M-Tea* vol.7 no.43 本の未来(八)富田倫生

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M-Tea* vol.7 no.43 本の未来(八)富田倫生

2015.5.16 第七巻 第四三号

本の未来(八)
富田倫生

 終章 みにくいアヒルの子としてのDTP
  『四十二行聖書』の不思議
  手写本文化を支えた修道院
  『四十二行聖書』のいびつさの根
  「私は白鳥である」と印刷本はいった
  本とはいったい何であるのか

 あとがきにかえて



100円(本体税抜93円)  p.147 / *99 出版
※ DRM などというやぼったいものは使っておりません。

※ PDF 形式。Mac OS X 10.4・Acorbat Reader 5.0、Windows 7・Adobe Reader X および SONY Reader(PRS-T2)にて確認済み。
※ この作品は青空文庫にて公開中です。
※ この作品は、クリエイティブ・コモンズ「表示 2.1 日本」でライセンスされています。利用条件は、http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/ を参照してください。

Book to the Future. 週刊電子本の未来*

 活字を用いた印刷は、グーテンベルクにさかのぼること四〇〇年前、鍛冶屋で錬金術師でもあった中国の畢昇によってすでに試みられていたといいます。
 粘土で整形し、焼いて堅くした陶活字は、松脂やロウ・紙灰を練って作った接着剤を塗った鉄板の上に並べられ、鉄枠で囲まれて固定されました。これを軽く熱してから冷ますと一枚の活版ができます。印刷後、版を熱しなおせば活字をバラバラにして再利用することも可能でした。
 鋳造活字に話をかぎっても、朝鮮ではすでに十五世紀前半にこの技術が生まれていました。李朝三代目の王・太宗は一四〇三年、朝鮮に書物が少ないことを憂えて数百万個の銅活字の鋳造を数か月で一挙におこなわせたといいます。その後も、続く王によって大規模な活字の鋳造がくり返されました。
 イタリアに十二世紀に伝えられ、その後ヨーロッパ各地に広まった紙は、動物の皮にとってかわる安価な本の素材として書物の〈世俗化時代〉を支える柱となります。この紙を中国は十世紀以上も前から利用しはじめました。後漢時代の宦官・蔡倫は一〇五年、皇帝に紙を献上したことでその発明者として記憶されています。けれど考古学上の新しい知識は、紙がすでに前漢から使われていたことを明らかにしています。
 グーテンベルク以前から、東洋には紙も活字もありました。けれど書物の爆発的な普及はそこには見られませんでした。鍵は技術にはなかった。書物の普及の原動力は、新しい知識で視野を広げながら、新しい生き方を求めようとする都市民衆の胸の中にこそ生じました。
 印刷術は、すでにくすぶり出していた知識を求める火に注ぐ、油に他ならなかったのです。

※ #ref(7_43.rm)
(朗読:RealMedia 形式 xxxKB、x:xx)
※ お休みしまーす。


富田倫生 とみた みちお
1952-2013(昭和27.4.20-平成25.8.16)
広島市生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、ライターに。ノンフィクションのさまざまな分野を取材対象としてきたが、次第にパーソナルコンピューターの比重が高まる。ボイジャーのエキスパンドブックを見て電子出版の可能性を本気で信じ込むようになり、「パソコン創世記」と名付けたタイトルを、コンピューターで読むことを前提に制作。このブック上の記述を、インターネット上のさまざまなホームページにリンクさせていくという作業を体験してからは、電子本への確信をさらに深めている。紙で出してきた著書に、「パソコン創世記」(旺文社文庫版、TBSブリタニカ版)、「宇宙回廊 日本の挑戦」(旺文社)、「電脳王 日電の行方」(ソフトバンク)、「青空のリスタート」(ソフトバンク)、「本の未来」(アスキー)がある。

◇参照:Wikipedia 日本語・オフライン版(『iP!』2009.4月号、晋遊舎)、青空文庫「作家別作品リスト:No.55」。

底本

底本:「本の未来」アスキー
   1997(平成9)年3月1日初版発行
http://www.aozora.gr.jp/cards/000055/card56499.html

NDC 分類:007(総記 / 情報科学)
http://yozora.kazumi386.org/0/0/ndc007.html
NDC 分類:023(図書.書誌学 / 出版)
http://yozora.kazumi386.org/0/2/ndc023.html

難字、求めよ

印刷本
手写本 しゅしゃぼん?
書士
修養書
陶活字
紙灰
鋳造活字
典書書体
つなぎ文字
BookBrowser
グーテンベルク博物館
富田修二 著『グーテンベルク聖書の行方』。
アンリ=ジャン・マルタン 著『書物の出現』。
J・C・R・リックライダー
『四十二行聖書』

年表

一〇五 後漢時代の宦官・蔡倫、皇帝に紙を献上。

一四〇三 李朝三代目の王・太宗、朝鮮に書物が少ないことを憂えて数百万個の銅活字の鋳造を数か月でおこなわせる。
一四五二 グーテンベルク、この年から五五年にかけて『四十二行聖書』を印刷。活版印刷最初の本。
一四九五年ころ アルドゥス・マヌティウス、イタリアのベネチアに印刷所を起こす。
一五一七年一〇月 マルティン・ルター、ローマ法王にあてた『九十五ヶ条の意見書』を公開。その後、新約聖書をドイツ語にした『ルター訳聖書』や自著を印刷。

一九九六(平成八)八月一三日 富田、妻(晶子か)とともにドイツ中西部の町マインツ、グーテンベルク博物館を訪ねる。
一九九七年一月 富田、本書のあとがきを脱稿。

◇参照:本文。

むしとりホイホイ

CD―ROM → CD-ROM 【-か】一か所。
仕上げらた → 仕上げられた 【れ?】
エキスハンドブック → エキスパンドブック 【パか】

以上3件。底本未確認。

スリーパーズ日記*

「倍近い分量のあった初稿では、パーソナルコンピューターの歴史やDTPの流れ、電子出版の系譜、インターネットの形成史といった話題に詳しく触れていた。エキスパンドブックに関しても、もっと技術的な内容に踏み込んで書いた。」「コンピューターにはあまり縁のない、本の好きな人に向かって書こう。できるだけ薄い本を作ろうと目指しながら、これまでやってきた仕事の勢いや自分自身の好奇心に引きずられて、当初の想定からはかなりはずれて突っ込んだ。」(「あとがき」より)

この初稿、読んでみたい!

もし富田さんが元気だったら、もし富田さんが元気で活躍してる別世界があるとしたら、富田さんはこのあともさらに取材をつづけて、もっとたくさんの本を書いて、ぼくたちはそれを読み続けることができたかもしれない。

でも、その世界に「青空文庫」はあるだろうかと思うと、ふと考え込んでしまう。「青空文庫」は富田さんの「病い」と不可分で、もし富田さんが元気だったとしたら、富田さんが「青空文庫」のような活動に足を踏み入れていたかは疑問で、結果、そのアナザーワールドには「青空文庫」がなかったかもしれない。もしくは、あったとしても、まったく別のものになってたかもしれない。

いろんな制限の中で富田さん自身が最後に選び取ったのが「青空文庫」。だから、その選択を富田さんが悔やんだとは思わない。でも、富田さんをもうちょっと「青空文庫」の活動から解放することができたとしたら、その別世界では、もう数冊、富田さんはきっと本を出版していて、ぼくたちはそれを読むことができたかもしれない。



2015.5.16 公開予定
2015.7.3 公開
しだひろし/PoorBook G3'99
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