
(それはもう秋近い日だった)わたしたちは、おまえの描きかけの絵を画架に立てかけたまま、その白樺の木陰に寝そべって果物をかじっていた。砂のような雲が空をサラサラと流れていた。そのとき不意に、どこからともなく風が立った。わたしたちの頭の上では、木の葉の間からチラッとのぞいている藍色が伸びたり縮んだりした。それとほとんど同時に、草むらの中に何かがバッタリと倒れる物音をわたしたちは耳にした。それはわたしたちがそこに置きっぱなしにしてあった絵が、画架とともに、倒れた音らしかった。すぐ立ち上がって行こうとするおまえを、わたしは、いまの一瞬のなにものをも失うまいとするかのように無理にひきとめて、わたしのそばから離さないでいた。おまえはわたしのするがままにさせていた。 - 風立ちぬ、いざ生きめやも。
( 「序曲」より)
- 第五巻 第二五号 風立ちぬ(二)堀 辰雄
- その危機は、しかし、一週間ばかりで立ち退(の)いた。
- ある朝、看護婦がやっと病室から日覆(ひおおい)を取り除(の)けて、窓の一部を開け放して行った。窓からさしこんでくる秋らしい日光をまぶしそうにしながら、
- 「気持ちがいいわ」と病人はベッドの中からよみがえったように言った。
- 彼女の枕元で新聞をひろげていたわたしは、人間に大きな衝動をあたえる出来事なんぞというものは、かえってそれが過ぎ去った跡はなんだかまるで他所(よそ)のことのように見えるものだなあと思いながら、そういう彼女のほうをチラリと見やって、おもわず揶揄(やゆ)するような調子で言った。
- 「もうお父さんがきたって、あんなに興奮しないほうがいいよ」
- 彼女は顔を心持ち赧(あか)らめながら、そんなわたしの揶揄(やゆ)をすなおに受け入れた。
- 「こんどはお父さまがいらっしたって、知らん顔をしていてやるわ」
- 「それがおまえにできるんならねえ……」
- そんなふうに冗談でも言い合うように、わたしたちはお互いに相手の気持ちをいたわり合うようにしながら、いっしょになって子どもらしく、すべての責任を彼女の父におしつけ合ったりした。
- そうしてわたしたちはすこしもわざとらしくなく、この一週間の出来事がほんの何かの間違いにすぎなかったような、気軽な気分になりながら、いましがたまでわたしたちを肉体的ばかりでなく、精神的にも襲いかかっているように見えた危機を、こともなげに切り抜け出していた。少なくとも、わたしたちにはそう見えた。
……
- 第五巻 第二六号 風立ちぬ(三)堀 辰雄
- 十一月二十日(略)
- 「なにを考えているの?」とうとう彼女が口を切った。
- わたしは、それにはすぐ返事をしないでいた。それから急に彼女のほうへふり向いて、不確かなように笑いながら、
- 「おまえにはわかっているだろう?」と問い返した。
- 彼女はなにか罠(わな)でも恐れるかのように、注意深くわたしを見た。それを見て、わたしは、
- 「オレの仕事のことを考えているのじゃないか」と、ゆっくり言い出した。
「オレにはどうしてもいい結末が思い浮かばないのだ。オレはオレたちが無駄に生きていたようには、それを終わらせたくはないのだ。どうだ、ひとつおまえもそれをオレといっしょに考えてくれないか?」 - 彼女はわたしに微笑んで見せた。しかし、その微笑みはどこかまだ不安そうであった。
- 「だって、どんなことをお書きになったんだかも知らないじゃないの」彼女はやっと小声で言った。
- 「そうだっけなあ……」とわたしはもう一度、不確かなように笑いながら言った。
「それじゃあ、そのうちにひとつ、おまえにも読んで聞かせるかな。しかしまだ、最初のほうだって人に読んで聞かせるほどまとまっちゃいないんだからね」 - わたしたちは部屋の中へもどった。わたしがふたたび明かりのそばに腰をおろして、そこにほうりだしてあるノートをもう一度手に取り上げて見ていると、彼女はそんなわたしの背後に立ったまま、わたしの肩にそっと手をかけながら、それを肩ごしにのぞきこむようにしていた。
(略) - 十一月二十六日(略)
- 節子はもう目を覚ましていた。しかし、立ち戻ったわたしを認めても、わたしのほうへは物憂げにチラッと目をあげたきりだった。そして、さっき寝ていたときよりもいっそう蒼いような顔色をしていた。わたしが枕もとに近づいて、髪をいじりながら額に接吻しようとすると、彼女は弱々しく首をふった。わたしはなんにも訊かずに、悲しそうに彼女を見ていた。が、彼女はそんなわたしをというよりも、むしろ、そんなわたしの悲しみを見まいとするかのように、ぼんやりした目つきで空(くう)を見入っていた。
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