今井半次郎 いまい はんじろう
1884-1938(明治17.6.-昭和13.11.16)
松山の生まれ。樺太で多くの新炭田を発見。23年、理学博士。34年以後、昭和鉱業会社取締役として産金・製鉄事業に従事。豊富な経験によりB.S.ライマン以後の炭田地質調査の展開に大きく貢献した。主著『地質学』(1931)。(新版 地学事典)

恩地孝四郎 おんち こうしろう
1891-1955(明治24.7.2-昭和30.6.3)
版画家。東京生れ。日本の抽象木版画の先駆けで、創作版画運動に尽力。装丁美術家としても著名。

鈴木 淳 すずき じゅん
1892-1958(明治25-昭和33)
大正・昭和期の西洋画家、童画家。文展無鑑査の画家。「家なき子」(鈴木三重吉)の装画などが力作。(人レ)

岡 落葉 おか らくよう
1879-1962(明治12-昭和37)
明治〜昭和期の画家。独歩と親しく、「武蔵野」の装幀をてがけた。(人レ)/挿画。

◇参照:Wikipedia、『広辞苑 第六版』(岩波書店、2008)、新版 地学事典』(平凡社、2005.5)『人物レファレンス事典』(日外アソシエーツ、2000.7)。
◇表紙絵:恩地孝四郎、口絵:鈴木 淳、挿絵:岡 落葉。




口絵:お花畑はなばたけ

もくじ 
山の科学・山と川(一)今井半次郎

  • ミルクティー*現代表記版
  •   山の科学・山と川(一)
  •     一、山の生まれるまで
  •      山の力と人の力
  •      地球の誕生
  •      山のできたわけ
  •      (一)地殻ちかくのしわ
  •      (二)しわの山
  •      地球の表面
  •      (一)水の世界と陸の世界
  •      (二)桑滄そうそうの変
  •      (三)陸地の表面の形
  •      (四)平原へいげん
  •      (五)高原
  •      (六)盆地ぼんち
  •      (七)段丘だんきゅう
  •      (八)斜面しゃめんがけ
  •     二、山のいろいろとその形
  •      山のいろいろ
  •      (一)生まれ出た山
  •      (二)こわれ残った山
  •      (三)山の高さ
  •      (四)山の形をあらわす図面

オリジナル版
山の科學・山と河(一)

地名年表人物一覧書籍
難字、求めよ
後記次週予告

※ 製作環境
 ・Macintosh iBook、Mac OS 9.2.2、T-Time 2.3.1
 ・ポメラ DM100、ソニー Reader PRS-T2
 ・ソーラーパネル GOAL ZERO NOMAD 7
  (ガイド10プラス)
※ 週刊ミルクティー*は、JIS X 0213 文字を使用しています。
※ この作品は青空文庫にて入力中です。著作権保護期間を経過したパブリック・ドメイン作品につき、引用・印刷および転載・翻訳・翻案・朗読などの二次利用は自由です。
(c) Copyright this work is public domain.

*凡例〔現代表記版〕
  • ( ):小書き。 〈 〉:割り注。
  • 〔 〕:編者もしくは、しだによる注。
  • 一、漢字、かなづかい、漢字の送り、読みは現代表記に改めました。
  •    例、云う → いう / 言う
  •      処  → ところ / 所
  •      有つ → 持つ
  •      這入る → 入る
  •      円く → 丸く
  •      室  → 部屋
  •      にっぽんかい  → にほんかい
  • 一、同音異義の一部のひらがなを、便宜、漢字に改めました。
  •    例、いって → 行って / 言って
  •      きいた → 聞いた / 効いた
  • 一、若干の句読点を改めました。適宜、ルビや中黒や感嘆・疑問符をおぎないました。一部、改行と行頭の字下げを改めました。
  • 一、漢数字の表記を一部、改めました。
  •    例、七百二戸 → 七〇二戸
  •    例、二萬六千十一 → 二万六〇一一
  • 一、ひらがなに傍点は、一部カタカナに改めました。
  • 一、カタカナ漢字混用文は、ひらがな漢字混用文に改めました。
  • 一、和暦にはカッコ書きで西暦をおぎないました。年次のみのばあいは単純な置き換えにとどめ、月日のわかるばあいには陰暦・陽暦の補正をおこないました。
  • 一、和歌・俳句・短歌は、音節ごとに半角スペースで句切りました。
  • 一、表や図版キャプションなどの組版は、便宜、改めました。
  • 一、書名・雑誌名は『 』、論文名・記事名および会話文は「 」で示しました。
  • 一、「今から○○年前」のような経過年数の表記や、郡域・国域など地域の帰属、団体法人名・企業名などは、底本当時のままにしました。
  • 一、差別的表現・好ましくない表現はそのままとしました。

*尺貫・度量衡の一覧
  • 寸 すん  一寸=約3cm。
  • 尺 しゃく 一尺=約30cm。
  • 丈 じょう (1) 一丈=約3m。尺の10倍。(2) 周尺で、約1.7m。成人男子の身長。
  • 歩 ぶ (1) 左右の足を一度ずつ前に出した長さ。6尺。
  •     (2) 土地面積の単位。一歩は普通、曲尺6尺平方で、一坪に同じ。
  • 間 けん  一間=約1.8m。6尺。
  • 町 ちょう (1) 一町=10段(約100アール=1ヘクタール)。令制では3600歩、太閤検地以後は3000歩。(2) (「丁」とも書く) 一町=約109m強。60間。
  • 里 り   一里=約4km(36町)。昔は300歩、今の6町。
  • 合 ごう  一合=約180立方cm。
  • 升 しょう 一升=約1.8リットル。
  • 斗 と   一斗=約18リットル。
  • 海里・浬 かいり 一海里=1852m。
  • 尋 ひろ (1) (「広(ひろ)」の意)両手を左右にひろげた時の両手先の間の距離。(2) 縄・水深などをはかる長さの単位。一尋は5尺(1.5m)または6尺(1.8m)で、漁業・釣りでは1.5mとしている。
  • 坪 つぼ 一坪=約3.3平方m。歩(ぶ)。6尺四方。
  • 丈六 じょうろく 一丈六尺=4.85m。
  • マイル mile 一マイル=約1.6km。



*底本

底本:『山の科学 No.47』復刻版 日本児童文庫、名著普及会
   1982(昭和57)年6月20日発行
親本:『山の科學』日本兒童文庫、アルス
   1927(昭和2)年10月3日発行

NDC 分類:K450(地球科学.地学)
http://yozora.kazumi386.org/4/5/ndck450.html





やま科学かがくやまかわ(一)

理学博士 今井いまい半次郎はんじろう

   一、山の生まれるまで

    山のちからと人のちから


 ひらけないむかしの人たちの多くは、山というものを、すっかり神秘しんぴなものと考えて、ただ一途いちずにおそれあがめていました。それらの未開みかいの人々は高い山のみねが、雲をついてそびえっている、こうごうしいさまをあおぎ見たり、山上さんじょう密林みつりんなどにまよいったりして、しんしんとした、幽玄ゆうげんな感じにたれるたびに、山そのものに、生きたれい偉大いだい神威しんいがあるような迷信めいしんがおこり、ついにはその山霊さんれいにむかって、じぶんたちのつみが消えることや未来の加護かごをもいのったりしたものです。そののちだんだんと文化がひらけてきてからも、高い山の清浄せいじょう境地きょうちたっとんで、たいていの山の上にやしろや寺をたてました。今でも御嶽講おんたけこうだの三峰講みつみねこう秋葉講あきはこうなどという信者しんじゃの団体ができていて、山の上の、それぞれのやしろやおみや祈願きがんをしにのぼっています。ともかく、むかしの人は山というものをたん宗教的しゅうきょうてきに、おそれうやまっていたものです。
 しかし、われわれは最早もはや、山にたいしてそんな単純たんじゅん態度たいどをとって生きているわけにはいきません。山はそれこそさまざまの意味でわれわれの生活には密接みっせつな関係があるもので、のちに森林のばあいもおはなしがあるとおり、じゅうぶん山を愛護あいごすべきであると同時に、いっぽう、あくまで山を研究し、征服せいふくして、われわれは都合つごうよく利用することにつとめなければならないのです。
 日本は細長ほそながく南北につらなった島国しまぐにですが、同じ島国のイギリスなどにくらべると、土地の面積めんせきのわりに、非常に山の多い国です。その山々はたいてい、島のまんなか背骨せぼねにあたるところに多く集まって、高いみねのつづきをそびえさせています。ですから、本州ほんしゅうなどでいいますと、そのために土地がたて二つにわかれ、太平洋たいへいようにむかった東側と、日本海にほんかいにむかった西側との斜面しゃめんになり、そして、このみねつづきをさかいして、川は両側りょうがわにむかって流れくだっています。こういうみねの、いちばん高いつづきを「分水界ぶんすいかい」または「分水嶺ぶんすいれい」といいますが、こういう山脈さんみゃくは風をさえぎったり、雲をせきとめたりしますから、本州ほんしゅうでも東側と西側とでは気候きこうがひどくちがいます。われわれは、その東側の部分を表日本おもてほん、いっぽうを裏日本うらにほんとよんでいます。裏日本が表日本とちがって、冬になるといつも大雪おおゆきになやまされていることは、どなたもごぞんじでしょう。インドのヒマラヤさんの北側にある大きなゴビの砂漠さばくも、あの山脈のために雨雲あまぐもがさえぎられて、雨がふらないからできたのです。
 こういうふうに、山は、その地方ちほう地方の気候きこうを作るうえに非常な影響をもつものです。つぎにわれわれの文化が進めば進むほど、交通や物の運搬うんぱんがはげしくなってきます。それについては山はたいへんな邪魔じゃまをするもので、高く、けわしいと、なお妨害ぼうがいが大きいわけです。そのため、むかしは山がしぜんに地方の境界線きようかいせんになり、たがいの交通がはばまれるので、地方ちほう地方の言語げんご風俗ふうぞく人情にんじょうまでがちがっていたりしました。山が作りだす気候については、これはわれわれ人間の力でどうすることもできないのですが、いまいった交通のうえからは、われわれは、その邪魔じゃまものの山をどんどん切りひらいて道をつけたり、トンネルをうがって鉄道てつどうをとおすというふうに、できるだけ山を征服せいふくしなければなりません。つまり、山の力にうちかって、自由に支配しはいしていくことが必要なのです。
 同時にいっぽうでは、山はその森林しんりん雨水あまみずたもってわれわれのためにだいじな川の水源すいげんやしなってくれ、木をしげらせて薪炭しんたん材木ざいもく供給きょうきゅうしてくれ、いろいろの有用ゆうよう鉱物こうぶつなどをも持っていてくれ、われわれの食用しょくようやそのに利用できる鳥獣ちょうじゅうをもってくれています。ですから、われわれは、じゅうぶんに山について研究をつづけて、われわれの生活の安定の一面いちめんをはからなければなりません。おそろしい地震じしんの原因や火山の爆発ばくはつのわけを知るためにも、そのはじめとしては、山にあるひとつひとつのいしころをとり調しらべることからかかるのです。なんでもないつまらない山の草木そうもくでも、それを研究した結果、案外あんがいに、われわれの病気をなおす新しいくすりを発見するばあいもあり、今日こんにちまでに、有用ゆうようきんぎんどうてつ石炭せきたんなどの鉱物こうぶつを見つけ出したのも、みんなそういう注意ぶかい研究からきたのです。
 近来きんらいでは、登山とざんということがさかんになり、それによって体育たいいくをはかり、山上さんじょうでの神霊的しんれいてき気分きぶんによって精神をやしなったり、いろいろの美観びかんによってつかれた身心しんしん慰藉いしゃ〔なぐさめいたわること〕たりすることが、だいぶんひろくおこなわれてきましたが、みなさんもそれ以外に、多くの意味でいまから根本こんぽんに、山についていろいろの知識ちしきをそなえておかれることが必要です。それで以下、山についての学問上がくもんじょうのお話を、だいたいおはなししてみましょう。

    地球ちきゅう誕生たんじょう


 山というものは、一口ひとくちにいえば、地球ちきゅう表面ひょうめんのデコボコであります。それですから、その山がどうしてできたかというお話をするには、第一、地球が生まれ出た手続てつづきからおはなししなければなりません。
 地球ができあがった順序じゅんじょについては、だいたい、ふたとおりのせつがあります。その一つは星雲説せいうんせつといって、はじめ広い宇宙間うちゅうかんにみなぎっていた非常に熱度ねつどの高いガスたいが、うずきのように急速度きゅうそくどの運動をしながらこごりちぢまり、ちょうどおけたがのようなガスたいがいくつもいくつもでき、それがおのおの、だんだんにはなれてそれぞれひとかたまりになってきた、地球もそのかたまりの一つにほかならないというのです。もう一つのせつは、流星説りゅうせいせつとでもいうべきもので、これは宇宙間ちゅうかん浮動ふどうしている無数むすうの小さい星がたがいに衝突しょうとつしあい、それによってしょうじた高熱こうねつによって、団子だんご団子だんごをくっつけては大きくするように、すべてがとけあって一つのかたまりになったのが地球だというのです。

 いずれにしても、地球はもともと非常にあつい、ひかった流動体りゅうどうたいであったものが、クルクルまわりながら、しだいにえて、だんだんにかたまり、ついには、表面にうすいかわができたのであるということには、だれも反対をとなえる人もありません。つまり、地球も一度はあの赤くただれた太陽たいようのようなすがたの時代もあったのだから、また、いつかはまったくえきって、月のようなものになるときがくるであろうと想像そうぞうするのも無理むりのないことです。ところがちかごろでは、ラジウムという元素げんその研究が非常に進んできました。それによって、地球の持っているラジウムはたえず変化し、そして、そのさいに出すねつりょうがたいへん大きいので、たとい、地球自身じしんが、年々ねんねんねつうしなうとしてもそのわりあいには早くえきりはしないということがわかってきました〔この部分、未確認〕
 ともかく、いまおはなししたようにしてできた地球ちきゅう表面ひょうめんの、うすいかわのことを学問上がくもんじょうでは地殻ちかくづけています。地球ができあがったばかりのころは、地殻ちかくもまだごくうすく弱かったために、その内側うちがわにつつまれている、ドロドロにけた岩がきあがったり、ひっこんだりするにつれて、ふくれたり、くぼんだりしてブヨブヨしていました。そしてのちには、ところどころにができて、中から、ちょうど溶鉱炉ようこうろで見るようなまっな岩のしる岩漿がんしょう〔マグマ〕)が流れ出してはかたまって、地殻ちかくはだんだんにあつさがしてきたのです。
 しかし、地球の表面ひょうめんから、その中心までの距離きょり、つまり地球の半径はんけいは、おおよそ四〇〇〇マイル〔六四〇〇キロメートル〕もあるのにたいして、地殻のあつさはわずかに五〇マイル〔八〇キロメートル〕ぐらいしかありませんから、地球全体からいいますと、まだまだたいへんうすいもので、たとえばリンゴのかわと、中のの部分とのわりあいぐらいしかあたりません。それでもわれわれ人間がこれまでりさげたいちばん深いあなは、やく六五〇〇しゃくで一マイルはん〔二・四キロメートル〕にもたりないほどですから、一方いっぽうからいえば地殻の五〇マイルそのものが、どんなにあついかという想像そうぞうもつくでしょう。

    山のできたわけ

 (一)地殻ちかくのしわ

 こういうわけで地殻ちかくは、中身なかみからいうとわりあいにうすいかわでもあるので、中にあるまだ非常に温度の高い岩漿がんしょうねつは、たえず地殻をくぐって地表ちひょうからげ出していきます。ですから地球の中身なかみすこしずつ冷却れいきゃくし、したがって収縮しゅうしゅくするはずです。ところが地殻はすでにえきってかたい岩のばんになっている以上、あたらしく収縮する中身なかみといっしょに縮小しゅくしょうするわけにはいきません。そうかといって地殻と岩漿がんしょうとはひとつづきのもので、別々にはなれることもできない。そこでやむをえず地殻の部分にはたがいに強いしあいがおこって、そのためしわができてきます。これは、はりつめたゴムいたの上に、やわらかい粘土ねばつち油土あぶらつちで作ったたいらな板をのせ、つぎにゴム板のりをゆるめてみると、その粘土や油土にたくさんのしわができます。地殻についていったことも、この実験じっけんをしてごらんになるとすぐおわかりになります。また、リンゴやだいだいのような果物くだものひさしくたくわえておくと、中身なかみもだんだんに水分すいぶんうしなって収縮しゅうしゅくし、皮にたくさんのしわができます。これもだいたい同じ理屈りくつによるのです。

 (二)しわの山

 こうしてできた地殻ちかくのしわの、高いところが山にあたり、低いところがたにになったのはいうまでもありますまい。地球の表面は、海のそこであろうと陸地りくちであろうと、いたるところにこういうしわができてデコボコになっているのです。いいかえれば、海の底にも山や谷があるということになりますが、しかし、海底の山や谷はわれわれの住んでいる陸上りくじょうのそれらとは様子がたいへんちがっています。それは海底ではのちにお話しする浸食しんしょくとか、風化ふうかとかいうはたらきがおこなわれないためです。
 以上のごとく、地殻ちかくかたちづくっている岩が、たがいにしあってしわを作るはたらきを「褶曲しゅうきょく作用さよう」といいます。そのしあう力は、われわれが人混ひとごみのうちでおたがいにひじをはってしあうのと同じで、べつにづけて横圧力おうあつりょくともいい、また結局けっきょくは山をつくる結果になるので、造山力ぞうざんりょくともいいます。こうしてできあがった山は、しぜん、しわの山とも褶曲山しゅうきょくざんともいわれうるわけです。
 かく、しわの山は最初さいしょは地球のぐるりにかた地殻ちかくができるとすぐに、ひきつづきできたのですが、なお、地球がだんだんにえて収縮しゅうしゅくするにしたがって、いくたびでもしわができるわけですから、しわはつぎつぎに複雑ふくざつになってくるわけです。しかし、地球が冷却れいきゃくするのには非常に長い時間がかかるので、われわれ人間のにはとうていしわのできるありさまを実際じっさいに見ることはできません。
 地殻ちかくのしわの山も、紙にできたしわや、果物くだものの皮にできたしわと同じく、それぞれ、みなそうとうの長さを持っています。ですから地球の上の山はいずれもうちつづいた山脈さんみゃくとなっているのがつねです。世界で有名な大きな山脈は、たいていみな、こうしてできたしわのつづきです。地球上でもっとも高いとほこっているインドのヒマラヤ山脈でも、ヨーロッパでもっとも名高なだかいアルプス山脈、そのおとなりにあるユラ山脈〔ジュラ山脈〕でも、また北アメリカのロッキー山脈や、南アメリカのアンデス山脈もすべてそれです。こうした大きなしわの山はたいていのばあい、大陸たいりく大洋たいようとのさかい沿うたところにできることが多いようです。わが日本群島ぐんとうも大きくいえば、もともとアジア大陸と太平洋とのさかい沿うてできたしわの山がだんだん高まって波の上にあらわれてきたもので、つまりは一続ひとつづきの大山脈だいさんみゃくであると見てもいいのですが、それができあがったのち、いろいろの外からのはたらきで、部分ぶぶん部分がこわされたり、変化したりして、こんにちではいまいったことの証拠しょうこがだいぶわからなくなってきています。しかし、赤石あかいし山脈や、北上きたかみ山脈〔北上山地〕や、阿武隈あぶくま山脈〔阿武隈高地〕などには、まだ多少は、以上の事実を想像そうぞうしうる点が残っています。
 しかし、注意をようするのは、われわれがこんにち見る山は、地殻ちかくのしわからできた山ばかりではないことです。それ以外にも、山はいろいろの原因でできます。もと、しわからできた山でも、のちにいろいろに変化したりなくなったりして、そこに別の新しい山ができることもあります。こうして地球の表面はますます複雑ふくざつとなり、こみいった状態じょうたいになっていくのです。

    地球ちきゅう表面ひょうめん

 (一)水の世界せかいりく世界せかい

 以上でほぼ、地球の出生しゅっしょうから、その表面にデコボコができたわけがわかりました。そこで、今度は飛行機ひこうきに乗ったつもりで、空中くうちゅうから地球の表面をひとわたり見おろしてみましょう。
 すると、すぐににつくことは、地球の表面はだいたい、青々あおあおと水をたたえた大きな海と、草木そうもくのおいしげった広大こうだい陸地りくちとの二つの部分からなりたっていることです。しかし、その海となっている水の世界と、陸地となっているりくの世界とのわりあいは、けっして同じではありません。海の面積めんせきはおよそ三億七〇〇〇万平方へいほうキロメートル、陸の面積はやく一億五〇〇〇万平方キロメートルですから、海のほうがはるかに広く、陸地のほとんど三倍ぐらいもあります。つまり、地球全表面ぜんひょうめんのおよそ四分しぶんの三が海面かいめんで、四分の一が陸地ということになります。

 同時に、海とりくとのひろがりもたいへんかたよっていて、陸は多く北半球きたはんきゅうに集まり、海は多く南半球みなみはんきゅうにひろがっています。北半球はじつに、地球全体の陸地の四分の三だけあって、それが太平洋と大西洋たいせいようとの二つの大海洋だいかいようによって東西の両大陸りょうたいりくにわけられています。
 ここで、ちょっと注意しておきたいことは、その大陸と海洋かいようとの出入ではいりのことです。大陸のいっぽうが海洋かいようき出ていると、それとかいあった大陸は、ちょうどそれにあてはまるようにくぼんでいます。それでこれらの大陸は、はじめはおたがいにくっついていたのが、あとにだんだんはなれたものではないかと想像そうぞうする学者がくしゃもあります。じっさい、現在げんざいの海岸から深さ二〇〇メートル(一〇〇ひろ)だけの水を取りのぞいて、海岸の水をしてみたとしたら、ヨーロッパ大陸とアメリカ大陸とは非常に接近せっきんしてくるし、アフリカ大陸とヨーロッパ大陸、およびオーストラリア大陸とアジア大陸とは、それぞれほとんどひとつづきの大陸となってしまって、今日こんにちわれわれが地図の上で見る形とはたいへんちがったものになってきます。なかでも、わが日本群島ぐんとうのごときは、まったくアジア大陸といっしょになって、ただそのふちどりとなっているにすぎないこととなります。

 (二)桑滄そうそうへん

 こう考えてくると、海とりく境界きょうかいはさも明瞭めいりょうのようですが、実際じっさいはそうではないことがわかります。むかしから「桑田そうでんへんじて滄海そうかいとなる」という言葉があります。それは、いままでくわを植えていたはたけがしずんで、ついにはあおい海の底にかくれてしまったという意味で、加賀かが安宅あたか関所せきしょが、いまでは海岸からはなれた海の中にしずんでしまったという話を、みなさんの中には聞かれたかたがあるでしょう。これは、われわれ人間のみじかい歴史のあいだにおこった事実じじつですが、もっともっとを大きくして、地球ができてから今日こんにちまでの長いながい歴史を調べてみますと、じつにおどろくような、おそろしい変動へんどうがおこっています。それは前には非常に深い海の底であった場所が、のちに隆起りゅうきして非常に高い陸上りくじょうの山となったところもありますし、その反対に高かった陸地りくちがだんだん沈降ちんこうして、ついに深い海の底にかくれてしまったところもあるのです。しかも、こういうことが同じ一つの地方で、何度もくりかえしおこったことがあります。前におはなししたアルプス山脈でもロッキー山脈でも、みんな大昔おおむかしは海の底であったものが、今は高い山として陸地りくちにそびえているのです。
 ですから、こののちとても、こういう変化が地球上のどこに、いつおこらないとはかぎりません。しかし、そのあいはのちになるほどだんだん小さくなっていくはずです〔この部分、未確認〕。それにしても、こんな大きな水陸すいりくの変化のおこるのは、やはり、しわの山ができるのと同じ理屈りくつによるのです。みなさんが地理ちりでおならいになる地球上の大陸と海洋かいよう配列はいれつということも、地球の長い歴史からみれば、じつは一時的な不安定ふあんていなものともいえるのです。

 (三)陸地りくち表面ひょうめんの形

 陸地りくちはわれわれの生活する場所ですから、いますこしくわしくはなしておきましょう。陸地と海との境界きょうかいは、いうまでもなく海岸で、これによって陸地の輪郭りんかくができあがるのです。海岸から陸地の内部に進むにつれて、土地は通常つうじょう、だんだん高まっていくわけですが、しかしそのあいだにはたいらなところ、高くとがったところ、またくぼくへこんだところもあって、一定いっていしてはおりません。これは人間の顔に、とがったはながあり、くぼんだ口やがあって、人それぞれに特有とくゆう容貌ようぼうを作っているのとすこしもちがわないので、その状態を地貌ちぼうとも地形ちけいともよんでいます。
 人間の顔にもとしよった顔や、わかい顔や、生まれたばかりのあかんぼうの顔といろいろあるように、地貌ちぼうにも老幼ろうよう差別さべつがあります。また、容貌ようぼうには美しいもの、やさしいもの、やせてほねばったもの、みにくいものもあるように、地貌ちぼうにもで見て美しい景色けしきとなって展開てんかいするもの、男性的で雄大ゆうだいなものもあり、あまり人の感興かんきょうをひかない平凡へいぼんなものもあります。
 それでは、地貌ちぼうみたてるはなや、口や、などにあたるものは何々なになにでしょうか。まず地貌の輪郭りんかくを作るものは、いうまでもなく海岸ですが、その内側にあっておもな要素ようそとなっているものは、(一)平原へいげん(二)高原こうげん(三)山、(四)川・谷、(五)盆地ぼんち(六)みずうみ・沼、(七)段丘だんきゅう(八)斜面しゃめん(九)がけといったようなものにわかつことができます。これらのうち、山・谷・川および湖沼こしょうのことについては、いずれあとでおはなししますから、ここではそれ以外のものについて手短てみじかはなしておきましょう。

 (四)平原へいげん

 平原へいげんはまた平野へいやともいいます。地表面ちひょうめんの、だいたいにたいらなところをいうのですが、それにはたいへん広い平野とせまい平野とがあり、また多少はゆるい波をったところもあります。通例つうれいは海の波打なみうちぎわのあまり高くない海岸地方に多くできるのですが、たまには大陸の内部にもでき、降雨こううが少ないために、砂漠さばくとなることもあります。このほか大きな川の両側には、その氾濫はんらんによってたいへんに広い平原ができたり、また川の海にそそぐところにはたくさんのどろや砂がし流されてきて、広い三角形の平原を作ることもあります。川の両側にできたのを「河平原かへいげん」といい、川の出口にできたのを「三角州さんかくす平原」とづけます。
 世界で有名なエジプトのナイルがわ、シナの揚子江ようすこう長江ちょうこう、北アメリカのミシシッピーがわ、南アメリカのアマゾンがわなどには、非常に大きな河平原かへいげん三角州さんかくす平原があって、みな重要な農作物のうさくぶつ産地さんちとなっています。日本は山国やまぐにですから、それらにくらべるような平原はありませんが、それでも北海道ほっかいどう石狩いしかり平原〔石狩平野〕、東京付近ふきん関東かんとう平原〔関東平野〕裏日本うらにほん越後えちご平原〔越後平野〕富山とやま平原〔富山平野〕岐阜付近の濃尾のうび平原〔濃尾平野〕大阪おおさか付近の摂津せっつ河内かわち平原〔大阪平野か〕九州きゅうしゅう熊本くまもと平原〔熊本平野〕などは、かなり広いほうです。なお小さいものなら、海に近いところ、大きな山のふもとみずうみのまわり、川に沿うたところなどにかぞえきれないほどあります。
 平原には砂漠さばくもあり、湿地しっち密林みつりんがあり、またシベリアやカラフト〔サハリン〕の北のほうで見るように、年中ねんじゅう寒くこおりついたところもありますが、海や、川や、みずうみ沿うた平原は、たいがい、土地がえて農作のうさくてきするばかりでなく、地面がたいらですから、交通・運搬うんぱん便べんがよく、したがってむかしから人々はこのんでそこへ集まってきて都会とかいを作りました。

 (五)高原こうげん

 まわりの土地よりずっと高くて、その表面がだいたいたいらになっているところを「高原こうげん」といいます。ですから、まわりの土地と高原とのあいだには、けわしいさかがあるのが通例つうれいです。しかし、われわれがじっさい高原に立って見ただけでは、それが平原へいげんであるか高原であるか、ちょっと区別がつきにくいものです。それゆえ、高原はそこからはなれて見て、海のめんよりの高さが平原にくらべて、ずっと高いところというよりほかはありません。
 高原は、大きな高い山脈さんみゃくと山脈とのあいだにできることがよくあります。北アメリカの西海岸にしかいがんに近いロッキー山脈とシエラネバダ山脈とのあいだにあるアリゾナ高原〔コロラド高原か〕、アジアのコンロン山脈とヒマラヤ山脈とのあいだにあるチベット高原、パミール高原のようなものは、世界でもっとも名高なだかいものです。ことに、アリゾナ高原は海面からの高さが、およそ二〇〇〇メートルもあってそのあいだをコロラドがわが流れ、高原を作る岩を深くけずり取って両岸りょうがんに高いがけを作り、コロラド大峡谷だいきょうこく〔グランド・キャニオンか〕となえられています。そこには汽車きしゃとおっており、世界を旅行する人はわざわざ見物けんぶつに行くほど有名です。
 高原には、海の底に沈殿ちんでんしてできた岩のあつそうが、前におはなしした桑滄そうそうへんで、持ちあがってできたものもありますが、また火山のき出したドロドロにけた岩が、そのまま地表でかたまって、表面のたいらな、広い、高い台地だいちを作ることもあります。インドの南部にあるデカン高原は、こうしてできた溶岩ようがん高台たかだいで、海抜かいばつ二〇〇〇メートルもある名高なだかいものです。朝鮮ちょうせんの北、シナとのさかいにもこれにたものがあります蓋馬ケーマ高原か〕が、デカン高原のように高くはありません。
 日本の内地ないちは、山は多いけれど、地貌ちぼうこまかくきざまれていて、高原というようなものはあまりありません。ちかごろ有名になった日本アルプスの一部である飛騨ひだ山脈には、かなり高原らしいところがあります。また溶岩ようがんからできた高台たかだい〔溶岩台地〕では、讃岐さぬき屋島やしま〔ちがう説あり。Wikipedia 「屋島」「溶岩台地」、火山の大きなので名高なだかい九州の阿蘇あそなどをあげることができますが、これらはもとより小型こがたのもので、とうてい前におはなしした外国のものなどとはくらべものにはなりません。

 (六)盆地ぼんち

 平原へいげんのまわりが山でかこまれ、ぼんのように中がくぼんでいるところを「盆地ぼんち」といいます。ちょうど高原をうらむけにしたようなものと考えればいいわけです。それで、盆地へまわりの山から水が流れ落ちて、そこにたまり、みずうみや、大きな池や沼になることがあります。しかし、その水がどこかにはけくちができて干上ひあがってしまうと、立派りっぱ農業のうぎようてきする土地となり、たくさんの人が、しぜんと集まってきて住みつきます。
 盆地は地殻ちかくのしわの山の低いところにできることもありますし、火山が噴火ふんかをやめたのち、ちくぼんでできたのもあります。また土地の下にけやすい岩があると、それが、だんだん水にかされてうつろができ、ついに地表が落ちこんでできたのもあります。あるときは川に沿うた平地が、川の運んできた土砂どしゃかさねでしきられて、あさい盆地を作ることもあります。
 日本は一体いったいに土地のがりがりの変動へんどうがはげしくおこなわれているうえに、雨量うりょうが多い国ですから、いたるところにくぼができ、はじめはそれに水がたたえたまってみずうみや沼となり、のちにその湖沼こしょうかわいて小さな盆地になったような例が非常に多いようです。北海道では上川かみかわ盆地・富良野ふらの盆地、本州ほんしゅうでは新庄しんじょう盆地、会津あいづ盆地、丹那たんな盆地、四国では佐川さがわ盆地、九州では庄原しょうばる盆地、人吉ひとよし盆地などとかぞえきれないほどあります。

 (七)段丘だんきゅう

 みなさんは、海や川に行かれたときに、海岸かいがんや川のきし沿うて細長ほそながたいらな、たなのようになったところがあるのをごらんになったことがおありでしょう。それはちょうど停車場ていしゃばのプラットフォームのように規則きそく正しく、わざわざ人間がならしをしたのではないかと思わるるほどたいらで、たまには二段にも三段にも階段かいだんのようにかさなっていることがあります。しかし、これは人工じんこうではなく、まったく自然の力でできたもので、段丘だんきゅう」とづけられています。
 段丘はのちにお話しする海や川の浸食しんしょく作用でできるものですが、海岸にあるものを「海成かいせい段丘」、川岸かわぎしにあるものを「河成かせい段丘」といいます。
 海成段丘はカラフトの西海岸せいかいがん・北海道の北見きたみ天塩てしおの海岸、津軽つがる海峡かいきょう日本海にほんかい北部沿岸えんがんの秋田・新潟にいがた地方にもっともよく発達はったつしており、天塩てしおの海岸には海面から、四十しゃく〔一二メートル〕、一三〇尺〔三九メートル〕、二〇〇尺〔六〇メートル〕の高さの三段の階段のあることが、はっきりと見られます。
 河成かせい段丘は大きな川なら、たいていどこにでも見ることができますから、みなさんよく注意してごらんなさい。しかし人のつくった堤防ていぼうを、それとまちがえてはいけません。
 段丘には、もう一ついまいったのとは少し性質せいしつのちがったのがあります。それは地面にできた沿うて、片方かたほうの土地がおちこみ、しぜん、そこに高低たかひくの階段ができたばあいで、よく大きな地震じしんのあったあとにできるものです。濃尾のうび地震のときにも、関東かんとう地震のときにも、奥丹後おくたんご地震のときにも、小さいながら、そういう段丘ができました。これは断層だんそう段丘とよばれています。

 (八)斜面しゃめんがけ

 陸地りくちの表面は平坦へいたんだといっても、水の表面のように真平まったいらなものはほとんどありません。多少は、どちらかにかたむいて斜面しゃめんを作っています。このかたむきのことを「勾配こうばい」といいます。
 ですから、陸地表面の地貌ちぼうとは、いいかえればいろいろのあいの勾配こうばいをもった斜面から作りあげられた立体りったいだともいえます。つまりは山も川も海も、斜面の組みあわせの変化にすぎません。その組みあわせかたの巧妙こうみょうにできあがったものは、複雑ふくざつした曲線美きょくせんびをもち、わたくしどものをよろこばすよい景色けしきとなってくるのです。
 斜面しゃめん勾配こうばいあいは、その土地をつくっている岩の性質によって変わってきます。やわらかくてかたまらない砂や、火山灰かざんばいや、小石こいしなどからできている土地はザクザク、ボロボロしていますから、あまりきゅうな斜面にはなりません。しかし、やわらかい粘土ねんどでも、水でかたまるとずいぶんきゅうな、まっすぐにき立ったがけを作ることがあります。東京付近ふきん赤土あかつち(ロームともいいます)や、シナの平地を広くおおうている黄土おうど(レスともいいます)などはそのいい例です。それも雨がつづいて水をたくさんいこみますと、きゅうがけくずれや、山崩やまくずれをおこして、おそろしいがいこうむらすことがあるから注意しなければなりません。
 かたい岩でも、もと火山からき出した、ドロドロのけた岩のかたまったものは、岩のしるのねばりの多い少ないで、そのかたまるときにできる斜面しゃめん勾配こうばいがちがってきます。富士山ふじさん裾野すそのの斜面は富士岩ふじがん安山岩あんざんがんともいう)という溶岩ようがんかたまったときの勾配こうばいしめしています。
 しかし、なおよく考えてみると、土地の斜面しゃめんは、それをつくる岩のしつばかりによるものではありません。それは土地ができてからのちに、外部から受けるいろいろのはたらき、つまり、風化ふうか作用や浸食しんしょく作用によることが、よほど多いのです。そのことはのちにあらためておはなしするつもりです。
 がけ斜面しゃめん角度かくどのいっそうはなはだしく、けわしくなったもので、まっすぐにつき立ったものか、またはそれに近いものをいうのです。
 ですから、がけ斜面しゃめんもつまりは同じ性質せいしつのもので、ただそのあいがちがうのにすぎません。がけをいいあらわすに断崖だんがいとか、絶壁ぜっぺきとか、または懸崖けんがいとかいろいろの言葉がありますが、美しいよい景色けしきにはたいていがけはつきものになっています。

   二、山のいろいろとその形

    山のいろいろ


 いま、おはなしした高原こうげんが、さらに高くなると山というものになります。「山」というよりも「山岳さんがく」といったほうがいい。ただ山といえば、にわにあるき山も山であり、海辺うみべ川原かわらでみなさんがおこしらえになる砂山すなやまも、やはり山ですし、小さくいえば、アリや虫から見れば、もぐらもち〔モグラのこと〕の作った塚穴つかあなも山でしょう。
山岳さんがく」とは、ふつうは大きくて高く、海面かいめんから五〇〇メートル以上もあるものをいいます。それより低いものは、通常つうじょうおかといったり丘陵きゅうりょうといったりします。奈良なら三笠みかさの山など、学問上からは、ただの丘陵きゅうりょうです。
 山岳のいちばん高い頂上ちょうじょう通例つうれい、タケノコの頭のようにとがってせまくなっています。そこを「みね」といいます。しかし、あるときは馬の背筋せすじ屋根やねむねのようにせまくて、細長ほそながくなっていることもあります。こういうのを「みね」とよびます。おなじ「みね」でも意味がたいへんちがっています。ふつうはこの「みね」と「みね」とがたがいに、たちまざって一群いちぐんとなり、長くのびつづいています。これを「山脈さんみゃく」といいます。本州ほんしゅう木曽きそ山脈、北上きたかみ山脈〔北上山地〕宝達ほうたつ山脈宝達ほうだつ丘陵か〕などは、この例です。
 葉脈ようみゃくは、まんなかに大きな主脈しゅみゃくというものがあり、それから四方しほうに小さな支脈しみゃくえだのように出ています。山脈もこれと同じようにたいていは四方に支脈が出て、のいくつもの山脈とたがいに相連あいつらなり、複雑なものになってきます。こうなると、これらのいくつもの山脈をいっしょにひっくるめて「山系さんけい」といいます。たとえば日本アルプスの赤石あかいし山系は白峰しらみね両白りょうはく山地か〕巨摩こま〔巨摩山地〕伊那いな〔伊那山地〕かく山脈からなりたっているようなものです。
 山はその出来方できかたによって、生まれ出た山と、こわれ残った山との二つの大きな部類ぶるいにわけます。

 (一)生まれ出た山

 生まれ出た山というのは、ちょうど、みなさんがすな粘土ねばつちで山をおこしらえになるように、じっさい新しく地球上ちきゅうじょうに生まれ出てきた山です。その生まれかたも、いろいろちがっているので、便宜上べんぎじょう、つぎのようにわけています。

(イ)み上げ山。 これは地表の上に砂や粘土ねんど砂利じゃりのようなやわらかいものが、風や水のはたらきでみ上げられてできたもので、山としてはもっとも簡単かんたんなものです。海岸や砂漠さばくに風できよせられてできた砂丘さきゅうや、日本にはありませんが、氷河ひょうがの運んできた石(堆石たいせきといいます)や、砂がこおりのとけるとともにかさなってできた山などは、そのいい例です。あるときは川が運んできたどろや砂が一かしょにたまって山をきづくこともありましょう。しかし、これらはしょせん大きな山にはなりません。
(ロ)き出た山。 これは「火山」のことです。火山は土地のからドロドロの溶岩ようがんを地表にき出したもので、そのき出すときには、たいていおそろしい爆発ばくはつをして、まわりのかたい岩をこなみじんにくだいてばします。こうしてできた火山灰かざんばいや、火山砂かざんずなや、火山小石こいし火山礫かざんれきや、大きな岩のかけらなどが、き出した口(火口かこう」とも「噴火口ふんかこう」ともいいます)のまわりに溶岩ようがんといっしょに、つみかさなって、すりばちをふせたような形の山を作ります。ふつうは爆発ばくはつをたびたびくりかえせば、くり返すほど、火山は高く大きくなってきます。
 日本は欧州おうしゅうのイタリアとともに火山国かざんこくといわれるほどですから、富士山をはじめかぞえきれないほど、たくさんの火山があります。それには富士形ふじがたをした、形のととのった美しいのもありますが、なかにはたいへん不規則ふきそくにこわれたのもあります。火山のことは、今後こんご、ほかの先生からくわしいおはなしがあるはずですから今村いまむら明恒あきつね『火山の話』(『週刊ミルクティー*』第三巻第二九号)〕、わたしはこのくらいで打ちっておきます。

(ハ)げ山。 地球内部ないぶけた岩が火山のように地表ちひょうに流れ出すことなく、地殻ちかく途中とちゅうまで出てきて岩のあいだに流れこむと、その上部にある土地はまるくげられて、ちょうど正月の、おそなえもちのような形をした山ができあがります。これを「円頂山えんちょうざん」といいます。その出てきた岩のかたまったものを「餅盤べいばん」といいます。外国では、こうしてできた山はところどころにありますが、日本にはまだはっきりわかったものはないようです。
(ニ)しわの山。 これはすでに前におはなしした、横圧力おうあつりょくでできた褶曲山しゅうきょくざんのことです。世界の大きな山脈さんみゃくはたいてい、この褶曲山しゅうきょくざんであることも、ちゃんとおぼえておいでのことと思います。

(ホ)断層だんそうの山。 ところが、地殻ちかくのしわも、だんだん強くなると、ついにはそこにひびができます。青竹あおだけちからいっぱいげてみると、はじめのうちはだんだんがって山ができますが、のちにはそのいちばんはりつめた山の頂上ちょうじょうのところにひびができ、しまいには竹がれます。これと同じ理屈りくつで土地もしまいにはその沿うてれて、一方いっぽうがすべり落ちていちがいの形になることがあります。これを「断層だんそう」ができたといいます。そしてのところを「断層線だんそうせん」といいます。

 断層で一方の土地がすべり落ちると、そこは谷となり、残った一方の土地は山となります。これが断層の山です。断層は、ときにいくつもいくつもたがいに平行へいこうしておこることがあります。このばあいは、階段かいだんたいらにしてみたときのように、あるいはレンガだたみの道路がこわれてデコボコになったときのように、いくつもの平行へいこうした断層の谷と山とができあがります。
 断層だんそうでできた山は、日本にも外国にも例が多いようです。外国の例でよくひきあいに出されるのは、北アメリカ合衆国がっしゅうこくにあるシエラネバダ大山脈だいさんみゃくです。これは比較的ひかくてきたいらな土地におこった断層で、いっぽうが持ちあがり、いっぽうがすべり落ちてできたもので、断層のできたほうはけわしいがけとなり、その反対のがわはしだいにサクラメント平原へいげんにむかって、ゆるやかな傾斜けいしゃを作っています。
 日本で、そのシエラネバダ山脈によくているのは、日本北アルプスとよばれている、本州ほんしゅう中部の飛騨ひだ山脈地方です。飛騨側ひだがわはわりあいにゆるやかな斜面で、だんだん高さをくわえていきますが、それが東のほう、信州しんしゅうにまたがる地方になりますと、ついには海抜かいばつ一万じゃく〔三〇〇〇メートル〕内外ないがいにもたっするわが国第一の高い山岳さんがく地方となり、御岳おんたけ乗鞍のりくら穂高ほだかやり槍ヶ岳やりがたけ薬師やくし蓮華れんげ立山たてやま白馬しろうまなどのけわしい、高いみねがはるかに白い雲の上にそびえ立って、紫色むらさきいろの美しい姿を青空にかがやかしています。ところが、これが信州側しんしゅうがわに行くときゅうにプッツリとたちられて、屏風びょうぶを立てたようにけわしい断崖だんがい(断層のがけ)となってあらわれ、信州しんしゅう松本平まつもとだいら大町おおまち方面から見ると、ますますその雄大ゆうだいさをくわえています。
 以上で、だいたい、生まれ出た山のお話をしました。つぎにはこわれ残った山のお話です。

 (二)こわれ残った山

 もともと陸地りくちは、海から顔を出して空気中にさらされるようになると、すぐそのときから、空気と水のはたらきがたえずくわわって、だんだんにすりらされていきます。たとえば、ちょっと大雨がっても、道路のここかしこがこわれくずされることがあります。いま言った陸地の磨滅まめつ長年ながねんかかってなくおこなわれるのですからおそろしいもので、さきには高原であったところも、そこへ、はじめにできたあさ川筋かわすじがだんだんに深い広い谷となって、両側をきざみおとし、しまいにはかたい部分だけが残って、やわらかい部分はことごとくあらい流され、とうとういくつかの独立どくりつした山ができあがります。これが、こわれ残りの山です。山というものはこうしてできることもあるのです。
 日本には、こわれ残りの山だとはっきりいえる大きな山はありませんが、英国えいこくスコットランドの西北部せいほくぶやスカンジナビア半島はんとうなどには、そのいい例があります。
 しかし、しわの山でもき出した山でも、そのほかの山でも、みなたえず風化ふうか作用や浸食しんしょく作用を受けますから、できたてのときとくらべると、どれもいまでは、ひどくけずられているわけです。ことにしわの山は、大昔おおむかしにできたものになりますと、もはやその大部分がけずり取られて、胴体どうたいのみが残り、こわれ残りの山とちょっと区別がつかないことがあります。赤石あかいし山脈、木曽きそ山脈、筑波つくば山脈〔筑波山地〕中国ちゅうごく山脈〔中国山地〕のように、主として御影石みかげいしからできている山がそれです。

 (三)山の高さ

 世界中でいちばんの高山こうざんといえば、なんといっても、インドの北部、チベットとのさかいにあるヒマラヤ山脈の上に出るものはありません。この山脈には八〇〇〇メートル以上のみねが五つもあり、ことに、だいたい中央に近いところにあるエベレストほう海抜かいばつ八八四〇メートルにものぼっていて、地球上での最高の場所となっています。日本でいちばん高い山は、いうまでもなく台湾たいわん新高山にいたかやま玉山ぎょくざんですが〔台湾の日本統治時代のこと〕、それは海抜かいばつ三九五〇メートルですから、エベレストにくらべると、その半分にもたらないわけです。
 なおおもしろいことは、世界最高の山脈はほとんどみんなインドの北方ほっぽうからチベット、トルキスタン地方にいたるアジアの中央部に集まっていることです。ヒマラヤ山脈につぐ世界で第二の高山こうざんは、そのすぐ西北にとなりしているカラコルム山脈で、それには八一二〇メートルから八六二〇メートルにいたる三つの高いみねがあります。チベット高原でも七二〇〇メートルから八〇〇〇メートルあり、トルキスタンのパミール高原は七〇〇〇メートルから七八六〇メートルもあります。
 ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、大洋州たいようしゅう〔オセアニア〕とアジア以外の大陸を見渡みわたしても、ただ一つ南アメリカのアンデス山脈の最高峰さいこうほうアコンカグアが七〇四〇メートル〔六九六〇メートル〕たっしているだけで、その他はたいてい六〇〇〇メートル以下のものばかりです。ヨーロッパで有名なアルプス山脈の最高峰モン・ブラン(白山はくさん)は四八一〇メートル、北米ほくべいロッキー山脈の最高峰さいこうほうブランカ・ピーク〔エルバート山か〕は四三八六メートルしかありません。
 日本で新高山にいたかやまにつぐ高山こうざん台湾たいわんにはなかなか多いですが、内地ないちでは富士山(三七七八メートル〔三七七六メートル〕がもっとも高く、それにつぐものは駿河するが甲斐にまたがる白根山しらねさん〔北岳か〕(三一九二メートル)信州しんしゅう槍ヶ岳やりがたけ(三一八〇メートル)駿河するが東岳ひがしだけ〔別名、悪沢岳わるさわだけ(三一四六メートル)駿すんしん赤石岳あかいしだけ(三一二〇メートル)などで、三〇〇〇メートル以上の高山は台湾のをのぞいては、ことごとく本州ほんしゅう中部の甲斐駿河するが飛騨ひだ信濃しなのの四かこくに集まっています。
 そこで、今度はりくの高さと海の深さとをくらべてみましょう。太平洋・大西洋たいせいよう・インドようなどの、大きな海洋かいようの平均の深さはだいたい三〇〇〇メートルから四〇〇〇メートルぐらいですが、ところどころに、きゅうにグイッと深くなっているところがあります。そこを「海溝かいこう」とづけています。太平洋にはことに海溝が非常に多く、そのなかでももっとも深いのは日本本州ほんしゅうおき伊豆いず七島しちとうの東方にある海溝で、九九五〇メートル以上にたっしているといわれています。これが世界中で最深さいしんの場所で、世界最高のエベレストほうにくらべても、なお一一一〇メートルも深くなっているわけです。
 ですから、地球上の最低のところと最高のところとのへだたり、つまりこの日本島沖にっぽんとうおきの海溝の深さと、エベレストの高さとをくわえたは、じつに一万八七九〇メートル、ざっと一二マイルにもなります。しかし、これも地球の直径ちょっけい八〇〇〇マイルにくらべるとあまりたいしたものではないでしょう。太平洋には、なおほかに九〇〇〇メートル以上にたっする海溝が五か所もあり、五〇〇〇メートル以上九〇〇〇メートルにおよぶものは世界中になお十六か所もあります。
 それゆえ、けっきょく陸地りくちの高さは海の深さとはとうていくらべものにはなりません。陸地をすっかりけずりとって、海の底にしずめるとなれば、それこそかげも形もなくなってしまうわけです。

 (四)山の形をあらわす図面ずめん

 陸地りくち表面のデコボコや配列はいれつのありさまを図面上ずめんじょうにあらわして研究するということは、わたくしどもにとっての大切たいせつな仕事の一つです。これは、みなさんが遠足や修学しゅうがく旅行や、山登やまのぼりにいかれるさいにも、なくてはならないもので、つまり地形をこまかく図面上にうつし出したものなのですから、これを「地形図ちけいず」とづけています。

 地形図じょうで山の高低こうていをあらわす方式ほうしきはいろいろありますが、そのおもなものは、等高線式とうこうせんしき、ケバしき鳥瞰式ちょうかんしき、ボカシしきなどです。

(イ)等高線式とうこうせんしき。 これは曲線式きょくせんしきともいい、山の同じ高さのところを線でつないで図面上にあらわしたものです。それにはたいてい海水面を高さ〇度れいどとし、だんだんと上方じょうほうに同じ高さをもとめて線を引くのです。この式は地形をあらわすにはもっとも正確せいかくなすぐれた仕方かたで、曲線きょくせんがたがいに接近せっきんして複雑になっているところは山のきゅうな場所で、あらいところはゆるい坂をしめすことになります。
(ロ)ケバしき暈式うんおうしき。 ケバというこまかい毛のような線で、山に陰日向かげひなたをつけ、しぜんに高低をあらわしたものをいいます。ですから、また「陰影式いんえいしき」ともよんでいます。ふつうはふもとの、坂のゆるやかなところはケバをあらく、長くかつこまかくかき、高くなるほどみつに、みじかく太くしていくのです。この式の地形図では山の高低ははっきりわかりますが、等高線式とうこうせんしきのようにある場所が海抜かいばつなんメートルあるかという正確せいかくなことはあらわせません。
(ハ)鳥瞰式ちょうかんしき。 これは鳥になって高い空から見おろしてかいたような地形図で、たとえば飛行機ひこうきからうつした山の写真と同じわけのものです。これはまるでパノラマのようで、いちばん実物じつぶつに近いので、だれにでも地貌ちぼうが手にとるようにわかります。むかしの地図や、今日こんにちでも名勝めいしょう旧跡きゅうせきなどの案内図あんないずには、よくこの式をとっています。
(ニ)ボカシしき暈式うんせんしき。 これは褐色かばいろや黒色くろいろ濃淡のうたんをつけ、そのさの度合どあいでもって山の区域くいきや高低をあらわしたものです。色のいほど高く、低くなるにしたがってうすくります。ですから、また「濃淡式のうたんしき」ともづけています。海の深さをあらわすにも、よくこの式がもちいられますが、海のほうはかならず青色を使い、深いほど色をく強くつけます。
(つづく)



底本:『山の科学 No.47』復刻版 日本児童文庫、名著普及会
   1982(昭和57)年6月20日発行
親本:『山の科學』日本兒童文庫、アルス
   1927(昭和2)年10月3日発行
入力:しだひろし
校正:
xxxx年xx月xx日作成
青空文庫作成ファイル:
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山の科學・山と河(一)

理學博士 今井半次郎

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《》:ルビ
(例)山《やま》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)明治《めいじ》四三|年《ねん》一一|月《がつ》

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/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)人々《ひと/″\》
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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   一、山《やま》の生《うま》れるまで

    山《やま》の力《ちから》と人《ひと》の力《ちから》

 開《ひら》けない昔《むかし》の人《ひと》たちの多《おほ》くは、山《やま》といふものを、すっかり神祕《しんぴ》なものと考《かんが》へて、たゞ一途《いちず》におそれ崇《あが》めてゐました。それ等《ら》の未開《みかい》の人々《ひと/″\》はたかい山《やま》の峯《みね》が、雲《くも》をついて聳《そび》え立《た》つてゐる、かう/″\しいさまを仰《あふ》ぎ見《み》たり、山上《さんじよう》の密林《みつりん》などにまよひ入《い》つたりして、しんしんとした、幽玄《ゆうげん》な感《かん》じに打《う》たれるたびに、山《やま》そのものに、生《い》きた靈《れい》と偉大《いだい》な神威《しんい》があるような迷信《めいしん》がおこり、つひにはその山靈《さんれい》に向《むか》つて、じぶん達《たち》の罪《つみ》がきえることや未來《みらい》の加護《かご》をも祈《いの》つたりしたものです。その後《のち》だん/\と文化《ぶんか》が開《ひら》けて來《き》てからも、たかい山《やま》の清淨《せいじよう》な境地《きようち》を貴《たつと》んで、たいていの山《やま》の上《うへ》に社《やしろ》や寺《てら》をたてました。今《いま》でも御嶽講《おんたけこう》だの三峯講《みつみねこう》、秋葉講《あきはこう》などといふ信者《しんじや》の團體《だんたい》ができてゐて、山《やま》の上《うへ》の、それ/″\の社《やしろ》やお宮《みや》へ祈願《きがん》をしに登《のぼ》つてゐます。ともかく、昔《むかし》の人《ひと》は山《やま》といふものを單《たん》に宗教的《しゆうきようてき》に、畏《おそ》れ敬《うやま》つてゐたものです。
 しかし、われ/\は最早《もはや》、山《やま》にたいしてそんな單純《たんじゆん》な態度《たいど》をとつて生《い》きてゐるわけにはいきません。山《やま》はそれこそさま/″\の意味《いみ》でわれ/\の生活《せいかつ》には密接《みつせつ》な關係《かんけい》があるもので後《のち》に森林《しんりん》の場合《ばあひ》もお話《はなし》があるとほり、十分《じゆうぶん》山《やま》を愛護《あいご》すべきであると同時《どうじ》に、一方《いつぽう》、あくまで山《やま》を研究《けんきゆう》し、征服《せいふく》して、われ/\は都合《つごう》よく利用《りよう》することに努《つと》めなければならないのです。
 日本《につぽん》は細長《ほそなが》く南北《なんぼく》につらなつた島國《しまぐに》ですが、同《おな》じ島國《しまぐに》のイギリスなどに比《くら》べると、土地《とち》の面積《めんせき》のわりに、非常《ひじよう》に山《やま》の多《おほ》い國《くに》です。その山々《やま/\》はたいてい、島《しま》のまん中《なか》の脊骨《せぼね》にあたるところに多《おほ》く集《あつま》つて、高《たか》い峯《みね》のつゞきを聳《そび》えさせてゐます。ですから、本州《ほんしゆう》などでいひますと、そのために土地《とち》が縱《たて》二《ふた》つに分《わか》れ、太平洋《たいへいよう》に向《むか》つた東側《ひがしがは》と、日本海《につぽんかい》に向《むか》つた西側《にしがは》との斜面《しやめん》になり、そして、この嶺《みね》つゞきを界《さかひ》して、河《かは》は兩側《りようがは》に向《むか》つて流《なが》れ下《くだ》つてゐます。かういふ嶺《みね》の、一《いち》ばんたかい續《つゞ》きを『分水界《ぶんすいかい》』又《また》は『分水嶺《ぶんすいれい》』といひますが、かういふ山脈《さんみやく》は、風《かぜ》をさへぎつたり、雲《くも》をせきとめたりしますから、本州《ほんしゆう》でも東側《ひがしがは》と西側《にしがは》とでは氣候《きこう》がひどくちがひます。われ/\は、その東側《ひがしがは》の部分《ぶぶん》を表日本《おもてにつぽん》、一方《いつぽう》を裏日本《うらにつぽん》とよんでゐます。裏日本《うらにつぽん》が表日本《おもてにつぽん》とちがつて、冬《ふゆ》になると、いつも大雪《おほゆき》になやまされてゐることは、どなたもご存《ぞん》じでせう。インドのヒマラヤ山《さん》の北側《きたがは》にある大《おほ》きなゴビの沙漠《さばく》も、あの山脈《さんみやく》のために雨雲《あまぐも》がさへぎられて、雨《あめ》がふらないからできたのです。
 かういふ風《ふう》に、山《やま》は、その地方《ちほう》々々《/\》の氣候《きこう》を作《つく》る上《うへ》に非常《ひじよう》な影響《えいきよう》をもつものです。つぎにわれ/\の文化《ぶんか》が進《すゝ》めば進《すゝ》むほど、交通《こうつう》や物《もの》の運搬《うんぱん》がはげしくなつて來《き》ます。それについては山《やま》は大變《たいへん》な邪魔《じやま》をするもので、高《たか》く、けはしいと、なほ妨害《ぼうがい》が大《おほ》きいわけです。そのため、昔《むかし》は、山《やま》がしぜんに地方《ちほう》の境界線《きようかいせん》になり、互《たがひ》の交通《こうつう》が阻《はゞ》まれるので、地方《ちほう》々々《/\》の言語《げんご》や風俗《ふうぞく》や人情《にんじよう》までが、ちがつてゐたりしました。山《やま》が作《つく》り出《だ》す氣候《きこう》については、これはわれ/\人間《にんげん》の力《ちから》でどうすることも出來《でき》ないのですが、今《いま》いつた交通《こうつう》の上《うへ》からは、われわれは、その邪魔《じやま》ものゝ山《やま》を、どん/\切《き》り開《ひら》いて道《みち》をつけたり、とんねる[#「とんねる」に傍点]をうがつて鐵道《てつどう》を通《とほ》すといふ風《ふう》に、出來《でき》るだけ山《やま》を征服《せいふく》しなければなりません。つまり、山《やま》の力《ちから》にうちかつて、自由《じゆう》に支配《しはい》していくことが必要《ひつよう》なのです。
 同時《どうじ》に一方《いつぽう》では、山《やま》はその森林《しんりん》に雨水《あまみづ》を保《たも》つてわれ/\のためにだいじな河《かは》の水源《すいげん》を養《やしな》つてくれ、木《き》を茂《しげ》らせて薪炭《しんたん》や材木《ざいもく》を供給《きようきゆう》してくれ、いろ/\の有用《ゆうよう》な鑛物《こうぶつ》などをも持《も》つてゐてくれ、われ/\の食用《しよくよう》やその他《た》に利用《りよう》できる鳥獸《ちようじゆう》をも飼《か》つてくれてゐます。ですから、われ/\は、十分《じゆうぶん》に山《やま》について研究《けんきゆう》をつゞけて、われ/\の生活《せいかつ》の安定《あんてい》の一面《いちめん》を計《はか》らなければなりません。恐《おそ》ろしい地震《じしん》の原因《げんいん》や火山《かざん》の爆發《ばくはつ》のわけを知《し》るためにも、その手《て》はじめとしては、山《やま》にある一《ひと》つ/\の石《いし》ころをとり調《しら》べることからかゝるのです。なんでもないつまらない山《やま》の草木《そうもく》でも、それを研究《けんきゆう》した結果《けつか》、案外《あんがい》に、われ/\の病氣《びようき》を直《なほ》す新《あたら》しい藥《くすり》を發見《はつけん》する場合《ばあひ》もあり、今日《こんにち》までに、有用《ゆうよう》な金《きん》や銀《ぎん》や銅《どう》、鐵《てつ》、石炭《せきたん》などの鑛物《こうぶつ》を見《み》つけ出《だ》したのも、みんなさういふ注意《ちゆうい》ぶかい研究《けんきゆう》から來《き》たのです。
 近來《きんらい》では、登山《とざん》といふことが盛《さか》んになり、それによつて體育《たいいく》をはかり、山上《さんじよう》での神靈的《しんれいてき》な氣分《きぶん》によつて精神《せいしん》を養《やしな》つたり、いろ/\の美觀《びかん》によつて疲《つか》れた身心《しんしん》に慰藉《いしや》を得《え》たりすることが、だいぶんひろく行《おこな》はれて來《き》ましたが、みなさんもそれ以外《いがい》に、多《おほ》くの意味《いみ》で今《いま》から根本《こんぽん》に、山《やま》について、いろ/\の知識《ちしき》をそなへておかれることが必要《ひつよう》です。それで以下《いか》、山《やま》についての學問上《がくもんじよう》のお話《はなし》を、だいたいお話《はなし》して見《み》ませう。

    地球《ちきゆう》の誕生《たんじよう》

 山《やま》といふものは、一口《ひとくち》にいへば、地球《ちきゆう》の表面《ひようめん》のでこぼこ[#「でこぼこ」に傍点]であります。それですから、その山《やま》がどうして出來《でき》たかといふお話《はなし》をするには、第一《だいいち》、地球《ちきゆう》が生《うま》れ出《で》た手續《てつゞ》きからお話《はなし》しなければなりません。
 地球《ちきゆう》ができ上《あが》つた順序《じゆんじよ》については、だいたい、二通《ふたとほ》りの説《せつ》があります。その一《ひと》つは星雲説《せいうんせつ》といつて、はじめ廣《ひろ》い宇宙間《うちゆうかん》に漲《みなぎ》つてゐた非常《ひじよう》に熱度《ねつど》のたかい瓦斯體《がすたい》が、渦卷《うづま》きのように急速度《きゆうそくど》の運動《うんどう》をしながら凝《こゞ》りちゞまり、ちょうど桶《をけ》たが[#「たが」に傍点]のような瓦斯體《がすたい》の環《わ》がいくつもいくつも出來《でき》、それがおの/\、だん/\に離《はな》れてそれ/″\一塊《ひとかたまり》になつて來《き》た、地球《ちきゆう》もその塊《かたまり》の一《ひと》つに外《ほか》ならないといふのです。もう一《ひと》つの説《せつ》は、流星説《りゆうせいせつ》とでもいふべきもので、これは宇宙間《うちゆうかん》に浮動《ふどう》してゐる無數《むすう》の小《ちひ》さい星《ほし》が互《たがひ》に衝突《しようとつ》し合《あ》ひ、それによつて生《しよう》じた高熱《こうねつ》によつて、團子《だんご》へ團子《だんご》をくっつけては大《おほ》きくするように、すべてがとけ合《あ》つて一《ひと》つの塊《かたまり》になつたのが地球《ちきゆう》だといふのです。
[#図版(01.png)、星雲の圖]
 いづれにしても、地球《ちきゆう》はもと/\非常《ひじよう》に熱《あつ》い、光《ひか》つた流動體《りゆうどうたい》であつたものが、くる/\廻《まは》りながら、次第《しだい》に冷《ひ》えて、だん/\に固《かた》まり、つひには、表面《ひようめん》に薄《うす》い皮《かは》が出來《でき》たのであるといふことには、誰《だれ》も反對《はんたい》をとなへる人《ひと》もありません。つまり、地球《ちきゆう》も一度《いちど》はあの赤《あか》くたゞれた太陽《たいよう》のような姿《すがた》の時代《じだい》もあつたのだから、また、いつかはまったく冷《ひ》え切《き》つて、月《つき》のようなものになる時《とき》が來《く》るであらうと想像《そうぞう》するのも無理《むり》のないことです。ところが近頃《ちかごろ》では、らぢうむ[#「らぢうむ」に傍点]といふ元素《げんそ》の研究《けんきゆう》が非常《ひじよう》に進《すゝ》んで來《き》ました。それによつて、地球《ちきゆう》の持《も》つてゐるらぢうむ[#「らぢうむ」に傍点]は絶《た》えず變化《へんか》し、そして、その際《さい》に出《だ》す熱《ねつ》の量《りよう》が大變《たいへん》おほきいので、たとひ、地球《ちきゆう》自身《じしん》が、年々《ねん/\》熱《ねつ》を失《うしな》ふとしてもそのわりあひには [#全角あきは底本のまま]早《はや》く冷《ひ》え切《き》りはしないといふことがわかつて來《き》ました。
 ともかく、今《いま》お話《はなし》したようにして出來《でき》た、地球《ちきゆう》の表面《ひようめん》の、薄《うす》い皮《かは》のことを學問上《がくもんじよう》では地殼《ちかく》と名《な》づけてゐます。地球《ちきゆう》ができ上《あが》つたばかりの頃《ころ》は、地殼《ちかく》もまだ極《ご》く薄《うす》く弱《よわ》かつたために、その内側《うちがは》に包《つゝ》まれてゐる、どろ/\に熔《と》けた岩《いは》が吹《ふ》き上《あが》つたり、ひっこんだりするにつれて、膨《ふく》れたり、くぼんだりしてぶよ/\してゐました。そしてのちには、ところ/″\に裂《さ》け目《め》ができて、中《なか》から、ちょうど鎔鑛爐《ようこうろ》で見《み》るような眞赤《まつか》な岩《いは》の汁《しる》(岩漿《がんしよう》)が流《なが》れ出《だ》しては固《かた》まつて、地殼《ちかく》はだん/\に厚《あつ》さが増《ま》して來《き》たのです。
 しかし、地球《ちきゆう》の表面《ひようめん》から、その中心《ちゆうしん》までの距離《きより》、つまり地球《ちきゆう》の半徑《はんけい》は、おほよそ四千《しせん》まいる[#「まいる」に傍点]もあるのにたいして、地殼《ちかく》の厚《あつ》さは僅《わづか》に五十《ごじゆう》まいる[#「まいる」に傍点]ぐらゐしかありませんから、地球《ちきゆう》全體《ぜんたい》からいひますと、まだ/\大變《たいへん》薄《うす》いもので、たとへば林檎《りんご》の皮《かは》と、中《なか》の實《み》の部分《ぶぶん》とのわりあひぐらゐしか當《あた》りません。それでもわれ/\人間《にんげん》が、これまで掘《ほ》り下《さ》げた一番《いちばん》深《ふか》い孔《あな》は、約《やく》六千《ろくせん》五百尺《ごひやくしやく》で一《いち》まいる[#「まいる」に傍点]半《はん》にも足《た》りないほどですから、一方《いつぽう》からいへば地殼《ちかく》の五十《ごじゆう》まいる[#「まいる」に傍点]そのものが、どんなに厚《あつ》いかといふ想像《そうぞう》もつくでせう。

    山《やま》の出來《でき》たわけ

 (一)地殼《ちかく》の皺《しわ》
 かういふわけで地殼《ちかく》は、中《なか》みからいふとわりあひに薄《うす》い皮《かは》でもあるので、中《なか》にあるまだ非常《ひじよう》に温度《おんど》の高《たか》い岩漿《がんしよう》の熱《ねつ》は、絶《た》えず地殼《ちかく》をくゞつて地表《ちひよう》から逃《に》げ出《だ》していきます。ですから地球《ちきゆう》の中《なか》みは少《すこ》しづゝ冷却《れいきやく》し、從《したが》つて收縮《しゆうしゆく》する筈《はず》です。ところが地殼《ちかく》はすでに冷《ひ》え切《き》つて堅《かた》い岩《いは》の盤《ばん》になつてゐる以上《いじよう》、あたらしく收縮《しゆうしゆく》する中《なか》みといっしよに縮小《しゆくしよう》するわけにはいきません。さうかといつて地殼《ちかく》と岩漿《がんしよう》とは一續《ひとつゞ》きのもので、別々《べつ/\》にはなれることも出來《でき》ない。そこで止《や》むを得《え》ず地殼《ちかく》の部分《ぶぶん》には互《たがひ》に強《つよ》い壓《お》し合《あ》ひがおこつて、そのため皺《しわ》が出來《でき》て來《き》ます。これは、張《は》りつめたごむ[#「ごむ」に傍点]板《いた》の上《うへ》に、軟《やはらか》い粘土《ねばつち》か油土《あぶらつち》で作《つく》つた平《たひら》な板《いた》をのせ、次《つ》ぎにごむ[#「ごむ」に傍点]板《いた》の張《は》りを弛《ゆる》めて見《み》ると、その粘土《ねばつち》や油土《あぶらつち》に澤山《たくさん》の皺《しわ》が出來《でき》ます。地殼《ちかく》についていつたことも、この實驗《じつけん》をしてごらんになるとすぐおわかりになります。また、林檎《りんご》や橙《だいだい》のような果物《くだもの》を久《ひさ》しく貯《たくは》へて置《お》くと、中《なか》みもだん/\に水分《すいぶん》を失《うしな》つて收縮《しゆうしゆく》し、皮《かは》に澤山《たくさん》の皺《しわ》ができます。これも大體《だいたい》同《おな》じ理窟《りくつ》によるのです。
 (二)皺《しわ》の山《やま》
 かうして出來《でき》た地殼《ちかく》の皺《しわ》の、高《たか》いところが山《やま》にあたり、低《ひく》いところが谷《たに》になつたのはいふまでもありますまい。地球《ちきゆう》の表面《ひようめん》は、海《うみ》の底《そこ》であらうと陸地《りくち》であらうと、いたるところに、かういふ皺《しわ》ができて、でこぼこ[#「でこぼこ」に傍点]になつてゐるのです。いひかへれば、海《うみ》の底《そこ》にも山《やま》や谷《たに》があるといふことになりますが、しかし、海底《かいてい》の山《やま》や谷《たに》はわれ/\の住《す》んでゐる陸上《りくじよう》のそれらとは樣子《ようす》が大變《たいへん》違《ちが》つてゐます。それは海底《かいてい》では後《のち》にお話《はなし》する浸蝕《しんしよく》とか、風化《ふうか》とかいふ働《はたら》きが行《おこな》はれないためです。
 以上《いじよう》のごとく、地殼《ちかく》をかたち造《づく》つてゐる岩《いは》が、互《たがひ》に壓《お》し合《あ》つて皺《しわ》を作《つく》る働《はたら》きを『褶曲《しゆうきよく》作用《さよう》』といひます。その壓《お》し合《あ》ふ力《ちから》は、われわれが人混《ひとご》みのうちでお互《たがひ》に肘《ひぢ》を張《は》つて押《お》し合《あ》ふのと同《おな》じで、別《べつ》に名《な》づけて横壓力《おうあつりよく》ともいひ、また結局《けつきよく》は山《やま》を造《つく》る結果《けつか》になるので、造山力《ぞうざんりよく》ともいひます。かうして出來上《できあが》つた山《やま》は、しぜん皺《しわ》の山《やま》とも褶曲山《しゆうきよくざん》ともいはれ得《う》るわけです。
[#図版(02.png)、褶曲作用によつて出來た山と谷]
 かく、皺《しわ》の山《やま》は最初《さいしよ》は地球《ちきゆう》のぐるりに堅《かた》い地殼《ちかく》ができるとすぐに、ひき續《つゞ》きできたのですが、なほ、地球《ちきゆう》がだん/\に冷《ひ》えて收縮《しゆうしゆく》するに從《したが》つて、いくたびでも皺《しわ》ができるわけですから、皺《しわ》はつぎ/\に複雜《ふくざつ》になつて來《く》るわけです。しかし、地球《ちきゆう》が冷却《れいきやく》するのには非常《ひじよう》に長《なが》い時間《じかん》がかゝるので、われ/\人間《にんげん》の眼《め》には到底《とうてい》皺《しわ》のできるあり樣《さま》を實際《じつさい》に見《み》ることはできません。
 地殼《ちかく》の皺《しわ》の山《やま》も、紙《かみ》に出來《でき》た皺《しわ》や、果物《くだもの》の皮《かは》にできた皺《しわ》と同《おな》じく、それ/″\みな相當《そうとう》の長《なが》さを持《も》つてゐます。ですから地球《ちきゆう》の上《うへ》の山《やま》はいづれもうち續《つゞ》いた山脈《さんみやく》となつてゐるのが常《つね》です。世界《せかい》で有名《ゆうめい》な大《おほ》きな山脈《さんみやく》は、たいていみなかうして出來《でき》た皺《しわ》のつゞきです。地球上《ちきゆうじよう》で最《もつと》も高《たか》いと誇《ほこ》つてゐるインドのヒマラヤ山脈《さんみやく》でも、ヨーロッパで最《もつと》も名高《なだか》いアルプス山脈《さんみやく》、そのお隣《とな》りにあるユラ山脈《さんみやく》でも、また北《きた》アメリカのロッキー山脈《さんみやく》や、南《みなみ》アメリカのアンデス山脈《さんみやく》もすべてそれです。かうした大《おほ》きな皺《しわ》の山《やま》は大抵《たいてい》の場合《ばあひ》、大陸《たいりく》と大洋《たいよう》との境《さかひ》に沿《そ》うたところにできることが多《おほ》いようです。わが日本《につぽん》群島《ぐんとう》も大《おほ》きくいへば、もと/\アジア大陸《たいりく》と太平洋《たいへいよう》との境《さかひ》に沿《そ》うて出來《でき》た皺《しわ》の山《やま》がだん/\高《たか》まつて波《なみ》の上《うへ》に現《あらは》れて來《き》たもので、つまりは一續《ひとつゞ》きの大山脈《だいさんみやく》であると見《み》てもいゝのですが、それができ上《あが》つた後《のち》、いろいろの外《そと》からの働《はたら》きで、部分《ぶぶん》々々《/\》が壞《こは》されたり、變化《へんか》したりして、今日《こんにち》では今《いま》いつたことの證據《しようこ》が大分《だいぶ》わからなくなつて來《き》てゐます。しかし、赤石《あかいし》山脈《さんみやく》や、北上《きたかみ》山脈《さんみやく》や、阿武隈《あぶくま》山脈《さんみやく》などには、まだ多少《たしよう》は、以上《いじよう》の事實《じじつ》を想像《そうぞう》し得《う》る點《てん》が殘《のこ》つてゐます。
 しかし、注意《ちゆうい》を要《よう》するのは、われ/\が今日《こんにち》見《み》る山《やま》は、地殼《ちかく》の皺《しわ》からできた山《やま》ばかりではないことです。それ以外《いがい》にも、山《やま》はいろ/\の原因《げんいん》で出來《でき》ます。もと皺《しわ》からできた山《やま》でも、後《のち》にいろ/\に變化《へんか》したり無《な》くなつたりして、そこに別《べつ》の新《あたら》しい山《やま》ができることもあります。かうして地球《ちきゆう》の表面《ひようめん》はます/\複雜《ふくざつ》となり、こみいつた状態《じようたい》になつていくのです。

    地球《ちきゆう》の表面《ひようめん》

 (一)水《みづ》の世界《せかい》と陸《りく》の世界《せかい》
 以上《いじよう》で、ほゞ、地球《ちきゆう》の出生《しゆつしよう》から、その表面《ひようめん》にでこぼこ[#「でこぼこ」に傍点]が出來《でき》たわけがわかりました。そこで、今度《こんど》は飛行機《ひこうき》に乘《の》つたつもりで、空中《くうちゆう》から地球《ちきゆう》の表面《ひようめん》をひとわたり見下《みおろ》して見《み》ませう。
 すると、すぐに眼《め》につくことは、地球《ちきゆう》の表面《ひようめん》は大體《だいたい》、青々《あを/\》と水《みづ》を湛《たゝ》へた大《おほ》きな海《うみ》と、草木《そうもく》の生《お》い繁《しげ》つた廣大《こうだい》な陸地《りくち》との二《ふた》つの部分《ぶぶん》からなり立《た》つてゐることです。しかし、その海《うみ》となつてゐる水《みづ》の世界《せかい》と、陸地《りくち》となつてゐる陸《りく》の世界《せかい》とのわりあひは、決《けつ》して同《おな》じではありません。海《うみ》の面積《めんせき》はおよそ三億《さんおく》七千萬《しちせんまん》平方《へいほう》きろめーとる[#「きろめーとる」に傍点]、陸《りく》の面積《めんせき》は約《やく》一億《いちおく》五千萬《ごせんまん》平方《へいほう》きろめーとる[#「きろめーとる」に傍点]ですから、海《うみ》の方《ほう》が遙《はるか》に廣《ひろ》く、陸地《りくち》のほとんど三倍《さんばい》ぐらゐもあります。つまり、地球《ちきゆう》全表面《ぜんひようめん》のおよそ四分《しぶん》の三《さん》が海面《かいめん》で、四分《しぶん》の一《いち》が陸地《りくち》といふことになります。
[#図版(03.png)、陸半球]
 同時《どうじ》に、海《うみ》と陸《りく》との廣《ひろが》りも大變《たいへん》かたよつてゐて、陸《りく》は多《おほ》く北半球《きたはんきゆう》に集《あつま》り、海《うみ》は多《おほ》く南半球《みなみはんきゆう》にひろがつてゐます。北半球《きたはんきゆう》は實《じつ》に、地球《ちきゆう》全體《ぜんたい》の陸地《りくち》の四分《しぶん》の三《さん》だけあつて、それが太平洋《たいへいよう》と大西洋《たいせいよう》との二《ふた》つの大海洋《だいかいよう》によつて東西《とうざい》の兩大陸《りようたいりく》に分《わけ》られてゐます。
[#図版(04.png)、水半球]
 こゝで、ちよっと注意《ちゆうい》しておきたいことは、その大陸《たいりく》と海洋《かいよう》との出《で》はひりのことです。大陸《たいりく》の一方《いつぽう》が海洋《かいよう》に突《つ》き出《で》てゐると、それと向《むか》ひ合《あ》つた大陸《たいりく》は、ちょうどそれにあてはまるようにくぼ[#「くぼ」に傍点]んでゐます。それでこれ等《ら》の大陸《たいりく》は、はじめはお互《たがひ》にくっついてゐたのが、後《あと》にだん/\離《はな》れたものではないかと想像《そうぞう》する學者《がくしや》もあります。實際《じつさい》、現在《げんざい》の海岸《かいがん》から深《ふか》さ二百《にひやく》めーとる[#「めーとる」に傍点](百尋《ひやくひろ》)だけの水《みづ》を取《と》り除《のぞ》いて、海岸《かいがん》の水《みづ》を乾《ほ》して見《み》たとしたら、ヨーロッパ大陸《たいりく》とアメリカ大陸《たいりく》とは非常《ひじよう》に接近《せつきん》して來《く》るし、アフリカ大陸《たいりく》とヨーロッパ大陸《たいりく》、及《およ》びオーストラリア大陸《たいりく》とアジア大陸《たいりく》とは、それ/″\ほとんど一續《ひとつゞ》きの大陸《たいりく》となつてしまつて、今日《こんにち》われ/\が地圖《ちず》の上《うへ》で見《み》る形《かたち》とは大變《たいへん》違《ちが》つたものになつて來《き》ます。中《なか》でも、わが日本《につぽん》群島《ぐんとう》のごときは、まったくアジア大陸《たいりく》といっしよになつて、たゞそのふちどり[#「ふちどり」に傍点]となつてゐるに過《す》ぎないことゝなります。
 (二)桑滄《そうそう》の變《へん》
 かう考《かんが》へて來《く》ると、海《うみ》と陸《りく》の境界《きようかい》はさも明瞭《めいりよう》のようですが、實際《じつさい》はさうではないことがわかります。昔《むかし》から「桑田《そうでん》變《へん》じて滄海《そうかい》となる」と、いふ言葉《ことば》があります。それは、今《いま》まで桑《くは》を植《う》ゑてゐた畠《はたけ》が沈《しづ》んで、遂《つひ》にはあをい海《うみ》の底《そこ》にかくれてしまつたといふ意味《いみ》で、加賀《かゞ》の安宅《あたか》の關所《せきしよ》が、今《いま》では海岸《かいがん》から離《はな》れた海《うみ》の中《なか》に沈《しづ》んでしまつたといふ話《はなし》を、皆《みな》さんの中《なか》には聞《き》かれた方《かた》があるでせう。これは、われ/\人間《にんげん》の短《みじか》い歴史《れきし》の間《あひだ》に起《おこ》つた事實《じじつ》ですが、もっと/\眼《め》を大《おほ》きくして、地球《ちきゆう》ができてから今日《こんにち》までの永《なが》い/\歴史《れきし》を調《しら》べて見《み》ますと、實《じつ》に驚《おどろ》くような恐《おそ》ろしい變動《へんどう》が起《おこ》つてゐます。それは前《まへ》には非常《ひじよう》に深《ふか》い海《うみ》の底《そこ》であつた場所《ばしよ》が、後《のち》に隆起《りゆうき》して非常《ひじよう》に高《たか》い陸上《りくじよう》の山《やま》となつたところもありますし、その反對《はんたい》に高《たか》かつた陸地《りくち》がだん/\沈降《ちんこう》して、遂《つひ》に深《ふか》い海《うみ》の底《そこ》にかくれてしまつたところもあるのです。しかも、かういふことが同《おな》じ一《ひと》つの地方《ちほう》で、何度《なんど》もくりかへしおこつたことがあります。前《まへ》にお話《はなし》したアルプス山脈《さんみやく》でもロッキー山脈《さんみやく》でも、みんな大昔《おほむかし》は海《うみ》の底《そこ》であつたものが、今《いま》は高《たか》い山《やま》として陸地《りくち》に聳《そび》えてゐるのです。
 ですから、今後《こののち》[#「今後《こののち》」は底本のまま]とても、かういふ變化《へんか》が地球上《ちきゆうじよう》のどこに、いつ起《おこ》らないとは限《かぎ》りません。しかし、その度《ど》あひは後《のち》になるほどだん/\小《ちひ》さくなつていくはずです。それにしても、こんな大《おほ》きな水陸《すいりく》の變化《へんか》の起《おこ》るのは、やはり皺《しわ》の山《やま》ができるのと同《おな》じ理窟《りくつ》によるのです。みなさんが地理《ちり》でお習《なら》ひになる地球上《ちきゆうじよう》の大陸《たいりく》と海洋《かいよう》の配列《はいれつ》といふことも、地球《ちきゆう》の永《なが》い歴史《れきし》から見《み》れば、實《じつ》は一時的《いちじてき》な不安定《ふあんてい》なものともいへるのです。
 (三)陸地《りくち》の表面《ひようめん》の形《かたち》
 陸地《りくち》はわれ/\の生活《せいかつ》する場所《ばしよ》ですから、今少《いますこ》し詳《くは》しく話《はな》しておきませう。陸地《りくち》と海《うみ》との境界《きようかい》は、いふまでもなく海岸《かいがん》で、これによつて陸地《りくち》の輪廓《りんかく》ができ上《あが》るのです。海岸《かいがん》から陸地《りくち》の内部《ないぶ》に進《すゝ》むにつれて、土地《とち》は通常《つうじよう》、だん/\高《たか》まつていくわけですが、しかしその間《あひだ》には平《たひら》なところ、高《たか》く尖《とが》つたところ、また窪《くぼ》くへこんだところもあつて、一定《いつてい》してはをりません。これは人間《にんげん》の顏《かほ》に、尖《とが》つた鼻《はな》があり、くぼんだ口《くち》や、眼《め》があつて、人《ひと》それ/″\に特有《とくゆう》な容貌《ようぼう》を作《つく》つてゐるのと少《すこ》しも違《ちが》はないので、その状態《じようたい》を地貌《ちぼう》とも地形《ちけい》とも呼《よ》んでゐます。
 人間《にんげん》の顏《かほ》にも年《とし》よつた顏《かほ》や、若《わか》い顏《かほ》や、生《うま》れたばかりの赤《あか》ん坊《ぼう》の顏《かほ》といろ/\あるように、地貌《ちぼう》にも老幼《ろうよう》の差別《さべつ》があります。また、容貌《ようぼう》には美《うつく》しいもの、やさしいもの、痩《や》せて骨《ほね》ばつたもの、醜《みにく》いものもあるように、地貌《ちぼう》にも眼《め》で見《み》て美《うつく》しい景色《けしき》となつて展開《てんかい》するもの、男性的《だんせいてき》で雄大《ゆうだい》なものもあり、あまり人《ひと》の感興《かんきよう》をひかない平凡《へいぼん》なものもあります。
 それでは、地貌《ちぼう》を組《く》み立《た》てる、鼻《はな》や、口《くち》や、眼《め》などに當《あた》るものは何々《なに/\》でせうか。まづ地貌《ちぼう》の輪廓《りんかく》を作《つく》るものは、いふまでもなく海岸《かいがん》ですが、その内側《うちがは》にあつて主《おも》な要素《ようそ》となつてゐるものは、(一)平原《へいげん》、(二)高原《こうげん》、(三)山《やま》、(四)河《かは》、谷《たに》、(五)盆地《ぼんち》、(六)湖《みづうみ》、沼《ぬま》、(七)段丘《だんきゆう》、(八)斜面《しやめん》、(九)崖《がけ》といつたようなものにわかつことが出來《でき》ます。これ等《ら》のうち、山《やま》、谷《たに》、河《かは》及《およ》び湖沼《こしよう》のことについては、いづれ後《あと》でお話《はなし》しますから、こゝではそれ以外《いがい》のものについて手短《てみじか》に話《はな》しておきませう。
 (四)平原《へいげん》
 平原《へいげん》はまた平野《へいや》ともいひます。地表面《ちひようめん》の、大體《だいたい》に平《たひら》なところをいふのですが、それには大《たい》へん廣《ひろ》い平野《へいや》と狹《せま》い平野《へいや》とがあり、また多少《たしよう》は緩《ゆる》い波《なみ》を打《う》つたところもあります。通例《つうれい》は海《うみ》の波打《なみう》ち際《ぎは》のあまり高《たか》くない海岸《かいがん》地方《ちほう》に多《おほ》くできるのですが、たまには大陸《たいりく》の内部《ないぶ》にも出來《でき》、降雨《こうう》が少《すくな》いために、沙漠《さばく》となることもあります。このほか大《おほ》きな河《かは》の兩側《りようがは》には、その氾濫《はんらん》によつて大《たい》へんに廣《ひろ》い平原《へいげん》ができたり、また河《かは》の海《うみ》に注《そゝ》ぐところには澤山《たくさん》の泥《どろ》や砂《すな》が押《お》し流《なが》されて來《き》て、廣《ひろ》い三角形《さんかつけい》の平原《へいげん》を作《つく》ることもあります。河《かは》の兩側《りようがは》にできたのを『河平原《かへいげん》』といひ、河《かは》の出口《でぐち》にできたのを『三角洲《さんかくす》平原《へいげん》』と名《な》づけます。
 世界《せかい》で有名《ゆうめい》なエジプトのナイル河《がは》、支那《しな》の楊子江《ようすこう》[#「楊子江」は底本のまま]、北《きた》アメリカのミシシッピー河《がは》、南《みなみ》アメリカのアマゾン河《がは》等《など》には、非常《ひじよう》に大《おほ》きな河平原《かへいげん》や三角洲《さんかくす》平原《へいげん》があつて、みな重要《じゆうよう》な農作物《のうさくぶつ》の産地《さんち》となつてゐます。日本《につぽん》は山國《やまぐに》ですから、それらに比《くら》べるような平原《へいげん》はありませんが、それでも北海道《ほつかいどう》の石狩《いしかり》平原《へいげん》、東京《とうきよう》附近《ふきん》の關東《かんとう》平原《へいげん》、裏日本《うらにつぽん》の越後《えちご》平原《へいげん》、富山《とやま》平原《へいげん》、岐阜《ぎふ》附近《ふきん》の濃尾《のうび》平原《へいげん》、大阪《おほさか》附近《ふきん》の攝津《せつつ》河内《かはち》平原《へいげん》、九州《きゆうしゆう》の熊本《くまもと》平原《へいげん》などは、かなり廣《ひろ》い方《ほう》です。なほ、小《ちひ》さいものなら、海《うみ》に近《ちか》いところ、大《おほ》きな山《やま》の麓《ふもと》、湖《みづうみ》のまはり、河《かは》に沿《そ》うたところなどに數《かぞ》へ切《き》れないほどあります。
 平原《へいげん》には沙漠《さばく》もあり、濕地《しつち》や密林《みつりん》があり、またシベリアや樺太《からふと》の北《きた》の方《ほう》で見《み》るように、年中《ねんじゆう》寒《さむ》く凍《こほ》りついたところもありますが、海《うみ》や、河《かは》や、湖《みづうみ》に沿《そ》うた平原《へいげん》は、たいがい、土地《とち》が肥《こ》えて農作《のうさく》に適《てき》するばかりでなく、地面《じめん》が平《たひら》ですから、交通《こうつう》、運搬《うんぱん》の便《べん》がよく、從《したが》つて昔《むかし》から人々《ひと/″\》は好《この》んでそこへ集《あつ》まつて來《き》て都會《とかい》を作《つく》りました。
 (五)高原《こうげん》
 まはりの土地《とち》よりずっと高《たか》くて、その表面《ひようめん》が大體《だいたい》平《たひら》になつてゐる所《ところ》を『高原《こうげん》』といひます。ですから、まはりの土地《とち》と高原《こうげん》との間《あひだ》には、峻《けは》しい坂《さか》があるのが通例《つうれい》です。しかし、われ/\が實際《じつさい》高原《こうげん》に立《た》つて見《み》ただけでは、それが平原《へいげん》であるか、高原《こうげん》であるか、ちよっと區別《くべつ》がつきにくいものです。それゆゑ、高原《こうげん》はそこから離《はな》れて見《み》て、海《うみ》の面《めん》よりの高《たか》さが平原《へいげん》にくらべて、ずっと高《たか》いところといふより外《ほか》はありません。
 高原《こうげん》は、大《おほ》きな高《たか》い山脈《さんみやく》と山脈《さんみやく》との間《あひだ》に出來《でき》ることがよくあります。北《きた》アメリカの西海岸《にしかいがん》に近《ちか》いロッキー山脈《さんみやく》とシエラネバダ山脈《さんみやく》との間《あひだ》にあるアリゾナ高原《こうげん》、アジアのコンロン山脈《さんみやく》とヒマラヤ山脈《さんみやく》との間《あひだ》にあるチベット高原《こうげん》、パミール高原《こうげん》のようなものは、世界《せかい》でもっとも名高《なだか》いものです。ことに、アリゾナ高原《こうげん》は海面《かいめん》からの高《たか》さが、およそ二千《にせん》めーとる[#「めーとる」に傍点]もあつてその間《あひだ》をコロラド河《がは》が流《なが》れ、高原《こうげん》を作《つく》る岩《いは》を深《ふか》く削《けづ》り取《と》つて兩岸《りようがん》に高《たか》い崖《がけ》を作《つく》り、コロラド大峽谷《だいきようこく》と稱《とな》へられてゐます。そこには汽車《きしや》も通《とほ》つてをり、世界《せかい》を旅行《りよこう》する人《ひと》はわざ/\見物《けんぶつ》に行《ゆ》くほど有名《ゆうめい》です。
[#図版(05.png)、北アメリカのコロラド大峽谷]
 高原《こうげん》には、海《うみ》の底《そこ》に沈澱《ちんでん》して出來《でき》た岩《いは》の厚《あつ》い層《そう》が、前《まへ》にお話《はなし》した桑滄《そうそう》の變《へん》で、持《も》ち上《あが》つて出來《でき》たものもありますが、また火山《かざん》の噴《ふ》き出《だ》したどろ/\に熔《と》けた岩《いは》が、そのまゝ地表《ちひよう》で固《かた》まつて、表面《ひようめん》の平《たひら》な、廣《ひろ》い、高《たか》い臺地《だいち》を作《つく》ることもあります。インドの南部《なんぶ》にあるデカン高原《こうげん》は、かうして出來《でき》た熔岩《ようがん》の高臺《たかだい》で、海拔《かいばつ》二千《にせん》めーとる[#「めーとる」に傍点]もある名高《なだか》いものです。朝鮮《ちようせん》の北《きた》、支那《しな》との境《さかひ》にもこれに似《に》たものがありますが、デカン高原《こうげん》のように高《たか》くはありません。
 日本《につぽん》の内地《ないち》は、山《やま》は多《おほ》いけれど、地貌《ちぼう》が細《こま》かくきざまれてゐて、高原《こうげん》といふようなものはあまりありません。近頃《ちかごろ》有名《ゆうめい》になつた日本《につぽん》アルプスの一部《いちぶ》である飛騨《ひだ》山脈《さんみやく》には、かなり高原《こうげん》らしいところがあります。また熔岩《ようがん》からできた高臺《たかだい》では、讃岐《さぬき》の屋島《やしま》、火山《かざん》の大《おほ》きなので名高《なだか》い九州《きゆうしゆう》の阿蘇《あそ》などを擧《あ》げることができますが、これらはもとより小形《こがた》のもので、到底《とうてい》前《まへ》にお話《はなし》した外國《がいこく》のものなどとは比《くら》べものにはなりません。
 (六)盆地《ぼんち》
 平原《へいげん》のまはりが山《やま》でかこまれ、盆《ぼん》のように中《なか》が窪《くぼ》んでゐる所《ところ》を『盆地《ぼんち》』といひます。ちようど高原《こうげん》をうら向《む》けにしたようなものと考《かんが》へればいゝわけです。それで、盆地《ぼんち》へまはりの山《やま》から水《みづ》が流《なが》れ落《お》ちて、そこに溜《たま》り、湖《みづうみ》や、大《おほ》きな池《いけ》や、沼《ぬま》になることがあります。しかし、その水《みづ》がどこかにはけ口《くち》ができて干上《ひあが》つてしまふと、立派《りつぱ》な農業《のうぎよう》に適《てき》する土地《とち》となり、澤山《たくさん》の人《ひと》が、しぜんと集《あつ》まつて來《き》て住《す》みつきます。
 盆地《ぼんち》は地殼《ちかく》の皺《しわ》の山《やま》の低《ひく》いところにできることもありますし、火山《かざん》が噴火《ふんか》を止《や》めた後《のち》、落《お》ち凹《くぼ》んで出來《でき》たのもあります。また土地《とち》の下《した》に熔《と》けやすい岩《いは》があると、それが、だん/\水《みづ》に溶《と》かされて空《うつろ》ができ、つひに地表《ちひよう》が落《お》ちこんで出來《でき》たのもあります。ある時《とき》は河《かは》に沿《そ》うた平地《へいち》が、河《かは》の運《はこ》んで來《き》た土砂《どしや》の積《つ》み重《かさ》ねでしきられて、淺《あさ》い盆地《ぼんち》を作《つく》ることもあります。
 日本《につぽん》は一體《いつたい》に土地《とち》の昇《あが》り降《さが》りの變動《へんどう》が烈《はげ》しく行《おこな》はれてゐる上《うへ》に、雨量《うりよう》が多《おほ》い國《くに》ですから、いたるところに、窪地《くぼち》ができ、はじめは、それに水《みづ》が湛《たゝ》へたまつて湖《みづうみ》や沼《ぬま》となり、後《のち》にその湖沼《こしよう》が乾《かわ》いて小《ちひ》さな盆地《ぼんち》になつたような例《れい》が非常《ひじよう》に多《おほ》いようです。北海道《ほつかいどう》では上川《かみかは》盆地《ぼんち》富良野《ふらの》盆地《ぼんち》、本州《ほんしゆう》では新庄《しんしよう》[#「しんしよう」は底本のまま]盆地《ぼんち》、會津《あひづ》盆地《ぼんち》、丹那《たんな》盆地《ぼんち》、四國《しこく》では佐川《さがは》盆地《ぼんち》、九州《きゆうしゆう》では庄原《しようばる》盆地《ぼんち》、人吉《ひとよし》盆地《ぼんち》などと數《かぞ》へきれないほどあります。
 (七)段丘《だんきゆう》
 みなさんは、海《うみ》や河《かは》にいかれたときに、海岸《かいがん》や河《かは》の岸《きし》に沿《そ》うて細長《ほそなが》い平《たひら》な、棚《たな》のようになつたところがあるのをごらんになつたことがおありでせう。それはちょうど停車場《ていしやば》のぷらっとふぉーむ[#「ぷらっとふぉーむ」に傍点]のように規則《きそく》正《たゞ》しく、わざ/\人間《にんげん》が地《じ》ならしをしたのではないかと思《おも》はるゝほど平《たひら》で、たまには二段《にだん》にも三段《さんだん》にも階段《かいだん》のように重《かさ》なつてゐることがあります。しかし、これは人工《じんこう》ではなく、まったく自然《しぜん》の力《ちから》で出來《でき》たもので、『段丘《だんきゆう》』と名《な》づけられてゐます。
 段丘《だんきゆう》は後《のち》にお話《はなし》する海《うみ》や河《かは》の浸蝕《しんしよく》作用《さよう》で出來《でき》るものですが、海岸《かいがん》にあるものを『海成《かいせい》段丘《だんきゆう》』、河岸《かはぎし》にあるものを『河成《かせい》段丘《だんきゆう》』といひます。
[#図版(06.png)、河成段丘]
 海成《かいせい》段丘《だんきゆう》は樺太《からふと》の西海岸《せいかいがん》・北海道《ほつかいどう》の北見《きたみ》、天鹽《てしほ》の海岸《かいがん》、津輕《つがる》海峽《かいきよう》、日本海《につぽんかい》北部《ほくぶ》沿岸《えんがん》の秋田《あきた》、新潟《にひがた》地方《ちほう》に最《もつと》もよく發達《はつたつ》してをり、天鹽《てしほ》の海岸《かいがん》には海面《かいめん》から、四十尺《しじつしやく》、百《ひやく》三十尺《さんじつしやく》、二百尺《にひやくしやく》の高《たか》さの三段《さんだん》の階段《かいだん》のあることが、はっきりと見《み》られます。
 河成《かせい》段丘《だんきゆう》は大《おほ》きな河《かは》なら、大抵《たいてい》どこにでも見《み》ることが出來《でき》ますから、みなさんよく注意《ちゆうい》してごらんなさい。しかし人《ひと》の造《つく》つた堤防《ていぼう》を、それと間違《まちが》へてはいけません。
 段丘《だんきゆう》には、もう一《ひと》つ今《いま》いつたのとは少《すこ》し性質《せいしつ》の違《ちが》つたのがあります。それは地面《じめん》に出來《でき》た割《わ》れ目《め》に沿《そ》うて、片方《かたほう》の土地《とち》が、落《お》ち込《こ》み、自然《しぜん》そこに高低《たかひく》の階段《かいだん》が出來《でき》た場合《ばあひ》で、よく大《おほ》きな地震《じしん》のあつた後《あと》に出來《でき》るものです。濃尾《のうび》地震《じしん》のときにも、關東《かんとう》地震《じしん》のときにも、奧丹後《おくたんご》地震《じしん》のときにも、小《ちひ》さいながら、さういふ段丘《だんきゆう》が出來《でき》ました。これは斷層《だんそう》段丘《だんきゆう》と呼《よ》ばれてゐます。
 (八)斜面《しやめん》と崖《がけ》
 陸地《りくち》の表面《ひようめん》は平坦《へいたん》だといつても、水《みづ》の表面《ひようめん》のように眞平《まつたひら》なものはほとんどありません。多少《たしよう》は、どちらかに傾《かたむ》いて斜面《しやめん》を作《つく》つてゐます。この傾《かたむ》きのことを『勾配《こうばい》』といひます。
 ですから、陸地《りくち》表面《ひようめん》の地貌《ちぼう》とは、いひかへればいろ/\の度《ど》あひの勾配《こうばい》をもつた斜面《しやめん》から作《つく》り上《あ》げられた立體《りつたい》だともいへます。つまりは山《やま》も川《かは》も海《うみ》も斜面《しやめん》の組《く》み合《あは》せの變化《へんか》に過《す》ぎません。その組《く》み合《あは》せ方《かた》の巧妙《こうみよう》に出來上《できあが》つたものは、複雜《ふくざつ》した曲線美《きよくせんび》をもち、私《わたくし》どもの眼《め》を喜《よろこ》ばすよい景色《けしき》となつて來《く》るのです。
 斜面《しやめん》の勾配《こうばい》の度《ど》あひは、その土地《とち》を造《つく》つてゐる岩《いは》の性質《せいしつ》によつて變《かは》つて來《き》ます。軟《やはらか》くて固《かた》まらない砂《すな》や、火山灰《かざんばひ》や、小石《こいし》などから出來《でき》てゐる土地《とち》は、ざく/\ぼろ/\してゐますから、あまり急《きゆう》な斜面《しやめん》にはなりません。しかし、軟《やはらか》い粘土《ねんど》でも、水《みづ》で固《かた》まるとずいぶん急《きゆう》な、眞直《まつす》ぐに、突《つ》き立《た》つた崖《がけ》を作《つく》ることがあります。東京《とうきよう》附近《ふきん》の赤土《あかつち》(ろーむ[#「ろーむ」に傍点]ともいひます)や、支那《しな》の平地《へいち》を廣《ひろ》く蔽《おほ》うてゐる黄土《おうど》(れす[#「れす」に傍点]ともいひます)などはそのいゝ例《れい》です。それも雨《あめ》が降《ふ》り續《つゞ》いて水《みづ》を澤山《たくさん》吸《す》ひこみますと、急《きゆう》に崖崩《がけくづ》れや、山崩《やまくづ》れを起《おこ》して、恐《おそ》ろしい害《がい》を被《かうむ》らすことがあるから注意《ちゆうい》しなければなりません。
 堅《かた》い岩《いは》でも、もと火山《かざん》から噴《ふ》き出《だ》した、どろ/\の熔《と》けた岩《いは》のかたまつたものは、岩《いは》の汁《しる》の粘《ねば》り氣《け》の多《おほ》い少《すくな》いで、その固《かた》まる時《とき》に出來《でき》る斜面《しやめん》の勾配《こうばい》が違《ちが》つて來《き》ます。富士山《ふじさん》の裾野《すその》の斜面《しやめん》は富士岩《ふじがん》(安山岩《あんざんがん》とも云《い》ふ)と云《い》ふ熔岩《ようがん》の固《かた》まつた時《とき》の勾配《こうばい》を示《しめ》してゐます。
 しかし、なほよく考《かんが》へて見《み》ると、土地《とち》の斜面《しやめん》は、それを造《つく》る岩《いは》の質《しつ》ばかりによるものではありません。それは土地《とち》が出來《でき》てから後《のち》に、外部《がいぶ》から受《う》けるいろ/\の働《はたら》き、つまり、風化《ふうか》作用《さよう》や浸蝕《しんしよく》作用《さよう》によることが、餘程《よほど》多《おほ》いのです。そのことは後《のち》に改《あらた》めてお話《はなし》するつもりです。
 崖《がけ》は斜面《しやめん》の角度《かくど》の一《いつ》そう甚《はなは》だしく、峻《けは》しくなつたもので、眞直《まつす》ぐにつき立《た》つたものか、またはそれに近《ちか》いものをいふのです。
 ですから、崖《がけ》も斜面《しやめん》もつまりは同《おな》じ性質《せいしつ》のもので、たゞその度《ど》あひがちがふのに過《す》ぎません。崖《がけ》を云《い》ひ表《あらは》すに斷崖《だんがい》とか、絶壁《ぜつぺき》とか、または懸崖《けんがい》とかいろ/\の言葉《ことば》がありますが、美《うつく》しいよい景色《けしき》には大抵《たいてい》崖《がけ》はつきものになつてゐます。

   二、山《やま》のいろ/\とその形《かたち》

    山《やま》のいろ/\

 いま、お話《はなし》した高原《こうげん》が、さらに高《たか》くなると山《やま》といふものになります。『山《やま》』といふよりも『山岳《さんがく》』といつた方《ほう》がいゝ。たゞ山《やま》と云《い》へば庭《には》にある築《つ》き山《やま》も山《やま》であり、海邊《うみべ》や河原《かはら》で、みなさんがおこしらへになる砂山《すなやま》も、やはり山《やま》ですし、小《ちひ》さくいへば、蟻《あり》や虫《むし》から見《み》れば、もぐらもち[#「もぐらもち」に傍点]の作《つく》つた塚穴《つかあな》も山《やま》でせう。
『山岳《さんがく》』とは、普通《ふつう》は大《おほ》きくて高《たか》く、海面《かいめん》から五百《ごひやく》めーとる[#「めーとる」に傍点]以上《いじよう》もあるものをいひます。それより低《ひく》いものは、通常《つうじよう》、岡《をか》と云《い》つたり丘陵《きゆうりよう》と云《い》つたりします。奈良《なら》の三笠《みかさ》の山《やま》など、學問上《がくもんじよう》からは、たゞの丘陵《きゆうりよう》です。
 山岳《さんがく》の一《いち》ばん高《たか》い頂上《ちようじよう》は通例《つうれい》筍《たけのこ》の頭《あたま》のように尖《とが》つて狹《せま》くなつてゐます。そこを『峯《みね》』といひます。しかし、ある時《とき》は馬《うま》の脊筋《せすぢ》や屋根《やね》の棟《むね》のように狹《せま》くて、細長《ほそなが》くなつてゐることもあります。かういふのを『嶺《みね》』と呼《よ》びます。おなじ『みね』でも意味《いみ》が大變《たいへん》違《ちが》つてゐます。普通《ふつう》はこの『峯《みね》』と『嶺《みね》』とが互《たがひ》に、たちまざつて一群《いちぐん》となり、長《なが》くのび續《つゞ》いてゐます。これを『山脈《さんみやく》』といひます。本州《ほんしゆう》の木曾《きそ》山脈《さんみやく》、北上《きたかみ》山脈《さんみやく》、寶達《ほうたつ》山脈《さんみやく》などは、この例《れい》です。
 木《こ》の葉《は》の葉脈《ようみやく》は、眞中《まんなか》に大《おほ》きな主脈《しゆみやく》といふものがあり、それから四方《しほう》に小《ちひ》さな支脈《しみやく》が枝《えだ》のように出《で》てゐます、[#読点は底本のまま]山脈《さんみやく》もこれと同《おな》じように大抵《たいてい》は四方《しほう》に支脈《しみやく》が出《で》て、他《た》の幾《いく》つもの山脈《さんみやく》と互《たがひ》に相連《あひつ》らなり、複雜《ふくざつ》なものになつて來《き》ます。かうなると、これらの幾《いく》つもの山脈《さんみやく》を一《いつ》しよにひっくるめて『山系《さんけい》』と云《い》ひます。例《たと》へば日本《につぽん》アルプスの赤石《あかいし》山系《さんけい》は白峯《しらみね》、巨摩《こま》、伊那《いな》の各《かく》山脈《さんみやく》から、なりたつてゐるようなものです。
 山《やま》はその出來方《できかた》によつて、生《うま》れ出《で》た山《やま》と、こはれ殘《のこ》つた山《やま》との二《ふた》つの大《おほ》きな部類《ぶるい》に分《わ》けます。

 (一)生《うま》れ出《で》た山《やま》
 生《うま》れ出《で》た山《やま》といふのは、ちょうど、みなさんが砂《すな》や粘土《ねばつち》で山《やま》をおこしらへになるように、實際《じつさい》新《あたら》しく地球上《ちきゆうじよう》に生《うま》れ出《で》てきた山《やま》です。その生《うま》れ方《かた》も、いろ/\違《ちが》つてゐるので、便宜上《べんぎじよう》、次《つ》ぎのように分《わ》けてゐます。
(イ)堆《つ》み上《あ》げ山《やま》。 これは地表《ちひよう》の上《うへ》に砂《すな》や粘土《ねんど》や砂利《じやり》のような軟《やはら》かいものが、風《かぜ》や水《みづ》の働《はたら》きで堆《つ》み上《あ》げられて出來《でき》たもので、山《やま》としては最《もつと》も簡單《かんたん》なものです。海岸《かいがん》や沙漠《さばく》に風《かぜ》で吹《ふ》き寄《よ》せられて出來《でき》た砂丘《さきゆう》や、日本《につぽん》にはありませんが、氷河《ひようが》の運《はこ》んで來《き》た石《いし》(堆石《たいせき》といひます)や、砂《すな》が氷《こほり》のとけるとともに積《つ》み重《かさ》なつて出來《でき》た山《やま》などは、そのいゝ例《れい》です。ある時《とき》は河《かは》が運《はこ》んで來《き》た泥《どろ》や砂《すな》が一個所《いつかしよ》に溜《たま》つて山《やま》を築《きづ》くこともありませう。しかし、これらはしよせん大《おほ》きな山《やま》にはなりません。
(ロ)噴《ふ》き出《で》た山《やま》。 これは『火山《かざん》』のことです。火山《かざん》は土地《とち》の割《わ》れ目《め》から、どろ/\の熔岩《ようがん》を地表《ちひよう》に噴《ふ》き出《だ》したもので、その噴《ふ》き出《だ》すときには、大抵《たいてい》恐《おそ》ろしい爆發《ばくはつ》をして、まはりの堅《かた》い岩《いは》を粉《こな》みじんに碎《くだ》いて吹《ふ》き飛《と》ばします。かうして出來《でき》た火山灰《かざんばひ》や、火山砂《かざんずな》や、火山《かざん》小石《こいし》や、大《おほ》きな岩《いは》のかけらなどが、噴《ふ》き出《だ》した口《くち》(『火口《かこう》』とも『噴火口《ふんかこう》』ともいひます)のまはりに熔岩《ようがん》と一《いつ》しよに、つみ重《かさ》なつて、摺《す》り鉢《ばち》をふせたような形《かたち》の山《やま》を作《つく》ります。普通《ふつう》は爆發《ばくはつ》を度々《たび/\》くり返《かへ》せば、くり返《かへ》すほど、火山《かざん》は高《たか》く大《おほ》きくなつて來《き》ます。
 日本《につぽん》は歐洲《おうしゆう》のイタリイと共《とも》に火山國《かざんこく》といはれるほどですから、富士山《ふじさん》をはじめ數《かぞ》へきれないほど、澤山《たくさん》の火山《かざん》があります。それには富士形《ふじがた》をした、形《かたち》の整《とゝの》つた美《うつく》しいのもありますが、中《なか》には大變《たいへん》不規則《ふきそく》にこはれたのもあります。火山《かざん》のことは、今後《こんご》、他《ほか》の先生《せんせい》から詳《くは》しいお話《はなし》がある筈《はず》ですから、私《わたし》はこのくらゐで打《う》ち切《き》つておきます。
(ハ)押《お》し上《あ》げ山《やま》。 地球《ちきゆう》内部《ないぶ》の熔《と》けた岩《いは》が火山《かざん》のように地表《ちひよう》に流《なが》れ出《だ》すことなく、地殼《ちかく》の途中《とちゆう》まで出《で》て來《き》て岩《いは》の間《あひだ》に流《なが》れこむと、その上部《じようぶ》にある土地《とち》は圓《まる》く押《お》し上《あ》げられて、ちょうど正月《しようがつ》の、おそなへ餅《もち》のような形《かたち》をした山《やま》が出來上《できあが》ります。これを『圓頂山《えんちようざん》』といひます。その出《で》て來《き》た岩《いは》の固《かた》まつたものを『餅磐《べいばん》[#「磐」は底本のまま]』といひます。外國《がいこく》ではかうして出來《でき》た山《やま》は、ところ/″\にありますが、日本《につぽん》にはまだはっきりわかつたものはないようです。
[#図版(07.png)、圓頂山と餅磐[#「磐」は底本のまま]]
(ニ)皺《しわ》の山《やま》。 これは既《すで》に前《まへ》にお話《はなし》した、横壓力《おうあつりよく》で出來《でき》た褶曲山《しゆうきよくざん》のことです。世界《せかい》の大《おほ》きな山脈《さんみやく》は大抵《たいてい》、この褶曲山《しゆうきよくざん》であることも、ちゃんとおぼえておいでのことゝ思《おも》ひます。
(ホ)斷層《だんそう》の山《やま》。 ところが、地殼《ちかく》の皺《しわ》も、だん/\強《つよ》くなると、つひにはそこに割《わ》れ目《め》や裂《さ》け目《め》のひゞ[#「ひゞ」に傍点]ができます。青竹《あをだけ》を力《ちから》一《いつ》ぱい曲《ま》げて見《み》ると、はじめのうちはだん/\曲《まが》つて山《やま》が出來《でき》ますが、後《のち》にはその一《いち》ばん張《は》りつめた山《やま》の頂上《ちようじよう》のところにひゞ[#「ひゞ」に傍点]が出來《でき》、しまひには竹《たけ》が折《を》れます。これと同《おな》じ理窟《りくつ》で土地《とち》も終《しま》ひにはその裂《さ》け目《め》に沿《そ》うて折《を》れて、一方《いつぽう》がすべり落《お》ちて食《く》ひ違《ちが》ひの形《かたち》になることがあります。これを『斷層《だんそう》』ができたといひます。そして裂《さ》け目《め》のところを『斷層線《だんそうせん》』といひます。
[#図版(08.png)、斷層で出來た崖と斷層の山(模型)]
 斷層《だんそう》で一方《いつぽう》の土地《とち》がすべり落《お》ちると、そこは谷《たに》となり、殘《のこ》つた一方《いつぽう》の土地《とち》は山《やま》となります。これが斷層《だんそう》の山《やま》です。斷層《だんそう》は、ときに幾《いく》つも/\互《たがひ》に平行《へいこう》して起《おこ》ることがあります。この場合《ばあひ》は、階段《かいだん》を平《たひら》にして見《み》たときのように、或《あるひ》は煉瓦疊《れんがだたみ》の道路《どうろ》がこはれて、でこぼこ[#「でこぼこ」に傍点]になつたときのように、幾《いく》つもの平行《へいこう》した斷層《だんそう》の谷《たに》と山《やま》とができあがります。
 斷層《だんそう》で出來《でき》た山《やま》は日本《につぽん》にも外國《がいこく》にも例《れい》が多《おほ》いようです。外國《がいこく》の例《れい》でよくひきあひに出《だ》されるのは、北《きた》アメリカ合衆國《がつしゆうこく》にあるシエラネバダ大山脈《だいさんみやく》です。これは比較的《ひかくてき》平《たひら》な土地《とち》に起《おこ》つた斷層《だんそう》で、一方《いつぽう》が持《も》ちあがり、一方《いつぽう》がすべり落《お》ちて出來《でき》たもので、斷層《だんそう》のできた方《ほう》はけはしい崖《がけ》となり、その反對《はんたい》の側《がは》は次第《しだい》にサクラメント平原《へいげん》に向《むか》つて、ゆるやかな傾斜《けいしや》を作《つく》つてゐます。
[#図版(09.png)、斷層]
 日本《につぽん》で、そのシエラネバダ山脈《さんみやく》によく似《に》てゐるのは、日本《につぽん》北《きた》アルプスと呼《よ》ばれてゐる、本州《ほんしゆう》中部《ちゆうぶ》の飛騨《ひだ》山脈《さんみやく》地方《ちほう》です。飛騨側《ひだがは》はわりあひにゆるやかな斜面《しやめん》で、だん/\高《たか》さを加《くは》へて行《ゆ》きますが、それが東《ひがし》の方《ほう》、信州《しんしゆう》に跨《またが》る地方《ちほう》になりますと、つひには海拔《かいばつ》一萬尺《いちまんじやく》内外《ないがい》にも達《たつ》する我國《わがくに》第一《だいゝち》の高《たか》い山岳《さんがく》地方《ちほう》となり、御嶽《おんたけ》、乘鞍《のりくら》、穗高《ほだか》、鎗《やり》[#「鎗」は底本のまま]、藥師《やくし》、蓮華《れんげ》、立山《たてやま》、白馬《しろうま》などの峻《けは》しい、高《たか》い峯《みね》が遙《はる》かに白《しろ》い雲《くも》の上《うへ》に聳《そび》え立《た》つて、紫色《むらさきいろ》の美《うつく》しい姿《すがた》を青空《あをぞら》に輝《かゞや》かしてゐます。ところが、これが信州側《しんしゆうがは》に行《ゆ》くと急《きゆう》にぷっつり[#「ぷっつり」に傍点]と、たち切《き》られて、屏風《びようぶ》を立《た》てたようにけはしい斷崖《だんがい》(斷層《だんそう》の崖《がけ》)となつて現《あらは》れ、信州《しんしゆう》松本平《まつもとだひら》や大町《おほまち》方面《ほうめん》から見《み》ると、ます/\その雄大《ゆうだい》さを加《くは》へてゐます。
 以上《いじよう》で、大體《だいたい》、生《う》まれ出《で》た山《やま》のお話《はなし》をしました。次《つ》ぎにはこはれ殘《のこ》つた山《やま》のお話《はなし》です。
 (二)こはれ殘《のこ》つた山《やま》
 もと/\陸地《りくち》は、海《うみ》から顏《かほ》を出《だ》して空氣中《くうきちゆう》に曝《さら》されるようになると、すぐその時《とき》から、空氣《くうき》と水《みづ》の働《はたら》きが絶《た》えず加《くは》はつて、だん/\に磨《す》り減《へ》らされていきます。たとへば、ちよつと大雨《おほあめ》が降《ふ》つても道路《どうろ》の、こゝかしこがこはれ崩《くづ》されることがあります。今《いま》言《い》つた陸地《りくち》の磨滅《まめつ》は長年《ながねん》かゝつて絶《た》え間《ま》なく行《おこな》はれるのですから恐《おそ》ろしいもので、さきには高原《こうげん》であつたところも、そこへ、はじめにできた淺《あさ》い川筋《かはすぢ》がだん/\に深《ふか》い廣《ひろ》い谷《たに》となつて、兩側《りようがは》を刻《きざ》みおとし、しまひには堅《かた》い部分《ぶぶん》だけが殘《のこ》つて、軟《やはらか》い部分《ぶぶん》はこと/″\く洗《あら》ひ流《なが》され、とう/\幾《いく》つかの獨立《どくりつ》した山《やま》ができ上《あが》ります。これが、こはれ殘《のこ》りの山《やま》です。山《やま》といふものはかうして出來《でき》ることもあるのです。
 日本《につぽん》には、こはれ殘《のこ》りの山《やま》だと、はっきりいへる大《おほ》きな山《やま》はありませんが、英國《えいこく》スコットランドの西北部《せいほくぶ》やスカンヂナビア半島《はんとう》などには、そのいゝ例《れい》があります。
 しかし、皺《しわ》の山《やま》でも、噴《ふ》き出《だ》した山《やま》でも、その外《ほか》の山《やま》でも、みな絶《た》えず風化《ふうか》作用《さよう》や浸蝕《しんしよく》作用《さよう》を受《う》けますから、できたてのときとくらべると、どれも、今《いま》では、ひどく磨《す》り削《けづ》られてゐるわけです。殊《こと》に皺《しわ》の山《やま》は、大昔《おほむかし》に出來《でき》たものになりますと、もはやその大部分《だいぶぶん》が削《けづ》り取《と》られて、胴體《どうたい》のみが殘《のこ》り、こはれ殘《のこ》りの山《やま》とちよっと區別《くべつ》がつかないことがあります。赤石《あかいし》山脈《さんみやく》、木曾《きそ》山脈《さんみやく》、筑波《つくば》山脈《さんみやく》、中國《ちゆうごく》山脈《さんみやく》のように、主《しゆ》として御影石《みかげいし》からできてゐる山《やま》がそれです。
 (三)山《やま》の高《たか》さ
 世界中《せかいじゆう》で一《いち》ばんの高山《こうざん》といへば、なんといつても、インドの北部《ほくぶ》、チベットとの境《さかひ》にあるヒマラヤ山脈《さんみやく》の上《うへ》に出《で》るものはありません。この山脈《さんみやく》には八千《はつせん》めーとる[#「めーとる」に傍点]以上《いじよう》の峯《みね》が五《いつ》つもあり、ことに、大體《だいたい》中央《ちゆうおう》に近《ちか》いところにあるエベレスト峯《ほう》は海拔《かいばつ》八千《はつせん》八百《はつぴやく》四十《しじゆう》めーとる[#「めーとる」に傍点]にも上《のぼ》つてゐて、地球上《ちきゆうじよう》での最高《さいこう》の場所《ばしよ》となつてゐます。日本《につぽん》で一《いち》ばん高《たか》い山《やま》は、いふまでもなく臺灣《たいわん》の新高山《にひたかやま》ですが、それは海拔《かいばつ》三千《さんぜん》九百《くひやく》五十《ごじゆう》めーとる[#「めーとる」に傍点]ですから、エベレストに比《くら》べると、その半分《はんぶん》にも足《た》らないわけです。
[#図版(10.png)、ヒマラヤ連峯を望む]
 なほ面白《おもしろ》いことは、世界《せかい》最高《さいこう》の山脈《さんみやく》はほとんどみんなインドの北方《ほつぽう》からチベット、トルキスタン地方《ちほう》に至《いた》るアジアの中央部《ちゆうおうぶ》に集《あつま》つてゐることです。ヒマラヤ山脈《さんみやく》につぐ世界《せかい》で第二《だいに》の高山《こうざん》は、そのすぐ西北《せいほく》に隣《とな》りしてゐるカラコルム山脈《さんみやく》で、それには八千《はつせん》百《ひやく》二十《にじゆう》めーとる[#「めーとる」に傍点]から八千《はつせん》六百《ろつぴやく》二十《にじゆう》めーとる[#「めーとる」に傍点]に至《いた》る三《みつ》つの高《たか》い峯《みね》があります。チベット高原《こうげん》でも七千二百《ちしせんにひやく》めーとる[#「めーとる」に傍点]から八千《はつせん》めーとる[#「めーとる」に傍点]あり、トルキスタンのパミール高原《こうげん》は七千《しちせん》めーとる[#「めーとる」に傍点]から七千八百《しちせんはつぴやく》六十《ろくじゆう》めーとる[#「めーとる」に傍点]もあります。
 ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、大洋洲《たいようしゆう》とアジア以外《いがい》の大陸《たいりく》を見渡《みわた》しても、たゞ一《ひと》つ南《みなみ》アメリカのアンデス山脈《さんみやく》の最高峯《さいこうほう》アコンカグワが七千《しちせん》四十《しじゆう》めーとる[#「めーとる」に傍点]に達《たつ》してゐるだけで、その他《た》は大抵《たいてい》六千《ろくせん》めーとる[#「めーとる」に傍点]以下《いか》のものばかりです。ヨーロッパで有名《ゆうめい》なアルプス山脈《さんみやく》の最高峯《さいこうほう》モン・ブラン(白山《はくさん》)は四千《しせん》八百《はつぴやく》十《じゆう》めーとる[#「めーとる」に傍点]、北米《ほくべい》ロッキー山脈《さんみやく》の最高孝《さいこうほう》[#「孝」は底本のまま]ブランカ・ピークは四千《しせん》三百《さんびやく》八十六《はちじゆうろく》めーとる[#「めーとる」に傍点]しかありません。
 日本《につぽん》で新高山《にひたかやま》に次《つ》ぐ高山《こうざん》は臺灣《たいわん》にはなか/\多《おほ》いですが、内地《ないち》では富士山《ふじさん》(三・七七八めーとる)が最《もつと》も高《たか》く、それに次《つ》ぐものは駿河《するが》、甲斐《かひ》に跨《またが》る白根山《しらねさん》(三・一九二めーとる)信州《しんしゆう》の鎗《やり》が嶽《たけ》[#「鎗」は底本のまま](三・一八〇めーとる)駿河《するが》の東嶽《ひがしだけ》(三・一四六めーとる)駿《すん》、信《しん》の赤石嶽《あかいしだけ》(三・一二〇めーとる)などで、三千《さんぜん》めーとる以上《いじよう》の高山《こうざん》は臺灣《たいわん》のを除《のぞ》いては、こと/″\く本州《ほんしゆう》中部《ちゆうぶ》の甲斐《かひ》、駿河《するが》、飛騨《ひだ》、信濃《しなの》の四箇國《しかこく》に集《あつま》つてゐます。
 そこで、今度《こんど》は陸《りく》の高《たか》さと海《うみ》の深《ふか》さとを比《くら》べてみませう。太平洋《たいへいよう》、大西洋《たいせいよう》、インド洋《よう》などの、大《おほ》きな海洋《かいよう》の平均《へいきん》の深《ふか》さは大體《だいたい》三千《さんぜん》めーとる[#「めーとる」に傍点]から四千《しせん》めーとる[#「めーとる」に傍点]ぐらゐですが、ところどころに、急《きゆう》にぐい[#「ぐい」に傍点]と深《ふか》くなつてゐるところがあります。そこを『海溝《かいこう》』と名《な》づけてゐます。太平洋《たいへいよう》にはことに海溝《かいこう》が非常《ひじよう》に多《おほ》く、その中《なか》でも最《もつと》も深《ふか》いのは日本《につぽん》本州《ほんしゆう》の沖《おき》、伊豆七島《いずしちとう》の東方《とうほう》にある海溝《かいこう》で、九千《くせん》九百《くひやく》五十《ごじゆう》めーとる以上《いじよう》に達《たつ》してゐるといはれてゐます。これが世界中《せかいじゆう》で、最深《さいしん》の場所《ばしよ》で、世界《せかい》最高《さいこう》のエベレスト峯《ほう》に比《くら》べても、なほ一千《いつせん》百十《ひやくじゆう》めーとる[#「めーとる」に傍点]も深《ふか》くなつてゐるわけです。
 ですから、地球上《ちきゆうじよう》の最低《さいてい》のところと最高《さいこう》のところとの隔《へだた》り、つまりこの日本島沖《につぽんとうおき》の海溝《かいこう》の深《ふか》さと、エベレストの高《たか》さとを加《くは》へた和《わ》は、實《じつ》に一萬《いちまん》八千《はつせん》七百《しちひやく》九十《くじゆう》めーとる、ざっと十二《じゆうに》まいる[#「まいる」に傍点]にもなります。しかし、これも地球《ちきゆう》の直徑《ちよつけい》八千《はつせん》まいる[#「まいる」に傍点]に比《くら》べるとあまり大《たい》したものではないでせう。太平洋《たいへいよう》には、なほほかに九千《くせん》めーとる以上《いじよう》に達《たつ》する海溝《かいこう》が五箇所《ごかしよ》もあり、五千《ごせん》めーとる以上《いじよう》九千《くせん》めーとるに及《およ》ぶものは世界中《せかいじゆう》になほ十六箇所《じゆうろつかしよ》もあります。
 それゆゑ、けっきよく陸地《りくち》の高《たか》さは海《うみ》の深《ふか》さとは到底《とうてい》比《くら》べものにはなりません。陸地《りくち》をすっかり削《けづ》りとつて、海《うみ》の底《そこ》に沈《しづ》めるとなれば、それこそ影《かげ》も形《かたち》もなくなつてしまふわけです。
 (四)山《やま》の形《かたち》を表《あらは》す圖面《ずめん》
 陸地《りくち》表面《ひようめん》のでこぼこ[#「でこぼこ」に傍点]や配列《はいれつ》のあり樣《さま》を圖面上《ずめんじよう》に表《あらは》して、研究《けんきゆう》するといふことは、私《わたくし》どもにとつての大切《たいせつ》な爲事《しごと》の一《ひと》つです。これは、みなさんが遠足《えんそく》や修學《しゆうがく》旅行《りよこう》や、山登《やまのぼ》りにいかれる際《さい》にも、なくてはならないもので、つまり地形《ちけい》を細《こま》かく圖面上《ずめんじよう》に寫《うつ》し出《だ》したものなのですから、これを『地形圖《ちけいず》』と名《な》づけてゐます。
[#図版(11.png)、山の形を表す圖面]
 地形圖《ちけいず》上《じよう》で山《やま》の高低《こうてい》を表《あらは》す、方式《ほうしき》はいろ/\ありますが、その主《おも》なものは、等高線式《とうこうせんしき》、けば式《しき》、鳥瞰式《ちようかんしき》、ぼかし式《しき》などです。
(イ)等高線式《とうこうせんしき》。 これは曲線式《きよくせんしき》ともいひ、山《やま》の同《おな》じ高《たか》さのところを線《せん》でつないで圖面上《ずめんじよう》に表《あらは》したものです。それには大抵《たいてい》海水面《かいすいめん》を高《たか》さ零度《れいど》とし、だん/\と上方《じようほう》に同《おな》じ高《たか》さをもとめて線《せん》を引《ひ》くのです。この式《しき》は地形《ちけい》を表《あらは》すには最《もつと》も正確《せいかく》な優《すぐ》れた仕方《しかた》で、曲線《きよくせん》が互《たがひ》に接近《せつきん》して複雜《ふくざつ》になつてゐるところは山《やま》の急《きゆう》な場所《ばしよ》で、あらいところは緩《ゆる》い坂《さか》を示《しめ》すことになります。
(ロ)けば式《しき》。 けば[#「けば」に傍点]と云《い》ふ細《こま》かい毛《け》のような線《せん》で、山《やま》に陰日向《かげひなた》をつけ、しぜんに高低《こうてい》を表《あらは》したものをいひます。ですから、また『陰影式《いんえいしき》』とも呼《よ》んでゐます。普通《ふつう》は、麓《ふもと》の、坂《さか》の緩《ゆるや》かなところはけば[#「けば」に傍点]をあらく、長《なが》くかつ細《こま》かくかき、高《たか》くなるほど密《みつ》に、短《みじか》く太《ふと》くしていくのです。この式《しき》の地形圖《ちけいず》では山《やま》の高低《こうてい》ははっきりわかりますが、等高線式《とうこうせんしき》のようにある場所《ばしよ》が海拔《かいばつ》何《なん》めーとる[#「めーとる」に傍点]あるかといふ正確《せいかく》なことは表《あらは》せません。
(ハ)鳥瞰式《ちようかんしき》。 これは鳥《とり》になつて高《たか》い空《そら》から見下《みおろ》してかいたような地形圖《ちけいず》で、たとへば飛行機《ひこうき》からうつした山《やま》の寫眞《しやしん》と同《おな》じわけのものです。これはまるで、ぱのらま[#「ぱのらま」に傍点]のようで、一《いち》ばん實物《じつぶつ》に近《ちか》いので、だれにでも地貌《ちぼう》が手《て》にとるようにわかります。昔《むかし》の地圖《ちず》や、今日《こんにち》でも名勝《めいしよう》、舊跡《きゆうせき》などの案内圖《あんないず》には、よくこの式《しき》をとつてゐます。
(ニ)ぼかし式《しき》。 これは褐色《かばいろ》や黒色《くろいろ》の繪《え》の具《ぐ》で濃淡《のうたん》をつけ、その濃《こ》さの度合《どあ》ひでもつて山《やま》の區域《くいき》や高低《こうてい》を表《あらは》したものです。色《いろ》の濃《こ》いほど高《たか》く、低《ひく》くなるに從《したが》つてうすく塗《ぬ》ります。ですから、また『濃淡式《のうたんしき》』とも名《な》づけてゐます。海《うみ》の深《ふか》さを表《あらは》すにも、よくこの式《しき》が用《もち》ひられますが、海《うみ》の方《ほう》は必《かなら》ず青色《あをいろ》を使《つか》ひ、深《ふか》いほど色《いろ》を濃《こ》く強《つよ》くつけます。
(つづく)


底本:『山の科学 No.47』復刻版 日本児童文庫、名著普及会
   1982(昭和57)年6月20日発行
親本:『山の科學』日本兒童文庫、アルス
   1927(昭和2)年10月3日発行
入力:しだひろし
校正:
xxxx年xx月xx日作成
青空文庫作成ファイル:
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*地名

(※ 市町村名は、平成の大合併以前の表記のまま。一般的な国名・地名などは解説省略。
  • [日本]
  • 本州 ほんしゅう 日本列島の本幹をなす最大の島。東は太平洋、西は日本海に面し、北は津軽海峡を隔てて北海道、南は瀬戸内海を距てて四国・九州に対する。東北・関東・中部・近畿・中国の5地方に区分される。
  • 日本海 にほんかい アジア大陸の東、朝鮮半島と日本列島との間にある海。面積約100万平方km。間宮・宗谷・津軽・朝鮮の諸海峡によってオホーツク海・太平洋・東シナ海に通ずる。水深は平均1667m、最深部は3796m。
  • 表日本 おもて にほん 本州の、太平洋に臨む一帯の地。←→裏日本。
  • 裏日本 うら にほん 本州の、日本海に臨む一帯の地。冬季降雪が多い。明治以後、近代化の進んだ表日本に対して用いられ始めた語。←→表日本
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  • 北海道地方:
  • [北海道] ほっかいどう
  • 石狩平野 いしかり へいや 北海道西部、石狩川下流にひろがる平野。北海道第一の農牧地、また、産業・文化の中心地域。
  • 上川盆地 かみかわ ぼんち 北海道中央部にある盆地。気候は内陸性。日本の最寒冷地の一つ。中心に旭川市があり、旭川盆地ともいう。米作が盛ん。
  • 富良野盆地 ふらの ぼんち 北海道中央部、夕張山地と十勝岳火山群との間にある南北に長い断層盆地。空知川上流域に当たり、稲作・畑作が発達、ラベンダー栽培で有名。
  • 北見 きたみ (1) 北海道もと11カ国の一つ。1869年(明治2)国郡制設定により成立。現在は網走支庁と宗谷支庁に分かれる。(2) 北海道北東部の市。農産物の集散地で、農林産加工業が盛ん。人口12万9千。
  • 天塩 てしお (1) 北海道もと11カ国の一つ。1869年(明治2)国郡制設定により成立。現在は上川・留萌・宗谷支庁に分属。(2) 北海道留萌地方北西部、天塩川河口の町。
  • 津軽海峡 つがる かいきょう 本州と北海道との間にある海峡。太平洋と日本海とを通ずる。長さ110km、最狭部18km。西口は別に松前海峡の名がある。
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  • 東北地方:
  • [岩手県]
  • 北上山脈 きたかみ さんみゃく → 北上高地、北上山地
  • 北上高地 きたかみ こうち 主として岩手県の東部を南北に連なる、割合に山頂のそろったなだらかな山地。地形学的には隆起準平原。最高峰は早池峰山(標高1917m)。北上山地。
  • [秋田県]
  • [山形県]
  • 新庄盆地 しんじょう ぼんち 山形県北東部に位置する盆地。
  • [福島県]
  • 阿武隈山脈 あぶくま さんみゃく → 阿武隈高地
  • 阿武隈高地 あぶくま こうち 宮城県南部より福島県東部を経て茨城県北部に至る、南北に連なる高原状山地。高さ500〜800mの隆起準平原で、大滝根山(1192m)などが残丘としてそびえる。阿武隈山地。
  • 会津盆地 あいづ ぼんち 福島県西部の盆地。南方から阿賀川(大川)、宮川、北方から大塩川、濁川が注ぐ水稲単作地帯。会津身不知柿、薬用ニンジンが特産。中心都市は会津若松市。
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  • 関東地方:
  • [茨城県]
  • 筑波山脈 つくば さんみゃく → 筑波山地
  • 筑波山地 つくば さんち 茨城県中央部にある山地。主峰は筑波山(876m)。加波山・足尾山からなる西列と、吾国山・難台山からなる東側とに分かれる。
  • 筑波山 つくばさん 茨城県南西部にある山。標高877m。峰は二つに分かれ西を男体、東を女体という。「西の富士、東の筑波」と称せられ、風土記や万葉集の�歌の記事などに名高く、古来の歌枕。農業神として信仰登山が盛ん。筑波嶺。
  • [東京]
  • 関東平野 かんとう へいや 関東地方の大部分を占める日本最大の平野。
  • 伊豆七島 いず しちとう 伊豆半島南東方にある大島・利島・新島・神津島・三宅島・御蔵島・八丈島の7島。東京都に属する。各島黒潮につつまれ、近海は好漁場。椿油を産出。地下水に乏しく天水を利用する所もある。
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  • 中部地方:
  • [新潟県]
  • 越後平野 えちご へいや 新潟平野の別称。
  • 新潟平野 にいがた へいや 新潟県中部、信濃川・阿賀野川下流に広がる沖積平野。水田耕作のほか、天然ガスの採掘も行われる。越後平野。蒲原平野。
  • [富山県]
  • 富山平原 とやま へいげん → 富山平野か
  • 富山平野 とやま へいや 富山県の中央部に富山湾に面して広がる沖積平野。
  • 薬師岳 やくしだけ 富山県南東部、飛騨山脈中央部にある山。標高2926m。重厚な山容を誇り、頂上に薬師如来の祠がある。東斜面にある南稜・中央・金作谷のカール(圏谷群)は特別天然記念物。
  • 蓮華岳 れんげだけ 北アルプス北部、富山県と長野県にまたがる山。標高2,799m。針ノ木岳の東にあり、間に針ノ木峠がある。
  • 立山 たてやま 富山県の南東部、北アルプスの北西端に連なる連峰。標高3003mの雄山を中心とし、北に大汝山(3015m)、南に浄土山が屹立。剣岳・薬師岳などと立山連峰をなす。雄山山頂には雄山神社がある。日本三霊山の一つ。古名、たちやま。
  • 白馬岳 しろうまだけ 北アルプスの北部、長野・富山・新潟の3県にまたがる後立山連峰の主峰。標高2932m。南の杓子岳・鑓ヶ岳とともに白馬三山と称し、お花畑・大雪渓などで有名。大蓮華岳。はくばさん。
  • [石川県]
  • 宝達山脈 ほうたつ さんみゃく 石川県、宝達(ほうだつ)丘陵か。
  • [加賀] かが (1) 旧国名。今の石川県の南部。加州。賀州。
  • 安宅 あたか 石川県小松市の西部、日本海沿岸の一地区。江戸時代は北前船の寄港地。古く安宅の関があったという。
  • [山梨県]
  • [甲斐] かい 旧国名。いまの山梨県。甲州。
  • 白根山 しらねさん 三一九二メートル。(「白峰山」とも書く) 山梨・長野・静岡の県境付近にそびえる高山の総称。甲斐嶺ともいう。南アルプスの主峰。北岳・間ノ岳・農鳥岳の3峰がつらなる。白根三山。
  • 北岳 きただけ 赤石山脈の北部、山梨県西部の白峰三山の一峰。日本で第2位の高峰。標高3193m。
  • 巨摩山脈 こま さんみゃく → 巨摩山地。山梨県。
  • [長野県]
  • [信濃] しなの 旧国名。いまの長野県。科野。信州。
  • [信州] しんしゅう 信濃国の別称。
  • 松本平 まつもとだいら 長野県。
  • 大町 おおまち 長野県北西部の市。松本盆地北部の中心。北アルプス東側の観光拠点・登山基地。人口3万2千。
  • 木曽山脈 きそ さんみゃく → 木曾山脈
  • 木曾山脈 きそ さんみゃく 長野県南西部から岐阜・愛知の県境に連なる山脈。天竜川と木曾川の間にあり、最高峰は駒ヶ岳(2956m)。
  • 御岳・御嶽 おんたけ 長野・岐阜県にまたがる活火山。北アルプスの南端に位置し、標高3067m。1979年に史上初めて噴火。頂上に御岳神社があり、古来、修験道で屈指の霊峰。きそおんたけ。おんたけさん。
  • 伊那山脈 いな さんみゃく → 伊那山地。長野県。
  • 伊那山地 いな さんち 南アルプスの西側に平行して南北に延びる標高1,600〜1,800mの山域の総称である。
  • [岐阜県] ぎふ
  • 濃尾平野 のうび へいや 岐阜・愛知両県にまたがる広大な平野。木曾川・長良川・揖斐川などがその間を流れ、下流には輪中が発達。
  • 日本アルプス にほん- (アルプスは Alps スイスのアルプスのように、高峰が連なるところから名づけられた)本州中央部を占める飛騨・木曾・赤石山脈の総称。イギリス人ウィリアム・ゴーランドが明治14(1881)飛騨山脈をさして用いたのに始まる。のち、イギリス人ウェストンが赤石山脈を南アルプス、小島烏水が木曾山脈を中央アルプスとよび、同29年ウェストンが北アルプス(飛騨山脈)・中央アルプス・南アルプスの総称として用いた。狭義には北アルプスをいう。
  • [飛騨] ひだ 旧国名。今の岐阜県の北部。飛州。
  • 飛騨山脈 ひだ さんみゃく 本州中央部、新潟・長野・富山・岐阜4県の境に連なる山脈。山頂近くにカールが残る。立山・剣岳・白馬岳・槍ヶ岳・乗鞍岳などを含み、最高峰は奥穂高岳(3190m)。大部分、中部山岳国立公園に入る。北アルプス。
  • 御岳 おんたけ 御岳・御嶽。長野・岐阜県にまたがる活火山。北アルプスの南端に位置し、標高3067m。1979年に史上初めて噴火。頂上に御岳神社があり、古来、修験道で屈指の霊峰。きそおんたけ。おんたけさん。
  • 乗鞍岳 のりくらだけ (西方から望むと馬の背に似ているからいう) 岐阜県北部から長野県中部にまたがる火山。飛騨山脈南部の峻峰。標高3026m。山頂近くにコロナ観測所がある。
  • 穂高岳 ほだか/ほたかだけ 北アルプス南部、槍ヶ岳の南方、上高地の北にそびえる一群の山峰。長野・岐阜県境にあって、最高峰の奥穂高岳(3190m)のほか前穂高岳(3090m)・西穂高岳(2909m)・北穂高岳・涸沢岳などに分かれる。東側には涸沢カールがある。
  • 鎗 やり → 槍ヶ岳
  • 槍ヶ岳 やりがたけ 長野・岐阜両県境にある、北アルプス第2位の高峰。その頂上が槍の穂のように直立している。穂高岳に連なる。標高3180m。
  • 赤石岳 あかいしだけ 赤石山脈の主要峰の一つ。日本で第7位の高峰。静岡県と長野県にまたがる。標高3120m。
  • 赤石山系 あかいし さんけい
  • 赤石山脈 あかいし さんみゃく 中部地方の南部にある山脈。長野・山梨・静岡の3県にわたり、南アルプス国立公園をなす。最高峰は北岳(3193m)。
  • 白峰山脈 しらみね さんみゃく 石川県、両白(りょうはく)山地か。
  • 両白山地 りょうはく さんち 富山・石川・福井・岐阜の県境にまたがる山地。白山を中心とする白山山地(加越山地)と、能郷白山(1617m)を中心とする越美山地をあわせていう。加濃越山地。
  • [静岡県]
  • 丹那盆地 たんな ぼんち 静岡県、伊豆半島北部か。
  • 富士山 ふじさん (不二山・不尽山とも書く) 静岡・山梨両県の境にそびえる日本第一の高山。富士火山帯にある典型的な円錐状成層火山で、美しい裾野を引き、頂上には深さ220mほどの火口があり、火口壁上では剣ヶ峰が最も高く3776m。史上たびたび噴火し、1707年(宝永4)爆裂して宝永山を南東中腹につくってから静止。箱根・伊豆を含んで国立公園に指定。立山・白山と共に日本三霊山の一つ。芙蓉峰。富士。
  • [駿河] するが 旧国名。今の静岡県の中央部。駿州。
  • 東岳 ひがしだけ 三一四六メートル。
  • 悪沢岳 わるさわだけ 静岡県北部、赤石山脈にある山。日本で第6位の高峰。前岳・中岳(荒川岳)とともに荒川三山をなす。標高3141m。東岳。
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  • 近畿地方:
  • [京都府]
  • 奥丹後半島 おくたんご はんとう 丹後半島の別称。
  • 丹後半島 たんご はんとう 京都府北部、日本海に突出し、若狭湾の西を限る半島。奥丹後半島。与謝半島。
  • [大阪府] おおさか
  • 摂津河内平野 せっつ かわち へいや → 摂河泉平野、大阪平野か
  • 摂河泉 せっかせん 摂津国(大阪府・兵庫県)と河内国(大阪府)と和泉国(大阪府)。
  • 大阪平野 おおさか へいや 大阪湾の沿岸、大阪府と兵庫県南東部にまたがる、近畿地方最大の平野。淀川・大和川などが流れる。
  • [奈良県] なら
  • 三笠山 みかさやま 奈良市の東部、高円山と若草山との間にある山。春日神社の東に接してその神域をなす。山容は衣笠形。阿倍仲麻呂の歌に名高い。春日山の一部をなす。標高283m。御笠山。御蓋山。(歌枕)
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  • 中国地方:
  • 中国山脈 ちゅうごく さんみゃく → 中国山地
  • 中国山地 ちゅうごく さんち 中国地方の主体をなす山地。中国脊梁山地とその南北にある吉備高原・石見高原などに分けられる。脊梁部の高さは、1200〜1300mに達するが、大部分は1000m以下で高原状の隆起準平原。多くの盆地を抱く。
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  • 四国地方:
  • [香川県]
  • [讃岐] さぬき
  • 屋島 やしま 香川県高松市にある島山。かつての島が陸繋して半島となる。山頂の平坦な溶岩台地で屋根形をなし、南北二嶺に分かれる。長門の壇ノ浦とともに源平古戦場として名高く、南嶺に屋島寺がある。
  • [高知県]
  • 佐川盆地 さがわ ぼんち 高知県高岡郡佐川町周辺地域をさす。秩父累帯中帯および南帯から四万十(累)帯にまたがり、各種の中・古生界が分布。化石を多産し、複雑な構造で古くから研究され、日本のなかで、最も早く近代地質学の調査が及んだ地域の一つ。川内が谷・蔵法院・斗賀野・鳥巣式石灰岩・仏像構造線など日本地史上の重要な模式地が集中している。(新版地学)
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  • 九州地方:
  • 庄原盆地 しょうばる ぼんち
  • [熊本県]
  • 阿蘇 あそ 熊本県北東部、阿蘇山の北麓に位置する市。稲作と高原野菜栽培、牛の放牧が盛ん。観光資源にも富む。人口3万。
  • 熊本平原 くまもと へいげん → 熊本平野
  • 熊本平野 くまもと へいや 熊本県北西部に広がる平野。阿蘇山麓から続く洪積台地(肥後台地)と島原湾に面する沖積低地(熊本低地)とから成る。白川、緑川が流れ、かつては県下第一の穀倉地帯を形成した。
  • 人吉盆地 ひとよし ぼんち 熊本県南部、九州山地にある断層盆地。球磨川が貫流。江戸時代、水田を開くために百太郎溝、幸野溝などが開削された。中心は人吉市。
  • 人吉 ひとよし 熊本県南端、人吉盆地の中心都市。もと相良氏2万石の城下町。球磨川が貫流し、景勝の地。林産物の集散地。人口3万8千。
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  • 太平洋 たいへいよう (Pacific Ocean) (マゼランが1520〜21年に初めて横断した時に無風平穏だったため名づけた) 三大洋の一つ。アジア大陸の東、南北アメリカ大陸の西にあり、世界海洋の半ばを占める大洋。面積約1億6624万平方km。平均深度4188m。最大深度1万920m(マリアナ海溝中のチャレンジャー海淵)。
  • 大西洋 たいせいよう (Atlantic Ocean) 三大洋の一つ。ヨーロッパおよびアフリカと南北アメリカとの間にある大洋。総面積約8656万平方km。地球表面の約6分の1、世界海面の約4分の1を占める。平均深度3736m。最大深度8605m(プエルト‐リコ海溝)。
  • インド洋 インド よう 三大洋の一つ。アジア・オーストラリア・アフリカの各大陸と南極大陸とに囲まれた海。その北部はベンガル湾・アラビア海。面積約7343万平方km。平均深度3872m。最大深度7125m(ジャワ海溝)。
  • [ロシア]
  • シベリア Siberia・西比利亜 アジア北部、ウラル山脈からベーリング海にわたる広大な地域。ロシア連邦の一地方でシベリア連邦管区を構成。西シベリア平原・中央シベリア高原・東シベリアに三分される。面積約1000万平方km。十月革命までは極東も含めてシベリアと称した。ロシア語名シビーリ。
  • カラフト 樺太 サハリンの日本語名。唐太。
  • サハリン Sakhalin 東はオホーツク海、西は間宮(タタール)海峡の間にある細長い島。1875年(明治8)ロシアと協約して日露両国人雑居の本島をロシア領北千島と交換、1905年ポーツマス条約により北緯50度以南は日本領土となり、第二次大戦後、ソ連領に編入。現ロシア連邦サハリン州の主島。北部に油田がある。面積7万6000平方km。樺太。サガレン。
  • [朝鮮]
  • 蓋馬高原 ケーマ/ケマこうげん Kaema Plateau 朝鮮半島北部にある高原地帯。現在は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の両江道、咸鏡南道などに属している。広さは 40,000 平方km、標高は1,000m から 2,000m ほどの間で、朝鮮半島最大の高原であり、「朝鮮の屋根」とも呼ばれる。
  • [台湾] たいわん (Taiwan) 中国福建省と台湾海峡をへだてて東方200kmにある島。台湾本島・澎湖列島および他の付属島から成る。総面積3万6000平方km。明末・清初、鄭成功がオランダ植民者を追い出して中国領となったが、日清戦争の結果1895年日本の植民地となり、1945年日本の敗戦によって中国に復帰し、49年国民党政権がここに移った。60年代以降、経済発展が著しい。人口2288万(2006)。フォルモサ。
  • 新高山 にいたかやま 台湾第一の高山である玉山の日本統治時代の呼称。
  • 玉山 ぎょくざん (Yu Shan) 台湾第一の高山。標高3952m。→新高山
  • [中国]
  • [シナ] 支那 (「秦(しん)」の転訛)外国人の中国に対する呼称。初めインドの仏典に現れ、日本では江戸中期以来第二次大戦末まで用いられた。戦後は「支那」の表記を避けて多く「シナ」と書く。
  • 揚子江 ようすこう (Yanzi Jiang) 長江の通称。本来は揚州付近の局部的名称。
  • 長江 ちょうこう (2) (Chang Jiang) 中国第一の大河。青海省南西部に発源、雲南・四川の省境を北東流し、重慶市を貫き、三峡を経て湖北省を横断、江西・安徽・江蘇3省を流れて東シナ海に注ぐ。全長約6300km。流域は古来交通・産業・文化の中心。揚子江。大江。江。
  • アジア大陸 Asia・亜細亜 六大州の一つ。東半球の北東部を占め、ヨーロッパ州と共にユーラシアを成す。面積は約4400万平方km、世界陸地の約3分の1。人口は約34億6000万(1995)で、世界人口の2分の1以上。東は日本、北はシベリア、南はインドネシア、西はトルコ・アラビアにわたる地域。
  • ヨーロッパ大陸 Europa・欧羅巴 (ギリシア語のEuropeから) 六大州の一つ。ユーラシア大陸の西部をなす半島状の部分と、それに付属する諸島とから成り、面積約1050万平方km。人口約7億2600万(1995)。北は北極海、西は大西洋に臨み、南は地中海を距ててアフリカ大陸に対し、アジアとは東はウラル山脈、南東はカフカス山脈・黒海・カスピ海で境を接する。ギリシア・ローマの高度古代文明を経て、中世の約千年間キリスト教的統一文明圏を形成。イギリス・ドイツ・フランス・イタリア・ロシアなど約40の独立国に分かれる。エウロパ。欧州。
  • アメリカ大陸 America・亜米利加 (1) 北アメリカと南アメリカの総称。コロンブスより少し遅れて渡航したイタリアの航海者アメリゴ=ヴェスプッチの名に因んだ呼称。
  • アフリカ大陸 Africa・阿弗利加 (ローマ人がカルタゴ隣接地方を呼んだ語。のち南方の大陸全土を指した) 六大州の一つ。ヨーロッパの南方に位置する大陸。かつて暗黒大陸といわれ、ヨーロッパ列強の植民地であったが、第二次大戦後急速に独立国が生まれ、その数は周辺の島嶼国も含めて54に達する(2006)。イスラム世界の北アフリカとサハラ以南アフリカとに大別される。面積3030万平方km。人口8億9千万(2004)。
  • オーストラリア大陸 Australia・濠太剌利 (1) 世界最小の大陸。東は太平洋、西・南はインド洋、北はアラフラ海に面する。4万〜5万年前から先住民アボリジニが居住。
  • [インド]
  • ヒマラヤ山脈 -さんみゃく Himalaya (「雪の家」の意) パミール高原に続いて南東に走り、インド・チベット間に東西に連なる世界最高の大山脈。長さ約2550km、幅約220km、平均高度4800m。最高峰はエヴェレスト(8850m)。
  • エベレスト Everest エヴェレスト。(ヒマラヤ山脈の測量者イギリス人エヴェレスト(George E.1790〜1866)に因んで命名) ヒマラヤ山脈の高峰。ネパールとチベットとの国境にそびえ、巨大な氷河を持ち、世界の最高峰。標高8848m。1953年5月29日イギリス登山隊のヒラリーとテンジンが初めて登頂。チベット語名チョモランマ。ネパール語名サガルマーター。
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  • [中央アジア] ちゅうおう アジア (Central Asia)アジア中央部、中国のタリム盆地からカスピ海に至る内陸乾燥地域。狭義には旧ソ連側の西トルキスタンを指し、カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・トルクメニスタンの五つの共和国がある。イスラム教徒が多い。面積約400万平方km。
  • ゴビ砂漠 -さばく Gobi・戈壁。(モンゴル語で、砂礫を含むステップの意) モンゴル地方から天山南路に至る一帯の砂礫のひろがる大草原。狭義(通常)には、モンゴル高原南東部の砂漠。標高約1000m。ゴビ砂漠。
  • コンロン山脈 -さんみゃく 崑崙山脈。中国西部の山脈。チベット高原とタリム盆地の間を東西に走る山地。全長2400km。西部、中部、南部に大別され、狭義には西部崑崙をさす。黄河、揚子江の水源で、最高峰はウルー-ムズターク(7723m)。
  • 崑崙 こんろん (1) 中国古代に西方にあると想像された高山。書経の禹貢、爾雅・山海経などに見える。崑山。(2) チベットと新疆ウイグル自治区の境を東西に走る大山系。(3) 唐・宋の頃、マレー半島・インドシナ半島方面の総称。
  • チベット高原 Tibet・西蔵 中国四川省の西、インドの北、パミール高原の東に位置する高原地帯。7世紀には吐蕃が建国、18世紀以来、中国の宗主権下にあったが、20世紀に入りイギリスの実力による支配を受け、その保護下のダライ=ラマ自治国の観を呈した。第二次大戦後中華人民共和国が掌握、1965年チベット自治区となる。住民の約90%はチベット族で、チベット語を用い、チベット仏教を信仰する。平均標高約4000mで、東部・南部の谷間では麦などの栽培、羊・ヤクなどの牧畜が行われる。面積約123万平方km。人口263万(2005)。区都ラサ(拉薩)。
  • カラコルム山脈 Karakorum チベット高原とパミール高原との間にあり、北は崑崙山脈、南はヒマラヤ山脈に続く山脈。7千m以上の高峰が多く、最高峰はK2(8611m)。古来パミールと共に葱嶺と称した。
  • パミール高原 Pamir 中央アジア南東部の地方。チベット高原の西に連なり、標高7000m級の高峰を含む諸山系と高原とから成り、世界の屋根といわれる。大部分はタジキスタンに含まれる。葱嶺。
  • デカン高原 Deccan インド南部の半島部をなす高原地帯。東はベンガル湾、西はアラビア海に面する。
  • トルキスタン Turkestan アジア中央部、パミール高原および天山山脈を中心としてその東西にわたる地方。西部の西トルキスタンはカザフスタン・トルクメニスタン・ウズベキスタン・タジキスタン・キルギスの5共和国から成り、東部の東トルキスタンは中国の新疆ウイグル自治区に属す。
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  • [オセアニア] Oceania オーストラリア・ニュー‐ジーランド・メラネシア・ポリネシア・ミクロネシアの総称。広義には、インドネシアその他東南アジアの島々をも含む。大洋州。
  • 大洋州 たいようしゅう (→)オセアニアに同じ。
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  • [ヨーロッパ]
  • アルプス山脈 Alps ヨーロッパの中央南部に横たわる山脈。イタリア・フランス・スイス・ドイツ・オーストリア各国境に連なる。最高峰モンブラン(4807m)をはじめマッターホルン・ユングフラウ・アイガーなどの高峰がそびえ、氷河がある。
  • モン‐ブラン Mont Blanc (「白い山」の意) アルプス山脈中の最高峰。標高4807m。フランス・イタリア両国の国境にそびえる。万年雪に覆われて多くの氷河が流下。山麓に登山基地シャモニの町がある。イタリア語名モンテ‐ビアンコ。
  • ユラ山脈 → ジュラ山脈
  • ジュラ山脈 Jura フランスとスイスにまたがる山脈。褶曲構造がよく地形に現れている。延長300km。ドイツ語名ユラ。侏羅。
  • スカンジナビア半島 -はんとう Scandinavia スカンディナヴィア。北ヨーロッパの半島。長さ約1800km、幅最大約800km。フィンランドの北西端から南西に延びて、バルト海・ボスニア湾と大西洋との間に横たわり、東部はスウェーデン、西部はノルウェー。両国国境にスカンディナヴィア山脈が走り、海岸にフィヨルド(峡湾)が多い。
  • [イギリス]
  • スコットランド Scotland・蘇格蘭 イギリス、グレート‐ブリテン島北部の地方。古くはカレドニアと称。1707年イングランドと合併。中心都市エディンバラ。
  • [イタリア]
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  • [アフリカ]
  • [エジプト]
  • ナイル川 -がわ Nile アフリカ大陸北東部を北流する世界最長の大河。ヴィクトリア湖西方の山地に発源、同湖とアルバート湖とを経、白ナイルと呼ばれて北流、南スーダンを過ぎ、ハルツーム付近で東方エチオピア高原から流下する青ナイルと合して、エジプトを貫流し、地中海に注ぐ。長さ6650km。下流域は灌漑による農業地帯で、古代文明発祥の地。
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  • [北アメリカ]
  • ミシシッピー川 -がわ Mississippi 北アメリカの大河。ミネソタ州のイタスカ湖に発源し、中央大平原を南流し、メキシコ湾に注ぐ。支流ミズーリ川の源流から本流河口部までの長さ6210km。
  • ロッキー山脈 Rocky 北アメリカ大陸西部の大山脈。メキシコの中部からアメリカ合衆国・カナダを縦断してアラスカに及ぶ。長さ約4500km。最高峰はコロラド州のエルバート山(4399m)で、ほかにも4000m級の高峰が多い。
  • ブランカ・ピーク Blanca Peak アメリカ、コロラド州。サングレ・ド・クリスト山脈。プエブロの南西約80km。高さ4370m(4364m)。リオ・グランデの源流サン・ルーイス谷の東側にそびえる。記録のある初登頂は、1874年8月に G.M.ウィーラー測量隊に属したギルバート=トムソンとフランク・カーペンター。1875年6月にヘイドゥン測量隊は頂上に2〜3mの穴を発見した。これはワシを捕らえる罠をしかける所か、見張場の跡であろうという。(コン外国山名)
  • エルバート山 Elbert, Mount アメリカ西部、コロラド州中部、ロッキー山脈支脈のサワッチ Sawatch 山脈にあり、ロッキー山脈の最高峰。高さ4399m。(コン外国地名)
  • シエラネバダ山脈 Sierra Nevada (「雪に被われた山脈」の意) (2) アメリカ、カリフォルニア州の山脈。延長650km、最高峰はホイットニー山(4418m)。西側にサン‐ホーキン構造谷が併走する。
  • アリゾナ高原 → コロラド高原か
  • コロラド高原
  • アリゾナ Arizona アメリカ合衆国南西部の州。鉱業が盛ん。州都フェニックス。
  • コロラド川 -がわ Colorado アメリカ合衆国の西部、ロッキー山脈に発源し、南西に流れてカリフォルニア湾に注ぐ川。中流の峡谷はグランド‐キャニオンとして知られる。長さ2320km。
  • コロラド大峡谷 -だいきょうこく → グランド‐キャニオンか
  • グランド‐キャニオン Grand Canyon アメリカ西部、アリゾナ州北西部にある峡谷。コロラド川がコロラド高原を浸食して形成したもので、長さ450km、深さ1600mに及ぶ。大峡谷。世界遺産。
  • サクラメント平原 -へいげん
  • サクラメント Sacramento アメリカ合衆国カリフォルニア州の州都。同州中央部の盆地にあり、果実栽培・稲作などの農業地帯の中心都市。ゴールド-ラッシュで発展。人口40万7千(2000)。
  • -----------------------------------
  • [南アメリカ]
  • アマゾン川 -がわ 南米の大河。アンデス山脈中の源流からブラジル北部アマゾン盆地を東に貫流して大西洋に注ぐ。密林が流域の大部分をおおい、長さ約6516km。川幅は河口で100km。流域705万平方km。水量・流域面積とも世界第一。
  • アンデス山脈 Andes 南米大陸の北岸から西岸に沿って連なる大山脈。延長約9000km。最高峰アコンカグアは標高6960m。
  • アコンカグワ → アコンカグア
  • アコンカグア Aconcagua 南米、アンデス山脈中の最高峰。標高6960m。アルゼンチン西部、チリとの国境近くにそびえる。1897年初登頂。


◇参照:Wikipedia、『広辞苑 第六版』(岩波書店、2008)『コンサイス外国地名事典』第三版(三省堂、1998.4)『コンサイス外国山名辞典』(三省堂、昭和59.8)。




*年表

  • 濃尾地震 のうび じしん 1891年(明治24)10月28日、岐阜・愛知両県を中心として起こった大地震。マグニチュード8.0。激震地域は濃尾平野一帯から福井県に及び、死者7200人余、負傷者1万7000人余、全壊家屋14万余。また、根尾谷(岐阜県本巣市根尾付近)を通る大断層を生じた。
  • 関東地震 かんとう じしん → 関東大震災か
  • 関東大震災 かんとう だいしんさい 1923年(大正12)9月1日午前11時58分に発生した、相模トラフ沿いの断層を震源とする関東地震(マグニチュード7.9)による災害。南関東で震度6(当時の最高震度)。被害は、死者・行方不明10万5000人余、住家全半壊21万余、焼失21万余に及び、京浜地帯は壊滅的打撃をうけた。また震災の混乱に際し、朝鮮人虐殺事件・亀戸事件・甘粕事件が発生。
  • 奥丹後地震 おくたんご じしん → 丹後地震か
  • 丹後地震 たんご じしん 丹後半島を中心に1927年3月7日に起こった地震。マグニチュード7.3、死者2925人、1万戸以上の建物が全壊。半島の付け根の郷村断層の3mに達する左ずれが震源。北丹後地震。


◇参照:Wikipedia、『広辞苑 第六版』(岩波書店、2008)。



*難字、求めよ

  • 幽玄 ゆうげん (1) 奥深く微妙で、容易にはかり知ることのできないこと。また、あじわいの深いこと。情趣に富むこと。
  • 神威 しんい 神の威光・威力。
  • 山霊 さんれい 山の神。山の精。
  • 御嶽講 おんたけこう 長野・岐阜県境にある御嶽山へ登山する人たちの宗教団体。(大日本語)/おもに長野・岐阜県境に位置する木曾御嶽山に対する信仰。タケは雨・雲を支配する神霊のすむ高所の霊界を意味し、御嶽は各地方でかなめとされる山をさした。各地のタケの一つ御嶽山は、近世中期に黒沢・王滝に新たに登山道が開設され、江戸・尾張を中心に御嶽講が結成されるなどして、富士山とともに庶民登拝の山として信仰を集めるようになった。御嶽講は神がかりして託宣をする点に特徴があり、死後信者の霊魂は霊神となって御嶽に回帰するという信仰も顕著である。(日本史)
  • 三峰講 みつみねこう → 三峰信仰
  • 三峰信仰 みつみね しんこう 埼玉県秩父郡大滝村三峰三峯神社に関する信仰。狼を使令(つかわしめ)とし、講組織で参詣し、またお札をいただいてきて神棚・門口に貼ったり、竹にはさんで畑に立てたりして、魔よけ・虫よけ・泥棒よけにする。(大日本語)/埼玉県大滝村の三峰神社に対する信仰。同社の別当観音院高雲寺は本山派の修験道場として栄え、秩父山中に棲息する狼(山犬)を眷属「大口真神(おおくちまがみ)」としていたが、これを印刷した護符が害虫・盗難・火難除けとして霊験あらたかであるという信仰が広まり、江戸中期以降、東北・関東・東海の各地に三峰講が結成され、代参が盛んにおこなわれた。1868(明治元)神仏分離により修験を廃し、神社となったが、現在も盛んな信仰を集めている。(日本史)
  • 秋葉講 あきはこう → 秋葉神社
  • 秋葉神社 あきは じんじゃ 静岡県春野町の秋葉山に鎮座。旧県社。祭神は火之迦具土(ほのかぐつち)神。祭祀は不詳だが、「三代実録」にみえる岐気保神が当社にあたるとの説がある。中世、仏教と習合し、修験霊場として発展。曹洞宗大登山霊雲院秋葉寺が別当寺として一山を支配した。近世以降、火防の神として民衆の信仰を集め、秋葉詣が盛んになり各地に秋葉講が組織された。近世の朱印領は26石。神仏分離で秋葉神社として独立、秋葉寺は一時廃寺となった。例祭は12月15・16日。(日本史)
  • 分水界 ぶんすいかい 地表の水が二つ以上の水系に分かれる境界。分水線。
  • 分水嶺 ぶんすいれい (1) 分水界となっている山脈。分水山脈。
  • 慰藉 いしゃ 慰めいたわること。同情して慰めること。
  • 地球 ちきゅう (earth) われわれ人類の住んでいる天体。太陽系の惑星の一つ。形はほぼ回転楕円体で、赤道半径は6378km、極半径は6357km。太陽からの距離は平均1億4960万kmで、365日強で太陽を1周し、24時間で1自転する。地殻・マントル・核の3部分から成り、平均密度は1立方cm当り5.52グラム。表面は大気によって囲まれる。
  • 星雲説 せいうんせつ (→)「カント‐ラプラスの星雲説」に同じ。
  • カントラプラスの星雲説 カント‐ラプラス‐の‐せいうんせつ 主として太陽系の成因を説明しようとした宇宙進化論の先駆。高温の星雲状のガスがゆるやかに回転運動をしているうちに重力で収縮して環を形成し、それが球状にまとまってできた惑星が、中心のガスから作られた太陽のまわりを回るようになったとする。1755年にカントが提唱し、96年にラプラスが発展させた説。星雲説。
  • 流星説 りゅうせいせつ
  • ラジウム radium (ラテン語で光線の意のradiusから) アルカリ土類金属元素の一種。元素記号Ra 原子番号88。ピッチブレンド中にウランと共存する。1898年キュリー夫妻が発見。銀白色の金属。天然に産する最長寿命の同位体は質量数226、アルファ線を放射して半減期1602年でラドンに変化する。医療などに用いる。
  • 地殻 ちかく 地球の最外層。その下のマントルとはモホロヴィチッチ不連続面で境をなす。モホロヴィチッチ不連続面の深さは、大陸域で地表から30〜60km、海洋域で海底から約7km。地殻はマントルに比べて地震波の伝播が遅く、密度が小。海洋地殻は主に玄武岩質岩石から成り、大陸地殻の上部は主に花崗岩質岩石から成る。地皮。
  • 岩漿 がんしょう (→)マグマのこと。
  • マグマ magma 溶融した造岩物質(メルト)を主体とする、地下に存在する流動物体。メルト中に結晶を含み、水などの揮発成分が融けこんでいるのが普通。地上に出れば火山ガスと溶岩流などになる。固結したものが火成岩。岩漿。
  • 粘土 ねばつち ねばりのある土。ねんど。
  • 油土 あぶらつち (→)「ゆど」に同じ。
  • 油土 ゆど 彫刻・鋳金などの原型を作るのに用いる、オリーブ油・硫黄・蝋などをまぜた人工の粘土。緑色を帯びた暗灰色で、放置しても固化・乾燥しない。油粘土。あぶらつち。
  • 橙 だいだい (ダイは「橙」の中国音の転訛) (1) ミカン科の常緑低木。幹は高さ3mほどで、葉は卵形、透明な小油点を有し葉柄に翼を持つ。初夏、葉のつけ根に白色5弁の小花をつける。果実は冬に黄熟するが、翌年の夏に再び緑色にもどるので回青橙の名がある。暖地に栽培。皮は苦味健胃薬、果実は正月の飾りにも使用。オレンジ・サンボウカン・ナツミカンは同類、また臭橙はこの一種。
  • 浸食・浸蝕 しんしょく 〔地〕流水・氷河・波浪・風などが地表面を掘り削る作用。
  • 風化 ふうか (2) 地表およびその近くの岩石が、空気・水などの物理的・化学的作用で次第にくずされること。岩石が土に変わる変化の過程。比喩的に、心にきざまれたものが弱くなって行くこと。
  • 褶曲 しゅうきょく 堆積当時水平であった地層が、地殻変動のため、波状に曲がる現象。また、それが曲がっている状態。
  • 横圧力 おうあつりょく 褶曲山脈の生成などの地殻変動の原因となる地殻内に水平に働く圧縮力。
  • 造山力 ぞうざんりょく → 造山運動・造山作用
  • 造山運動 ぞうざん うんどう 陸上の大山脈や弧状列島の地質構造をつくる機構。プレート収束帯における付加・衝突作用を含む地殻変動、火成活動、変成作用すべてを含む。稀に山脈形成の隆起運動だけを指す。
  • 褶曲山脈 しゅうきょく さんみゃく 地殻変動によって地層が褶曲している山脈。ヒマラヤ・アルプスなど陸上の大山脈はすべてこれに属する。
  • 桑田変じて滄海となる そうでん へんじて そうかいとなる [劉廷芝、白頭を悲しむ翁に代われる詩]桑畑が変わって青い海になる。世の変遷のはげしいことのたとえ。「滄海変じて桑田となる」とも。
  • 地貌 ちぼう 地表面の形状、すなわち高低・起伏・斜面などの状態。
  • 地形 ちけい 地表の形態。ちぎょう。じぎょう。
  • としよる 年寄る 年をとる。老いる。
  • 感興 かんきょう 興味を感ずること。面白がること。また、その興味。
  • 平原 へいげん たいらな野原。
  • 平野 へいや 起伏が小さく、ほとんど平らで広い地表面。ほぼ水平な古い地質時代の地層から成る構造平野(西シベリア低地の類)、河川の沖積作用でできた沖積平野、浅海底の隆起した海岸平野などに分けられる。
  • 砂漠・沙漠 さばく 乾燥気候のため、植物がほとんど生育せず、岩石や砂礫からなる荒野。ゴビ・サハラ・アラビアの砂漠の類。
  • 河平原 かへいげん
  • 三角洲・三角州 さんかくす 河水の運搬した土砂が、河口に沈積して生じたほぼ三角形の土地。デルタ。
  • 三角州平原 さんかくす へいげん
  • 湿地 しっち 河川・湖沼の近辺などで、地下水が地表に近く、水けの多いじめじめした土地。
  • 密林 みつりん 木や草が密生した林。ジャングル。
  • 高原 こうげん (plateau; table-landの訳語。明治32年刊「英華字典」所載) 海面からかなり高い位置にあって、平らな表面をもち、比較的起伏が小さく、谷の発達があまり顕著でない高地。
  • 台地 だいち 平野および盆地のうち一段と高い台状の地形。武蔵野台地など。
  • 内地 ないち (1) 一国の領土内。版図内。国内。(2) 一国の領土内で、新領土または島地以外の地。日本で、もと朝鮮・台湾・樺太(サハリン)などを除いた領土を指した。←→外地。(3) 北海道や沖縄からみて、本州などを指して言った語。(4) 海岸から遠ざかった内部の土地。内陸。
  • 溶岩・熔岩 ようがん 〔地〕(lava) マグマが溶融体または半溶融体として地表に噴出したもの、また、それが冷却固結して生じた岩石。
  • 溶岩台地 ようがん‐だいち 火山の形態の一種。玄武岩のように流動性の著しい溶岩が噴出して形成した平坦な台地。
  • 盆地 ぼんち 周囲を山地によって囲まれた平地。成因により褶曲盆地・断層盆地・浸食盆地の3種に分かれ、湖が形成されていれば湖盆、堆積物で埋められていれば堆積盆地という。
  • うらむけ 裏向。裏を向けること。裏返し。
  • 昇り降り あがり さがり
  • 段丘 だんきゅう 河川・湖・海などに接する階段状の地形。もとの氾濫原や浅海底であった平坦な部分の段丘面と、その前面に河川や海水の浸食によって形成された急傾斜の段丘崖とから成る。
  • 海成段丘 かいせい だんきゅう 過去の海面に関連してできた海成平坦面が、海岸線に沿って階段状に分布する地形。海岸段丘とも。段丘面は波食による場合と堆積による場合とがある。段丘崖はもとの海食崖で、段丘面とその内陸側の段丘崖との傾斜換点を連ねた線は旧汀線である。段丘の規模・形態・堆積物の厚さなどは段丘形成前の地形・海況・構成岩石・地殻変動の様式などによって異なる。段丘の形成年代は段丘堆積物中の化石や被覆火山灰などから決められるが、年代決定が難しいことが多い。段丘面を形成した高海水準期が温暖期と対応し、段丘形成期が間氷期に相当するものが多い。海成段丘の形成は土地の間欠的な隆起によるとされていたが、段丘の分化を生じさせたのは地殻変動の緩急ではなく、地殻が一定の速さで隆起している間に繰り返された氷河性海面変化の結果とみるべきである。短い時間単位では、巨大地震による隆起で生まれた完新世段丘もある。(地学)
  • 河成段丘 かせい だんきゅう 河川に沿って片側または両側に分布する階段状の地形で、谷底平野が浸食の復活により河床より高く台地状になった地形。河岸段丘とも。平坦面を段丘面と呼び、旧谷底の遺物で、旧河川堆積物におおわれることが多い。段丘面を境する崖を段丘崖と呼ぶ。一般に、高い段丘ほど形成期が古い。河成段丘はその地域の浸食営力の消長を記録しており、地形発達史・地殻変動などを考慮する資料として重要。地殻変動が激しい日本ではほとんどの川に沿って河成段丘が発達し、現河床からの比高・縦断面形は地殻変動の指標となる。火山活動によって埋積された谷底が段丘化している場合もある。山地地域には、氷期の荷重の増大による堆積段丘も多い。(地学)
  • 高低 たかひく 高いことと低いこと。高低があって一様でないこと。でこぼこ。でくぼく。
  • 断層 だんそう 地層や岩石に割れ目を生じ、これに沿って両側が互いにずれている現象。ずれかたによって図のように分類する。比喩的にも使う。
  • 断層段丘 だんそう だんきゅう
  • 火山灰 かざんばい 火山から噴出する灰のような物質で、溶岩の砕片の微細なもの。火山塵。
  • 粘土 ねんど 土壌学的には通常0.002mm以下の粒子をいう。造岩鉱物の化学的風化過程で生成する結晶質、非晶質の各種の粘土鉱物、酸化物鉱物から成る。広くは水を含めば粘性をもつ土の総称。れんが・瓦・セメント・陶磁器の製造原料となり、また児童の工作材料とする。ねばつち。
  • 赤土 あかつち 赭土。(1) 鉄分を含み、赤く黄ばんだ粘土。赤色土。黄色土。赭土。
  • ローム loam (1) (→)壌土。(2) 風成火山灰土の一種。関東ロームが代表的で、10mに達する層をなす。酸化鉄に富み、赤褐色。赤土。
  • 黄土 おうど 中国北部・ヨーロッパ・アメリカ合衆国中央部などに広く分布している厚い黄灰色の主として風成の堆積物。更新世の氷期に大陸氷の周辺地域や、氷河・周氷河作用をうけた高山帯山麓の沖積平野の堆積物が風で運ばれて堆積。レス。
  • レス loess (→)黄土。
  • 山崩れ やまくずれ 急斜面をなす山腹の岩石や表土が急激に崩れ落ちる現象。大雨の後、または地震・火山爆発などによって起こる。
  • 富士岩 ふじがん 安山岩の異称。
  • 安山岩 あんざんがん (もとアンデス山系で発見され、andesiteに由来する) 火山岩の一種。暗灰色で緻密。斜長石・角閃石・黒雲母・輝石などを含み、板状・柱状等の節理がある。造山帯に産出。広く土木・建築に使用。
  • 懸崖 けんがい (1) 切り立ったようながけ。きりぎし。
  • 山岳 さんがく 陸地の表面のいちじるしく隆起した部分。やま。
  • もぐらもち 土竜・�鼠 (→)モグラの異称。
  • 丘陵 きゅうりょう (1) こやま。おか。(2) 山地より低くなだらかな山の高まり。
  • 峰 みね 峰・嶺。(1) 山のいただきのとがった所。山頂。ね。
  • 峰(峯) みね/ホウ 高い山で、上の方のそびえ立っているところ。山のするどくとがったいただき。頂上の方がとがった形の山。
  • 嶺 みね/レイ 横に広がったみね。みねの続いたもの。山の連なっているもの。
  • 山脈 さんみゃく 脈状に連なる山地。やまなみ。
  • 山系 さんけい 二つ以上の山脈が、互いに緊密な関係で一つの系統をなしているもの。ヒマラヤ山系の類。
  • 砂丘 さきゅう 風のために吹き寄せられた砂のつくる小丘。海岸・大河の沿岸または砂漠地方に多く生ずる。しゃきゅう。
  • 氷河 ひょうが 高山の雪線以上のところで凝固した万年雪が、上層の積雪の圧力の増加につれて、氷塊となり、低地に向かって流れ下るもの。流速は、山岳氷河では一般に年50〜400m、海に流れ出る氷河では年1000mを超えるものもある。
  • 堆石 たいせき (1) 石をうずたかく積むこと。また、その堆積した石。(2) (moraine) 氷河によって運搬され堆積した岩屑。また、その集積。氷堆石。モレーン。
  • 火山 かざん (volcano) 地下の深所に存在する溶融したマグマが、地殻の裂け目を通って地表に噴出して生じた山。地形によって分類されることがある。やけやま。
  • 火山砂 かざんずな/かざんさ 噴火の際に放出される粟粒ないし豆粒大の溶岩の破片。
  • 火山礫 かざんれき 噴火の際に放出される溶岩の砕片で、大豆または胡桃大のもの。
  • 火口 かこう (1) (crater) 火山の噴出物を地表に出す漏斗状の開口部。下方は火道に連なり、活動休止期は溶岩・火山噴出物で閉ざされる。噴火口。
  • 噴火口 ふんかこう 火山の噴火する口。火口。
  • 富士形 ふじがた 富士山のような形、すなわち円錐形の上部が欠けていて、横から見て扇を逆さまにしたように見える形。富士山形。
  • 円頂山 えんちょうざん
  • 円頂 えんちょう (1) 最上部がまるくなっていること。まるいいただき。
  • 餅磐 べいばん → 餅盤
  • 餅盤 べいばん 地学でマグマが地層の層理面に沿って上向きに貫入してできた鏡餅状の火成岩。ラコリス。
  • 断層線 だんそうせん 断層面と地表面との交線。
  • 御影石 みかげいし (1) 花崗岩石材の総称。神戸市御影付近(六甲山麓)が産地として有名であったのでいう。→本御影。(2) (1) に似た石の俗称。斑糲岩・閃緑岩・閃長岩など等粒状の構造を示す深成岩。
  • 本御影 ほんみかげ 六甲山麓の御影付近から産出した、淡紅色の長石を含む美しい本来の御影石。類似の石を広く御影石と称するのに対していう。古来有名。
  • 高山 こうざん 高い山。植生帯では、森林限界より高く、高山帯のある山。
  • 海溝 かいこう (trench) 水深6000mを超える大洋底の細長い凹所。その側面は急傾斜する。最深部が1万m以上に達するものもあり、日本海溝・フィリピン海溝など主な海溝は北太平洋西側に多い。プレートの沈み込む場所。
  • 地形図 ちけいず 土地の起伏・形態・水系、地表に分布する地物の配置などを描いた地図。通常、等高線によって地形を表す。一般に縮尺が1万分の1から10万分の1のもので、日本では縮尺1万分の1、2万5000分の1、5万分の1の3種類。
  • 等高線 とうこうせん 地図上で、土地の起伏を正確に表すために、標準海面から等しい高度の点を結んだ曲線。水平曲線。コンター。
  • 暈式 うんおうしき 地図における地表の起伏の表現の仕方の一つで、等高線に直角に多数の細く短い線を描く方法。けば。←→暈式
  • 鳥瞰図 ちょうかんず 高い所から見おろしたように描いた風景図または地図。鳥目絵。
  • 暈式 うんせんしき 地図における地表起伏の表現の仕方の一つで、地表の高低を彩色の濃淡で表す方法。直照光線式と斜照光線式とがある。ぼかし。←→暈式
  • パノラマ panorama (1) 全景。広い眺望。一望の下に収められた景色。(2) 都市や大自然・聖地などの眺望を屋内で見せる絵画的装置。円環状の壁面に緻密で連続した風景を描き、立体模型を配したり照明をあてたりして、中央の観覧者に壮大な実景の中にいるような感覚を与える。1789年イギリスのロバート=バーカー(R. Barker1739〜1806)が制作。日本では1890年(明治23)上野・浅草で公開。映画などの発達により衰退。回転画。
  • 褐色 かばいろ
  • 褐色 かっしょく 黒みをおびた茶色。


◇参照:『広辞苑 第六版』(岩波書店、2008)『日本国語大辞典 第二版』(小学館、2001.5)『日本史広辞典』(山川出版社、1997.10)『新版 地学事典』(平凡社、2005.5)。



*後記(工作員スリーパーズ日記)


「堆《つ》み上げ」は「積み上げ」にした。
「浸食」はそのままにした。
「北アメリカ合衆国」はそのままにした。
 アコンカグア、富士山の標高は『広辞苑』を参照した。

 関連地図を用意したいところだけれども、時間切れ。今回はここまで。そろそろ、ビットマップからベクター形式の地図へ移行をと考えている。ePub ならばそのまま表示できるはずなので、使いなれない Inkscape ではあるけれども、地図のトレース作業がこれからの課題。
 過去の郡域を確認するには、いまのところ一県ごとに平凡社『日本歴史地名大系』の口絵にあたるくらいしか思いつかない。めんどうではあるけれども、これがもっとも確実な方法かなあという気がする。

 話うってかわって、地球の温暖化と巨大地震の因果関係はありやなしや。
 北極と南極の氷がとける。とけた水はたぶん北極と南極にはとどまらず、均一に地球表面へ拡散しようとする。むしろ、地球の自転と公転の力にひっぱられて、赤道近辺へ移動する。つまり、おおざっぱに見て、コマの軸の上下におもりがついて回転していた状態が、極の氷がとけると、おもりがコマの横腹に移動するんじゃないだろうか。とするならば……。
 ひとつめ。とけて赤道付近へ移動した氷の質量のぶん、遠心力がはたらいて、地球の自転スピードがたぶんおそくなる。
 ふたつめ。とけて移動した氷の質量のぶん、地球表面上の重力の分布が、たぶん各地域ごとに大きく変動することになる。両極は軽くなり、赤道付近は重くなる。

 温暖化 → 両極の氷解 → 重力分布の変動 → 重力バランスの地殻への作用
 
 氷(水)の質量の問題にくわえて、体積の問題も生じる。温度の低い水は体積が小さいけれども、温度が上がると数パーセントの規模で体積が膨張する。重力バランスの地殻への作用、プラス、海水の体積の変化。
 寡聞のためか、温暖化と巨大地震の因果を関連づけようとする説をこれまで聞いたことがない。ということは、やっぱり無関係なんだろうか。あるいはもしも、このしろうと考えの説が正しいならば、ちかごろの巨大地震の連発は、さもありなんという気がする。
 ご回答、おまちしまーす。




*次週予告


第五巻 第二八号 
山の科学・山と河(二) 今井半次郎


第五巻 第二八号は、
二〇一三年二月二日(土)発行予定です。
定価:200円


T-Time マガジン 週刊ミルクティー 第五巻 第二七号
山の科学・山と河(一) 今井半次郎
発行:二〇一三年一月二六日(土)
編集:しだひろし / PoorBook G3'99
 http://www33.atwiki.jp/asterisk99/
出版:*99 出版
 〒994-0024 山形県天童市鎌田2丁目
 アパートメント山口A−202
販売:DL-MARKET
※ T-Timeは(株)ボイジャーの商標・製品です。