MT*2_10-風の又三郎 宮沢賢治
2009.9.26 第二巻 第十号
風の又三郎
宮沢賢治
付録:別冊ミルクティー*Wikipedia(9項目)p.51
※ オリジナル版に加えて、ミルクティー*現代表記版を同時収録。
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(略)二人《ふたり》ともまるでびっくりして棒立《ぼうだ》ちになり、それから顔を見あわせてブルブルふるえましたが、ひとりはとうとう泣《な》き出してしまいました。というわけは、そのしんとした朝の教室《きょうしつ》のなかにどこからきたのか、まるで顔も知らないおかしな赤い髪《かみ》の子供《こども》がひとり、いちばん前の机《つくえ》にちゃんとすわっていたのです。そしてその机《つくえ》といったら、まったくこの泣《な》いた子の自分の机《つくえ》だったのです。(略)
「あいづは外国人《がいこくじん》だな。」
「学校さはいるのだな。」みんなは、ガヤガヤガヤガヤいいました。ところが五年生の嘉助《かすけ》がいきなり、
「ああ三年生さはいるのだ。」とさけびましたので、
「ああそうだ。」と小さいこどもらは思いましたが、一郎はだまってくびをまげました。
変《へん》なこどもは、やはりきょろきょろこっちを見るだけ、きちんと腰《こし》かけています。
そのとき風《かぜ》がドウと吹《ふ》いてきて教室《きょうしつ》のガラス戸《ど》はみんなガタガタ鳴《な》り、学校のうしろの山の萱《かや》や栗《くり》の木はみんな変《へん》に青じろくなってゆれ、教室《きょうしつ》のなかのこどもはなんだか、ニヤッとわらってすこしうごいたようでした。
2_10.rm
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宮沢賢治 みやざわ けんじ
1896-1933(明治29.8.27- 昭和8.9.21)
詩人・童話作家。岩手県花巻生れ。盛岡高農卒。早く法華経に帰依し、農業研究者・農村指導者として献身。詩「春と修羅」「雨ニモマケズ」、童話「銀河鉄道の夜」「風の又三郎」など。
◇参照:Wikipedia、『広辞苑』。
底本
2009.9.26:公開
2009.9.30:更新
目くそ鼻くそ/PoorBook G3'99
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最終更新:2009年09月30日 21:11