*難字、求めよ
醜悪事 しゅうあくじ みにくいできごと。けがらわしい事件。
グロキシニア Gloxinia イワタバコ科の観賞用多年草。地下に塊茎を持つ。ブラジル原産のものから改良された。温室で栽培。葉は卵形多肉でビロード状の短毛を持つ。花茎は15センチメートル、頂に1花をつける。花冠は大きく、辺縁浅く5裂。色は白・紫・紅など。オオイワギリソウ。
ポプラ poplar ヤナギ科の落葉高木。北欧原産。葉は菱形。高く伸び、樹形が美しいので、街路樹や牧場などに植える。材は細工用。セイヨウハコヤナギ。このほか、北米産のアメリカヤマナラシなどの同属の数種を総称して、ポプラと呼ぶことがある。
印度更紗 インド サラサ インドを中心として産する更紗。木綿地に臙脂・藍・緑色などで模様を手書きあるいは木版・銅版プリント・蝋防染・泥防染を併用して描いたもの。
拝火教 はいか きょう 火を神化して崇拝する信仰の総称。特に、ゾロアスター教の称。
忍黙
まほし(助動)(マクホシの転)(活用は形容詞型。[活用]○/まほしく/まほし/まほしき/まほしけれ/○)動詞型活用の語の未然形に接続して、願望を表す。鎌倉時代以降は「たし」が多く使われるようになる。(1) 動作主体の願望を表す。…たい。(2) 動詞「あり」に連なって「あらまほし」の形で、「理想的だ」の意になる。
アツシシユ アッシシュ?
微顫 びせん かすかにふるえること。
送目
冷暖自知 れいだん じち [伝灯録4]水が冷たいか暖かいかは飲んで初めて分かるように、仏法の悟りは、人から教えてもらうものでなく、体験して親しく知ることのできるものである。
咫尺 しせき (「咫」は周尺で8寸) (1) 近い距離。(2) 接近すること。貴人にお目にかかること。
行住坐臥 ぎょうじゅう ざが (1) 〔仏〕行くことと止まることと坐ることと臥すこと。戒律にかなった日常の起居動作をいう。四威儀。(2) 転じて、日常。ふだん。
モカ mocha アラビア半島南西部イエメン産のコーヒー豆。酸味の強いのが特徴。かつては同国南西端のモカ港から輸出されていた。
婚姻飛揚 ヴォル・ニュプシアル → 婚姻飛行
婚姻飛行 nuptial [mating] flight ミツバチ、アリなどが生殖期に交尾のためにおこなう飛行。ミツバチでは女王バチと多くの雄バチのなかの一匹、アリでは雌雄がいりまじって空中交尾をする。結婚飛行。
因陀羅網 いんだらもう 〔仏〕インドラの住む宮殿を飾っている網。その無数の結び目の一つ一つに宝珠があり、その一々が互いに映じ合うところから、宇宙の全存在が互いに関連しつつ存在することにたとえる。
下萌え したもえ 人目につかず芽ばえること。また、その芽。
生熱 しょうねつ 物が生まれ出るときに生ずる激しい力。
淫心 いんしん 婬心。情交をのぞむ心。性的な衝動。色欲。欲情。
成壌
セルリアン → セルリアン・ブルーか
セルリアン・ブルー cerulean blue 緑がかった青。空色。
瀏々 りゅうりゅう (1) 風が速いさま。(2) 清く明らかなさま。
松露 しょうろ (1) 松の葉におく露。(2) 担子菌類の食用きのこ。春と秋、海浜の松林中に生じ、球状で傘茎の区別はなく、ほとんど地中に埋まる。若いものは肉白くやや粘い。生長したものは淡黄褐色、一種特有の香気があり、多くは生のまま吸物の実などとする。
闃 げき ひっそりしていること。静かなこと。
幔幕 まんまく 式場・会場などに張りめぐらす幕。上下両端を横幅とし、その間を縦幅として縫い合わせたもの。上端だけ横幅のもの、あるいは縦幅だけで全く横幅を欠くものもある。まだらまく。うちまく。幔。
火団 かだん 火のかたまり。火塊(かかい)。
趾あと あしあと
◇参照:Wikipedia、『広辞苑 第六版』(岩波書店、2008)、『日本国語大辞典 第二版』(小学館、2001.5)。
*後記(工作員日記)
みちのくの つつじが岡の くまつづら
つらしと君を けふぞ知りぬる
高橋富雄『宮城県の歴史』(山川出版社、1969.9)より。ゼオライト、ポリイオン。『いくつもの日本1 日本を問いなおす』(岩波書店、2002.10)赤坂憲雄・中村生雄・原田信男・三浦佑之(編)、読了。
山形と新潟はどちらも震災隣県だけれども、避難者の数に大きな開きがあった。その理由が知りたくて新潟県運営のウェブサイトを訪ねたところ、目のつくところに知事・泉田さんの blog を発見。震災からちょうど一か月後の四月十二日以来ずっとウォッチしている。知事会見の記録は、震災後の3月25日から5月18日日現在まで十三回にわたる。残念ながら、質・量ともにわれらが吉村美栄子ちゃんは比ぶべくもない。
中越・中越沖地震の経験があること、柏崎原発被災の経験があること、被災者の運送、被災児童・生徒への支援、仮設住宅設置の保留、電力のピックカット15%大作戦、復興基金創設の提案……。
blog を開くたびに、その容貌が青空文庫の富田さんを彷彿させるところにも親近感をおぼえてしまう。
*次週予告
第三巻 第四四号
智恵子抄(二)高村光太郎
第三巻 第四四号は、
五月二八日(土)発行予定です。
月末最終号:無料
T-Time マガジン 週刊ミルクティー* 第三巻 第四三号
智恵子抄(一)高村光太郎
発行:二〇一一年五月二一日(土)
編集:しだひろし/PoorBook G3'99
http://www33.atwiki.jp/asterisk99/
出版:*99 出版
〒994-0024 山形県天童市鎌田2丁目1−21
アパートメント山口A−202
販売:DL-MARKET
※ T-Timeは(株)ボイジャーの商標・製品です。
T-Time マガジン 週刊ミルクティー**99 出版
第二巻
第一号 奇巌城(一)モーリス・ルブラン 月末最終号:無料
第二号 奇巌城(二)モーリス・ルブラン 定価:200円
第三号 美し姫と怪獣 / 長ぐつをはいた猫 定価:200円
第四号 毒と迷信 / 若水の話 / 麻薬・自殺・宗教 定価:200円
第五号 空襲警報 / 水の女 / 支流 定価:200円
第六号 新羅人の武士的精神について 池内宏 月末最終号:無料
第七号 新羅の花郎について 池内宏 定価:200円
第八号 震災日誌 / 震災後記 喜田貞吉 定価:200円
第九号 セロ弾きのゴーシュ / なめとこ山の熊 宮沢賢治 定価:200円
第十号 風の又三郎 宮沢賢治 月末最終号:無料
第一一号 能久親王事跡(一)森 林太郎 定価:200円
第一二号 能久親王事跡(二)森 林太郎 定価:200円
第一三号 能久親王事跡(三)森 林太郎 定価:200円
第一四号 能久親王事跡(四)森 林太郎 定価:200円
第一七号 赤毛連盟 コナン・ドイル 定価:200円
第一八号 ボヘミアの醜聞 コナン・ドイル 定価:200円
第一九号 グロリア・スコット号 コナン・ドイル 月末最終号:無料
第二〇号 暗号舞踏人の謎 コナン・ドイル 定価:200円
第二一号 蝦夷とコロボックルとの異同を論ず 喜田貞吉 定価:200円
第二二号 コロポックル説の誤謬を論ず 上・下 河野常吉 定価:200円
第二三号 慶長年間の朝日連峰通路について 佐藤栄太 月末最終号:無料
第二四号 まれびとの歴史/「とこよ」と「まれびと」と 折口信夫 定価:200円
第二五号 払田柵跡について二、三の考察/山形県本楯発見の柵跡について 喜田貞吉 定価:200円
第二六号 日本天変地異記 田中貢太郎 定価:200円
第二七号 種山ヶ原/イギリス海岸 宮沢賢治 定価:200円
第二八号 翁の発生/鬼の話 折口信夫
月末最終号:無料
第二九号 生物の歴史(一)石川千代松
定価:200円
第三〇号 生物の歴史(二)石川千代松
定価:200円
第三一号 生物の歴史(三)石川千代松
定価:200円
第三二号 生物の歴史(四)石川千代松
月末最終号:無料
第三三号 特集 ひなまつり
定価:200円
雛 芥川龍之介
雛がたり 泉鏡花
ひなまつりの話 折口信夫
第三四号 特集 ひなまつり
定価:200円
人形の話 折口信夫
偶人信仰の民俗化並びに伝説化せる道 折口信夫
第三五号 右大臣実朝(一)太宰治
定価:200円
第三六号 右大臣実朝(二)太宰治 月末最終号:無料
第三七号 右大臣実朝(三)太宰治 定価:200円
第三八号 清河八郎(一)大川周明 定価:200円
第三九号 清河八郎(二)大川周明
定価:200円
第四〇号 清河八郎(三)大川周明
月末最終号:無料
第四一号 清河八郎(四)大川周明
定価:200円
第四二号 清河八郎(五)大川周明
定価:200円
第四三号 清河八郎(六)大川周明
定価:200円
第四四号 道鏡皇胤論について 喜田貞吉
定価:200円
第四五号 火葬と大蔵/人身御供と人柱 喜田貞吉
月末最終号:無料
第四六号 手長と足長/くぐつ名義考 喜田貞吉
定価:200円
第四七号 「日本民族」とは何ぞや/本州における蝦夷の末路 喜田貞吉
定価:200円
第四八号 若草物語(一)L. M. オルコット
定価:200円
第四九号 若草物語(二)L. M. オルコット
月末最終号:無料
第五〇号 若草物語(三)L. M. オルコット
定価:200円
第五一号 若草物語(四)L. M. オルコット
定価:200円
第五二号 若草物語(五)L. M. オルコット
定価:200円
第五三号 二人の女歌人/東北の家 片山広子
定価:200円
第三巻 第一号 星と空の話(一)山本一清
月末最終号:無料
第三巻 第二号 星と空の話(二)山本一清
定価:200円
第三巻 第三号 星と空の話(三)山本一清
定価:200円
第三巻 第四号 獅子舞雑考/穀神としての牛に関する民俗 中山太郎
定価:200円
第三巻 第五号 鹿踊りのはじまり 宮沢賢治/奥羽地方のシシ踊りと鹿供養 喜田貞吉
月末最終号:無料
第三巻 第六号 魏志倭人伝/後漢書倭伝/宋書倭国伝/隋書倭国伝
定価:200円
第三巻 第七号 卑弥呼考(一)内藤湖南
定価:200円
第三巻 第八号 卑弥呼考(二)内藤湖南
定価:200円
第三巻 第九号 卑弥呼考(三)内藤湖南
月末最終号:無料
第三巻 第一〇号 最古日本の女性生活の根底/稲むらの陰にて 折口信夫
定価:200円
第三巻 第一一号 瀬戸内海の潮と潮流(他三編)寺田寅彦
定価:200円 瀬戸内海の潮と潮流/コーヒー哲学序説/神話と地球物理学/ウジの効用
第三巻 第一二号 日本人の自然観/天文と俳句 寺田寅彦
定価:200円
第三巻 第一三号 倭女王卑弥呼考(一)白鳥庫吉
定価:200円
第三巻 第一四号 倭女王卑弥呼考(二)白鳥庫吉
月末最終号:無料
第三巻 第一五号 倭奴国および邪馬台国に関する誤解 他 喜田貞吉
定価:200円 倭奴国と倭面土国および倭国とについて稲葉君の反問に答う/倭奴国および邪馬台国に関する誤解
第三巻 第一六号 初雪 モーパッサン 秋田 滋(訳)
定価:200円
第三巻 第一七号 高山の雪 小島烏水
定価:200円
第三巻 第一八号 光をかかぐる人々[続]『世界文化』連載分(一)徳永 直
月末最終号:無料
第三巻 第一九号 光をかかぐる人々[続]『世界文化』連載分(二)徳永 直
定価:200円
第三巻 第二〇号 光をかかぐる人々[続]『世界文化』連載分(三)徳永 直
定価:200円
第三巻 第二一号 光をかかぐる人々[続]『世界文化』連載分(四)徳永 直
定価:200円
アジアには十六世紀を前後して銅活字の時代があり、朝鮮でも日本でもおこなわれている。秀吉の朝鮮侵略のみやげものに端を発している家康・家光時代の銅活字印刷があるけれど、それにくらべると、このさし絵に見る康熙帝の印刷局ははるかに大規模で組織的であることがわかる。しかし、日本でも『お湯殿日記』に見るような最初の文選工は「お公卿たち」であったが、支那でもあごひげの長い官人たちであった。明治になって印刷術が近代化されてからでも、印刷工業をおこした人々の多くが、武家など文字になじみのある階級だったように、私の徒弟だったころの先輩の印刷工の多くが、やはり士族くずれだったことを思い出す。(略)
武英殿の銅活字は康熙帝の孫、高宗〔乾隆帝〕の代になるとつぶされて銅貨となった。日本でも家康時代の銅活字は同じ運命をたどっているけれど、支那のばあいは銅貨の不足が原因といわれている。しかし、もっと大きな原因は金属活字にあって、漢字組織ができないならば、またプレス式の印刷機もないとするならば、むしろ手わざの発達による木版の方が容易であり便利であった。ボディが銅であれ鉛であれ、それが彫刻に過ぎないならば、むしろ木版にしくはない。銅活字がほろびて再び木版術が栄え、極彩色の芸術的な印刷物もできるようになった。康熙・乾隆の時代に見られるこの傾向は、十七世紀の終わりから十八世紀のなかほどまでであるが、江戸中期から木版術が再興し、世界にたぐいない木版印刷術を生み出した日本と時間的にもほぼ一致している――ということも、漢字が持つ共通の宿命がするわざであったろう。
第三巻 第二二号 光をかかぐる人々[続]『世界文化』連載分(五)徳永 直
月末最終号:無料
『東洋文化史上におけるキリスト教』(三六二ページ)で溝口靖夫氏は、前に述べたメドハーストが(Ibid, P.366)自分の当時の経験を追懐した文章を根拠にして、つぎのように述べているところがある。――第五の困難は、アヘン問題と宣教師の関係であった。メドハーストが広東に着いた一八三五年は、アヘン戦争の直前であり、支那と英国のあいだに険悪な空気がみなぎっていた。このときにあたって宣教師たちは、きわめて困難なる立場に置かれた。宣教師たちは、しばしばアヘンを積んだ船に乗ってきた。しかも、メドハーストらは切符は買っているが、積荷について容嘴(ようし)する権利はなかった。……宣教師は、英国人と支那人との間に立って、しばしば通訳の労をとらねばならなかったが、こんなとき支那人はアヘン貿易は正義にかなえるものなりや否や? をただすのであった。……ゆえに当時、宣教師たちのこいねがったのは、一艘の伝道用船を得ることであった。これによりアヘンの罪悪からまぬがるることであった。――一艘の伝道船で、アヘンから逃れることはできないけれど、一口にいって「インドからの手紙」は、英国議会をして宣教師らの活動を保証させる決議案をパスさせながら、こんどは「信教の自由憲章」を勝ち取らねばならぬほどそれが首かせになったことを示している。つまり、産業革命が生み出したアルファベット人種の革命的進歩性は、おなじ産業革命が生み出した「アヘンの罪悪」と衝突しなければならなかったが、この矛盾こそ資本主義の矛盾の中味であり、限界であった。
第三巻 第二三号 銀河鉄道の夜(一)宮沢賢治
定価:200円
「ですから、もしもこの天の川がほんとうに川だと考えるなら、その一つ一つの小さな星はみんなその川のそこの砂や砂利の粒にもあたるわけです。またこれを大きな乳の流れと考えるなら、もっと天の川とよく似ています。つまりその星はみな、乳のなかにまるで細かにうかんでいる脂油(あぶら)の球にもあたるのです。(略)」
先生は中にたくさん光る砂のつぶの入った大きな両面の凸レンズをさしました。
「天の川の形はちょうどこんななのです。このいちいちの光るつぶが、みんな私どもの太陽と同じようにじぶんで光っている星だと考えます。私どもの太陽がこのほぼ中ごろにあって地球がそのすぐ近くにあるとします。みなさんは夜にこのまん中に立ってこのレンズの中を見まわすとしてごらんなさい。こっちの方はレンズが薄いので、わずかの光る粒、すなわち星しか見えないのでしょう。こっちやこっちの方はガラスが厚いので、光る粒すなわち星がたくさん見え、その遠いのはボウッと白く見えるという、これがつまり今日の銀河の説なのです。そんならこのレンズの大きさがどれくらいあるか、また、その中のさまざまの星についてはもう時間ですから、この次の理科の時間にお話しします。では今日はその銀河のお祭りなのですから、みなさんは外へ出て、よく空をごらんなさい。ではここまでです。本やノートをおしまいなさい。」
そして教室じゅうはしばらく机のふたをあけたりしめたり本をかさねたりする音がいっぱいでしたが、まもなく、みんなはきちんと立って礼をすると教室を出ました。
第三巻 第二四号 銀河鉄道の夜(二)宮沢賢治
定価:200円
そのとき汽車はだんだんしずかになって、いくつかのシグナルと転轍器(てんてつき)の灯をすぎ、小さな停車場に止まりました。
その正面の青じろい時計はかっきり第二時を示し、その振子は、風もなくなり汽車も動かずしずかなしずかな野原のなかに、カチッカチッと正しく時をきざんで行くのでした。
そしてまったくその振子の音の間から遠くの遠くの野原のはてから、かすかなかすかな旋律が糸のように流れてくるのでした。「新世界交響楽だわ。」むこうの席の姉がひとりごとのようにこっちを見ながらそっと言いました。まったくもう車の中ではあの黒服の丈高い青年も誰もみんなやさしい夢を見ているのでした。
(こんなしずかないいところで僕はどうしてもっと愉快になれないだろう。どうしてこんなにひとりさびしいのだろう。けれどもカムパネルラなんかあんまりひどい。僕といっしょに汽車に乗っていながら、まるであんな女の子とばかり話しているんだもの。僕はほんとうにつらい。)
ジョバンニはまた両手で顔を半分かくすようにして、むこうの窓の外を見つめていました。
透きとおったガラスのような笛が鳴って、汽車はしずかに動き出し、カムパネルラもさびしそうに星めぐりの口笛をふきました。
第三巻 第二五号 ドングリと山猫/雪渡り 宮沢賢治
定価:200円
空が青くすみわたり、ドングリはピカピカしてじつにきれいでした。
「裁判ももう今日で三日目だぞ、いい加減になかなおりをしたらどうだ。」山ねこが、すこし心配そうに、それでもむりに威張(いば)って言いますと、ドングリどもは口々にさけびました。
「いえいえ、だめです、なんといったって頭のとがってるのがいちばんえらいんです。そしてわたしがいちばんとがっています。」
「いいえ、ちがいます。まるいのがえらいのです。いちばんまるいのはわたしです。」
「大きなことだよ。大きなのがいちばんえらいんだよ。わたしがいちばん大きいからわたしがえらいんだよ。」
「そうでないよ。わたしのほうがよほど大きいと、きのうも判事さんがおっしゃったじゃないか。」
「だめだい、そんなこと。せいの高いのだよ。せいの高いことなんだよ。」
「押しっこのえらいひとだよ。押しっこをしてきめるんだよ。」もうみんな、ガヤガヤガヤガヤ言って、なにがなんだか、まるで蜂の巣をつっついたようで、わけがわからなくなりました。そこで山猫がさけびました。