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「……実はこれだけじゃ決め手がなかったりして」
その場に弛緩した空気が流れた。
「考えられるパターンはいくつかあるわね。九重さんが犯人で伏見さんに見られた何かを知られたくなかったから存在を隠蔽した。
 あるいは、伏見さんが犯人で九重さんはそれを庇っている。どっちもそれなりの説得力はあるけど問題もある」
「問題とはなんだ」
これまで沈黙を保っていたになしが口を開いた。いかにもどうでもよさそうに。
「アクセスログが。伏見さんは会議室に入ってない。でも髪の毛があった。そもそも会議室には玲音さんと九重さんしか入ってない。
 これだけだと九重さんしか犯行を行えないように聞こえるけど、やったって証拠もない。やってないって証拠もあんまりないけど。
 それに、髪の毛は何のために用意されたのか解らない。
 無理に意味をつけるなら二人は共犯で、別の場所で殺して会議室まで運んできた。
 中に入って椅子に座らせたのは九重さん。髪の毛は運ぶ時死体にくっついたのがたまたま落ちた。
 結局全ては推測で──髪の毛に意味なんてないのかもしれないけどね」
あるいは──犯人を一人に絞らせないための仕掛けなのか。と付け足すように呟く。
「……セレナちゃんは犯人解ったんじゃないんですか?」
「いや、解ってるんだけど。こういうのは話の持って行き方で説得力が全然違うから。当てずっぽうとか大雑把とか言われたくないし
 とりあえず今は『犯行が行われたという決定的な証拠がない』ってだけ理解してくれればいいよ」
何か言いたげに芒が玲音の死体を見たが、例によって黙殺した。
「玲音さんの異常な行動を追っていけばまぁその辺の謎は解けるはず」
「あのひとはいつも変です」
「まぁそうなんだけど、基本的に物の考え方は筋が通ってるというか、合理的というか。
 ただその筋が人から見たら意味不明なだけなんだよねー。
 あのメイド服だってジェントルラット亡命の時の勝負服だからこれは僕の誇りなのですとかなんとか言ってたし。
 意味はあるのよ。理解されがたいだけで」
じゃあ、今回の行動には何の意味があったのか?
「そもそも──瑠璃さんに渡されたケチャップを玲音さんは料理長に渡してない。
 あまつさえそれを持って会議室に向かっている。
 伏見さんにはイベントをやるから手伝って欲しいと言っていた」
ひとつひとつ確認するように言いながら玲音の死体の方へ歩いていくセレナちゃん。
躊躇せず血溜まりに足を踏み入れて真横に立ち──
「余禄がない分こっちからのアプローチの方が解り易かったかなぁ」
無造作に手を上げ──振り下ろした。玲音の脳天目掛けて。
それを目視できた者はその場にいなかっただろう。ただ、全員が、何が起きたかによって何があったのかを理解した。

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