天夜奇想譚

《本編 -狩猟者-》

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kohaku

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contents

狩猟者遊戯

――夜闇を切り裂くは、錆色の刀身。
逃げようとする連中を追う。相手は纏まって逃げている。行き先は恐らく人通りの多い場所か、民家のある場所。
そこまで逃げられたら狩るのは難しい。
森を駆け抜ける。目標は三つ、未だ健在。身体能力で追いつけないらしい。
右腕の手甲に精神を集中させる。概念式複合を起動。概念は、根・急成長・壁・地脈の四つ。地形の把握と準備は十分だ――! 
「式名、五行――木遁」






狩猟者―寒がりの白雪/far snow―

駆け抜ける衝動を抑えることができる事はできない。
悲しみは知らない、哀れみは知らない。
知らないから、それはきっと喜びだ。
――彼女は、そう言って錆色を振り下ろす。





狩猟者―迷い子/missing―

私は切符を失くしてしまった。
列車は回り続ける、ぐるぐると私の目の前を。
誰かは手を伸ばした。
『切符は要らないよ。お乗りなさい』
そして私は答えた。
『あれが無いと私は行く先が分からない』
列車は回り続ける。





狩猟者―存在の証明/Do you ... know?―

この世界は狂っている。
生きている限りに救いはなく、死ぬ事に安らぎはない。
神は居ない、怪物だけが蔓延る。
嗚呼、なんと嘆かわしい事か。
彼の狂人はそんな事を言っていましたとさ。





狩猟者―×××―

人は神に並ぶ事はできぬ。
故に人は神に平伏して戦う。
人は人を超える事ができる。
故に超人は人に勝る事はできぬ。
下のものは上のものの如く、上のものは下のものの如し。
しかし枠の違うモノは上に立ちぬ。

約束の日、樫月は約束通りの時間にやってきた。






狩猟者―郷愁的/Daze―

何も知らなければ良かった。
無知であり続けられるならばこの痛みも知らずに済んだ。
でも私は知ってしまったんだ。
私はただの狂いたがりで、
彼が本当に狂ってしまったという事に。

――ぱかっ、ぱかっ……

ぱかっ……

……





狩猟者―狼煙/Cat box― 1/2

七つの村の七つの墓場から土を持って参れ。
その土を人の血によって捏ねよ。
こうした土を三年かけて三千の足にて踏ませる。
その土にて九寸のヒトカタを千作り、鍋にて煮るがいい。
さすれば、一つ、浮かび上がらん。






狩猟者―狼煙/Cat box― 2/2

油をフライパンに流し、広げる。
「……最近炒め物ばっかりな気がするな」
呟いて、ニンジンを投入。炒める音が響く。鍋以外は炒め物系が主流になってきた気がする――いや、別に炒め物が悪いわけじゃないが、さすがにこれではバランスが悪い。でも残った材料を使いきるにはこれが一番の方法でもある。
今一番に考える事はバランスじゃない。
振り返る。そこには不機嫌な姉貴が不機嫌そうにテレビを眺めながら、不機嫌そうに人差指でテーブルを叩いていた。
肉野菜炒めができあがり、振り返ってみる。もう一回前を向く、振り返る。間違いなく姉貴は銃を抜いていた。ペンを弄くるような手軽さで銃を弄っている。深呼吸を一つして、声を掛ける。
「姉貴、できたよ」






狩猟者―アナタに祈りを/irrational beliefs― 1/2

誰だって夢見ているんだ。
皆が自分を認めてくれることを。
叶わない事なんかじゃない。
だって自分に落ち度なんてないんだから。
じゃあ悪いのは?





狩猟者―アナタに祈りを/irrational beliefs― 2/2

今日の星はキレイだ。
いつもよりも透明に見える。
人ごみが流れてく。
誰も俺を見ない。
俺を見ろ。
俺を見ろ。
変わったんだ。
世界が変わったんだ。違う、俺が、変わったんだ。
高みへ、気高いものへ!
俺を、
見ろ!
――どこか遠くで咆哮が聞こえた気がして、ふと、振り返った。





狩猟者―平穏な日々/lazy trap―

鈍色に輝くのは、日々と言う名の刃。
腐敗を進ませるは怠惰の日常。
何も得られぬのは無為の時間。
誰も彼もが知らずにその輝きを磨耗してゆく。
誰も彼もが知らずにその刃を首筋へ持ってゆく。





アヤメ―狩猟者/abyss―

線路は続くよ。
どこまでも、どこまでも。
どこまでも?
終着駅はどこにある?
列車にすら乗ることができないのに。





狩猟者―辻の蛭/sister― 1/2

祭囃子が聞こえる。
男の子だから、女の子を守らなきゃ。
お姉ちゃんともはぐれて、イトコと二人。
小さな手のひらを引っ張って、他人の林を抜けていく。
大丈夫。
言葉に根拠なんてない。
女の子は泣いてしまった。
大丈夫。
そう言って、泣きたくても僕はその手を引く。
守ってあげる――幼い、二人きりの約束。
女の子は、泣き止んだ。
僕は、笑うことができた。





狩猟者―辻の蛭/sister― 2/2

声は上から。刀を構え、振り下ろされるそれを受け止める。金属音がぶつかり合い、火花が散った。そのまま勢いに任せて弾く。弾いた俺の刀を利用して、少し離れたところに男は着地する。炎を浴びせかけたやったのにもかかわらず、焦げあと一つない。
細目を更に細めて笑い、かなり余裕ぶっこいてやがる。
つい先日相手にした鎌鼬を思い出した。当たらないなら、まずは相手を囲って封じ込める。手甲を相手に向け、魔力を走らせる。
威力は最大、手加減なんてできない。
「式名、五行――木遁、句句廼馳ノ抱擁」
コンクリの地面を突き破り、相手の動きを封じる根の壁が螺旋状に檻を成す。
封じたらもう一撃で終わりだ。





狩猟者―狂燥/Cause― 1/3

私は×き×い×すか?
×は存在していますか?
な×で誰×答え×くれ×いので×か?
×××、×××××××ですか?
×××



























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