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*M-Tea*6_03-晩夏 堀 辰雄
*2013.8.10 第六巻 第三号
晩夏
堀 辰雄
&image(http://www.dlmarket.jp/images/uploader/620/6_3-1.png,http://www.dlmarket.jp/product_info.php/products_id/237360)
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(1.3MB)
&color(red){定価:100円(税込)} p. 86 / *99 出版
※ DRM などというやぼったいものは使っておりません。
※ PDF 形式、六インチ版。
※ この作品は青空文庫にて公開中です。著作権保護期間を経過したパブリック・ドメイン作品につき、転載・印刷・翻訳などの二次利用は自由です。
(c) Copyright this work is public domain, 2013.
PDF マガジン 週刊ミルクティー*
今朝、急に思い立って、軽井沢の山小屋を閉めて、野尻湖に来た。
じつは――昨日ひさしぶりで町へおりて菓子でも買って帰ろうとしたら、どこの店ももうたいがい引き上げたあとで、やっと町はずれのアメリカン・ベーカリーだけがまだ店を開いていたので、飛び込んだら、欲しいようなものはほとんどなにもなかった。木目菓子《バウム・クーヘン》の根っこのところだけ、それも半欠けになって残っていたが、いくら好きでも、これにはちょっと手を出しかねていた。そこへよく見かける一人の老外人が入ってきた。この店のお得意だと見え、「おやおや、お菓子、もうなんにもないですね……」と、わりに流暢《りゅうちょう》な日本語で店の売り子に言葉をかけながら、わたしの手を出しかねていたバウム・クーヘンをさして、「これはネズミが噛《かじ》ったのですか?」などと冗談さえいう。「そうかもしれませんね。……それでもよろしかったら、先生にわたしから進物《しんもつ》にしますわ。」そばかすのある若い娘も笑いながら、そんな返事をしている。「じつは持てあましていたところなんでしょう?」と、老外人の見事な応酬。――そんな和気《わき》靄々《あいあい》たる冗談の言いあいをあとに、わたしはビスケットだけ包んでもらって、さっさと店を出てきた。そして町を引っ返して行きながら、ふいといまごろは森の中の小屋で風呂の火でも焚《た》きつけているだろう妻の姿を浮かべた。なんだか急にさみしくなった。このまま二、三日どこかへちょっと旅行に出てそれから戻ってきたら、またこんな気持ちもおちつくだろうと思いながら、ちょうど店の主人が一人で横浜へ引き上げるため最後の荷作りをしているある運道具店の前を通りすがりに、ひょいとズックの手提げ鞄《かばん》のようなものを目に入れて、ズカズカと入って行って、とっさに旅行の決心をしてそれを買い求めた。それはラケットの入るようになった鞄だった。なんでもいいから、なくしたボストン・バッグのかわりに旅行にたずさえて行くつもりだった。……
※ #ref(6_3.rm)
(朗読:RealMedia 形式 xxxKB、x:xx)
※ お休みしまーす。
堀 辰雄 ほり たつお
1904-1953(明治37.12.28-昭和28.5.28)
小説家。東京生れ。東大卒。芥川竜之介・室生犀星に師事、日本的風土に近代フランスの知性を定着させ、独自の作風を造型した。作「聖家族」「風立ちぬ」「幼年時代」「菜穂子」など。
◇参照:Wikipedia &link_wikipedia(堀辰雄){堀辰雄}、『広辞苑 第六版』(岩波書店、2008)。
*底本
底本:「昭和文学全集第6巻」小学館
1988(昭和63)年6月1日初版第1刷
底本の親本:「堀辰雄全集第2巻」筑摩書房
1977(昭和52)年8月30日初版第1刷発行
1996(平成8)年8月20日初版第3刷発行
初出:「婦人公論」(「野尻」の表題で。)
1940(昭和15)年9月号
初収単行本:「晩夏」甲鳥書林
1941(昭和16)年9月20日
※初出情報は、「堀辰雄全集第2巻」筑摩書房、1977(昭和52)年8月30日、解題による。
※底本の親本の筑摩書房版は甲鳥書林版による。
http://www.aozora.gr.jp/cards/001030/card4799.html
NDC 分類:914(日本文学 / 評論.エッセイ.随筆)
http://yozora.kazumi386.org/9/1/ndc914.html
*むしとりホイホイ
蓼《さび》れて → 寥《さび》れて 【寥か】
控えている筈だった。改行/改行 → 【改行、一つ余計か】
無かった、 → 無かった。 【句点か】
落ちた、 → 落ちた。 【句点か】
Zweisamkeit! → Zweisamkeit ! 【半角スペースか】
*スリーパーズ日記*
書きかえメモ。
浪 → 波
赤坂憲雄『3.11から考える「この国のかたち」』(新潮選書、2012.9)読了。
p.12 「三・一一のほんの数ヵ月前に、わたしはいくつかの事情が絡まりあって、東北学の第一ステージの根拠地となった山形を離れ、東京にもどっていた。いまにして思えば、それはわたしに最大限の自由を与えてくれた僥倖のようなものだった。」
p.28 「陸前高田市と大槌町の公立図書館は壊滅。ほかに、少なくとも二十の小中学校が被災して図書が失われている。」
・自由民権運動
・野口英世
・下北半島恐山・賽の河原
・柳田「潟の思想」
p.76
・網野善彦『無縁・公界・楽』
・「寄り物」
p.81 「田老の防波堤が無力だったわけではありません。それはわずかな時間であれ、津波から逃れるための猶予を与えてくれたはずです。しかし、同時に油断という大敵も生まれていたかもしれません。海から隔てられていたために、逃げるのが遅れた人々がいたといわれています。」「いずれにせよ、避けがたくやって来る災害のダメージを減らすための仕掛けを、ひとつではなく複数、しかも可能なかぎり有機的に組み合わせて準備しておくことが必要なのです。」
p.84 鳥追い、どんど焼き……小正月の行事
◎ 鎮魂と供養。
鹿踊り、剣舞。
・ 七夕系……ねぶた、竿灯、災厄を祓うというテーマ
p.83 コミュニティの再生……お墓と神社の再建。
祭り、民俗芸能、深い意味での宗教のありよう。
p.91 生と死のあわい
p.94 「こんなシナリオはどうでしょうか。それは潟や浦といった自然生態系をそのままに受け入れることです。」
・入会(いりあい)
2013.8.10:公開
目くそ鼻くそ、しだひろし/PoorBook G3'99
転載・印刷・翻訳は自由です。
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