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M-Tea*4_25-ラザフォード卿を憶う(他)長岡半太郎

2012.1.14 第四巻 第二五号

ラザフォード卿を憶う
 順風に帆をはらむ
 放射性の探究へ
 新しき関門をひらく
 核原子
 原子転換に成功
 学界の重鎮
 卿の風貌の印象
 ラザフォード卿からの書簡
ノーベル小伝とノーベル賞
湯川博士の受賞を祝す
(『長岡半太郎随筆集 原子力時代の曙』より)

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【週刊ミルクティー*第四巻 第二五号】
http://www.dlmarket.jp/product_info.php/products_id/182608
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(628KB)

定価:200円 p.166 / *99 出版
付録:別冊ミルクティー*Wikipedia(56項目)p.253
※ DRM などというやぼったいものは使っておりません。

※ オリジナル版に加えて、ミルクティー*現代表記版を同時収録。
※ JIS X 0213・ttz 形式。
※ この作品は青空文庫にて入力中です。転載・印刷・翻訳は自由です。
(c) Copyright this work is public domain.

おまえたちは電気がいらんのか! 週刊よしだひでこでございます*

 〔ノーベル〕物理学賞と化学賞とを受けた研究者の中で、原子関係の攻究に従事した学者がもっとも多い。したがってこれらの人々の多くは、原子爆弾の発案構造などを協議して終(つい)にこれを実現するに至った。その過程を調べれば、発明の功績は多分にこれらの諸賢に帰せねばならぬ。さらに目下懸案中の原子動力機の発展も、ひとしくこれらの人々の協力を藉(か)らざれば、実用の領域に進まぬであろう。一朝、平和工業にこれを活用するに至らば、いかに世界の状況を変化するであろうか、一言(ひとこと)にしてつくすべからざるものがある。(略)加速度的に進歩する科学界において、原子動力機の端緒をとらえるを得ば、その工業的に発展するは論をまたず、山岳を平坦にし、河流をつごうよく変更し、さらに天然の形勢を利用せず、人為的に港湾河川を築造するに至らば、世界は別天地を出現するであろう。かくして国際的の呑噬(どんぜい)行動を絶滅し、互いに相融和するに至らば、ユートピアならざるもこれに近き安楽国を出現するは疑いをいれず、巨大なる威力を獲得して、これを恐れるよりもむしろこれを善用するが得策である。今日の科学研究は、もっぱらこの針路をたどりつつある。現今、危機一髪の恐怖に迷わされて神経をとがらしているから、世界平和を信ずるもの少ないが、一足飛びにここに至らざるも、波乱は幾回か曲折をへて、ついにここに収まるであろう。けだしこの証左を得るには、少なくも半世紀を要するは必然である。 (「ノーベル小伝とノーベル賞」より)

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長岡半太郎 ながおか はんたろう
1865-1950(慶応元.6.28-昭和25.12.11)
物理学者。長崎県生れ。阪大初代総長・学士院院長。土星型の原子模型を発表。光学・物理学に業績を残し、科学行政でも活躍。文化勲章。

◇参照:Wikipedia 長岡半太郎、『広辞苑 第六版』(岩波書店、2008)。

底本:『長岡半太郎随筆集 原子力時代の曙』朝日新聞社
   1951(昭和26)年6月20日 発行
http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person1153.html

NDC 分類:289(伝記 / 個人伝記)
http://yozora.kazumi386.org/2/8/ndc289.html
NDC 分類:429(物理学 / 原子物理学)
http://yozora.kazumi386.org/4/2/ndc429.html

年表

一八一五 プラウト、原子量はおおむね水素の整数倍になっていることを指摘。
一八七一 ラザフォード卿、ニュージーランドのネルソンに生まれる。
一八九五 ラザフォード、英本国留学の給費をかちえてケンブリッジに遊び、J・J・トムソンの門に入る。
一八九八 ラザフォード、カナダのモントリオール市マクギル大学に物理学教授として赴任。寄付金でラジウム六デシグラムを購入。
一九〇三 長岡、陽核を提唱。
一九〇七 ラザフォード、マンチェスターの物理学教室主任として英本国に招喚。
一九一一年三月 ラザフォード、長岡宛に書簡。
一九一四 ラザフォード、ナイトとなる。
一九一九 ラザフォード、試験により原子量のジレンマを緩和。原子転換の可能性を示唆。J・Jの後をうけてケンブリッジに移る。
一九二五 ラザフォード、J・Jの後をおそうてロイヤル・ソサエティの長となる。
一九三一 ラザフォード、学績をもってバロンに叙せられる。
一九三八(昭和一三)一〇月一九日 ラザフォード卿、没。
一九五〇(昭和二五)一月 長岡「ラザフォード卿を憶う」『科学朝日』。



一八三一(天保二) 兄ルドウィヒ・ノーベル生まれる。
一八三三(天保四) 弟アルフレッド・ノーベル生まれる。
一八六五、六(慶応年間)ごろ 製造所をドイツに移し、大なる爆薬工場を十五か所に経営するにいたり、世界各国に手をひろげ、ダイナマイトの用途を拡張したのは。
一八八四(明治一七) バクーに兄弟連名で巨大な精錬所を建設。
一八八八 ルドウィヒ、没。
一八九一 アルフレッド、パリよりイタリアのフランス国境に近き海水浴場サン・レモに移る。
一八九六(明治二九)一二月一〇日 アルフレッド、没。享年六十三。
一九〇一 最初の授賞式が挙行。
一九〇四 第五賞をストルチングに与えてこれを強化する。
一九四九 湯川秀樹、ノーベル物理学賞を受賞。
一九五〇(昭和二五)一〇月 長岡「ノーベル小伝とノーベル賞」『心』。

難字、求めよ

放射能作
確算的
能作半減期
トール系 トリウム系列か。トリウム232から始まり鉛208で終わる放射性核種の崩壊系列。この系列の核種の質量はすべて4n(nは整数)となるので、4n系列ともいう。
メソトール トール系の元素。メソトリウム(mesothorium)か。放射性元素の1。記号 MsTH。トリウム系のもので、ラジウムの同位元素とアクチニウムの同位元素とがある。ラジウムの代用品として医療用、発光塗料に用いる。
トーロン トール系の元素。トロン(thoron)か。ラドンの放射性同位元素。トリウムの崩壊によって生成。記号Tn。
球関数
上提 上程(じょうてい)か。
画成
手栽 てうえ? てずからうえ?
バリスタイト 火薬の名。
ヴィッカース 地名か。
ラム 流体力学の専門家。
木下季吉
ショット 電子運動を計算し、ケンブリッジ大学でアダムス賞を得る。
ラウス 剛体力学。
Crowther 人名か。
ジラク 量子力学の書を著してノーベル賞を受ける。
技術連盟

むしとりホイホイ

互る → 亙る 【亙】
眤近 → 昵近 【昵】
遣言 → 遺言 【遺】
呑筮 → 呑噬 【噬】 「噬」はかむ。かみつく。

以上4件。底本は左辺のとおり。

スリーパーズ日記

 本文中「φ(ファイ)」は全角一字で表記した。「偏角をφ……」「角度φ」の部分は問題ないが、「Cosec4 φ/2」のように半角計算式中に全角一字の「φ」を使用すると、縦書きでは「φ」だけが正体で表示されてしまう。画像化してしまえばすむ問題だけれども、それではおもしろくない。解決策を思いつかず断念。そのままにした。

 昨年10月のこと。「原子力」と「1970年以前の刊行」をキーワードに県立図書館で検索。数件のヒットがあり、『広辞苑』や日外アソシエーツの『人物レファレンス事典』にあたって著作者の生没年を確認。保護期間を経過した長岡半太郎の本著にたどりつく。Wikipedia で確認すると日下部四郎太寺田寅彦石原純仁科芳雄らは彼の弟子とある。ノーベル賞委員会に湯川秀樹を推薦したのも彼とのこと。
 出発点に立ち返って見れば、どこでボタンのかけ違いが始まったのかわかるかもしれない、もしかしたら問題解決のヒントが隠されてはいまいか。おそるおそる本書を読む。
 半世紀前、原子力のおもてと裏の力をもっとも知っていたはずの長岡半太郎の弁は、今見ればあまりにも楽観的・無邪気すぎた。

 中曽根康弘氏や正力松太郎がどんなに工作しようとも、彼らにできることは予算を獲得することと推進の旗をふることまでであって、みずから研究開発はできない。実務にあたってきた科学者・研究者はつねにいたはずで、彼らがつっぱねれば別の可能性がありえたはずなのだろうけれども、残念ながらバラスト役はつとまらなかった、ということだろう。

 原子力学、地震学、歴史学、哲学……。それぞれの科学分野には、セルフ・リフレクションをになう部門がかならず組み込まれているはずなのだけれども、この十か月、その声はあまりに小さく限定的であることが気にかかる。これからも、ボタンのかけ違いを黙認するつもりなのだろうか。それとも、ドリンクドライバーを演じ続けるつもりなのか。



1.14(土)雪。県立図にてDVD観賞。『東京原発』(脚本・監督:山川元、2002)。
1.17 仙台、米米詐欺。二本松、室内ジャリ被爆。
2012.1.17:公開 玲瓏迷人。
2012.1.23:更新
目くそ鼻くそ。しだひろし/PoorBook G3'99
転載・印刷・翻訳は自由です。
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  • 17年目。 -- しだ (2012-01-17 16:26:04)
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最終更新:2012年01月23日 23:17