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【事前準備】
・藩国地下の遺跡を有効利用し、出発前にダンジョン内での戦闘・行動訓練を行う。
・そこから得られた経験則や情報についてミーティングを念入りにしておくことで、
異変が起きた時でもパーティが混乱せずに行動できるようにする。
【装備】 ・壁の向こうでも、コーン状の物をあてればかなり音が聞こえる。 ・地下遺跡探索のため、騎士はチャリオットから降り軽装鎧を装備。 ・学生はフィールドワークの授業やサバイバル訓練の経験を生かした動きやすい服装。 ・先を砥いで尖らせたスコップを用意。通常用途はもちろん、いざという時の白兵装備にもなる。 ・コーン状の物を携帯。(物に当てて音を聞く) ・仕掛けがありそうな隙間に詰める布の切れ端を用意しておく。 ・何かを探る時はまず直接触らないで棒か何かで触るため用意する。 ・何か覗き込む時、直接見ないように鏡を準備 ・11フィートの棒を使う。 ・ランタンは周囲を照らすもの、前方を照らすもの2種類用意する。 ・感覚に優れた者は耳を塞ぐ様な装備は使わない。 ・原色の少ない、汚れているマント状の装備で体を覆う。(カムフラージュ用) ・金属製の鎧は音を立てるため、なるべく使わない。 ・靴底は柔らかい物にして音を吸収する。 ・息を潜め、呼吸音を聞こえないようにマスクなどを用いる。 ・灯りは予備を用意する。
【体術】 ・目を凝らして動く物を見逃さない。 ・聞こえてくる音が変わったら警戒する。 ・無音という事は普通はない。あったら警戒する。 ・水源のそばでは空気の匂いが変わるので、判別できる。 ・異臭がしたら敵を警戒する。 ・温度の変化で高低や湿気を判断できる。 ・空気の動きがあるかで道を判断できる。 ・聴覚を最大限利用する。 ・地面の振動にも気を配る。 ・前や下だけでなく、上にも注意する。 ・ダンジョン内の足場は不安定であるため、足場確保を確実にする。
【陣形】 ・2人一組のチームを崩さず、互いに補い合うようにする。 ・感覚に優れた者が先行する。 ・隘路、崖の近くなどでは、先行メンバーが安全を確認してから移動を行う。 ・すぐ情報を伝えられるように、全員が受け取った情報をうしろの者に伝える。 ・全員で偵察するので、情報伝達のロスは少ない。 ・人数がある程度いるので、死角はなくせる。 ・全員で一箇所を集中して探索するのではなく、分担する。
(コーラル@になし藩国)
暗い、暗い、迷宮の底。
というほどのものではないにせよ、土偶が蹂躙する広島市街地やら夏の小笠原諸島やらとはまた違った雰囲気が、そこにはあった。
全身を探知機にして空気の流れを探り、耳をそばだてて動きを探る。
静寂以外は、全て異常。そしてそれは、危険とイコールでもある。
耳が痛くなるほどの静寂。月灯りすらない暗闇の世界。
そのなかで、ただ集中し続けるのは、精神をすり減らす。未熟な新米剣士であれば、耐え切れず叫び出すかもしれない。
沈黙がどれほど耳にこたえるか、闇がどれほど目に眩しいか。戦場続きの騎士たちは久々に思い知っていた。
時折聞こえる風の音、彼方から聞こえる謎の響き、仲間の出す出す音だけを心のよすがにし、周囲へと意識を飛ばす。
騎士だって偵察くらいする。になし藩国には偵察兵などという職業はなかったから、先行偵察とかするのはもっぱら騎士の役目である。
白兵戦は勿論、メカに乗ってオペレートして、追跡だってする、のがになし騎士のお仕事である。
そんなわけで、エプロン・ナイツの一員であるアイビスは、可能な限り音を消しながら、闇の中を進んでいる。丁寧に、ではあるが、緊張した様子はあまり、ない。
マイペースさにかけては、今回の相方を務める月空と同等、いやその才能は月空をも凌ぐ、と定評があった。
この人物を動揺させることが出来るのは、黒い兄弟騎士くらいであろう。
どんな定評かと思わなくもないが、つまるところこういう状況で、最も信頼できるタイプの人物であることには間違いない。
にゃんにゃんの国までやってきて、ダンジョン探検に勤しむという無茶な企画に借り出されるには、相応の理由という奴があるのだった。多分。
細身の体を壁に押し付け、先の様子を読む。音、匂い、光。いずれも異常なし。剣士の嗅覚と呼ばれる直感に触れるものも、ない。
よし、大体この辺は調べつくしたかな。
そろそろ、帰還予定の時間かな、と時計の蓋を開き、蛍光塗料の塗られた針を読む。誤差1分。
戻るのが遅ければ、他のメンバーが心配する。そろそろ戻りどころだろう。
月空のほうに向き直ると、うなずく気配がした。よし撤収ですね。ここまでに異常は無し、と。
声なき声で会話すると(あるいはしたつもりになりつつ)2人は後退を始める。
かすかな足音が遠ざかっていき、あたりは完全な闇に包まれた。
(若月宋一郎@になし藩国)
【編集者】(1:2006/0618 0943 イタ)