天夜奇想譚 守護診断書


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作者:雨後

タイトル:守護診断書







「っで、結局何が分かったんだ?」
「んー、君が何者であるかまでなら何とか」

聖の診察が終了したのがあれから三時間後、結局のところまだ未知の部分はあるがある程度は既に先人がいたことで解明された。

「つまり、君は・・何というかやはり異形であることは間違いない」
「それは見れば分かるだろ」
「・・・異形とはどんなものか知っているかい?」
「化け物や天使、悪魔とかだろ?違うのか?」

聖は少し考え。

「いいかい、異形とは真祖が仲間、または種を残すために行うことだ。」
「つまり君は私の僕であり同族であるはずなのだ。」

バーンシュタインと銀では確かに違う種類の異形である。ちなみにバーンシュタインは魔人であると説明された。すなわち銀も魔族でなくてはこの理論は狂い始める。

「見たところ、君の鎧は本当に純銀である可能性が高い。なぜなら私の本能が君を避けているからだ。」

聖はこの銀の正体と異形に関するあらゆる可能性を考慮した結果、ある答えが見つかった。

「バーンシュタインの感染は一旦世界から君の存在を抹消し多だけに過ぎなかった。つまりは存在を白紙に戻し、そこから誰かが新たに君という存在を書き込んだと言う事かな?」
「だろうな」

バーンシュタインと聖は納得したらしいが、本人は置いていかれたままだ。

「えーっと、つまり俺は何なんだ?」
「君の姿や銀の鎧から天使の類かと思ったがそうでもなかった。」
「もったいぶるな、何なんだ俺は」
「君は守護霊なのかもしれない。これが僕の結論だ。」

守護霊、つまり誰かを守る存在であること。そこから導き出される答えはいたって簡単だった。

「つまり俺は、やっぱり命の騎士になれたって事でいいのかな?」
「ああ、間違いなく君は私の望んだ通り。完璧なまでの命のナイトと言うことだ」
「しかし良いのかい?君はバーンシュタインの勝手な行いで異形になったんだよ。」

異形ということは異形になる前は人間として生きていたということ。しかし銀には人間の時の記憶が無い。つまり、異形の銀としてこの世に生まれてきたのと同じこと。命を守るための存在としてこの世界に居るということになる。なってしまうのだ。それは西園寺聖としてはこれからの事を考えれば嬉しい事この上ないのだが、一人の人間としては、個人の過去を消し去っても良いのかと考えてしまう。  本人に自覚が無くともだ。

「例え俺の存在に前があったとしても、これは魔人で無く守護として生まれた事には理由があると思うんだ」
「わかった、この話はこれでおしまいだ。君は自分の生き方を自分で決めたのなら、僕は構わないさ」

さて残った問題としては、銀の姿のことである。異形としてはこの状態が戦闘形態のはずである。

「その鎧取れないかな?」
「んーどうだろ」

バーンシュタインと聖は銀を押さえつけて兜を取ろうとしたがびくともしない。鎧と一体化しているのかもしれない。

「そういえば君は私たち以外の誰かに出会ったりはしたかい」
「病院内で日本刀を持った男一人だけだ」
「それは組織の人間だ。病院内に居たということは、まぁ分かっていたけどね。」
「っで、それがどうしたんだ」
「もしかしたら君は一般人には見えてないかもしれない。」

銀は此処に来るまでこの姿では色々面倒ではないかと考え、ビルの屋上や人気の無いところをなるべく高速で駆け抜けていたために一般人に一度も出会っては居なかった。命がパジャマのままだったことも含めてだ。

「まぁ分かるが、でも実験するには難しくないか」
「僕もそう思う」

結局実験しなくてはならないわけだがこれも今は保留となった。しかしそれ以外にも試さなくてはならない事は多くある。能力、戦闘力そして守護霊としてのこの世界の定義。この定義とは、人が持つ守護霊についてのイメージのことである。守護霊とはある人に憑く霊的な守り神のようなもの。つまり、魔物や厄から守る存在であることは分かっている。しかし、霊体である以上質量があるわけではない。

「結論としては、分からないことだらけということだ。」

バーンシュタインはニヤニヤしながら銀に言った。

「まだ研究の余地ありということでお開きとしよう。」

結局は分からず終いとなったわけだが、意外と早く能力の片鱗が見えてくるものかもしれない。






「銀、私は買い物に行ってきます」
「はい、いってらっしゃい」

命は夕飯の買い物に出かけた。これが初めての買い物なのだが、光と嵐も一緒だ。三人は街まで車で行った、さすがにこのメイドで買い物は不味い。

「さて、暇になってしまった。」

バーンシュタイン曰くこの館の住人は全員戦闘可能だという。つまり光、嵐も退魔士ということになる。銀自身の戦闘力がどれ程なのかは本人も分からないが、訓練しておく事に越したことは無い。異形は成長する生き物かどうかは知らない。

「何をしとるんだ?」

バーンシュタインが尋ねた。

「腕立て」
「異形に筋肉の概念があると思っているのか?」
「やっぱり」
「まして鎧が強化されるとも思えんが」
「じゃあ何してればいいんだ」
「では私と話でもしようじゃないか」

バーンシュタインとの会話は銀としては確かに有益なものだが、それ以前にこの男とは家族なのだと思い出した。

「じゃあ質問するが、なぜ俺なんだ」
「君が一番命に近いということだ」
「それだけか?」
「あと考えられるのは魔が差した、とでも言っておこう」
「・・・魔人が差されるなよ」

バーンシュタインは大笑いしたが、銀にはあまり面白くは無かった。別にギャグで言ったわけではない。

「次の質問、なんで魔人が人間と一緒に居るんだ」
「西園寺とは長い付き合いで、今から・・・何十年たったかは覚えとらんが昔戦ったことがあってな」
「で?」
「私も若かったからな、三十二時間の末に負けたわけだがある約束をした。」
「負けたからか。」
「そう、当時の西園寺の頭首は私と契約したわけだ。共に異形と人間の謎を解明しようとな」
「人間の?」
「そう人間だ。なぜ人間がこの世に居るのか、まぁ哲学的な話になってしまうがな」

バーンシュタインの昔話は長くなりそうだが聞いて置いて損はなさそうだった。




「まず人間が居たと仮定しよう」
「なんで仮定なんだ?」
「まぁ話を聞けい。異形イコール妖怪の位置づけは分かるな、此処まではいい。人間の自然災害や超自然現象に対しての恐怖が妖怪を創り出した。我ら魔人も死後の世界や人間の罪の意識から創り出されたものだ。天使も叱り。」
「まぁ何となく分かる、理解できてるぞ」
「よろしい、さてここで問題だ。天使や悪魔、鬼に妖精と様々な異形の元のイメージを創り出した人間たちが、最も高き者恐れる者として創り出したものがある。」
「鬼とかじゃないのか?」




「神だ。このイメージは千差万別だが恐らく全人類が何かしらの固定概念を持っている」




「なるほど、確かにそうだが。それが一体何なんだ?」
「では聞くが、人間は誰が作ったかわかるか?」
「神様って言うのが一般的だが、ここで進化と言うのは冗談にしかならないか」

間違いなく神が人間を創った。これは旧約聖書道理ならの話だが、しかし天使や悪魔は人間のイメージが形となった者なら少しずれが生じる。

「つまり、神という概念は人間が創ったものであり、人間を形創った者は神という事になるわけだが」
「何となく言いたいことは分かるが、堂々巡りにならないか?」
「そう、結論として卵か先か鶏が先か。神が先か人が先か、になってしまう」
「神は真祖なのか?」
「それは分からん、もし神が我々真祖の類ならばどこかに存在しているわけだが」
「神様って言うのは見えないから神じゃないのか?」
「そうだな、それもある。ちなみに私は天使にはあったことがあるぞ」

これでは禅問答に近い、または神への冒涜かもしれないが時間つぶしにはなったかもしれない。

「こんなもんだよ、いい授業だったろ」
「ただの研究発表じゃないか?」

バーンシュタインはまた大笑いをしていた。彼の研究は永遠の研究ではないだろうか、魔人であるが故に生涯を賭けて神を暴くのかもしれない。不毛かもしれないが、そう言うものかもしれない。定めとも言えなくは無いが。




「なぁ、もし神様にあったらどんな質問をするんだ。」




バーンシュタインは顎を掻きながら考えていた。そしてこう答えた。




「あんたは一体何がしたいんだ?これに尽きるだろ」











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