小説

商店街の新しい戦い

作 下丁@になし藩国




商店街集会場

「本日は皆様お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます」

商店街の人々が集まる中、自治会長の話が続く
「この度、国の方でダンジョンを観光地として売り出すと言う計画は聞いていると思います。
このお達しに伴ない、我が商店街も観光客の獲得に向け力を入れなければなりません。
すでに需要が見込まれている武器屋、防具屋、道具屋、修理屋等の下準備施設や酒場、宿屋等の飲食宿泊施設の他、
観光客を安全に案内できる腕の立つガイドなど既に準備は着々と進行中であります。

ですが、この他にも更におみやげ屋のおみやげ、その他に意見や要望を上げてもらいたい。
もし、国に申請やなどが必要になるような意見があっても構わないのでどんどん出して欲しい」

会長の言葉を聞いてざわめく人々

「会長、俺からの意見なんだが観光客を呼ぶためにもダンジョンの宝に懸賞を賭けたらどうだろう?
『マジックアイテムで一攫千金』みたいな感じで」

意見を聞いて他の人々からも意見が上がる。

「キャッチコピーは『夢はでっかく3億わんわん』とか、どうだろね」
「金より物を送ったほうがよくないか、アイテム取ったのが猫だったら換金面倒だろうし」
「ってか、商店街にそんな金ないぞ」
「誰が商店街で出すって言った国が出すだろ」
「じゃあ、記念に花束でも贈るか」
「やめとけ、やめとけ、花束なんて食べられない」

意見が出るのは結構なのだが、悪乗りが過ぎると脱線するのよくある事で…

「じゃあ、喰える物ならいいのかよ」
「花も食べ物も同じだろ『残らないのがポイント』だろ」
「あ〜、だからプレゼントって花が基本なのか。で、仲良くなってきたら手料理っと」
「異議あり、花束贈ったら、押し花やドライフラワーになって残るぞ」
「それは、誰の実体験だ〜」
「五月蝿い、炭化手料理でも大事に残しとけ」
「そんなもの誰が残すんだよ、普通処分するだろ」

そろそろ収集か着かなくなる前に手を打つのが基本
「あ〜、静粛に。盛り上るのは結構なのだが話がずれてきているので一端区切るぞ。
とりあえず、反対意見は無い様なのでこの案は国に掛け合ってみる事にする。金なり物資なりは
国の方で何とかしてくれる事だろう。

「次にみやげもの屋のおみやげについて何か意見を」

「妥当な所で、饅頭なんかどでしょう?」
「ありきたりじゃないか」
「何を言う、饅頭は歴史が古いんだ。起源は三国志の諸葛孔明が作ったとされているんだぞ」
「諸葛亮?あの、蜀に人がいないから有名になれたヘボ軍師か」
「ヘボ言うな、武勇伝ならいくつも残ってるだろ」
「それは三国志演義の方だろ、正史読め、あれがまともに戦ったのなんて南蛮と北伐だけだろ。
 しかも南蛮は正規軍隊ですらないぞ、北伐も5戦して1勝しかしてないだろ」
「正史でも内政と企画と開発は優秀だぞ」
「結局、軍事面だめじゃん」
「そんなに人間万能には出来てないんだよ」

またも脱線
「もう、最初から饅頭関係ない話になってるし」
「とりあえず、饅頭の中身どうしようか?」
「困った時はカレーか鍋だ。これなら、好き嫌いはほとんどでないぞ。ラーメンも有りだな」
「汁物を饅頭にいれるなよ」
「だからってカレーがあうのか?」
「『とりあえず入れとけ』の発想はどうよ?」
「叩くだけじゃなくて代案出せよ」

相変わらず話が進まず困っている
「困っているようだな」
「その格好、貴方はもしや新しく決まったガイド部の方」

「いかにも、近隣住人への挨拶の仕事の内と言う訳だ。ここは俺に任せるがいい」
ガイドの格好をした男が大きく息を吸い込んだ

「喝!!」

静まりかえる集会場
「さあ、静かになったぞ」
「……。え〜と、話し合いの途中ですがガイドの方が挨拶に来られたので、先に挨拶をしていただきます」


「俺は、になし藩国観光局ガイド部部長、人呼んでダンジョンガイ(ド)の長・ガイ長である。
今、ガイド部では上級ダンジョンのガイド、特に後方支援担当のガイドを募集中である。
上級ダンジョン故、ガイドは1パーティに複数人のガイドを着け安全性を上げるので
我こそはと思う者は性別外見などに関係無く参加してくれ。
また、中級のガイドにも僅かながら空きがあるので参加してみたいと思うものはぜひ参加してくれ。
ただし、少々判定が外見よりになる事は注意してもらいたい。
最後に我々ガイドは観光客にもマナーを持って貰う様に心掛けるつもりではあるが、
そちらに迷惑がかかるような事態が発生場合には協力をお願いしたい。尚、ガイド参加者には
『モンスターの返り血もさっと落ちる特性ダンション洗剤』を進呈する。以上」

ガイ長は言いたい事を言うと去っていった。

「え〜それでは、他に意見が無いようなら今回の会合はここまでにしたいとおもいますが…」
「待ってください、案ならここにあります」
そう言って剣の様なものを取り出す
「見てください、味のれんの春巻き見たいなアップルパイにヒントを得て作った
『グレードソード風タコ焼き』です」
「…………」

沈黙

「さて、何もないようなので今回の会合はここまでとします」
「いや、みなさん。黙ってなかった事にしないで駄目だら駄目で何か言ってくれ」
剣の形をしたタコ焼きを持ってさけぶタコ焼き屋
「………。ボツ」
「え〜〜〜」
「では解散」

そんな事を繰り返しながら、観光地の初動前日の商店街
「なんとか間に合あったな」
商店街はノボリ等でで色々と飾り付けられている
「ええ、各店舗も準備万端です」
「皆の意見が通ってダンジョンの宝を鑑定、買取、販売を行う『マジカルアンティークショップ』も出店できた、
後はおみやげ屋の方は?」

「各種おみやげは用意できてます、食べ物等のナマモノは当日になりますが」
おみやげ屋のノボリには『千箱買っても飽きが来ない!ダンジョン饅頭』と書かれていた
「意見がまとまらなかったから逆に、ほぼ全ての意見を採用して上手く一つの形にした結果だ」
「買う度に中身も形も変わる饅頭、遊び心はありますね」
「道具屋等で売ってる携帯食料もそのままおみやげになるから、
おみやげ屋ならいっそこれ位やったほうがいいからね」
「その割りにペナントや木彫り像も売っていますけどね」
「そこはお約束だからな、少ないながら需要はある、此処まで来たら後は客を迎えるだけだ」

こうして商店街の新しい戦いが始まった




作者紹介
「下丁@になし藩国」になし藩を護る黒騎士にして文筆家、という二つの才能を持った文族。
 この作品における商店街の店主たちの様子や、その他の作品、例えば大鉱山を解説した文章、
そしてACEと呼ばれた人物「オタポン」(になし藩に居た事がある)に
ついて書いた文章などは、「小説」のカタチをとりながらも、のちの歴史家たちにその概要を
知らせるに充分で大変資料性の高いものとなっている。
(NW歴12年刊行「になし文筆家列伝/第参拾伍巻」より)




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最終更新:2008年06月16日 20:43