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静まり返る格納庫へやってきた。
こんな人気のない場所にいるくらいだから隠れているのだろう、と思いきやあっけなく伏見と遭遇。
瞬間的に逃げの体勢に入った伏見の足元めがけて40kg程度の肉塊が地面を滑るように投げつけられる。
狙い違わず命中。もんどりうって倒れる伏見。
ちなみに肉塊の名は九重と言う。
勿論投げたのはセレナちゃんであった。
「なんで逃げるんですかー?」
「なんとなくむごい目に逢いそうだったから!」
「逃げようとするからですよ」
「酷いパラドックスだ…」
一番むごい目に逢っているのは九重な気がしなくもない。
いきなり投げつけられて受身も取れずに目を回している。骨が2、3本折れてもおかしくはない状況だ。
「で、なんでこんな所に居るんですか」
「玲音さんが死んでるって聞いて…俺は露骨に怪しいからちょっと隠れていろと。自分が犯人を見つけるから。って言われて」
なぜか正座でそう答えた。怒られている気分なのかもしれない。
「誰に?」
「九重さんに」
意外と言えば意外な人間の名前が出てきて反射的に九重を見るセレナちゃん。
当の九重は未だに目覚める気配もなくうんうん唸っている。
「ちょっと今日一日なにしてたか詳しく教えてもらえません?」

”伏見の証言”

「今日は9時すぎにになし卿と罰金の件で相談に来て。
 話自体は10分くらいで終わったかな。
 それからちょっと書庫に寄らせて貰って、ぶらぶらしてたら玲音さんと会ったんですよ。
 何かイベントをやるとかで、手伝って欲しいって言われました。自分は準備があるから昼頃会議室まで来て欲しい、って
 それで昼まで時間を潰して会議室に行ったら九重さんと会って…後はさっき言ったとおり」

「会議室の中には入ってないんですか?」
伏見、こくこく頷く。正座で。
──なにか、矛盾が、ある、気が、した。
ひとたびその矛盾に気付いた途端。
全ての事象が縺れた糸をほどくかのように、するすると一本の連続した流れに構築される感覚を覚えた。

まるで──そう考えるように誘導されているような。

「あの……急に黙られると恐いんですが」
少し、考えをまとめたい。
後で呼びますんで伏見さんはここから動かないで下さいね、と言い置いて、まだ気絶したままの九重の首ねっこをひっつかむと格納庫を後にした。

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最終更新:2008年01月29日 21:49