257 名無しさん@ビンキー [sage] Date:2008/06/06(金) 21:37:55 O ID: Be:
昨昨晩くらいに盛り上がってたジューンブライドにセンチメンタリズムを感じたので投下。

・アレティエ♀でジューンブライド
・エロはないよ
・所々捏造設定アリ

おk!な人はどうぞ!↓






「そっち、どぉ?」
「バッチリっすよ!そっちは?」
「もー超綺麗!!ヤバいよ!!早く見せてあげたいーー!!」
クリスティナとリヒティがキラキラと瞳を輝かせながらきゃっきゃっとはしゃいでいる。
「………」
そんな2人を横目で見やりながら、フェルトはハロを抱えそっと上を見上げた。
―――ここは月の裏側。ヴェーダ本体が収められている、ヴェーダの間。
そこに、ソレスタルビーイングの各々の人物たちが集まり、何やら慌ただしそうにあちこちを行き来している。しかも普段の様子とはまるで違い、皆所謂『正装』と呼ばれる服を身に纏い、女性陣は普段よりさらに気合いの入れた化粧で顔を包み込む。
「ケッコンシキ!ケッコンシキ!」
腕の中のハロが耳をパタパタとさせながらそう叫ぶのを聞くと、フェルトは優しく微笑んだ。

× × ×

「………はぁ……」
一方、ここは新郎控え室。純白のタキシードに身を包んだ逞しい体つきの青年は、憂鬱そうに溜め息を吐いていた。
「アレルヤ」
こんこん、と数回ドアをノックする音が響くと、ガチャリとドアが開き刹那が入ってきた。
「…あぁ、刹那。それ、似合ってるね」
アレルヤは黒のタキシードに身を包んだ刹那を見やると、素直にそう褒めた。
「…ありがとう。ところでアレルヤ、大丈夫か…?」
何が。そう聞くまでもない。アレルヤは返事の代わりに、僅かに苦笑してみせた。
「正直ちょっと…だって……ねぇ?」
ははは、渇いた笑い声が静かに新郎控え室に響いた。

―――――ティエリアと結婚しようと決意した。
プロポーズした。顔を真っ赤にされながらも『YES』の返事を貰った。じゃあ次はご両親に挨拶をしよう。…で、マイスターの守秘義務でティエリアのご両親のこと知らないんだけど、その……
え?ヴェーダが両親?じゃ、じゃあヴェーダに挨拶するよ。するからね。

『ヴェーダ、ティエリアを僕にください!!!』

「………その結果が、まさか『マイスター除名』とは…」
「ははは…流石に焦ったスメラギさんが何とかヴェーダに交渉してくれたみたいだけど…それ以降ヴェーダはずっと沈黙しちゃうし…ティエリアも、それからやっぱり落ち込んじゃってるし………。」

6月。ジューンブライド。まさに憧れの結婚。それなのに、状況は思っていたよりも最悪の方向に傾いていて。
「……でも、今日は結婚式だ。…主役がそんな顔をするな。」
「…うん、そうだね。そうだよね。」
そう言うと、アレルヤは崩れそうな自分を奮い立たせるように、満面の笑みを浮かべた。
そうだ、今日は人生で一番幸せな日なんだ。だって、あんなに綺麗な子が僕の花嫁になる日なんだから。

× × ×

「おーい、もう入ってもいいかー?」
こんこん、軽く新婦控え室のドアを叩くと、中から「okよー!」といった声が響く。
ロックオンは扉を開き、目の前に広がる純白を見つめ、思わずヒュウ、と軽く口笛を鳴らした。
「おやおやまぁまあ……こんなに綺麗になっちゃって」
「…お世辞は入りません。」
「お世辞じゃねーよ。全く、花嫁になっても相変わらずだなあ」
純白のドレスに身を包み、少し長い髪を後ろにまとめ結わえ上げ頬を赤らめているティエリアは、まさに浮き世離れした美しさを放っていて。
「すっごく綺麗でしょう、ティエリア。この子本当化粧映えするのよー!クリスティナと一緒に頑張っちゃった!」
ティエリアの衣装の着付けや化粧を担当したスメラギが、胸を張って自らの仕事の達成ぶりに満足した。
「…あ、やばい。何かちょっと泣きそうになってきた…」
本当に本当に、ティエリアがとても綺麗で。あんなに強気で、子供っぽくて、人一倍手の掛かるマイスターだったティエリア。そんなティエリアが、今、お嫁にいこうとしてるだなんて。
今までのことがまるで走馬灯のように流れてきて、自然とじんわりロックオンの瞳に涙が浮かぶ。
「や、やだ、泣かないでよ…私まで感極まっちゃうじゃない……!うぅ……!」
「な、何を泣いているんですか!ロックオン・ストラトス!スメラギ・李・ノリエガ!」
急にすんすんと泣き出してしまった大人2人に、ティエリアはわけも分からず混乱する。そんなティエリアを見て、ロックオンとスメラギはバッとティエリアの手を掴むと、ティエリアの瞳をまっすぐ見据えて言い聞かせた。
「絶対に、幸せになるんだぞ」
「絶対に、幸せになるのよ」
キラキラと輝く大人2人の瞳の勢いに押され、ティエリアは思わず頷いた。
しかし胸の中には一抹の不安が残る。



(ヴェーダ………)
―――――アレルヤとの接触以降、沈黙を貫き続けるヴェーダのことを思う。
(ヴェーダ…何故、私たちの関係を認めてくれないのだろう……)
ヴェーダなら、受け入れてくれると思っていた。ヴェーダ自身に拒否されたことなんて、今まで一度だって無かった。
だから、今回とてつもないショックを受けた。アレルヤとの結婚を認めてもらえない。そして、それ故に決行された無断の結婚式。
(………ヴェーダとアレルヤ…俺は、僕は、私は……一体どちらを選べばいいんだ………。)
会場をヴェーダ本体に指定したのは、スメラギなりの気遣いだったのだろう。そして式の準備をするにあたり、ヴェーダは特に妨害めいたことはして来なかった。ただ沈黙するのみ。
(…ヴェーダ…)
ロックオンとスメラギがはしゃぐ横で、ティエリアは密かに瞳を赤から金に変化させ、ヴェーダへのアクセスを開始した。しかしヴェーダは未だに沈黙を貫き、ティエリアは悲しそうに瞳を伏せた。
(……こんなに、近くにいるのに……)
何故。何故なんですヴェーダ。しかしティエリアは決意した。ヴェーダかアレルヤ、どちらしか選べないのならば、私は―――…
「…さぁ!そろそろ行きましょうか!」
ぱん、と手を叩き、スメラギがティエリアの手を引く。
「…あぁ。」
ティエリアは何事も無かったかのように瞳を開き、歩みを進め、ロックオンとスメラギと共に控え室から一歩足を踏み出した。
「アレルヤとティエリアの結婚式の始まりよ!!」

× × ×

―――――アクセス開始。
ブラックボックスへ到着。パスワードを入力して下さい。
******
パスワード確認中…受理。ブラックボックス内部へアクセスします。
0と1の狭間で、ヴェーダは分析した情報から導き出された場所へのアクセスを開始していた。
―――ヴェーダの中のブラックボックス。そこには真のイオリア計画の全てがログとして残っている。それはまさにイオリア自身。イオリアそのものといっても過言じゃない。

(ヴェーダ)
(………)
(…ティエリア・アーデとアレルヤ・ハプティズムの結婚を認めないつもりか)
(………)
(………あの子はもうヴェーダの後を付いて歩くような子供じゃない。…今のお前は、あの頃のティエリアが忘れられないあまり、些か盲目的になっている。)
(………)
―――それでも。思い浮かべるのは、まだまだ幼い頃のティエリアの姿で。

『ヴェーダ、きょうは初めて“ちきゅう”へとおりました。』
『…でも、すごく、からだが重くなって……』
『やっぱり、わたしはずっとヴェーダのそばにいたいです。』
『ヴェーダ、ずっとずっと、わたしをヴェーダのそばにいさせてください!』

(もうわし達の役目は終わったんだ。わし達が祝福してやらねば、…あの子は泣いてしまう……。)
(………)
そこまでイオリアの言葉を聞いたヴェーダは、ブラックボックスからの退去プログラムを組み始め、踵を返すようにその場から去ろうとした。
(ヴェーダ!!)
(………)
―――それでも。
やがて再びブラックボックスへの扉は閉ざされ、0と1の狭間へと沈んでいった。

× × ×

「―――まずは新郎の入場です。皆さん、暖かな拍手で迎えましょう。」
紅龍のアナウンスと同時にゆっくりと開いた大きな扉から、少し恥ずかしそうに、純白のタキシードを身に纏ったアレルヤが一歩ずつゆっくりヴァージンロードを歩き出した。
「アレルヤ、超かっこいー!!」「流石私が選んだだけ在るわ、貴方の体によく映えてる!」「さーすがアレルヤっすね!!」
クリスティナとスメラギとリヒティが歓声を上げ、ほぅ、と惚けたように見つめるフェルト。そして暖かな拍手を送り続ける刹那、ラッセ、イアン、モレノ、王留美、とそこにはCBの面々が勢揃いしていた。
「………」
少し緊張しながらヴァージンロードの半分まで歩みを進めると、リハーサル通りそこで歩みを止めた。それを確認すると、紅龍は再びアナウンスを始めた。
「―――続いて、新婦と新婦の父親代理の入場です。皆さん、暖かな拍手で迎えましょう。」
父親“代理”。その言葉に一瞬周りの空気が凍りつきそうになるが、それを吹き飛ばすかのような大きい拍手で、ゆっくりと開いた扉から出て来る新婦たちを出迎えた。

「………」

新婦の姿を目にした瞬間、その場にいた全ての人間が、一瞬息を飲んだ。純白のドレスに身を包んだティエリアは、あまりにもあまりにも、美しくて。
「………」
父親代理のロックオンの腕に軽くしがみつくような形で、ティエリアもヴァージンロードを歩み出した。

「…ティエリア、ヴェーダは…」
ロックオンが誰にも聞こえないような小さな声でそう尋ねると、ティエリアは僅かばかり俯きながら呟いた。
「……さっきもアクセスしてみたが、やはり…何も……」
「………そうか」
そしてまた無言で歩みを進め続けた。
(本来なら、この道をこいつと一緒に歩いてやるのはヴェーダの役目なんだがな…まあヴェーダが歩けるかどうかは別として、ティエリアと直接リンク出来るんだから、側に居てやるくらい…)

やがてヴァージンロードの半分まで来ると、そっ、とティエリアの手を解き、待ち構えていたアレルヤの腕へと絡ませてやる。
「アレルヤ、こいつのこと……頼むぜ?」
「……はい!」
ウィンクしながらそう言ったロックオンに、アレルヤは力いっぱい頷いた。
ありがとう、ロックオン。誰よりもティエリアの成長を見守っていたロックオン。貴方は、貴方も、立派にティエリアの“父親”でしたよ、と。アレルヤは心の中で深く頭を下げた。

「……アレルヤ…」
健気に腕にしがみつきアレルヤを見上げるティエリアを改めてよく見ると、本当に、本当にとても綺麗で。
まばたきするのも忘れて、ティエリアの薄いベールに隠された顔をじっと見つめた。純白のドレスと、菫色の髪のコントラストが、とても美しくて。美しくて。
「…行こうか、ティエリア。」
きっと、今の自分の顔は真っ赤に染まりきっていて。それはアレルヤもティエリアも同じで。
2人で前を見つめ、残り半分のヴァージンロードへの歩みを、ゆっくり、同時に、進め始めた。

(どうしよう)
(何も考えられない)

皆が見守る中、とてつもなく長く感じたヴァージンロードの道のりを、2人で進みきったその先。
神父の衣装を身に纏った紅龍が分厚い聖書を開きながら、新郎新婦を待ち構えていた。

「…誓いの言葉。」
厳かに、紅龍が言葉を紡いだ。
「アレルヤ・ハプティズム。汝は、ティエリアを生涯の妻と定め、健やかな時も病める時も彼女を愛し、彼女を助け、生涯変わらず彼女を愛し続ける事を我々の前に誓えますか?」

誓います。そう言葉を放とうとしたまさにその時、

――――――ピピピピッ!

その場に居た全員の端末が鳴り響いた。
「……まさか……!」
スメラギを始め、アレルヤとティエリア以外の面々は即座に自らの端末を取り出し、操作を開始する。
「…ティエリア、端末は…」
「流石に邪魔になると思って控え室に置いて来てしまった…何という失態だ…」
「あ、僕もだから大丈夫だよ!」
「万死に値する。」
そんなやり取りを交わす新郎新婦を横目に、端末には或るメッセージが浮かんでいた。
「……こんな時に…!!」
「…ヴェーダからのミッションプラン!?」
その言葉を聞いた瞬間、その場に居た全員の顔が絶望に染まった。
「ヴェーダ…やはりヴェーダは、僕とティエリアを認めてはくれないのか……。」
―――でも、まさか、誓いの言葉すら、言わせて貰えないなんて。ヴェーダからの指令はCBにとって絶対。こんなに大事な日なのに、ヴェーダは再び僕たちを戦場に送り出そうとしているのか。或いは、そのまま…
次から次へと浮かんでくる最悪の結果に、さらに目の前が真っ暗になる。
「ヴェーダからのミッションは……」
ぴっ、ぴっ、と端末を操作する全員の目が、一瞬大きく見開かれた。
(…そんなに大変なミッションなのか…)
アレルヤとティエリアが、最悪の事態を覚悟し、息を飲んだ。
「…ミッションを開始するわよ。」
スメラギが厳しい口調でそう告げたのを合図に、その場の空気がぴんと張り詰めた。
「アレルヤ!」「…はい」
ああ、一体どんなミッションなんだ。腕にしがみついたままのティエリアが、心から心配そうに、アレルヤの険しくなった顔を見上げた。

「………ティエリアを生涯の妻と定め、健やかな時も病める時も彼女を愛し、彼女を助け、生涯変わらず彼女を愛し続ける事を、ヴェーダの前に誓いなさい。」

――――――開いた口が塞がらない、そんな感覚を、この時初めてアレルヤとティエリアは覚えた。
「………え?」
「アレルヤ、これはヴェーダ直々のミッションよ。CBのガンダムマイスターとして、アレルヤ・ハプティズムとして、…答えはもう、決まってるわよね?」

悪戯っぽくウィンクするスメラギに、全てを理解し、アレルヤの顔が徐々に綻んでいった。
「………了解!誓います!アレルヤ・ハプティズム、ミッションコンプリート!」
「オーケー。次、ティエリア!」
スメラギはぽかんと呆けたままのティエリアの方へ向き直ると、同じくヴェーダから端末に届いたミッションプランのメッセージを読み上げた。

「アレルヤを生涯の夫と定め、健やかな時も病める時も彼を愛し、彼を助け、生涯変わらず彼を愛し続ける事をヴェーダの前に誓いなさい。」

ぱちぱち、と瞳を瞬かせたティエリアが全てを理解した瞬間、ティエリアの美しく化粧を施された顔がくしゃりと歪んだ。
「………っ………!!!」
そして、ぼろぼろ、ぼろぼろ、堪えきれなかった大粒の涙がティエリアの頬を流れ伝った。
「ヴェーダ…ヴェーダぁ、ごめ、ごめん、なさい…!ごめんなさい、ヴェーダぁぁあ………!!!」
「ティエリア…」
そんなティエリアを、アレルヤは宥めるように逞しい体でそっと抱き締める。
「ずっと、ヴェーダの側にいる、って、言ったのに……!っなのに、ごめんなさい、こんなに、こんなにアレルヤのことを、好きになって…!こんなに誰かを好きになるなんて、思ってなくて…!でもこんなにアレルヤのことが大好きで……!!」
嗚咽を堪えながら何とか言葉を紡ごうとするティエリアの姿に、他の人々もじんわりと貰い泣きをしてしまった。特にロックオン、イアン、スメラギなどはもう号泣に近い。
「ありがとう、本当、に、…ありがとうございます……!ヴェーダ……!!」
しばらく泣き続けたティエリアは、やがて涙を僅かに拭うと、まっすぐスメラギを見つめた。
「了解…誓います。ティエリア・アーデ、ミッションコンプリート…!」
抱きしめあっていた2人は、そのままお互いの顔を近付けて、長い長い誓いのキスを交わした。その場にいた全ての人間が、若い2人を祝福の拍手で包み込んだ。
「ハッピーエンド!ハッピーエンド!」
フェルトの腕の中にいたハロも勢いよく飛び上がり、ぱたぱたと羽ばたきながら2人を祝福した。

「ヴェーダ、絶対にティエリアを幸せにします!」
「…ヴェーダ、絶対に幸せになります。」

―――――いつまでもいつまでも、お幸せに!Fin...

 

 

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最終更新:2008年09月21日 21:43