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ある鉱山夫の思い




薄暗い坑道を降りるトロッコに乗って、俺は仕事場に向かっている。
俺の仕事は鉱山を掘る事だ。地味な所で単調な作業をする毎日を過ごしている。
よくしゃべる同僚は、事あるごとにぱーっとやりてえだの面白い事してえだのと話している。
殆どの奴は似たような感想を抱いているようで、
仕事が終われば早々に飲みに行ったり遊びに行ったりしているようだった。
俺はと言えば、酒は飲めないし派手に遊ぶような事も好きじゃないので、
仕事がなければ家でぼんやりしているだけだ。

自分の仕事が何になるか考えた事はあるかと、同僚に聞いた事がある。
そいつからは、おめー難しい事考えてんな。とだけ言われた。
ここで掘られる資源は建築資材や生活用品、兵器なんかになると聞く。
自分の仕事が鍋や家やI=Dに繋がっていると考えると面白い。
商店街の建物やゴールデンを見てそれが自分とは無関係でないと思うと妙に嬉しかった。
体力的にきつい時もあるが、ぼちぼちと休みもある。ちょうど明日が、その休みだ。
同僚は東西商店街の美味い物をはしごすると言っていた。
いろんな楽しみ方があるもんだと思った。

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お世辞にも綺麗とは言えない部屋の布団に寝っ転がって、俺は休日を楽しんでいた。
ふと、共和国に残してきた家族の事が頭をよぎる。
お前のするべき事をしなさいと送り出してくれた母親。
泣きながら元気でいてねと言ってくれた妹。
何も言わず、まっすぐ自分を見ていた父親…。
今でも昨日の事の用に思い出す事が出来る。
あの無謀な王女に縁のある国まで来れたのはよかった物の、
そこでしている事はあまりにも小さな事だった。
何かの役に立ちたいと、勢い勇んで出てきたはいいが…。

暗い思いに沈みそうになった時、腹がなった。
そういえば、朝から何も食べていなかった。
のそのそと起き上がり、近くの商店街に向かう。
そこかしこで、あの王女の写真が掲げられていた。


噂では体調がよくないらしい。
千羽鶴を作ってどうのこうのと言う話を聞いた事もある。
ここで皆がしている事の一つ一つは、国とか世界とかから見れば小さな事なのだろう。
俺が毎日している事のように。

でも…ここに居ると、それでもいいのかもしれないと思う。
小さくても皆したい事があって、何かしている。それがわかるのは、とても面白い事だと思う。
だからきっと俺は、未だにこの国に居られるんだろう。


                執筆 月空@になし藩国  挿絵 コーラル@になし藩国 



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