572 :片思いアレティエ :2008/04/10(木) 13:24:41 0

珍しく休憩室でうたたねしていたティエリアの横に、誰かが座った気配がした。
そのせいで目覚めたが、瞳は閉じたまま。
ティエリアは気配だけで相手が誰か悟り、敢えて寝たふりを続けた。
じっと自分を見ている視線を感じる。わざと身体を揺らして寄り添うと、相手が慌てるのが分かって面白い。
アレルヤ・ハプティズム。密かにティエリアが想いを寄せている相手だ。
「ティエリア、好きだよ」
囁かれた言葉に、どきりとした。アレルヤはいつも熱い視線を送ってくるくせに行動に出ようとはしなかったのだ。ティエリアが寝ているからこその行動でも、はっきりと言葉でアレルヤの気持ちを聞いたのは初めてだった。
「君がロックオンを想っていたとしても、僕は君が好きだよ」
だが、このセリフでティエリアの機嫌は上から下まで急降下した。
「…………ちょっと待て」
「ティ、ティエリア!? 起きてたの!?」
「誰が、誰を好きだって……?」
ティエリアは低音が響く神谷声を最大限に活かし、アレルヤを睨んだ。
アレルヤはおどおどして視線をあっちへやったりこっちへやったりしていたが、ティエリアの睨みが自分から逸れないことを悟ると、観念して項垂れる。
「ご、ごめんね……。君がロックオンを好きなこと、知っているんだ。
だから諦めなくちゃいけないのに、僕は、僕はずっと君のことが……」
「だからなんで私がロックオンに恋愛感情を抱かなくてはいけないんだ!」
「え、ええ!? あれ? え、でも好きなんじゃないの?」
「…………確かに彼を好きだ。それは認めよう。だがアレルヤ、君は例えば…
ああくそ上手い例えば見つからないな。私は人間らしい感情には疎いから……
そうだな、例えば親をいくら好きだといっても恋愛感情は持たないだろう?」
「僕、親の記憶ないから分からないや」
アレルヤが悲しそうな顔をしたので、思わずティエリアも悪いと謝ってしまった。
「ガンダムならどうだ! いくら君とて、キュリオスが大事だからって恋愛感情は持つまい」
「うーん? でも刹那はエクシア好きだよね」
「では、仲間に恋愛感情は持たないだろう!?」
「ティエリアは仲間だよね。でも僕、ティエリアがすっごく大好きだよ」
「あーー……そうか、そうだな」
これは自分にも当てはまることだった。
ティエリアは珍しく気疲れを感じた。なんかもうアレルヤには何を言っても無駄な気がする。
―――― 私だって、アレルヤをずっと好きだったのに。
「ティエリア? なにか怒ってる? ごめん、ごめんね?」
「いや、もう良い。疲れた。そのうち君の告白に返事をしてやるから今は黙れ」
「え!? い、いいよ! ティエリアの負担になりたくないし」
もっときちんと、自分のロックオンへの気持ちを説明出来るようになってから。
アレルヤの鈍感な頭でも、ロックオンへ向ける好意と、アレルヤに向けるそれとは全く違うということを、言葉で伝えられるようになってから。
アレルヤの気持ちに返事をしてやろう。
「煩い。君は黙って俺の告白を待っていればいいんだ」
まあ、でもこのくらいしても良いか。
ティエリアは深緑色の髪を引っ張って、アレルヤの唇に噛み付いた。
痛くて甘い、ちょっとした仕返しだった。

以上。

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最終更新:2008年09月21日 21:33