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金華山

検索対象:作家別テキストファイル(『青空文庫 全』、2007.10)
検索結果:金華山
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有島武郎 或る女 1(前編)
 絵島丸が横浜を抜錨《ばつびょう》してからもう三日《みっか》たった。東京湾を出抜けると、黒潮に乗って、金華山《きんかざん》沖あたりからは航路を東北に向けて、まっしぐらに緯度を上《のぼ》って行くので、気温は二 ……

岡本綺堂 綺堂むかし語り
 その三は、大正二年の九月、仙台《せんだい》の塩竃《しおがま》から金華山《きんかざん》参詣の小蒸汽船に乗って行って、島内の社務所に一泊した夜である。午後十時頃から山もくずれるような大雷雨となった。 ……

岡本綺堂 綺堂むかし語り
 仙台《せんだい》の名産のうちに五色筆《ごしきふで》というのがある。宮城野《みやぎの》の萩、末の松山《まつやま》の松、実方《さねかた》中将の墓に生《お》うる片葉の薄《すすき》、野田《のだ》の玉川《たまがわ》の ……

岡本綺堂 綺堂むかし語り
    金華山の一夜

岡本綺堂 綺堂むかし語り
 金華山《きんかざん》は登り二十余町、さのみ嶮峻《けんしゅん》な山ではない、むしろ美しい青い山である。しかも茫々たる大海のうちに屹立《きつりつ》しているので、その眼界はすこぶる闊《ひろ》い、眺望雄大と云ってよ ……

佐藤垢石 海豚と河豚
 それはとにかくとして、僕の会社のキャッチャーボートが四、五艘、いま牡鹿半島の鮎川港を根拠地としていて、毎日金華山沖で盛んに捕鯨をやっている。僕は、近いうちにそれを視察に行くことになっているから、君も一緒に行ってみ ……

佐藤垢石 海豚と河豚
 さて、このほどいよいよ金華山沖へ漕ぎ出すことになった。仙台から牡鹿半島の突端まで二十五、六里、その間の山坂ばかりの長い道中を、スプリングの弾力が萎《しな》びてしまったバスに揺られて漸く鮎川の町へ着いてみると、馬鹿 ……

佐藤垢石 海豚と河豚
 その夜半十二時、私らは第二京丸というキャッチャーボートに乗って鮎川港から金華山沖へ出た。三百二十トン、軽快な船である。 ……

佐藤垢石 海豚と河豚
 眼がさめると、朝七時。船は金華山から百二十五|哩《マイル》の太平洋を走っている。洋上一面の濃霧で、三、四町先も見えないくらいだ。展望がきかないから鯨はおろか鴎《かもめ》さえ見えないのだ。 ……

佐藤垢石 海豚と河豚
 この第二京丸は、昨年の秋から南極へ鯨捕りに行って、この四月に帰国したのだが、南極では百五十頭の大鯨をとってきた。だが、この金華山沖では、南極のような訳にはいかない。それでも、ここは日本近海第一の鯨漁場だ。 ……

佐藤垢石 海豚と河豚
 日本の近海には北は千島、北海道。それから金華山沖、房州と下ってきて紀州、土佐。南は小笠原島から台湾。西は九州五島沖、玄界灘。北は、朝鮮近海まで随分数多い漁場があるが、それで一ヵ年にとれる鯨は僅かに二千頭前後である ……

佐藤垢石 海豚と河豚
 翌日は、早朝から濃霧がからりと消え去った。全乗組員が、一斉に緊張する。金華山と、鮫の港を繋いだ線の百三十哩沖で、とうとう一頭の鰮鯨を仕とめた。長さ五十二尺、重さは六十トンもあろうという雌だ。 ……

須川邦彦 無人島に生きる十六人
 おじいさんが、青年時代、一八二〇年(江戸時代の文政三年)に、太平洋の日本沿岸、金華山沖で、捕鯨船が、まっこう鯨の大群を発見したのだ。 ……

須川邦彦 無人島に生きる十六人
 それはね、何千頭という大鯨が、べたいちめんに、いぶきをしていたというのだ。このことのあったつぎの年から、そのころ世界一さかんであった、アメリカ中の捕鯨船が、金華山沖にあつまって、めちゃくちゃに鯨をとっ ……

高村光太郎 回想録
 父には兄があって、それは先妻の子供で後まで中島と言っていたが、相当うまい大工であった。父は金華山のお寺に貰われてゆく筈であった。金華山にゆくことになったのも、神仏|混淆《こんこう》の時分だから、多分祖母の縁故からだ ……

高村光太郎 智恵子抄
金華山沖といふことでせう。 ……

高村光太郎 気仙沼
 女川から気仙沼へ行く気で午後三時の船に乗る。軍港の候補地だといふ女川湾の平和な、澄んだ海を飛びかふ海猫の群団が、網をふせた漁場のまはりにたかり、あの甘つたれた猫そつくりの声で鳴きかはしてゐる風景は珍重に値する。湾外 ……

高村光雲 幕末維新懐古談 私の子供の時のはなし
 十歳の時、母の里方《さとかた》、埼玉の東大寺へ奉公の下拵《したごしら》えに行き、一年間いて十一に江戸へ帰った。すると、道補の実弟に、奥州|金華山《きんかざん》の住職をしている人があって、是非私を ……

徳田秋声 縮図
 猪野はこの町の閑静な住宅地に三年ほど前に新築した本宅があり、仙台の遊廓《ゆうかく》で内所の裕《ゆた》かなある妓楼《ぎろう》の娘と正式に結婚してから、すでに久しい年月を経ていたが、猪野が寿々廼家の分けの芸者であった竹寿 ……

豊島与志雄 現代小説展望
 金華山の沖は波の荒いので有名だった。太平洋の涯から、山なす怒濤が、あとから、あとからじかに打ちつけて来た。船を揉み、放り上げ、うねりの底へ引き摺り降し、また抛り上げた。船は始終、寒気と、転覆の危険と、たたか ……

直木三十五 寛永武道鑑
 もう暮れかかろうとする町の中を——冬の初めとて、金華山から、山嵐の吹いてくる中を邸の方へ、急いだ。 ……

長塚節 旅の日記
 金華山から山雉《やまどり》の渡しを鮎川の港までもどつた。汽船で塩竈へ歸らうとしたのである。大分まだ時刻があつたので或旅人宿の一間で待つことにした。宿には二階がある。然し其案内されたのは表の店からつゞいた二間のうちの一 ……

長塚節 旅の日記
 其日は後に雨が止んだ。降るだけ降つた雨は地上の草木に濕ひを殘して心持よく晴れた。汽船は定刻に先つて港へついて靜かに煙を吐いて居る。昨日から待つて居た乘客はごや/\と渚に集つた。空は一杯に晴れて日がきら/\と射して居る ……

長塚節 鉛筆日抄
 鮎川の港からだら/\と上つて勾配の急な坂をおりる。杉の木の間を出ると茶店がある。茶店の前を行き過ぎやうとすると女房があとから呼びかけてお山へ渡るなら草鞋を買うて鹿の土産を持つて行けといつた。此れはお山の砂を草鞋へつけ ……

長塚節 鉛筆日抄
 社務所から出た一行十人ばかり白衣の先達に案内されて金華山を登る。坂が極めて峻しい。曉の霧がひや/\と梢を渡つて雨がはら/\とかゝる。老樹の鬱然として濕つぽい間を行くので深山のやうな淋しい心持がする。忽ち後の方で猿々と ……

中里介山 大菩薩峠 32 弁信の巻
「今日もいい天気で仕合せだ、見な、友様、四方の山々を……そうら、あれが木曾の御岳——駒ヶ岳、加賀の白山、こちらの方へ向いて見な、ええと、あれが江州の伊吹山さ、それからそれ、美濃の養老山、金華山、恵那山 ……

中里介山 大菩薩峠 33 不破の関の巻
 それから、石巻の港は河村瑞軒《かわむらずいけん》が設計したとかしないとか——尾上川の河口が押し出す土砂で、せっかくの良港を埋めてしまう、これを何とかせぬことには、この東北第一の名をうたわれた港も ……

中里介山 大菩薩峠 33 不破の関の巻
 だが、塩釜も、松島も、金華山も、仙台の城下も、ここを根拠として渡り歩いていれば、普通には優に二十日や三十日の暇をつぶすに充分でありますけれども、七兵衛の迅足をもってしては、まことにあっけないもの ……

中里介山 大菩薩峠 33 不破の関の巻
 金華山へ行って見たところで、野飼いの鹿がいる、猿がいる、それを珍しがって、やがて頂上へ登って見ると、そこの絶景に感心するよりは、更に一段の高所に登ったために、まず心頭と眼底に映り来《きた》るのは ……

林不忘 丹下左膳 01 乾雲坤竜の巻
 名にし負う塩釜《しおがま》神社に近く、右手の沖は、鮎川のながれを受ける金華山《きんかざん》。 ……

林不忘 丹下左膳 01 乾雲坤竜の巻
 午すぎからあやぶまれていた空模様は、夜とともに大粒な雨をおとして、それに風さえくわわり、二つの船は見るみる金華山沖へ流れていったが! ……

林不忘 丹下左膳 01 乾雲坤竜の巻
 さびしい——けれども、いい知れぬ平和な満足が、金華山洋上あらしの夜、弥生の死顔のうえにかがやいたのだった。 ……

林不忘 丹下左膳 02 こけ猿の巻
 いつか、金華山沖あいの斬り合いで、はるか暗い浪のあいだに、船板をいかだに組んで、左膳の長身が、生けるとも死んだともなく、遠く遠く漂い去りつつあった……はずのかれ左膳、うまく海岸に流れついたとみえて、こ ……

葉山嘉樹 海に生くる人々
 万寿丸は一晩港外に仮泊しないでも済むように順序よく、進んだ。尻屋《しりや》の燈台、金華山《きんかざん》の燈台、釜石《かまいし》沖、犬吠《いぬぼう》沖、勝浦《かつうら》沖、観音崎《かんのんざき》、浦賀《うらが ……

宮本百合子 獄中への手紙 一九三八年(昭和十三年)
 きょうは心持よい晴天になりましたね。きのうの夕方の地震相当つよくお感じになったでしょう? 金華山沖が震源地ですって。はじめの五時すこし過のとき、丁度夕飯をたべていて、段々ゆれ出すので心持わ ……

宮沢賢治 『春と修羅』補遺
 (根室の海温と金華山沖の海温 ……

夢野久作 難船小僧
 犬吠埼《いぬぼうさき》から金華山《きんかざん》沖の燈台を離れると、北海名物の霧がグングン深くなって行く。汽笛を矢鱈《やたら》に吹くので汽鑵《きかん》の圧力計《ゲージ》がナカナカ上らない。速力も半減で、能率の不経済 ……


以上、37件でした。



公開:2011.3.22 八面玲瓏。
しだひろし/PoorBook G3'99
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最終更新:2011年03月22日 23:00