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contents *[[こちら白夜行!]]  天夜市市街地内、蕎麦所『白杉』。熟年のオシドリ夫婦が経営するこの店は、ごく一部に対してとても名が通っている。  ひとつは、その味。ただ、無口で表情ひとつ変えないご主人の蕎麦打ちの腕は見かけによらずそれほどの物ではない。評判なのは、奥さんの作る特性の甘味メニューである。その注文数は本来の看板であるはずの蕎麦を軽く上回り、雑誌取材の際にはうっかり甘物屋として掲載される、なんてエピソードまで存在する。 余談だが、たまに注文のかかる蕎麦を、無表情のご主人が心なしか嬉しそうに打つのを眺めるのを楽しむ、なんてコアな客も存在するらしい。 *[[こちら白夜行! 第二話]] 少女、蔵野 明が襲い掛かってきてから数十分の応酬の後……青年、葵 恵は既に勝利を確信していた。 「小細工、だけか――!」 自分に向け、横薙ぎ縦薙ぎに振るわれる不可視の得物を、作り出した氷の剣―厳密に言えば、刃はないので鈍器なのだが―で捌く。そしてその相手へ、若干の手加減をし、だが素早く、叩きつける。 *[[こちら白夜行! 第三話]] その部屋は騒然としていた。むき出しのコンクリート作りの建物。壁という壁、床という床には魔方陣を基にした基本的な式が刻まれ、そこら中に書物や、一見怪奇な道具……式具が散らばっている。おおよそ居住空間とは程遠い。 退院した葵がこの場所を見つけるまでに、4日ほどかかった。何故か――十中八九、桜花の仕業だと彼は踏んでいるが――統括機関に連絡できなかったおかげで、位置の割り出しにかなりの時間を食ってしまった。 繁華街や住宅地からは外れ、開発計画の枠にも入らなかった僻地。その廃ビルの中にそこはある。水道不通、ガス不通、おまけに電力拝借。かろうじて天井にぶら下がる、割れかけの裸電球や、隙間風いらっしゃいませな悲惨な窓ガラスが哀愁を漂わせる。朝日差し込む時間だというのに、やもすれば心霊スポットに仲間入りできそうな風格を持つこの場所こそが、退魔組織、白夜行――本部である。 *[[こちら白夜行! 第四話]] 十一連敗の夜から、十日後。 「……帰るまでに止みそうに無い、かな」 「そうねぇ。予報じゃ、夕方から激しくなるんだって」 蕎麦屋白杉、その店内から、明は恨めしく、降り続く雨を眺めていた。 *[[こちら白夜行! 第五話]] まどろむ陽気。白と黒が光景を作る枯山水の庭は一見殺風景だが、どこからか流れた桜の花びらが白砂と子石の中に浮かび、水の無い水面に揺らぎを錯視する。 お下げ髪の少女はその波の真ん中で、強張った面持ちでただ一点、十歩ほど離れ立つ老人の横顔を睨み続けていた。風に吹かれた、少女には少し大きすぎる赤い着物が砂を撫ぜる音が、かすかに聞こえる。 向かい合う背の高い老人は、風にはためく着物の裾を正す手の他は特に動かさず、神妙に少女の動作を伺う。孫を眺める優しい眼ではなく、師としての視線で。 そして少女は静かに口を開く。 *[[こちら白夜行! 第六話]] 統括組織内、執務室。柔らかく日の射し込む部屋、ただしその光は堆く積まれた書類の山に遮られ、白い床にその影を落とす。そのビル郡のような書類の山の中で、安倍桜花は欠伸混じりに背伸びをした。伸ばした手が、机の上からいくらかの書類を薙ぎ、落とす。 「あー……」 落とした書類へと一度は眼を向けるが、うんざりとした表情で再び逃げるように眼を逸らした。 *[[こちら白夜行! 第七話]] ----
contents *[[こちら白夜行!]]  天夜市市街地内、蕎麦所『白杉』。熟年のオシドリ夫婦が経営するこの店は、ごく一部に対してとても名が通っている。  ひとつは、その味。ただ、無口で表情ひとつ変えないご主人の蕎麦打ちの腕は見かけによらずそれほどの物ではない。評判なのは、奥さんの作る特性の甘味メニューである。その注文数は本来の看板であるはずの蕎麦を軽く上回り、雑誌取材の際にはうっかり甘物屋として掲載される、なんてエピソードまで存在する。 余談だが、たまに注文のかかる蕎麦を、無表情のご主人が心なしか嬉しそうに打つのを眺めるのを楽しむ、なんてコアな客も存在するらしい。 *[[こちら白夜行! 第二話]] 少女、蔵野 明が襲い掛かってきてから数十分の応酬の後……青年、葵 恵は既に勝利を確信していた。 「小細工、だけか――!」 自分に向け、横薙ぎ縦薙ぎに振るわれる不可視の得物を、作り出した氷の剣―厳密に言えば、刃はないので鈍器なのだが―で捌く。そしてその相手へ、若干の手加減をし、だが素早く、叩きつける。 *[[こちら白夜行! 第三話]] その部屋は騒然としていた。むき出しのコンクリート作りの建物。壁という壁、床という床には魔方陣を基にした基本的な式が刻まれ、そこら中に書物や、一見怪奇な道具……式具が散らばっている。おおよそ居住空間とは程遠い。 退院した葵がこの場所を見つけるまでに、4日ほどかかった。何故か――十中八九、桜花の仕業だと彼は踏んでいるが――統括機関に連絡できなかったおかげで、位置の割り出しにかなりの時間を食ってしまった。 繁華街や住宅地からは外れ、開発計画の枠にも入らなかった僻地。その廃ビルの中にそこはある。水道不通、ガス不通、おまけに電力拝借。かろうじて天井にぶら下がる、割れかけの裸電球や、隙間風いらっしゃいませな悲惨な窓ガラスが哀愁を漂わせる。朝日差し込む時間だというのに、やもすれば心霊スポットに仲間入りできそうな風格を持つこの場所こそが、退魔組織、白夜行――本部である。 *[[こちら白夜行! 第四話]] 十一連敗の夜から、十日後。 「……帰るまでに止みそうに無い、かな」 「そうねぇ。予報じゃ、夕方から激しくなるんだって」 蕎麦屋白杉、その店内から、明は恨めしく、降り続く雨を眺めていた。 *[[こちら白夜行! 第五話]] まどろむ陽気。白と黒が光景を作る枯山水の庭は一見殺風景だが、どこからか流れた桜の花びらが白砂と子石の中に浮かび、水の無い水面に揺らぎを錯視する。 お下げ髪の少女はその波の真ん中で、強張った面持ちでただ一点、十歩ほど離れ立つ老人の横顔を睨み続けていた。風に吹かれた、少女には少し大きすぎる赤い着物が砂を撫ぜる音が、かすかに聞こえる。 向かい合う背の高い老人は、風にはためく着物の裾を正す手の他は特に動かさず、神妙に少女の動作を伺う。孫を眺める優しい眼ではなく、師としての視線で。 そして少女は静かに口を開く。 *[[こちら白夜行! 第六話]] 統括組織内、執務室。柔らかく日の射し込む部屋、ただしその光は堆く積まれた書類の山に遮られ、白い床にその影を落とす。そのビル郡のような書類の山の中で、安倍桜花は欠伸混じりに背伸びをした。伸ばした手が、机の上からいくらかの書類を薙ぎ、落とす。 「あー……」 落とした書類へと一度は眼を向けるが、うんざりとした表情で再び逃げるように眼を逸らした。 *[[こちら白夜行! 第七話]] *[[こちら白夜行! 第八話]] ----

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