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アイドレス「ぽちの冒険」(イベント)


アイドレス:「ぽち王女の巡幸」から派生

要点:・心臓を押さえてしゃがみこむぽち>>>SSと挿絵にて表現
周辺環境:・街中 >>>>SSにて表現  







ss「ぽちの冒険」



文 玲音@になし藩国 挿絵 瑠璃@になし藩国 イタ@になし藩国 







 ……いくらか時を遡ることになる。

 それは、訪れる終焉の、ちょっとだけ前のお話。




 どこかの世界の、どこかの街中を、少女がさ迷っている。

 ひたすらに聞き込みをして回るその姿は、ひたすらに不器用で、おそらく彼女の一生にこんな時間は本来存在しなかったのに違いない。あちこち駆け巡って、たくさん話を聞いて、やがて公園のベンチに腰を下ろした。徒労がにじみ出るような息をひとつ。

 小さな公園だった。広場で子供たちが遊んでいるのが見える。少女は少しだけ微笑んで、こういうときはこんな表情でよかったかしらと少しだけ悩んだ。

 足がひどく熱を持っている。靴はとっくに走りやすいものに変えていたが、それでも痛みは日に日に増していた。







 轟音。

 見上げると、二つの人影が空にあった。その一方は少女の前に降り立ち、一方は目測を外れて広場に降り立った。もうもうと砂煙が舞い上がり、子供たちの歓声とも悲鳴ともつかない声があがる。まともに着地した方が広場の方を見て、

「惜しかったな、弟よ」

「兄者はさすがだぜ」

 二人豪快に笑う。しばらく我慢していた少女がやおら立ち上がり、

「そういう問題じゃないでしょ!」

 顔を見合わせるセイ・エイジャとファイ・エイジャ。

「いや、しかし王女」

「さすがにこれだけの距離を一回で跳べば、これくらいの誤差は出るもんだぞ」

「普通に歩いてきなさい。せめて街中では」

 まともなことが言えた、と胸を張るぽち。が、再び顔を見合わせているエイジャ兄弟を見て、どんな風に言えば伝わるのだろうと頭を抱えた。こうなってくると、自分の言い方がいいのか悪いのかわからない。

「あー、とにかく。聞き込みはどうだったの?」

 ぽちが訊ねると、セイが難しい顔をして、

「それなのだが……王女、ペロという人物の特徴をもう一度おっしゃってもらえないか?」

「え? んーと、メガネで、ヘタレで……あとはとにかくメガネでヘタレなの」

 うなずくセイ。

「うむ。我らもそうしてあちこち訊ね回ったのだが」

 ファイが続いて、

「よくわからない、と言われたぜ」

 むー、とうなるぽち。しばらく考えて、何か閃いたらしく顔を輝かせる。

「そうだ、いじわる。うん、すごくいじわるね」

「ふむ、メガネでヘタレでいじわるか」

「漢の風上にも置けない奴だな」

「……言われてみれば対極かもね。あなたたちとは」

 妙に納得するぽち。

「じゃ、それでもう一度行ってきてくれる?」

「なるほど。では弟よ、頼んだぞ」

「まかせろ」

 うなずくファイ。あ、ちゃんと歩いて行って、とぽちが伝える前に跳躍。壮絶な衝撃音と砂煙があがった後にはクレーターができている。ぽち、ひとつため息。

「ふっ、血気盛んでな」

「——それより、どうしてあなたは残ってるの?」

 セイは弟の飛んでいった空を見上げたまま、

「平気なフリをする必要はないぞ。辛いのだろう」

 ぽちは何かを言い返そうとしたが、結局口の中だけでそうねとつぶやき、

 ——そして、そのまま胸を押さえてうずくまった。

 こんなものはなんでもない。こんなものは……。

 ひたすらにつぶやきながら、少女はじっと地面を見つめている。



 自分の身体は、このループのためだけのものだと——そんなことは当たり前のことだった。

 自分の心だって自分のものではないのだと。都合のいいように動く人形なのだと——そんなことも今さらのことだ。

 ただ、ほんのちょっとだけ自由が欲しかったのかもしれない。

 あるいは、ほんのちょっとだけ自分が欲しかったのかもしれない。

 そう思ってぽちは、ゲームをした。ゲームの中で、自分は自分だった。どんなことでもできた。思うがままの自分でいられた。

 ……けれど、きっとわかっていなかったのだ。

 自分の行動が、誰かに影響を与えるなんて。

 自分の言葉が、世界を変えてしまうなんて。

 人形の自分には、ありえないことだったから。だから、そんなことはありえないのだと、勝手に思ってしまっていた。

 ファンタジアに言葉をつきつけられた、あの瞬間まで。






「治まったか」

 ようやく呼吸が楽になってきて、ぽちは小さくうなずいた。

 こういう発作は今までも何度かあって、その周期は確実に短くなっている。きっと、どこかがもう壊れ始めているのだろう。時期からすればもう当然のことであって、むしろまだ動いてくれていることに感謝しなければならない。

「こんなものは、ただの痛みよ。だから、問題ない」

「そうか」

 セイはそう言って、ぽちを優しく見つめた。

「お前のような目をした人を知っている。お前のように、人と人形の間で苦しむ女だった」

「それで?」

「悲しい目をしていた。死ぬことでしか、何かを成せないと考えている目だ」

「ふうん」

 死ぬ、ということは、さほど重要なことではないはずだ、とぽちは思う。

 誰だって死ぬ。人形でなくとも誰だって止まるのだ。

 ならば、人形だから何もしないというのは間違っているはずだった。そんなものはそう、単なる甘えだ。

「……それで、だから何?」

 ぽちがむすっとして訊ねると、セイは笑って、

「お前の方がまだマシな目をしているという話だ。王女」

「あそう」

 ——佐藤に会って何を言えばいいのか、未だにわからない。鈴木に至ってはもう、多分、自分にできることなんて何にもない。

 それでも。

 何かをしたいという意思だけは、まだ残っているはずだ。

「姉ちゃん、大丈夫か?」

 聞きなれない声に顔を上げると、いつの間にか子供たちがぽちの周りに集まっていた。心配そうな顔でこちらを見ている。

 ぽちはできるだけ元気な声を作って、

「大丈夫。こう見えても、わたしは頑丈なの」

「ウソだあ。肌なんかこんな真っ白なのに」

「腕だって細いしさー」

 ああくそ、このバカ正直なガキどもめ、とぽち。

 言われなくてもそんなことはわかっている。

「いいから、そこをどいてなさい。もうすぐ落ちてくるから」

「うむ、もうすぐだな」

 セイが言い終わらぬうちに衝撃音。冗談のように砂が吹き上がり、「またきたー」と子供たちがクモの子を散らすように逃げていく。

「うむ。今度は場所は完璧だぞ。弟よ」

「まだまだ兄者にはかなわないぜ」

 お互いの肩を叩きあう兄弟に、ぽちは肩をすくめて、

「はいはい。それで、どうだった?」

「同じだな。よくわからないと言ってるぞ」

 ファイが満足げに指を立てる。目的と手段が微妙に入れ替わっていた。やれやれとぽちは首を振る。

「ま、じゃあここにもいないのかもね。次に行きましょうか」

 ぽち、ベンチから立ち上がる。踏み出した一歩がちょうどクレーターの端で、そのまま手もつけられずにばたーんと倒れた。見事というか、最近ちょっと見ない。




「無事か? 王女」

 セイが手を伸ばす。ぽち、それを無視して立ち上がった。スカートの汚れを払いもしない。

「こんなの、痛いだけじゃない。なんでもないわ」

「だが、その足も痛むだろう」

 セイの言葉に王女はふんと鼻を鳴らして、

「なんでもないって言ってるでしょ。わたしがわたしの足で行かないと意味がないの!」

 ファイが腰に手を当てて豪快に笑った。

「はっはっは。兄者! 王女はわかってるな」

「その通りだ弟よ。自らの足で歩むのは、楽しいものだ」

「うるさい体力バカ。さっさと行くわよ」

 歩き出すぽち。その左と右に、長きに渡って仕えてきたかのように二人の騎士が並ぶ。



 その姿を、ようやく集まってきた子供たちがまぶしそうに見ている。

 その内の一人が訊ねた。

「なあ、姉ちゃんたち何してるの?」

 少女はスカートをなびかせて振り返り、かつて一国の王を胃痛で苦しめた頃のような、無邪気でわがままな笑顔で、

「冒険よ。冒険してるの!」

   /*/

 ぽちの冒険は、続いている。

 おそらくは、彼女にとって最初で最後の、大冒険であるはずだった。













L:ぽちの冒険 = {
 t:名称 = ぽちの冒険(イベント)
 t:要点 = 心臓を押さえてしゃがみこむぽち
 t:周辺環境 = 街中
 t:評価 = なし
 t:特殊 = {
  *ぽちの冒険のイベントカテゴリ = ,,,藩国イベント。
  *ぽちの冒険の位置づけ = ,,,{特殊イベント,自動イベント}。
  *ぽちの冒険の内容 = ,,,ぽちのダメージは完全回復し、宰相府に戻る。この時記憶は一部なくなる。
 }
 t:→次のアイドレス = なし